英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
時間を少し遡る。
フィルヴィスが去った後の会議室にて、フィンはハシャーナに敵の狙いを教えてほしいと言う。
元々狙われていたのはハシャーナで、狙われた理由はおそらく30階層で拾ってきた何か。それは本来隠すように言われていたが状況が状況だ。ハシャーナは少し待ってろと会議室から出て行き
「こ、これ……」
そう言って取り出したのは、宝玉。透明な宝玉の中には何やら胎児のようなものが存在した。一見すれば、何かの卵のようにも見える。
「……………っ!?」
「アイズ、どうした!?」
フィン達が見たこともないそれに疑問を抱いていると、不意にアイズがその場で膝をつく。その顔から血の気が引いており、リヴェリアは心配そうに駆け寄った。
困惑の視線が集まるが、アイズも解らない。と、その時だった………ダンジョンが、震える。外が騒がしくなる。食人花、芋虫に加え新たな新種が現れ、舌打ちしそうになるフィンを嘲笑うかのように再びダンジョンが震えた。
突如モンスターの産まれぬ筈の領域に生まれたモンスターは一つ上の階層にて唯一生まれるモンスター、階層主『ゴライアス』同様巨人型。
差異があるとすれば全身を覆う漆黒の鱗に長大な尾、そして角と牙か。
まるでトカゲかドラゴンを無理やり人型に押し込めたかのような風貌のモンスター。邪神が名付けたる名はグレンデル。
グレンデルは階層全体の空気を揺する咆哮を上げ、訝しむ。母たるダンジョンが自らを生み出した理由である母に傷つけた神が居ない。出入り口は塞がれたはずだというのに、どうやってか
ゴルル、と喉鳴らす。生まれた役目は神殺し。それが果たせぬ以上は、モンスターとしての本能に従う。即ち、人類の抹殺。
「…………?」
ふと足元に違和感を覚える。何かが足に絡みついていた。蛇のような植物型の魔物。
これは、違う。母なるダンジョンが生み出した同胞ではない。何かが混じった、ダンジョン内の異物。ガリガリと噛み付いてくるが、鱗に覆われた足を傷つけることはない。
グレンデルは鬱陶しそうに唸ると片足を後ろに振り上げ、地面を蹴りつける。
次の瞬間
地面が爆ぜた。
そう錯覚するほどの爆音が成り引き大量の土砂が巻き上がる。衝撃と飛んでくる土砂で一気に大量の新種がやられる。
土砂の一部はリヴィラの街の外壁にも降り注ぐ。何なら中に食人花や芋虫も降ってきた。
「っ! 総員、構えろ! なだれ込んでくるぞ! 弓兵、魔導師は芋虫型、自爆兵に集中! 前衛は芋虫型、自爆兵に近付かず食人花、蠍型の新種に集中しろ!」
ここに来て新たな新種、蠍型に加えて突如モンスターを産まぬはずの階層に現れた階層主級のモンスターの出現。
誰もが呆ける中にフィンがすぐさま命令をだし、すぐに動きだす冒険者達。その足並みはお世辞にも揃っているとは言えない。だが、それも仕方ないだろう。
読み間違えた………と言うよりは、盤上に突如別の指し手が現れた。いや、それも違う。例えるなら己の駒を確認し作戦を立てていたフィンと、己の駒を増やし戦力を増強してた
それほど、あの巨人竜には行動の合理性が見えない。ただただ盤上を指し手の思惑を無視して暴れまわり、指し手にはそんな状況でなお駒を動かせと高笑いしながら強要する何かの影が見えるかのようだ。
「
しかしそれが完全に最悪な形で重なる。
どちらにせよ厄介だ。一枚岩では昔から無かったが、ある程度足並みを揃えていた。恐らく今回の黒幕は、足並みを揃えない。動きが読めない。と───
「そこにあったか……」
ルルネが慌てて宝玉をしまいながら外に飛び出ると同時に彼女に切りかかる影。アイズが咄嗟に動くも、後ろのルルネごと吹き飛ばされた。
「
そう言って、血のように赤く長い髪をした女は緑の瞳を吹き飛ばされたアイズ達に向ける。
「────ッ!!」
「…………」
即座に反応したフィンが放った槍を首をそらし交わすと片足を軸に回転し蹴りを放つ。小さい体を利用して姿勢を低くし蹴りをかわしたフィンは立ち上がりながら勢いを乗せた拳を脇腹に放つ。女吹き飛ぶも地面を足の裏で擦り殴られた箇所を撫でる。
「…………Lv.5か………強さは、問題なさそうだ」
