僕達はエレン達の攻撃を退けた。そしてほどなくしてステファンが来日する事が知らされた。
「姉さん……報告は聞いたよね?」
「ああ……ステファンとソーニャが来るってな。だけどあたしは……」
姉さんは〈あの事〉をまだ気にしている。そして僕もその事を背負うと決めてもいる。だから何が最善だったのかは常に考えるし、再会する時にはなんて声をかけるべきなのかも悩み続けている。
「本当に難しい事だよね……命を背負うって事はさ……。」
そんな僕達に声をかける人物も当然いるけど、今日の人物は予想外だった。
「お二人共お悩みですね。私達も一緒に考えますわよ?」
「あたし達も旦那サマの悩みを知っています。何なりとご相談ください。」
「ファラと……ガリィか。なんだか珍しい組み合わせだな。お前がこうして人に寄り添うなんてどういう風の吹きまわしだ?」
「あら?心外ねクリス。私達は旦那サマが心配なのよ?だけどアンタの事も嫌いじゃない……というよりは好きな分類ですらあるわ。」
意外だな。ガリィは姉さんみたいなタイプとは合わないと思っていた。だけどそういう感じじゃあないんだ。
「じゃあガリィ達は今回の件をどう見てる?」
「そうですねぇ……不幸な事故と思っています。本来は〈アルカ・ノイズ〉なんて遭遇する理由がありませんでした。しかしあたし達が巻き込んでしまった。」
「しかし彼はそんな出来事に直面しても立ち向かいましたわ。ならば彼の功績は素直に讃えましょう。また、同時にどれほど心配をされる事をしたかも伝える義務があると思いますが?」
なるほど……二人らしい意見だな。確かにステファンは怪我を負った。しかしそれは自分の行いの結果でもあり、彼が守ったモノの証でもある。それを伝える事が僕達の役割と言われると納得してしまった。
「なら僕達は謝ると同時に「アイツに説教をしなきゃいけない訳か。」姉さん!僕の話に割り込まないでよ!」
「あぁ?良いだろ別に。勇とあたし様の仲だ。なんならおっ始めようぜ?」
姉さんは本当に積極的にスキンシップを求めて来る。それを嫌いじゃない僕も大概なんだけどね。
「だけど良い顔になったわよクリス。勿論旦那サマといちゃついてもあたし達は何も口出ししないわ。だってマスターの姉なんだからね。」
「ええ。旦那様の照れる顔をマスターにお届けすればそれはそれでマスターもお喜びになりますわ。勿論マスターも同席される事があるでしょう。しかし今は手が離せないと聞いています。なので私達が精一杯フォローを致しますわ。」
「ありがとう二人共。じゃあ姉さん!空港に行って二人を迎えに行こう!」
「勿論だ!じゃあお前達に留守は任せたからな!行くぞ勇!」
僕達は気持ちを新たに空港へと向かった。
ステファン達が到着する空港にアルカ・ノイズが出現した。狙いがまだ読めないけどどうやら仕返し辺りか?
『精霊達に告げやがります!我々へと降伏してください!そうすればこれ以上の破壊行為はしないと保障しやがりますよ?』
チィ!この人混みの中での襲撃か!どれほどの命を危険に晒す気なんだ!
「やるしかないか!〈ガングニール!〉〈イガリマ!〉スタンバイ!」
僕は天使ではなくギアを展開させた。それも単騎仕様の物を選ぶ事にした。
『ほう……天使ではなくシンフォギアですか。しかし私達を見くびるつもりならおすすめしませんよ!』
「クソッ!ここじゃあたしの武器が使い難い!なんて場所を選びやがって!」
本当に場所が悪い。今の僕達の状況は嘗てのリディアンと同じだ。違いはここで立つメンバーと背負う命の数だけ。魔術師はそれをわかった上でここを戦場にして来たんだろう。
「本部!こちら勇です!現在空港にて敵魔術師と遭遇しました!誘導の遅延と相性の悪さから応援を求めます!」
《こちら司令室だ。状況は確認した。直ちに翼と調君そしてマリア君を援護に向かわせる。》
おかしい……司令にしては戦力の投入が弱気だ。……まさか奴らは!
