英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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鐘の音

 アリーゼの相手はオリヴァス。行く手を阻むアリーゼを邪魔だと睨みつける。

 

「どけええ! あの小僧は危険だ、殺さねば! 我等が計画の障害となる!」

「そんなこと言われてはい退きますなんて言うわけないじゃない、頭悪〜い」

「があああ!!」

 

 残った腕をブンブンと振り回すオリヴァス。Lv.4のアリーゼにとっては必殺。だが

 

「当たらなければどうということないのよ!!」

 

 正義の派閥。ダンジョン探索よりも、闇派閥(イヴィルス)との戦闘を主とし、ランクアップしてきたオラリオ屈指の対人戦エキスパートの【ファミリア】、その団長の前で弱体化して、かつ膂力だよりの攻撃など当たるはずもない。

 足裏で炎を爆発させ高く飛び上がり、空中で足を上にし再び爆発、落下作度をつけ右腕を肩から切り裂く。

 

「ぐぅ!?」

 

 炎に焼かれた腕は出血こそしないが、神経を焼かれる激痛に歯が砕けんばかりに食い縛るオリヴァス。地面を踏み付け、追撃しようと来てきたアリーゼに対する壁とする。そのまま短くなった左腕を振り回そうとして届かないと悟ると体当りする。礫が無数の弾丸のように襲いかかってくる。

 

「とと! あっぶなあ〜!」

「おのれ、おのれええ!!」

 

 しかしそれもかわされる。右腕を完全に失い、左腕も半ばから失ったオリヴァスは忌々しげにアリーゼを睨む。と………

 

「レヴィス!」

「赤い髪に、緑の目? 私とキャラ被ってる!?」

 

 ざ、とレヴィスが現れる。頬が僅かに腫れている女性の髪や目の色に、アリーゼが空気の読めない発言。それを無視して、レヴィスは遠く、巨人竜と女体型からの猛攻を避けるベルを睨む。

 オリヴァスは危険と言った、なるほど納得しよう。奴が街の冒険者に光を与えたその瞬間、一度だけ冒険者達の強さが増した。それはレヴィスがアマゾネスの攻撃をまともなダメージとして食らったことが証明している。

 

「レ、レヴィス! いい所に来た、時間を稼げ! 完全回復すれば、お前を助けてやる!」

「…………茶番だな」

 

 そう言って、レヴィスはオリヴァスの胸に手を突き刺した。

 

「「「!?」」」

「な、あ──?」

 

 言葉を失う冒険者達。

 レヴィスは生々しい音を立て血液の溢れる胸の穴へと手を沈めていく。

 

「レ、レヴィスッ! 何を!?」

「より力が必要になった、それだけだ」

 

 淡々と、冷酷に返される言葉。その声色に偽りなく、瞳もまた酷く冷たい。

 

「モンスター共では幾ら()()()()大した血肉(たし)にならん」

「まさか、よせ!? 私はお前と同じ『彼女』に選ばれた人間!!」 

 

 何をするのか察したオリヴァスが目を見開き慌てる。

 

「選ばれた? お前はアレが女神にでも見えているのか? アレがそんな崇高なものであるはずが無いだろう。お前も、そして私も、アレの触手にすぎん」

 

 くだらなそうに鼻を鳴らすレヴィス。

 両手を失っているオリヴァスに出来る事など、何もない。

 

「た、たった一人の同胞を殺す気か!? 私がいなければ、『彼女』を守る事は!?」

 

 レヴィスはオリヴァスの言葉に耳を貸さず、乱暴に手を抜く。

 

「………魔石?」

 

 そう呟いたのは、果たして誰か。レヴィスの手には絵の具を塗りたくったかのような極彩色の『魔石』が握られていた。

 オリヴァスの体が、まるで魔石を抜き取られたモンスターの様に灰へと崩れますます驚愕の視線が集まる。そんな中、真っ先に動いたのはフィンだ。

 人の体から魔石が出たのも、抜き出された人間が灰へと還るのも理解の外。ただ、発言からしてオリヴァスとレヴィスはただの仲間と言うだけでなく、()()。それが、魔石を持つ。

 行動はたしかに迅速だが、しかし遅かった。バキリと魔石がかみ砕かれる。かつて無いほど、親指が疼く。

 反応できたわけではない。長年の勘に従い咄嗟に槍の柄を顔の前に持っていき、槍の柄が圧し折られ拳がフィンの顔にめり込む。

 

「────!!」

「団長!?」

 

 廃材も建物も関係なく破壊しながら吹き飛ぶフィン。

 それはあり得ない光景。否、()()()()()()()()()光景。

 【ロキ・ファミリア】の要であるフィン・ディムナ。この場に置いて、心の支えの一柱。優勢に立っていた冒険者達が、凍り付く。

 アイズ、リヴェリア、ティオナ、ティオネはもちろん、フィルヴィスやアリーゼ達他派閥までもが………。そのような隙を、怪物は見逃さない。怪物らしく、人の命を奪うため、人間らしく、合理的判断で、怪人は最大火力の魔導師を狙う………

 

「────っ!?」

「リヴェリア!!」

 

 リヴェリアが正気に戻り、アイズが慌てて駆けだそうとするが、凍りついていた体は直ぐに本来の速度を取り戻してくれない。彼女達では、間に合わない

 

「【アルクス・レイ】」

「───!?」

 

 だから、唯一凍り付いて居なかった()()の魔法が間に合う。その弱さ故に、レヴィスの意識の外にあった存在、レフィーヤの放った魔法。威力は、驚異ではない。だが、速度が落ちる。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

「チッ──」

 

 狙いは地面。足を浮かせ、強制的に吹き飛ばす。

 距離を取らされたレヴィスから魔導師達を守るようにティオネとティオナがフィルヴィスとリヴェリアの前に移動する。

 それでも、要のフィンがやられた動揺は抜けきらない。

 

「………あの鐘の音が、聞こえますか」

 

 そんな彼女達に、レフィーヤが言う。

 

「まだ、あのヒューマンが、ベル・クラネルが、駆け出しが戦ってるんです! だから、諦めないでください!!」

 

 鐘の音が響く。階層全体に、美しい鐘の音が。

 冒険者達の誰かが吠えた。それに呼応する様に、あちらこちらで咆哮が上がる。先の英雄の一撃をもう一度放てるようになったわけではない、ただの気合、根性論。だが、また押し返し始める。

 レヴィスは()()()()()()()レフィーヤを睨む。冒険者達の反撃の狼煙となったあの一撃を、まだ放っていない。つまりこの場で警戒すべきはリヴェリアの魔法だけでなく、レフィーヤの魔法も加わった。

 面倒な、と舌打ちする。

 策を弄するのはこの状況からして不可能。手駒も殆ど残っておらず、冒険者にやられるのは時間の問題。

 故に、取る方法は一つ………希望も、勝算も、蛮勇も、全て力でねじ伏せる。




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