英雄に鍛えられるのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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親友

 それは何時だったか。

 まだ両親を尊敬していた頃だと思う。何せ、馬鹿にされる家族のために手柄を立てようなどと考え戦場に忍び込んだのだから。

 まあ、全く役に立たなかったが。というか、その場に訪れたたった一人の存在が、文字通り()()()()()()()()()。黒い鎧を着込んだ男だった。

 死者はいない。だが地面に線を2つ引き、それを超えるものは保証しないと上から目線で言ってきた。要するに、戦争をやめろと言ってきたのだ。

 ラキアから仕掛けた戦争。ラキア側はやめる気がないし、向こうだっていきなり襲われたのだ。ただでは引き下がれない。

 しかし圧倒的な力を持つ男を前に一歩踏み出せる者はおらず、ただ一人、彼だけは飛び出した。ほぅ、と感嘆したような男の声。

 

──勇気は認めよう。だがそれは蛮勇だ。喰らうまでも喰らわせるまでもないが、良い刺激にはなるだろう

 

 そうしていけ、と命じた男の影から現れたのは白い影。強かった。

 恩恵こそ刻んでいないものの、腕には自信があった。しかしまるで敵わなかった。

 ラキアも相手も、特攻した彼を見て、鎧の男が怒りだすのではと逃げ出し唯一残された彼は白い少年に負け地面に横たわる。

 

──どうだった?

 

 そう聞いてくる鎧の男に、少年は敗北者を真っ直ぐに見つめ、答える。

 

──強かったです

 

 かっと怒りが沸いた。自分は負けたのだ。無様に地面に転がされた。泥で身を汚し、挙げ句の果てに年下に同情されたのかと歯を噛み締めた。

 

──信念がありました。勇気がありました。師匠は蛮勇と言いましたけど、僕はやっぱり、蛮勇でも、愚行でも、踏み出せる人は、強いと思う

 

 赤い瞳が、真っ直ぐこちらを見抜く。炉の中の炎よりも尚赤い瞳。その目に嘲りは無く、ただ称賛があった。

 

──あの、本当に良かったんですか? この戦争止めちゃって。いや、それは確かに戦争なんて良くないと思いますけど

 

 戦っていた時からは想像もできぬどこか弱々しさを感じさせる少年に、構わんと鎧の男は告げる。

 もとよりラキアの主神の悪癖が働いただけ。理由のない戦争。信念なんて初めから無い戦争。なら死者が出る前に終わらせるに限る、との事だ。

 

──信念はありましたよ。この人には

 

──見込みがあるのはこんなガキ共だけとは世界は停滞どころか衰退してやがる

 

 と、鎧の男は呆れたように言うとその場から立ち去ろうと歩き出し少年も慌てて後に続く。

 

──あ、えっと。なんか、すいませんでした

 

 謝る少年に、問う。何故強いのかと。少年は何処か遠い目をして、青くなって震えだした。辛い修行のおかげだと。

 何故続けられるか、そう問うと、少年は再び真っ直ぐ赤い瞳を向けてくる。

 

──英雄になりたいから。あの人達のように。それが、あの人と交わした約束だから。それが、僕の原点だから

 

 だから、全力で駆け抜ける。あの人の笑顔を嘘にしない為に、そう言い切った少年はペコリと頭を下げると師を追って走り出す。

 きっと、鎧で身を包んでいた彼は自分の顔など覚えていないだろう。だが、あれは自分にとって始まり。

 剣を作ろう。元より自分は戦士ではなく、鍛冶師だった。クロッゾである前に、ヴェルフだった。

 鉄を打つのが好きな、強い剣を打ち、それを誰かに使ってもらいたいただの何処にでもいる鍛冶師で、強い剣を己の手で生み出す事こそが信念で原点の、鍛冶馬鹿。

 魔剣が打てる? 知った事か。ある程度の強さは生み出せようとそこで停滞して、持ち主まで停滞させているようじゃ話にならない。家から飛び出し、ヴェルフはオラリオにやってきた。

 魔剣は金稼ぎに丁度良い。本命は、ヴェルフ自身が打つ剣。それ自体は別に魔剣でもいい。相手が停滞しないのなら、その魔剣を持って、さらにその先を目指すのなら。

 

 

 

「…………と、寝ていたか」

 

 懐かしい夢を見ていた青年は目を覚ます。一仕事を終え、気が緩んでいたらしい。

 壁に寄りかかり眠っていた彼の前には、一本の大剣。

 依頼者は華奢な少年。普通なら片手剣か、良くて両手剣を選ぶべきなのに、敢えての大剣。それを望む理由が分かる彼としては、出来るだけ形も記憶のものを再現したつもりだ。脅かしてやろうという悪戯心もある。

 

「ヴェルフ!」

「お、タイミングが良いな」

 

 丁度思い出していた親友がやってくる。

 

「ほらよ、頼まれていた剣だ。要望通りの形にできてるか?」

「うん! ありがとうヴェルフ!」

 

 本来ならベルの細腕には合わない無骨な大剣だが、力が3桁になったベルは見事に持ち上げる。彼曰く木刀などで大剣を使う練習はしていたらしい。ただ、母が「筋肉の塊になるのは許さん」と言っていたらしく、大剣を振れるだけの筋肉をつけることは敵わなかったらしい。しかしステイタスを手にした今なら話は変わる。

 

「とはいえ慣らしてえだろ? いっちょ実践形式で振ってみるか?」

 

 手伝ってやると、と笑うヴェルフは壁に立てかけていた紅蓮の大剣を握る。ベルは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 そして、二人は修練上に移動する。

 

「俺はLv.5だ。加減はしてやる………」

「ヴェルフと戦うなんて6年ぶりくらいかな? 久し振りだなあ」

「─────っ」

「どうしたの?」

 

 ベルの言葉に目を見開くヴェルフ。覚えていたのか、あの時の事を。知らず知らず、笑みを浮かべるヴェルフ。

 

()()俺の方が強い、遠慮せず全力でこい」

「もちろん、全力で………」

 

 リン、リンと鈴の音が響き、ベルの体が白く輝いていく。それまで使うか、とヴェルフはならばと己の内に眠る力に意識を向ける。

 

「行くぜ──『ウルス』」

 

 火の粉が体から溢れ出す。炎は人のような形を取りヴェルフを守護するように纏わりつき、ヴェルフの剣は炎に包まれ、ベルの剣もまた雷を纏う。

 

「「勝負だ!」」

 

 

 

 その夜二人はホームの修練場を吹き飛ばした事と夜中に爆音を響かせたことでヘファイストスからこっぴどく叱られた。庇おうとしたヘスティアはヘファイストスに一睨みされ用事を思い出したと逃げていった。




ヴェルフ・クロッゾ

本編より早くオラリオ入り。全盛だった暗黒期に揉まれLv.5に。ベルに憧れながらも対等でありたいと思っている。
ウルスに関してはなんか何時の間にか使えるように成ったステイタスに刻まれてない便利な力と認識してる


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