マブラヴ オルタネイティヴ episode HAGAKURE 作:不屈闘志
2001年11月11日
国連軍横浜基地
午後12時20分
『総員に通達、防衛基準体勢2は解除されました。繰り返します。…………』
放送を聞きながら、白銀武は真っ直ぐに執務室へと走った。ノックもそこそこに、セキュリティカードを通して部屋に飛び込む。
「先生!」
そこにいるのは、その部屋の主である国連軍横浜基地の副指令でありながら、実質トップにいる香月夕呼。
夕呼は、勢いよく入ってきた武を見ると機嫌が悪そうに答えた。
「騒がないの。聞こえてるわ」
そんな夕呼に気づきながらも武は、頭を下げて大声で礼をいう。
「いろいろありがとうございました。」
「あなたがお礼を言う必要は無いわ。あたしの興味でやったことなんだから」
「それでもいいんです!これで歴史は大きく変わりますよ。」
(大量に死んだはずの軍人達が助かっただけでも、桁違いの変化なんだ。それに、俺自身の記憶が証明されたわけで、これからも先も変化が起こせるに違いない!)
「はしゃいでるわね……ところで白銀?」
武のはしゃぐ様子を少しイラついた顔で見る夕呼は、ある質問を投げ掛けた。
「あなたの前の世界では、BETAが佐渡島から来た時に他になんか、変わったことはなかった?変な兵器を持った歩兵とか、ムキムキの全裸の体を女性の衛士に見せつける強化兵とか?そんな変わった話聞かなかった?」
そんな突拍子もない質問をなげかけられた武は、夕呼がたまにいう冗談を言っていると思い、自分の気分も相まって陽気に答えた。
「そんなのは、聞いたことはないですね。俺、その日は、防衛基準体勢2が解除された瞬間に、緊張が解けて恥ずかしいんですけど、気絶してしまって、ずっと寝てたんですよ。だから、よくわからないんですよね。はははは!」
その言葉を聞いた夕呼は、イライラの頂点に達したようで、何も言わず武に殺意に近い目を向けた。
「………………………………。」
「は、はは…………。それでは失礼します!」
やっと夕呼の殺意の目線に気付いた武は、早々と執務室から出ていった。
(夕呼先生、機嫌悪かったな。実験上手く行ってないんだろうな。)
「はぁ~~~~」
武が自分の部屋から出ていったのを、厳しい顔で見送ると、深いため息をついた。
夕呼は、焦っていた。捕獲作戦自体は、重症者は出たものの見事に完遂できたので、いうことはないのだが、肝心の自分の研究が進んでいないのだ。150億個の並列処理コンピューターを手のひらサイズにするという理論。その完成まで後一歩のところで行き詰まっている。
タイムリミットは、12月下旬。そのときまでに自分が提唱するオルタネイティブⅣを確立しないと、人類全滅の第一歩となるオルタネイティブⅤが発動してしまう。
そして、さらに頭を悩ましているのが、本日の捕獲作戦で厄介で興味深い報告が自分の隊から入ったことである。
その報告が、BETAを捕まえられなかったや、ヴァルキリーズの半数が死亡してしまったといったものなら、最悪の事態だが想定内で済む。
しかし、所属不明の兵士が一人で、戦術機にも乗らず、要塞級や要擊級、そして一瞬で百体を越える戦車級を倒した。さらに倒すのに使われたのが自分の知らない未知の兵器ときた。早く自分の研究を完成させたいのに、そんな中途半端に無視できない事態が起こったのだ。
夕呼は、こんな時でなければ研究者として喜んで調べるのにと心の中で叫び、研究で睡眠不足の体を起こし、ゆっくりと隣の部屋に入る。
薄暗く、怪しい光を放つその部屋の中央には、脳と脊髄が浮いている大きい試験管のようなものがあった。これこそ、オルタネイティブの根幹に位置するものである。夕呼は、そこにいつもいる社霞を探すが、どうやら今は武の方にいるようだ。