「…………っ!」
女そう言って、己の有利が未だ覆らぬ事を確信する。その目に嘲りはない。ただただ純粋に、己の勝利を決定事項とした。
「調子乗ってんじゃねえぞクソ女!」
愛する、そして【ロキ・ファミリア】のトップであるフィンを侮られた事にブチ切れたティオネが殴りかかる。アマゾネスという身体能力に優れた種族。バワーだけならフィンを凌駕するティオネの一撃は流石に食らう訳には行かないのか回避しながら防ぐ。
ハシャーナの報告ではオリヴァスは身体能力任せだったらしいが赤髪の女は確かな技量を持つ。
「が!?」
拳を受け流し頭突きをティオネに叩き込む。頭蓋が砕けるかと思うほどの衝撃。クラリと倒れかけるティオネに向かい大剣を振るおうとして、ティオナがウルガを振るう。
超重量の第一級武装。明らかに出来の劣る大剣で防ごうとするも弾き飛ばされ剣に罅が入る。
「チッ………数だけはそれなりにいるか…………面倒な。彼奴は何をしている」
舌打ちする赤髪の女に、アイズが高速で近づく。生半可な攻撃ではダメージを与えられない。殺さぬように、などと加減していては殺されるのはこちら。
「【
暴風を纏い速度が跳ね上がる。剣と威力に風の力が上乗せされた一撃。轟音が響き渡る。
「────っ!?」
女が振るった大剣とアイズの『デスペレート』がぶつかり合い、その衝撃でアイズの【エアリアル】が消し飛ばされた。
「っ……」
だが罅の入った剣は砕け散る。女はしかし気にした風もなく、アイズを見据える。
「今の風の………そうか、お前が『アリア』か」
「「「っ!」」」
呟かれたその
「くはははは! どうした小僧? その程度で、その弱さで、良くも死なぬと言えたものだ! よくぞ私を侮辱してくれたものだ!」
報告にあったオリヴァス・アクトが現れる。その顔を覚えている暗黒期からオラリオにいた冒険者達は目を見開く。そんな彼等を見向きもせず、オリヴァスは白髪の少年、ベルにのみ襲い掛かる。
身体能力だよりとはいえ明らかにLv.5を凌駕しているオリヴァス相手によく凌いでいるベル。しかし攻撃が掠っただけで皮膚は裂け、血が流れていく。
完全に私怨のみで動き協調する気もなさそうなオリヴァスに舌打ちする赤髪の女。
「──ァァァァアアアアアアアアッ!!」
そこで、突如。宝玉の胎児が叫喚を上げる。
甲高い叫び声に誰もが思わず振り向き、ルルネの手から零れ落ちた宝玉の中で蠕き膜を突き破り、焦燥を顕にした赤髪の女とオリヴァスが反応するより速く飛び出す。
アイズに向かって飛んだであろうそれは間にいたベルに接触しそうになり、咄嗟に左手で受け止めるベル。
胎児は、ベルの腕に
「………!?」
瞬間、ベルの視界が暗転した。
ケタ
ツ タ
ミツ ケタ
ミツケタ
ミツケタ
ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタワタシガミツケタワタシノワタサナイミツケタキテキテココハクライノムカエニアナタキテアナタノワタシミツケタミツケタワタシノアナタキテキテキテムカエニムカエニムカエニタスムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニケムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニタスケテムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニムカエニ
「────っ!」
左腕から感じる熱で、思考が現実に戻る。オリヴァスに左手を手首あたりから斬られたと自覚し追撃に備えるも、オリヴァス達は切り離され宿主が死んだと思ったのか完全寄生する前段階で止まり元の姿に戻りかけている胎児を見る。
胎児は、芋虫型の新種に落ち改めて寄生し直す。
『────────!?』
ビクンと跳ねる芋虫型は、次の瞬間肉体が膨れ上がる。近くにいた芋虫型を巻き込むように膨張していき、飲み込み、体積をさらに増やしていく。
「これ……って………」
「50階層の………」
およそ6
混沌は、まだ終わらない。
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