七話
俺は竹刀を置いて体育館から出ると後ろからコツコツと言う革靴特有の足音が聞こえてきた。
振り返るとそこにはリボーンが満足そうな顔をして立っていた。
「・・・リボーン、何のつもりだよ?あんなことして」
「お前の身体能力を測っておきたかったんだがな、あんな奴じゃ相手にならなかったか」
「だからって蹴ることないだろ?」
「まぁまぁ〜堅いこと言うなよ〜」
リボーンが誤魔化す様にそう言うと、後ろの方からパタパタと駆けてくる足音が聞こえた。そちらを見れば笹川さんが走っているのが見えた。
笹川さんは俺の前まで来るとソワソワとし始めた。
「えっと・・・えっと・・・」
彼女の言葉は喉の奥でつっかえている様だった。それを見ていると、何だか歩み寄りたくなる感じがした。
「どうかしたの?笹川さん」
「・・・今日は、ごめんなさい・・・私のせいで沢田くんに迷惑かけちゃって・・・本当に、ごめんなさい」
彼女の言葉は辿々しかったけど、俺への謝辞はちゃんと伝わった。
「良いよ 別にこんなの大したことじゃないから」
「ねぇ沢田くん 私も、ツナ君って呼んでも良いかな?」
彼女は俯きがちにそう言った。
「別に 構わないよ」
俺がそう言うと、彼女の表情にはもう一度大輪の花を咲いた。
「・・・ところで、この子は?」
「こいつはリボーン 俺のおと、グハッ!?」
俺がリボーンのことを弟と紹介しようとしたら腹部に強い衝撃が走った。
「俺はリボーン ヒットマンだぞ。今はツナの家庭教師をしている」
俺が穏便に話を済ませようとしたのに・・・するともう一つ足音が聞こえてきた。
「へぇ〜こいつがツナの家庭教師かぁ よろしくな坊主」
武は屈むとリボーンに手を差し出した。
「ちゃおっす ツナがいつも世話になってるな山本・・・ところで、ファミリーに入らないか?」
リボーンは初めて会うはずの山本の名前を知っていた上に、武をファミリーに勧誘しやがった。
「何だ マフィアごっこか?」
ごっこ遊びだと思ってるし・・・
俺は武にリボーンの発言に対して弁明しようとするとアイツは爆弾を落としやがった。・・・もちろん、言葉のだ
「ツナ お前は凪と一緒に帰ってろ。ママンと凪の合作ケーキが待ってるぞ 俺はこの学校をもう少し探検する」
「・・・なぁツナ 凪って誰だ?」
武は違和感を覚えたのか首を傾げて俺に問う。
「ツナ お前兄弟とか姉妹いなかったよな?」
・・・こう言う時、家族ぐるみの付き合いがあると困る。
「・・・えっと・・・」
俺はどう説明したものかと思っていると。火薬が投下された。
あの時、ちゃんと気付いておけば・・・赤ん坊のリボーンが一人でここまで来れるわけないし、アイツだって言ってたじゃないか。「凪と一緒に」って・・・
遠くに見えるのは訪問者用のワッペンをつけた凪の姿だった。
「あっ」
凪と目があうと、凪は俺目掛けて走り寄ってきた。
昨日買ったばかりの服を着て、安心した様な表情をしていた。
「よかった、リボーンくんが学校に行きたいって言うから連れてきたのにいつの間にか逸れてて、学校回って探しても見つかんなくて・・・本当によかった」
凪は安堵のため息をつくと、笹川さんと武に気がついたのか俺の背中に隠れる。
「えっと・・・二人とも紹介する。俺の後ろにいるのが何と言うか・・・俺の義理の妹の沢田凪って言うんだ」
「「義理の妹!?」」
二人は揃って驚いた様に聞いた。
すると凪は体をビクッとさせて俺の背中にすっぽりと隠れてしまった。
「悪い 二人ともあんまし大きい声出すと凪びっくりしちゃうんだ」
俺がそう言うとハッと自分たちがした事を思い出した様だ。
「悪りぃ 俺、武って言うんだ ツナとは二年ちょっとの付き合いだな。まぁ仲良くしてくれよな?」
「ごめんねっ 私、京子 ツナ君のクラスメイトなの。よろしくね」
二人は持ち前の笑顔で凪に接してくれた。
すると凪も・・・
「こ、こちらこそ・・・よろしく・・・」
俺の背中からひょっこり顔を出して緊張や気恥ずかしそうやら混ざった表情で言った。
「じゃあ、今日はこれで・・・また明日」
俺たちは他愛もない会話をして別れの挨拶をした。気付けばリボーンは何処かへ行っていた。・・・アイツ、勧誘してんじゃないだろうな・・・
