英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
人の姿をした怪物。まさにそう呼ぶに相応しき、圧倒的な暴力の体現。
圧倒的な膂力は第一級冒険者であるティオネ達ですら、まともに喰らえば命を落としかねない。
「おおおおらあああ! このクソアマ! 良くも団長をおぉぉぉ!!」
だがそんなことなど無視して殴りかかるティオネ。
文字通り怒りを力に変えるスキルを持って、愛しい人を傷つけたレヴィスに迫る。
「チッ!」
流石に無視できぬと舌打ちに対応するレヴィス。
今のティオネならば、レヴィスにダメージを与えうる存在となった。だが怒りで我を忘れ防御するということが頭から抜けている。
「ほんと、世話が焼ける!」
それをサポートするのはティオナ。
「いったあ〜! これ絶対ガレスとかオッタルぐらいあるって!」
ビリビリと痺れる腕。それでも直接受けるよりはマシだ。レヴィスの攻撃を防ぎ、ティオネがその隙を逃さず襲いかかる。
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さらにアイズとアリーゼの付与魔法を施した剣が迫る。アイズの風で火力の上がった炎がレヴィスの剣を砕く。
「よしよぉし! これはいけるわね! 別に倒してしまっても構わないんでしょう!?」
「相変わらず調子づきやすい方でありますねえ、我等が団長殿は」
「剣から拳一つに変わってもあたしら殺せる存在だってのは変わってねえからな?」
呆れたように笑う輝夜とライラ。しかしそれが自分達を鼓舞するためのものであるとわかっているので、笑う。
その様子を苛立たしげに睨みつけるレヴィス。
「くだらん。希望だ絆だと………そんなものに縋り現実から目を逸らす。醜悪に過ぎる、見るに耐えん」
「あらぁ、しかしこの人数、無手でわたくし達に勝てるおつもりで?」
「強がりはよせよ。虚勢を張り、敵を蔑み、策を弄するなど通じるのは僅かな格上のみ。そんなもの全て、捻じ伏せる相手には意味はない」
「────っ!!」
輝夜の挑発をあっさり受け流す。と、冒険者も
地面が、震える。何かが、巨大な何かが迫る。
「………は?」
「嘘、だろ……?」
19階層の入り口から姿を表した巨大な蛇。いな、蛇の如き体躯の植物型モンスター。
極彩色の毒々しい
「っ! 避けろぉ!」
リヴェリアの叫びに蜘蛛の子を散らすようにかける冒険者達。街の一角に巨大な体が叩きつけられ砂埃と瓦礫が舞う。
「
レヴィスは巨大花の体に触れるとその身に腕を沈める。抜かれた時には、先程まで存在していなかったものが握られていた。
生物から切り取った血肉をそのまま鋳型に流し込んだかのような、紛れもない
再び武器を得たレヴィスは付着した赤い液体を振い落し巨大花の突撃から逃れるために散った冒険者達を見据える。
「潰えろ冒険者。未来も希望も、ここで全て磨り潰す」
「っ!!」
振るわれる長剣。
ただの一撃でアリーゼを吹き飛ばす。踏ん張ることも叶わず飛ばされたアリーゼだったがリューが受け止め、レヴィスの追撃に左右に分かれて回避すれば地面が砕ける。
「この!」
「遅い」
反撃しようとしたアリーゼだったが、レヴィスの蹴りが腹にめり込み吹き飛ばされる。リューがアリーゼに攻撃した隙きを着こうとするもあっさり防がれ、剣の一振りで発生させた衝撃波で輝夜ごと吹き飛ばした。
「【終末の前触れよ、白き雪よ】」
「……お前が一番邪魔だな」
「【黄昏を前に渦を巻】──がっ!?」
回避に専念したとしてもその関係は変わらず、回し蹴りが脇腹に食い込み呪文の代わりにゴボリと血が溢れる。
水晶に激突したリヴェリアは練っていた魔力の制御を失い内から爆ぜる。
「良くもリヴェリア様を!」
「不敬者が!」
エルフ達だ。敬愛する王族を傷付けられ、エルフの戦士、魔道士、弓使いが迫る。
「くだらん。傷つけられるのが嫌なら、閉じ込めておけ」
リヴィラにいる時点で全員Lv.2以上。Lv.3も混じっているというのに、歯牙にもかけないレヴィス。軽く腕を振るい吹き飛ばし、
「【閉ざされる光。凍てつく大地】」
「なに?」
