しかしグリス……〈白黄 七海〉にも譲れないモノが存在した。
その為に友好的な出会いではなく……
錬金術を発動させた僕を襲って来たのは、間違いなく仮面ライダーだった。
「もう一度教えてください!貴女は一体誰なんですか?僕は探している人物がいるんです!その邪魔をしないでください!」
僕は慌てて回避をしようとしたが、動揺していたこともあり体が硬直してしまった。何とか彼女の目的を聞き出さないと……!だけど彼女は動きを止めて怒りを露にしてきた。
「〈邪魔?〉……君は私の行動を〈邪魔〉の一言で片付けるんだね!私の想いすら考慮せずに!」
「貴女の……想いですか?……それは一体?」
彼女の想い……それがこの襲撃の理由に結びつくはずだ!だから聞かないと!
「お願いします!僕だって何がなんだかわかりません!だから教えてください!貴女の事を!この世界の事を!」
すると彼女……グリスさんは凍えるような声で話し始めた。
「まずこの世界を覆う結界は、貴方の力と同質の力だよ少年君。」
「僕の力と……同じ?それって一体……?」
でも動揺する僕を置いて彼女は言葉を続けた。
「説明を続けるよ。私〈達〉をこの世界に連れて来たのは貴方だね?貴方からは〈ブラッド〉と同じ力を感じるから、〈アイツ〉の居場所を教えて貰うよ!」
グリスさん〈達〉?……〈ブラッド〉?……〈アイツ〉?〈ブラッド〉が仮に〈アイツ〉と同じだとして、グリスさんは一人じゃあない……?他に仲間がいるのか?とにかく情報を得ないと!
「どういうことですか!〈アイツ〉とか〈ブラッド〉とか訳わかりませんよ!それに先程も言いましたが、僕達は初対面です!争う理由がありません!」
しかし僕の言葉は、彼女の怒りを助長するだけだった。オマケに天使は二つ奪われた為に詳細な情報が得られない。状況の打開には戦うしかないのか!?
「もういいよ。君は何も語らない。だったら君を倒して彼女を探させて貰うよ。だから早く倒れなよ少年!」
グリスさんはそう言うと二つの武器を装備してきた。
「〈彼女〉?貴女の他にも仲間の方がいるんですよね!?僕だって探している人がいるんです!だからお互い手を退きましょう!」
駄目だ!何故かわからないけど、この人とは戦ったら駄目な気がする。だけど僕はキャロルを探さないといけない!だからここで倒れる訳にはいかない!
「来てくれ〈サンダルフォン〉!そして〈ラファエル〉!」
僕は〈ミカエル〉が使えない。だから〈ラファエル〉で代用するしかないし、彼女を無力化しないといけない。だから剣の腹で攻撃して彼女を気絶させる。その後にこの場所をマーキングするしかない!必ず彼女を後から救出しないといけないけど、今は戦って状況を打破しないと!
「この状況でまだ考え事を!私をどれだけ侮辱すれば気が済むんだい!少年!!」
グリスさんは武器にゼリー(のような物)を入れると、ビームを放ってきた!
「とうとう攻撃が始まったか……だけどこの剣なら!」
僕はビームをサンダルフォンの腹で逸らし、自身への直撃を避けた。………だけどおかしいな。攻撃の軌道は僕の足元を狙っていた気がする。そして弾いたビームの着地点を見ると、かなり深い穴が空いていた。
「今の攻撃を剣の腹でいなしたか………流石精霊だね。その力はここの結界と同じ力だ!やはり一筋縄じゃあいかないかっ!」
更にグリスさんは、ゼリーを追加して、二つのビームを放ってきた!だけど今度は僕の胴体を目掛けて来たので、さっきの攻撃が威嚇だと思ったのは僕の気のせいなのか!?
「くそッ!さっきの一撃から威力が高いのはわかっているけど、ビーム二つは逸らし続けられない!どこかで活路を開かないと!」
凡そ三発ほど僕は彼女のビームを逸らし続けた。腕はかなりの負担だし、力が思うように入らない。天使二つを奪われた影響だろう。
「埒があかないね。ならこれならどうだい!」
彼女は使用する武器パイルバンカーにして接近戦を仕掛けてきた。さっきのビームであの重さである以上、その攻撃を受け流すことはもちろん困難で、直撃すれば僕は良くて気絶だろうね。最悪カマエルがあるとはいえ重症を負えば痛みから意識を失ってしまうだろう。だから僕は攻撃をせずにこの状況を打開するためにひたすら逃げ回り続けた。
「不味い!……早く!……何とか……しない……と!」
キャロルとの合流を何よりも優先したいし、ここが何処なのかは結局わからなかった。だから僕は久しぶりに錬金術を用いて情報を集めたかったけど、この状況に陥ってしまった。
「すみませんが貴女との戦闘をしている時間は、僕にだってありません!だから此処は退かせて貰います!」
僕は起動させたラファエルの力で退却を始めた。だけど此処の地形を把握できてない訳だから闇雲に逃げ回るしかなさそうかな………。だけど逃げる僕は簡単に補足されてしまった。
「悪いけど私は君の事を逃がすつもりはないよ!君には悪いけど知っている事は教えて貰うから!」
「だから先程も言いましたが知らないですよ!そもそもなんで此処に仮面ライダーがいいるんですか!」
僕は彼女に問いかけたが答えは返って来なかった。
「それは此方のセリフだよ!君がこの空間を作らなかったら誰が作ると言うんだい!」
「僕だってそれを知る為にあの術式を……」
「話が進まないな!それに君は私を嘲笑うかのように戦闘に入らない……。私の事はいつでも倒せるって余裕のつもりか!」
逃げ回り続けた僕が彼女へ感じた恐怖から後ずさった時に、背後の木に背が当たってしまった。……追い詰められたか。
「ようやく追い詰めたよ少年。今楽にしてあげるから…………」
その言葉を語る彼女の顔から涙が落ちた気がした。
そして飛び上がった彼女の背中からゼリーが噴出して、僕目掛けて蹴りである……
〈スクラップフィニッシュ〉!