俺は一抹の不安を残して帰宅の途についた。帰り道は凪と今日起こったことを話しながら歩いた。
「じゃぁ、ツナくんは剣道やってたの?」
「う〜んちょっと違うかな?俺はただトレーニング一環として「あさり組」って言う道場の隅で重たい竹刀をひたすら振ってるだけだからな」
俺たちがそんな会話をしていると目の前にタバコを吸った同年代くらいの不良が現れた。
「・・・あんたが、ボンゴレ十代目だな?」
・・・コイツ・・・
「・・・あぁ、らしいな」
次の瞬間、そいつは咥えていたタバコの火に何かをつけて宙にばら撒いた。
「!?凪!伏せて!!」
「えっ?」
俺は凪に覆いかぶさる様にしゃがんで襲いかかる爆風から凪を守る。
「凪、大丈夫?」
俺は凪がパニックにならない様に落ち着いて話す。
「う、うん・・・ツナくん!?」
凪はパニックに陥った。理由は・・・目の前の道路にできたクレータの様な凹凸。
俺は凪を庇う様に立って不良野郎を睨みつける。
「いきなりだな、おい」
「ふん、そうでなくちゃな・・・俺が勝ったらボンゴレ十代目の座は俺のもんでいいんですよね?リボーンさん」
不良野郎が向いた方を向くとリボーンが高そうな椅子に座ってくつろいでいた。
「おいリボーン どう言うつもりだ?」
俺が聞いてもリボーンはただ広角を上げているだけだった。
流石にこれ以上この道で騒ぐわけにはいかない。
「場所を変えるぞ・・・凪は先に帰っててくれ」
俺は凪を巻き込まない様に場所を変えようとする。でも凪はそれをよしとしなかった。
「何言ってるの?ツナくんも一緒に逃げようよ」
「・・・凪聞いてくれ・・・前にも言ったけど、俺はボンゴレファミリーの十代目を継ぐんだ。こんなとこで逃げられないんだよ」
俺は昨日、凪にあった時に話したことをもう一度言う。
「大丈夫!絶対に勝つから」
「・・・分かった・・・なら、」
チュッ
「絶対に勝って、戻ってきてね」
「・・・あぁ、絶対に・・・」
凪は俺の頰にキスをするとそれだけ言って走って行った。凪が見えなくなったところを見計らって不良野郎に話しかける。
「悪いな 待ってもらって」
「なに、俺だって野暮ったいことはしないさ。で、どこでやるんだよ?」
「ついてこいよ」
俺はそう言って放課後の校舎裏に不良野郎と二人で来た。
「ここなら騒いでもあんまり問題にならないからな。さぁ、始ようぜ?」
俺は軽く準備運動をしながら不良野郎に言う。
「あぁ、お望み通り始めてやるよ!・・・果てろ!!」
不良野郎はまたタバコの火で何かを着けてそれを宙にばら撒いた。でも、それが通じるのは最初だけだ。
俺は壁を蹴って宙に躍り出て、ばら撒かれたそれの火を全て素手で消す。少し痛いけど、我慢すれば何とこいく。
そして、後に残ったのは爆発することのなかった爆弾だけだった。
「なに!?」
不良野郎は驚いていたが、大したことはない。それが2回目ならば、大抵のことには対処出来る。
「・・・これで終わり?」
俺は不良野郎を煽った。何だろ、反骨心って言うのかな?凪を怖がらせたアイツを許したくなかったからかそんな言葉が出てきた。
「くそ!!・・・二倍ボム、果てろ!!」
この時は、全部消せると思ってた。一回上手く行って調子に乗ってたんだ。いつもそうだったから。一度失敗すると行動が雑になって結果、堂々巡りになる。
変化しないと思ってしまった。相手の底を知らない内に・・・失敗した。
宙にばら撒かれた先程の二倍の量の爆弾。でもさっきと対処法は変わらない。そう思って俺はもう一度壁を蹴って爆弾に着いた火を消していく。
最後の一個の時だった。俺の体はどんどん降下して行って、消すことが出来なかった。
空中で回避行動も取れない。俺はこの爆撃を直に喰らうだろう。
それは、俺の死を意味していた。
そして、爆弾は起爆する
あぁ、俺死ぬのか。凪との約束守れなかったな。
もっと、もっともっと頑張って、それこそ「死ぬ気」になれば何でも出来たのかな?
俺の中には大量の後悔があった。
「じゃあ、いっぺん死ね」
その声はリボーンのものだった。
リボーンの帽子の上にいたカメレオンはその形を変えて、銃になる。
その銃口は俺に向いていた。
そして、銃弾は俺を貫いた。
「復・活《リ・ボーン》!!!!」
俺はその日、始めて死んで、始めて復活した。