「まさか他の地点でも襲撃が!?」
《ああ。響君と未来君は現在キャロル君の所におり、凛祢君と切歌君が別地点で交戦中。そしてサンジェルマン君達は現在其方のフォローに入っている。》
「ファラさん達の所在は!?」
《其方はキャロル君の所要に付き合っている報告が既に届いている。了子君は既に本部でサポートと最終防壁として待機している。》
キャロルの馬鹿ぁ!こんな時に何戦力を遊ばせてやがるんだよぉ!何をしてるの!
《すまないが連絡が取れない事には……》
「司令のせいじゃありません!キャロルには後できちんと言い聞かせます!」
《すまないな……。》
僕達は僅かな戦力で敵との交戦になるが、僕は〈あること〉に気づいてしまった。
「まさかその声は真那さんなんですか!なんで貴女が!」
すると魔術師は僕達の前に降り立った。そして首をかしげて質問をしてきた。
「………?ふむ。私の名前をなぜ知ってるかは聞かねーですが、とりあえずは任務を遂行します。さっさと降伏する事をおすすめしやがりますよ!」
真那さんは〈ヴァナルガンド〉を装備している。実力が仮にアルテミシアを下回るとして、今は場所が悪い為に頭を悩ませていると思いもよらない言葉を続けて来た。
「私にとってはこの世界がどーとか関係ねーです。しかしゼウス。テメーは精霊で私達の敵です。戦いの理由はそれで充分じゃーありませんか?」
「チィ!勇の記憶通りなら相手は〈あの人〉の実妹かよ!なんて趣味の悪ぃ事をしやがる!」
「兄様の事を知ってやがるのは好都合です。捕えた後でゆっくり聞かせて貰いますよ〈イフリート!〉」
真那さんはレイザーブレイドで斬りかかって来て、同時にアルカ・ノイズをばら蒔いて来た。僕はとっさに真那さんの剣を鎌で受け止めて、姉さんがノイズの殲滅に動いた。
「勇さんを援護します!」
「散りなさい魔術師!」
「なんて卑劣な事をっ!もう許さないわ!」
調ちゃん・マリアさん・翼さんが合流したが、真那さんは余裕を崩さない。
「〈プリンセス〉〈ナイトメア〉〈ベルセルク〉の片割れですか。テメー等に用はねーです。なのでこいつらをくれてやります!」
真那さんは更にノイズを散開させて僕達の分断を図った。そして姉さんの向かった方に真那さんは飛びだって行った。
「クソッ!逃がすか!」
僕は姉さんを助ける為に何も考えずに動いてしまった。
「勇!ここは私達に任せなさい!」
マリアさんの言葉が僕の耳に届く前に僕は移動を始めていた。
「なんであそこに三人が!」
僕が姉さんを見つけた時には、ソーニャとステファンの前に立つ傷だらけの姉さんがいた。そしてカマエルの炎で傷を修復させると胸を押さえていた。
「いやーなかなか粘りますねぇ〈イフリート〉。しかしテメー達も運がねーですね?私達の戦闘を見てしまったのですから。」
真那さんは〈随意領域〉で二人を捕えようとした。そしてステファンがソーニャを突飛ばした。
「あがぁ!」
「ステファン!なんで!」
ステファンは悲鳴をあげ、ソーニャは怯え始める。あの時の悪夢がフラッシュバッグしたのだろう。しかしステファン自身の言葉は違った。
「なんでアンタがこんな事をするのか俺にはわからない!だけどせっかくクリスや勇にきちんと再会できそうだったんだ!それを台無しにするんじゃねぇ!」
「はぁ…。なんてしょーもねぇですね。テメー等がしゃしゃり出なければ済んだ話です。なのに一々うるせーですよ?少し黙ると良いです。」
真那さんは面倒だと言わんばかりにステファンに刃を向けた。僕はそれを見て急いで真那さんを蹴り飛ばした。
「あがぁ!」
吹き飛ぶ真那さんと解放されるステファン。そしてソーニャと姉さんは互いに顔を合わせ一度頷いた。
「クリス!勇!私達は貴女達姉弟に感謝をしている!貴女達がいたから皆あの時に助かった!だからお願い!必ず生きて戻って来て!」
僕達はソーニャのその言葉に返事をした。
「わかった!必ず倒すからここで待っていてくれ!」
「後であの時のお礼をさせて欲しい!だから待っていてくれ!」
僕達は真那さんが戻る前にケリをつける事にした。
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