部屋の中央まで進んだ夕呼は、試験管の横にある物に目を移す。そこにはBETA捕獲作戦の時に乱入した謎の男が持っていた兵器が置いてあった。鋼鉄のブーツ、命令を聞き自動で動くバイク、そして、様々な兵器を搭載した強化服が入っているという鋼鉄の学生鞄。
普通なら、整備部か、技術研究の部署に回すところである。しかし、謎の男が活躍した戦闘動画を見ても鮮明に映っていないゆえに直接確認するため、夕呼の権限を使いこちらに先に回してもらったのだ。
一応は、爆発物の有無や構造を調べるためX線にかけたが、放射線を弾くように全く中身が映らず夕呼は、困り果てていた。
夕呼は、まず鱗のようなバイクを少し撫でながら、実験が進まないストレスを吐き出すように考えることを声に出し呟いた。
「葉隠覚悟だっけ?あからさまに偽名ね。一般人なら珍しい名字で済むけど、武家や政府、軍の上層部がいたら、一発でバレる嘘だわ。葉隠なんて性もってるやつなんて、この世にはもう一人もいないし。多分、オルタネイティブⅣを混乱させるオルタネイティブⅤ派の刺客がおおまかなところかしら?」
犬の鳴き声をあげたと証言があるバイクは、現在は、普通のバイクと同じように沈黙している。
「ふーん。えらく装甲が厚いバイクね。スピードメーターは、見当たらない……。多分前のコンピューター画面で表示してる?マフラーもないし、給油口もない。電気で動いているのかしら?」
次にバイクの後部にある鉄の学生鞄に目をつける。
「この中に入っているのは、たしかミミズ状の服らしいわね。BETAを砂状にしたり、要塞級を一撃で倒すプラズマ兵器が内蔵してあるとか本当かしら?」
『・・・・・・・・・・』
鞄を開けようとするが、溶接してあるかのように開かない。
開けるのを諦め、次に鋼鉄のブーツを手に取る。
「う、かなり重いわね……へぇー足の指だけで足裏にある推進剤が出るような作りになってるわ。これでジャンプしたりするのね。けど、重さがネックね。本当にこんな重いもの履いてたのかしら?」
そして、最後に手に持ったのは、バイクの側面に二本ずつついている刀。
一つ一つ順番に抜いて確かめる夕呼。
しかし、機械ならともかく、武具を鑑定する力がない夕呼は、それらの刀を期待した目ではなく、一応は確かめるといった様子で見ている。
「この三本は、比較的最近打った刀ね。
二本は、普通の刀?もう一つは、強化セラミックみたいな物質で作られてる。一番切れ味良さそう。」
最後に鞘からして、年代物の刀を取り出した。
「最後は……結構使いこまれてるわね。持つところが手の形ですり減ってる、色とか汚れとかから推測するに少なくとも50年は前かしら?ふーん。あら?何か文字が?ええと。りく…ぐん……はがくれ…………え?!!!!」
寝不足の脳に電撃が走り、夕呼の目が段々と見開いて来る。
その刀の柄には、よく目を凝らさないと見えないほど、磨り減っていたが、確かに文字が書いてあった。そこに記してある文字は、『陸軍葉隠瞬殺無音部隊』。かつて都市伝説として世界を席巻した部隊である。
2001年11月11日
横浜基地地下懲罰房
少し前に、睡眠薬を注射された覚悟はゆっくりと目を覚ました。そして、覚醒した瞬間、覚悟は即座に自分の置かれている状況を確認する。
自分は、簡易なベッドで腕が使えない死刑囚のような拘束具の格好で眠っている。周りを見渡すとベッドの他には簡易トイレと机しかない。注目すべきは、その部屋には鉄格子がついているというところであろう。部屋というより牢屋。いや、見張っているものが刑務官でも警察官でもない、明らかに軍人である。故にここは、どこかの軍施設の懲罰房だと確信する。
(どうやら、ここは窓がないことから地下の施設、懲罰房。そこに私は幽閉されているらしいな。)
覚悟は、睡眠薬を打たれる前の出来事を思い返す。