と、リヴェリアの魔力に隠れていた彼女に劣るも膨大な魔力。振り返った先には、白い光を纏ったレフィーヤ。
「ちい!」
「【吹雪け、三度の厳冬。我が名はアールヴ】!!」
それはリヴェリアが放とうとしていた魔法。詠唱は完成した。放たれるは都市最強、
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
あらゆるものを凍らせる純白の光彩。
「か、は………はぁ……っ! なに、これ…………」
Lv.3がLv.5、それもエルフがハイエルフに匹敵する魔法を放った。その代償に相応しい消耗。
体力と
「でも、これ……で……────あ」
不意にかかる影。顔を上げ、迫りくる巨大花の姿。思わず思考が停止し
「ぼーっとすんなエルフ!」
ライラがレフィーヤを抱え、巨大花は誰も居なくなった場所を叩き潰す。
「良くやったわサウザンド! 後は私達に任せてなさい! ていうか任せて、このままじゃいいとこなしよ! ゴフゥ!」
「ああ! アリーゼ!」
「団長様、せめてポーションで回復してから言ってください」
吐血したアリーゼにポーションを渡す輝夜。
飲み干し回復したアリーゼは鎌首もたげる巨大花に相対する。
「行くわよ皆!」
「「「応!!」」」
「────!!」
声帯はなく、吠えることのない巨大花は目はないがおそらくベルを見た後目の前のアリーゼ達を邪魔だと言わんばかりに身を揺する。
「先の発言を思い出す限り、敵の狙いは剣姫とクラネルさんです」
「あの兎さんの鐘の音は鼓舞になっておりますからねえ、渡すわけにはいきません」
「それを抜きにしてもアストレア様が悲しむしね! 私達の弟は私達が守るのよ!」
「何時から兎がアタシ等の弟になったんだよ」
と、話し込む【アストレア・ファミリア】に向かって巨大花が無数の蔓を振るう。その隙間を縫い加速していくリューが木刀で殴りつける。
「やっぱこいつも打撃に耐性があるみてえだな。輝夜! アリーゼ」
「解ってる!」
「任せろ!」
と、輝夜が巨大花の身に一線。傷を刻みつける。
「
その傷口を広げるような爆炎。巨大花の身大きく抉り取りながら、内部をかける炎が内から焼き尽くす。魔石も焼いたのか、灰になって崩れ落ちた。
「やった!」
「油断しちゃだめよみんな。まだ変なサソリ型と
ガリ、と何かが噛み砕かれる音を聞いた。アリーゼは一つの小屋をじっと見つめる。
「ねえライラ、彼処って何だったかしら……?」
「ああ? 確か、魔石保管庫………っ!?」
アリーゼの問いに何故今そんなことを、と疑問に思いながらも応えたライラは顔色を変えて氷河の如き氷を見る。大気の水分が凍りついてできた霧が晴れ始め、氷漬けの
「リオン! 今すぐあそこをふっ飛ばせ!」
「え? あ、はい!」
困惑しながらも信頼しているのか、詠唱を完成させ魔法を放つ。
「【ルミナス・ウィンド】!!」
放たれる風の暴威。エルフの戦士が放つその一撃を受け小屋は吹き飛ばされる。
土煙の中から現れる人影は、しかし立っていた。
「チッ、この足ではろくに動けん」
そう愚痴をこぼし地面を踏みしめる足は、人のものではなかった。緑の皮膚をした、食人花を思わせるもの。
「まあ、お前達を潰した後治せばいい」
「ちょっとちょっと……どんだけ化物なのよ」
「……………」
「っ……フィンか」
ボロボロとなったリヴェリアの側に人影がさす。小柄なそれは、フィンだった。
「何か指示でも、出したらどうだ……」
ゆっくりと身体を起こすリヴェリアの言葉にフィンは布を巻いている顔の下半分を指差す。
「ああ、成程………」
リヴェリアはポーチから
「厄介なものだね、ルックスも利用して名を売りすぎたせいで、顔に大きな傷を残せば指揮にもやる気にも関わる」
「己そのものを利用すると決めたお前の責任だ」
リヴェリアはそう言いながら立ち上がる。
「魔力操作を切り捨てれば、かわせたろう?」
「だがレフィーヤの魔法が間に合わなかったもしれん。無理やり底上げした
「身を張るね」
「弟子があれだけ啖呵を切ったんだ、師である私が我が身可愛さに臆するわけにはいかん。お前はどうだ、団長」
「無論、団員にばかり負担をかけさせるつもりはないよ」