を叩き込もうとしたその時………僕は待ち望んでいた声が聞こえた!
「お前がオレと勇を引き剥がした存在か!」
一枚のコインが巨大化して僕達の間に割って落ちて来た。そしてグリスさんの蹴りと衝突た。その間に僕は声の主引き寄せられてお姫様抱っこをされた。おかしいなぁ……普通逆なんだけど……。
「壁!?いや……コインだね!粋な真似をする人物もいたものね!」
「キャロル……?なの……かい?」
僕は恐る恐る助けてくれた人物に尋ねた。
「ああ!〈雪音 勇〉の生涯の伴侶にして嘗ては嫉妬の魔女を名乗った錬金術師……それがこのオレ!
〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だ!
そして勇……お前と同じ精霊に覚醒した……そのキャロルだ。」
僕の最高のお嫁さんにして、初恋で最強の女性であるキャロルが、今僕と再会することができた。
「え………キャロル……なんで………?」
そしてグリスさんは、キャロルを見て驚きを隠せなかった。だけどキャロルは、グリスさんを激しく睨み付け、低い声で言葉続けた。
「お前がオレの伴侶である勇の命を脅かした。ならばお前はオレの敵だ。故に殺す!」
キャロルはダヴルダヴラのファウストローブを纏うと、グリスさんの周囲を囲み始めた。だけどグリスさんは動揺から反応が遅れてしまった。
「どうして……?なんでこんな事をするの!キャロル!」
グリスさんはキャロルを知っている……?だけどキャロルは彼女を知らないみたい。何かがおかしい。
「どうした!逃げる勇を執拗に追いかけ、追い詰めてから当てようとした技は使わないのか!」
キャロルはグリスさんの戦闘意思が揺らいでいることを見抜いたみたいだけど、既にグリスさんの周囲は糸の結界が出来上がっていた。そして錬金術で作り出した氷柱でグリスさんを貫く為に投擲してきた!
「待ってキャロル!今のグリスさんは戦闘ができる状態じゃない!そんな事はやめてくれ!」
僕の叫びもむなしく放たれた氷柱は、別の人物からの攻撃で防がれる事になった。
〈ジャッキングブレイク!〉
その言葉が聞こえたと同時に現れた人物が、グリスさんに向かっていた氷柱を蹴り砕いたことで、彼女の周囲を覆う糸の結界はその衝撃で崩壊した!
「ああ……キャロル……やっと……会えた……!」
「うん。ナナ姉の恋人のキャロル・マールス・ディーンハイムだよ。間に合って良かった。まずは今すぐアイツを倒すから待っててね?」
そういうと異世界のキャロルは、僕の知るキャロルに向かって歩き出した。
「お前は何者だ?あまりにもオレと姿が似ているな。名を名乗れ!」
「ナナ姉を傷つけようとしたお前に語る気はないけど仕方ないね。もう一度言うよ?私の名前は
〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉。
そこにいる愛しい女性……〈ナナ姉〉の恋人だよ。そういうお前は誰なの?私の偽物ちゃん。」
向こうのキャロルはやっぱりキャロルみたいだ。そして此方のキャロルも対抗するように名を名乗り始めた。
「ならばオレも名乗ろう。オレの名前は、
〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だ。
そこにいる少年……〈雪音 勇〉の生涯の伴侶だ。消え失せるが良い偽物め。」
今ここに危機に晒された想い人を守る為に、二人のキャロルが戦闘を始めようとしていた。
そしてしばらく二人のキャロルが激闘を繰り広げている間に、僕は何とか戦闘を止める手段を考えていた。………というかアレしかないかも……。
「キャロル!一旦落ち着いてくれ!そうしたら帰った時に一晩中〈愛して〉あげるから!」
我ながら最低な事を言っている気がしたが構わずに続けた。
「向こうのキャロルにも想い人がいるんだ!だからここは一回話し合いをするべきだ!」
「~~ッ!勇が言うなら仕方ないか。」
キャロルは僕の言葉を聞き、攻撃の手を止めてくれた。ここから僕達は今の状況を整理しなくてはいけない。何とかしないと……。
「まずは〈今何が起きているか〉を知る事だね。」
僕達が何を話すべきかを考えないといけないね。
本来七海さんの初弾は威嚇射撃でした。しかし勇君が交戦の意思を示してしまい、戦闘へと発展しました。
しかし勇君は戦闘が始まるも七海さんへの攻撃をほぼ行わず、回避に専念していました。
しかし七海さんにはキャロルさんとシャナさんを探す目的、そして謎の襲撃者との戦闘もあります。不幸にも勇君は自分の霊力を用いた錬金術を使用した事がかえって仇になりました。
そしてお互いのパートナーと再会したそれぞれのキャロル(達)と主人公が何を語るのか……
次回の更新をお待ちください。
そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。
一話の長さはどちらの方が好きですか?
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一話を濃密にして話数を少なく
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このまま切りの良い範囲で
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どちらでも良し