「〈ゲーティア〉戦闘続行不可能!緊急脱出します!」
「総員結社本部へと転移します!各自ジェムを起動しなさい!」
ゲーティアの乗組員はテレポートジェムを使い、墜落する艦の内部より脱出した。そしてその知らせは同時に彼女達にも届く事となる。
「嘘!エレンとゲーティアが
「あり得ナいわ!エレン達が負けルなんて!」
『此方とて想定外です。しかし事実として戦闘の続行も不可能です。今回は我々の完全敗北です。よって二人とも戦線からの離脱を推奨します!』
ゲーティアからの通信により主力部隊の撤退が正式に決まった。しかし彼女達ただではを逃さない者が存在していた。
〈ねえダ・カーポ……あれが最後の空中艦みたいだよ?さっさと墜落させないと勇君が落ち着けないからさぁ……殺っちゃお?〉
「ふむ。確かに目に見える脅威は排除するに限る。しかし奴等のばら蒔いた塵芥もそれなりの数が存在するな。」
この戦場に本当の悪魔(の様な実力のチートライダー)が降臨した。
「ゲーティア乗組員全員が本部への転移を確認!我々も早くこの戦場からの離脱を!」
「ッ!……残ったバンダースナッチト大型を全テ投下しなさい!そいツらで稼いだ時間で私達モ撤退すルわよ!」
「
空中艦は残ったバンダースナッチと大型アルカ・ノイズを全て投下した。そして離脱準備に入ったが、それを許す
鞠奈さんへの祈りを捧げる僕に一つの連絡が入った。相手はキャロルからみたいだった。
『勇……感傷中のところをすまないが、あの艦の残骸を調べて貰えないか?どうにも研究部門が奴等の装備に興味津々みたいでな。』
キャロルからの連絡はありがたい物でもあった。僕自身も〈鞠奈さん〉の形見になりそうな物を探すつもりだったからだ。
「わかったよキャロル。確か戦闘の時点でもいくつかの〈顕現装置〉は機能停止をした物があるみたいだから、まだ起動する分があればあるいは……ね。」
『ああ。前任者の決戦装備の一つである〈ブリュンヒルデ〉の再現にも繋げられる。そうすれば……』
「響達のギアの改修も行えるね。もちろん〈アマルガム〉も搭載したいけど、あるに越した事はないからね。」
『それに此方も遺憾だが新たな人手を確保した。よって〈ブリュンヒルデ〉の再現体の量産はソイツに全てやらせるさ。』
「……いつの間にホムンクルスを増やしたかは聞かないでおくけど、腕がたちそうなのはわかったよ。じゃあ見つかり次第ラボに送るね?」
『そうして欲しい。頼んだぞ……』
キャロルからの通信はそこで終了した。
「ゲーティアの装備は相当な技術の結集体だった筈なのに、エレンさんは自爆する素振りを見せなかった。それは機能が封じられていたのか、それとも単純に想定外だったのか……」
僕は一人呟きながら〈顕現装置〉の回収を始めた。そして同時に鞠奈さんの形見になりそうな物も探し始めた。
「さて、奴等は本格的に侵攻を開始したのかそれとも尻尾を巻いたのか……」
〈う~ん……後者かな?だってあまりにも散開させ過ぎだからねぇ。確実に時間稼ぎかな?〉
「そうか。時にアレを落としても構わんのだろう?」
〈殺っちゃおうよ!〉
私達は撤退を視野に入れた(というよりは逃げるつもり満々の)空中艦を落とす事にした。
「しかし塵芥が目障りだな。」
〈だよねぇ……。ならさアレを使おうよ!〉
「ふむ……アレか。確かにこの場面には適しているな。」
私はこの体に宿る霊力を使い数人の人物を呼び寄せた。
「へぇ……今回は此方側って訳ね?良いじゃない!存分に暴れるわよ!」
「きひひひひ!良いですわねぇダ・カーポさん!私達も存分に協力しますわぁ!」
「私達は彼の為にその力を振るう。彼が安心して祈りを捧げる為に……。」
〈あ~あ~張り切っちゃって………そんなに嬉しいの?〉
「お前が言うか。その胸の昂りを私と共有しているのだから当然だろう?無論私自身も昂っているがなぁ!」
私達は召喚したスマッシュ(というよりは再現体)に協力をして貰うつもりでいたが、今回はより本人に近い様子だった。
「では私達もお手伝いしますわ。後方一帯は引き受けます。貴女方は前方一帯をお願い致しますわ。」
「えぇ。ガリィ達に任せて貰えるかしら?もちろん其方と肩を並べるのも悪くはないけどね?」
