「じゃあ行きますよ師匠……姉さん。」
僕達の相手は人類最強を語る魔術師の操縦する空中艦だ。ここでスクラップにしないとかなり後に響くかもしれない。
『一度警告しましょう〈ゼウス〉〈イフリート〉〈ゾディアック〉大人しく我々のもとへと下りなさい。そうすれば〈命は〉保障しましょう。』
「直ぐにスクラップにしましょう。まずは一撃……あいたぁ!何をするんですか!」
僕がとりあえず一撃放とうとしたらゲンコツされた。とても痛い。
「バカな発想をした弟子にお仕置きをしただけの事よ。完全に挑発に乗ってるじゃない……。」
「あたし様達を道具扱いされた事に怒る姿は……カッコよかったけどよ……バカな事をするのは響一人だけで充分だ!」
僕は姉さんの言葉に照れてしまった。だって小さな呟きが聞こえてしまったからね。
「そこの姉弟はボヤボヤしない!連中の砲撃が来るわよ!」
「はい師匠!気を取り直して一撃を加えます!来てくれ〈ラファエル!〉」
「おっとそれじゃあたしもだな!焦がせ〈カマエル!〉」
「来なさい〈ミカエル〉!ついでにファウストローブも併用して見せようかしら?」
僕はこういう戦場では攻防一体の運用ができるラファエルを顕現させた。そして姉さんはカマエルを、師匠はミカエルを顕現させた。ん?ファウストローブの併用?
「え~と師匠今〈併用〉って言いました?」
「当たり前……というよりはそもそも天使と聖遺物は親和性が高いじゃない。なんで今まで誰も……キャロル以外は併用してないか不思議だったわよ!」
この説明で姉さんが汗をかきだした。心当たりがあるみたいだ。
「いや……その……な。多少ピンチを演出すれば……勇に助けて貰えるしまだ扱うのに不安があったんだよ!」
姉さんがキレ出してイチイバルも纏い出した。どうやらやればできる事みたいだ。
「てことは皆本当は……」
「もうやればできる筈よ。但し貴方に助けて欲しくてわざとやらないだけで……ね。」
「言うなあぁ!」
姉さんが悲鳴をあげるが、エレンは躊躇いなく砲撃をブッパしてきた。しかしその砲撃も別の人物の介入で簡単に防がれた。
「先生ごめんなさい!遅くなりました!」
強かで優秀、小悪魔な笑顔を見せる妖艶な女性であるセレナさんが救援として駆けつけた。
『〈ほう……〈ハーミット〉も現れましたか。ちょうど良いので纏めて回収して行きましょう。』
「チャージは既に終わっています!行くぞサンダルフォン!〈
僕は全力でゲーティアへ斬撃を放った。本来であれば不意打ちに近いタイミングで飛ばした筈の斬撃は、予想外の声の主にかき消されていた。
《うわぁ……やるわねゼウス……あたしがエレン達のサポートをしていなかったら、ゲーティアは今の一撃で手痛いダメージを受けていたわ。まっ、そんな事あたしがさせないけどね。》
僕が聞いた声は、〈ニコルベル〉の様でそうじゃない。だけどそれでも〈彼女〉の正体には検討がついた。
「なるほど……鞠奈さんと
本当に
「あたし様や愛しい弟を狙うだなんて度しがてえ!だから喰らっていけやぁ!カマエルの
〈MEGA DEATH PARTY!〉
「続きます!ザドキエル!
「ならば私も続くわ!ミカエルの
僕の予想通り姉さん達は天使やギア等で遠距離攻撃に撃って出た。しかしこれだけは言わせて欲しい人が二人いる。
「なんで師匠とセレナさんはその技を知っているんですか!」
「「簡単(です)よ!勇(さん)の記憶を見たからよ(です)!」」
記 憶 見 ら れ て た ?
えっマジですか?これは悪い夢ですか?
「そうよ本当よ。参考になる技が多かったからね。それに副産物で勇の前世の趣味・嗜好が良くわかったわ。嬉しいじゃない……私達を一人の女性として見てくれるなんてね♡」
「私は少しだけ物足りないですね。もっと勇さんの事を知りたいですよ♡でも今は邪魔な
《嘘ぉ!今の反撃だけで
鞠奈さんは酷く動揺していた。しかし今度は姉さんが声をあげてきた。
「なら教えてやるよ
姉さん恐い。というか……そんな事を言っても平気な「あたし様は許されてるだろう?」……最近は心の中にもプライバシーが存在しない気がしてきた。
「そうですね。クリスさんの言う通り私達はかつての自分の信念や目的よりも重要だと思えるモノがあるあります。それこそが私達の行動の原動力であり生きる目的です!」
『何を言ってるのよぉ!まさかアンタ達は本当にそれだけで何でもしてしまうつもりだとでも言うの!?』
「なら教えてあげるわ〈或守 鞠奈〉。その感情を人は愛と呼ぶのよ。そしてここ世界では愛こそが全てよ。貴女自身がスクラップになるまで覚えておきなさい。」
『認めない……認めないわ!何が〈愛〉よ!あたしはねぇ!あの世界では救われなかったの!確かに鞠亜は救われたわ!そして世界線によっては私や凛緒さえも救われたわよ!だけど今の〈あたし〉は救われてないの!だったらブッ壊してやる!そしてエレン達と世界を恐怖に陥れるのよぉ!』
鞠奈さんの叫びは悲痛な物だった。恐らくあの人は数ある平行世界の中で
「……鞠奈さん。ここで貴女をその呪縛から解放します。」
そして僕は〈ケルビエル〉の礼装を纏う。この一撃で全てを終わらせるために。
「終わりにしましょう鞠奈さん
……。」
僕は小さな声で呟いた後に全力で雷撃を発動させた。そして一筋の涙を流した。
「喰らえゲーティア!〈ラハットヘレブ〉だぁ!」
『総員回避しなさい!』
エレンさんの慌てる声が僕達にも聞こえた。恐らく鞠奈さんが最後の抵抗を始めたのだろう。そしてゲーティアに僕の一撃が直撃して墜落を始めた。
『ありがとうね勇……あたしを解放してくれてありがとう。これでやっと向こうに帰れる……。凛緒の託してくれた世界へ……』
鞠奈さんの声が聞こえた気がした。それは彼女自身が救われたという事だろう。
「あの世界で士道さん達の手助けをお願いしますね鞠奈さん……」
僕は墜落するゲーティアを見つめながらそう呟いた。
「勇……感傷に浸る暇はないわよ。私達はあくまでも足止めをされただけ。本隊を叩かないといけないわよ。」
「そこは大丈夫です師匠。既に
〈敵の狙いは僕達後継者達です。戦線は
……とお願いします。僕は少しここでやるべき事をします。」
「わかったわ。クリス!セレナ!撤退よ!後は
「はい!勇さんの帰還をお待ちしています!そして今夜も捕まえます!」
「わかったよ。じゃああたし達は先に戻るわ。整理ができたら勇も本部へ戻って来いよ。」
師匠達は僕のお願いを聞いて先に本部へと帰っていった。
「ごめんなさい鞠奈さん。貴女を巻き込んでしまって……。ですが必ずこの悲劇を終わらせる事を約束します。」
僕は一人残った戦場で涙を流した。そして鞠奈さんが〈あの世界〉へと帰れるように祈りを捧げた。
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