「これで勇さんは証拠を固める事ができるでしょう。ですが私達に残る時間も多くはないわね。」
「勇さんからの指示とはいえ虐殺ってのは胸糞悪いぜ。でもあれを最後にする為に共有コードを訃堂に教える次の機会が……。」
「奴との最後の接触であります!その為に今もサンジェルマン様達と勇さん達で準備を進めているであります!」
そう。私達は確実に訃堂に強要されたと立証できる材料を探している。その為に今はどれ程手を汚す事になっても背負うと決めたのよ。
「やるわよ二人共……。まずはシンフォギア装者に接触ね。」
私達は恋敵達と女としての戦いを挑む事にした。奇しくもこの行動は全ての陣営にとって最高の目眩ましになる。だから私達は全力で時間を稼ぐとするわ。
最近は妙に体が重い。まるで何かを示してるかのように感じる〈それ〉は僕の運命なのかもしれない。だからもしもう一度あの人に会えた時は伝言をしよう。僕の愛するキャロルを悲しませない事は不可能でも……。
『装者達は至急司令室へと集まってくれ!』
「司令が呼んでいる。早く……行かないと……。」
僕は司令室へと向かおうとしたが、また体を襲う〈何か〉に蝕まれて意識を手放した。
ここは……どこだ?
〈ごめんな勇君。また無理やり呼び出した事は謝るよ。だけどお前には伝えないといけない事があるんだ。〉
僕を呼び出したのは士道さんだった。だけど彼とはつい最近会話をしたばかりの筈だ。一体何を話すつもりなんだろうか?
「再び会えた事は感謝しますよ士道さん。僕も貴方に会わなければならない理由がありました。恐らくは士道さんも同じ理由ではありませんか?」
〈ああ。多分同じ理由だろうな。なら俺から切り出すよ。勇君はこれまでたくさんの人達を救ってきた。その為の努力は惜しまなかったし、周囲の人達からの支援も得る事ができた。これはすごい事だよ。〉
「ありがとうございます。士道さんに認められた事は素直に嬉しいです。……しかしもう僕は……。」
〈気づいたんだな?自分の限界……いや、「死」が近い事に。〉
「はい。恐らくですが後二回程大きな戦いが起こり、僕がそれに参戦すれば僕の命は尽きるんですよね?」
直感だがまず間違いないと思っている。
〈ああ……後二回だな。そしてごめんな。だからお詫びをさせて欲しい。〉
「お詫び……ですか?」
士道さんの言葉に僕は疑問を抱いた。詫びられる理由が思いつかなかったからだ。
〈その内容なんだけど、今度こそ天使を継承させたい。本来勇君に託す天使は今の継承者達と同じレベルの力を継承させる予定だった。その為に下地を作ってもらったし、扱いには俺達も協力するつもりだった。〉
ん?〈だった?〉士道さんの最後の言葉に僕は新たな疑問を持ったが、すぐにそれが何かに気付いてしまった。
「まさか〈アイン〉がそうだと言うんですよね?僕は十香さん達から力を継承しました。更に響達も同じ様に継承した。そうですよね?」
〈そうだな。澪が誤って原初の精霊の力を渡した事が発端だった。本当に必要な事態にしか現れない例外的な力の筈だったけど、勇はそれすら使いこなす努力を怠らなかった。だけど器が完成していない内に継承した事が問題だったんだ。〉
「器が完成していなかった……ですか?」
心辺りは一つだけある。それはきっと僕達が澪さんと邂逅した時だ。本来はあの時が継承の時だった筈なんだ。
〈そうなんだ。だからそれを待たずに継承させてしまった事は俺達の失敗でもある。だからもう一度勇に会う理由ができたんだ。本当は充分立派でこれ以上の忠告なんて不要な状態なのにな。〉
「買いかぶりすぎです。僕は結局たくさんの人を見殺しにしたり、姉さんを救う時には〈時喰みの城〉を使い人を呑み込みました。」
〈それは不可抗力でもあるんだ。本来は勇達が別れた後に別々に保護されて記憶が戻る筈でもあった。結局はそこも背負う必要のない「死」を重ねさせた。力に溺れない様に導くべきなのに!逆の事態になり得る事をさせてしまった!俺達の力不足なせいで!〉
士道さんは泣いていた。僕の為に涙を流してくれたんだ。
「ありがとうございます士道さん。お陰で僕は覚悟を決める事ができました。僕は最後まで戦います。そして自分が最後まで救いたいモノを救って来ます!」
〈そこまで覚悟を決めたなら俺にもケジメをつけさせてくれ。改めて俺達の力を継承して欲しい。だけどそれはこの世界じゃあない。俺たちの世界で……だ。〉
「一つ良いですか士道さん?」
〈ああ。言ってくれ!〉
「僕の命が尽きた時、キャロルには士道さんから伝言を伝えてください。」
〈わかったよ。なんて伝えれば良いんだ?〉
「じゃあこうお願いします。
〈僕達は生まれ変わってもまた会える。だから待っているよ僕のお姫様!〉
とお願いします。」
〈わかったよ。必ず伝えるさ。後一番大事な事なんだが、勇の死因は霊力の暴走じゃあないぜ。これは「ラジエル」で俺が調べたから間違いない。そしてこの夢の記憶は目覚めたら忘れるよ。そして俺たちの世界でもう一度試練を乗り越えてくれよ。もちろん全力で健全なサポートはつけるからさ!〉
「本当にありがとうございます。〈崇宮 真士〉さん。」
〈ああ。今度こそ頑張れよ「雪音 勇」後輩!〉
僕達はその言葉を最後に後にした。
「目覚めたか勇!」
聞き覚えのある声で僕は目が覚めた。
「キャロル……ごめんね。」
「当たり前だ!俺たちは心配したぞ!」
キャロルの目には涙があった。僕はどのくらい倒れていたんだろう?
「キャロル……ライブの日から何日経過した?」
「五日だ。その間に本部への査察が入ったが奴等は未だにこっちの弱みを握れない事から強硬手段に撃って出た。その結果翼とマリアの寝返りが行われた。」
不味いな。そこまで展開が進んでいたなんて……。
「エルは無事なの?」
「ああ。今もシャトーにて過ごしている。まずは
〈風鳴 訃堂〉の捕縛が決定した。罪状は〈脅迫による大量殺人の教唆〉だ。既にカリオストロが欧州を纏めあげてサンジェルマンがこちらに滞在している。そしてマリアの離反の際にセレナへとザフキエルの力が受け継がれた。」
四糸乃さんの伝言はこういう事だった訳か。成る程ね。
「なら僕も風鳴邸に向かうよ。そして翼さんを叩き起こす!」
「ならばオレがマリアの相手をしよう。……後一つ言っておこう。オレはお前を必ず見つけ出すさ。そして今度こそオレ達は契るぞ!」
「ありがとうキャロル!最後まで頼んだよ!」
僕達はお互いに次の世界での再会を約束した。
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