「だけどそれじゃあ足並みが揃わないかもしれないゾ。だからガリィの案は却下だゾ!」
「地味にミカが的を得た発言をしているな。だがそれもまた一興だな。」
キャロル達の〈自動人形〉達だな。しかし今の状況では頼もしい限りだ。
「すまないが最初の案の通り後方一帯を頼めるか?私達もお前達を巻き込む事は不本意だ。勇達に申し訳ないのでな。」
「かしこまりました……ではそのように。そして私達と貴女方の立場は対等ないしは貴女方が上です。気遣いは不要ですので遠慮なくお申し付けください。」
そうか……私達と彼女達の立場はその様な距離感なのか……。
〈これは敬われているって認識で良いの?それともこれ以上は近づくなという警告のつもりなの?〉
凛祢の底冷えする声が聞こえた。あの時から凛祢は勇に対して相当な愛を抱いている。それこそキャロルに引かない程のな。
「もちろん前者です。貴女方は旦那様とマスターの二人がかりで挑んで尚退ける実力をお持ちの方々です。なので我々の中でも装者以上の立場と認識しておりますわ。」
「継承者よりも……か。凛祢も良い事を聞いたな。」
〈うん!張り切っちゃうよダ・カーポ!〉
「無論だ!行くぞぉ!」
散開して各々が塵芥の殲滅を始めたが、私達は艦を仕留める事にした。
「さて……始めるとするか。」
私達は逃げる艦を追うが、奴等は小賢しくも砲撃やビーム等で抵抗を止めなかった。しかしこの体を貫く程の威力でもなければ、そもそも避けられない速さではない。
故に接近するだけならば苦になることなぞ一つもなかった。
「戦場において逃げる標的なぞ恐れるに足らん!この一撃で終わらせて見せよう!」
〈全力で行くよぉ!〉
私達は〈ゼネベイトスネーカー〉を発動させて空中艦を追跡して追い付く事に成功した。
『っ!?なんて速度なの!?私達は全力で随意領域を展開してこの戦場からの離脱を試みていた筈なのに!』
〈私達にとってはね……貴女達が勇君に敵対した時点で殲滅対象なの。だからさぁ……早く墜ちてくれないかなぁ?〉
凛祢の底冷えするような声はこの私すらも怯える程の迫力があった……なんと恐ろしい事だ。
「では全てを終わらせるとしよう!」
『ッ!不味い!総員この艦を捨てて本部へ転移するわよ!無駄死には許さないわ!』
その言葉の後に艦より様々なタイミングで光が明滅していたが、程なくして人の気配が全て消えた。どうやら連中は艦を捨ててでも逃走する事を選んだみたいだな。
〈アハッ!!やったよダ・カーポ!アイツ等艦を置いて逃げちゃった!嬉しいなぁ!勇君の為に素敵なプレゼントをくれたんだもの!〉
この世界に到着して以来ずっと凛祢は恍惚とした状態が続いている。愛しい勇のいる世界に自分がありのままでいられる事が嬉しくて仕方がないのだろうな。
「ふむ。乗組員は全員逃げたようだな。では艦を損傷させずに持ち帰るとしよう。そして私達も〈顕現装置〉を再現しようではないか。」
私達は主のいなくなった艦を回収して勇達のもとへと向かったが、その場所には既に勇はいなかった。そして通信により先に本部へと帰投した事と、他の戦場もつつがなく敵対勢力の殲滅を終了させた報告が届いていた。
〈今夜は私が勇君を慰めてあげなきゃね……悪いけどその時はダ・カーポも眠っていてよ?私は今虫の居所が悪いからさぁ?〉
(最近の凛祢は随分と積極的だな。だがそれすらも受け入れる事が勇の魅力であり短所だな。)
(あ~あ~……そろそろ私も強硬手段に出ないとダメかなぁ……ダ・カーポも勇君の魅力を知っているんだし……。)
私達は体を共有しているが、今回のように想いを口に出さない場合はお互いの行動に目を瞑る事も珍しくはなかった。
「しかし存外あの世界の魔術師の実力とは、たかが知れている程度のモノだったとはな。」
〈口程の実力もない癖にねぇ。早く本部も潰さないとねぇ?〉
「抑えろ凛祢……ここは勇の世界だ。全ては勇の選択と心のままに。」
〈そうだね。勇君の望みを叶える事が今の私の使命で生き甲斐……そしてこの胸の昂りを鎮める唯一のお薬なんだもん!〉
私達は全てを受け入れる。例えこの世界に何が起きようとも勇の為になるのならば……な。
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