(零の外殻を解除してしまったとき、あの恐るべき兵器を見て、彼女達に悲鳴をあげさせてしまった。さらに月狼で銃まで突きつけて……牙なきもの達を自ら怯えさせ悲鳴をあげさせるとは、私は正義失格だな。)
覚悟は、まだ少し勘違いをしていた。
十数分後、覚悟は小さいコンクリートに囲まれた部屋で拘束具をつけたまま、尋問を受けていた。背後には、マシンガンらしき銃を持つ男が立ち、対面に座るのは強力な背後からの光で顔が見えない男。
その男は、着席した覚悟に尋ねる。
「まず、葉隠覚悟君で合っているね、何でここに捕まっているか解るかね?」
「素性怪しい物には、当然の措置かと存じます。」
「理解しているじゃないか、じゃあ自称葉隠覚悟君、兵隊の話によると、女性の衛士達の目の前でいきなり裸になったらしいね。この国では、軍人が乱心して女性を襲ったら、どんな階級の者だろうと銃殺刑だ。言い逃れはできないぞ。」
「私は、武装解除を命じられたので、その場で命令を実行したのみ。それ以外の考えなどありません。」
男は想定内の答えが出たようにニヤリと笑う。
「そんな戯言……」
覚悟は、その男の言葉を遮るようにさらに続ける。
「けれど、本当に私の行為で彼女達の心が深く傷ついたのなら、銃殺刑の罪、潔く受けましょう。」
「え?」
覚悟は、嘘偽りのない目で男にそう答えた。それは、やっと武装で彼女達を怯えさせたのではなく、自分の行為が原因だったと理解したからである。
そして、自分は牙なきものの剣、正義を行う者と自負している。故にそんな、強姦紛いのことを自覚なしでも未遂でも、実行してしまったなら、どんな刑でも迷うことなく受ける。覚悟は、その考えに一瞬で至ったのだ。
逆に困ったのは、男の方である。男が進めたかった筋書きは、女性の強姦容疑による銃殺刑で覚悟を脅し、それをなかったことにする見返りに、素性、目的、そして謎の武装のことを吐かせることであった。
もちろん、伊隅ヴァルキリーズからは、被害届など出してない。逆に勘違いからの銃殺を防ぐために嘆願書まで出されている。
(証拠を隠滅するために自ら死ぬつもりか……。じゃあ、何故こちらに新兵器の武器を鹵攫させた?極秘の武器をお披露目して提供するなど狂気の沙汰だ。スパイとして協力する予定だったのか?だったらなんで裸を見せた?そんなことをしなければもっと軍の中枢に入れただろうに。特攻兵のように最初から捕まって銃殺刑が目的か?じゃあ、何で葉隠なんて滅びた名前を使い混乱させる?だから脱いでどうする……)
男は混乱する頭を振り切るように覚悟に質問する。
「そ、そうか。お前みたいな潔いやつは初めてだ。けれど、こっちにも手続きというのがある。素性も分からない奴を銃殺刑には、出来ないのだよ。もう一回自分の素性を話してくれ。」
「私は、葉隠覚悟。日本政府の管理局所属の者です。それ以外は、軍事機密なり。それよりもあのBETAという怪物のことを教えて欲しい。そして、できれば囚人の奉仕活動として戦う手伝いがしたい。」
男は、脅すような声で言う。
「この日本には、葉隠なんて苗字は一人も存在してないし、BETAを知らないやつもいないんだよ。念のため政府に問い合わせても、存在してないの一点張り。銃殺刑にしてやるから、死ぬ前にすべてを話せ。どこの国のスパイだ?」
その後の取り調べも『すべてを話せ』、『軍事機密ゆえ無理だが、戦わせろ』の繰り返しであった。その度に、銃を突き付けられたり、後ろの兵に殴られたが、顔が腫れ、口から血を流すのみで覚悟の考え、表情を変えることはできなかった。
その日は、それで独房に戻された。
二日目は、優しそうな女性や、違う男性の取調官に尋問されたが一日目と同じ堂々巡りで終わった。
2001年11月13日
横浜基地地下懲罰房
監禁されて三日目、覚悟は、深い眠りの中、夢を見ていた。その夢の内容は、自分が睡眠装置に入った日のことである。夢の中の覚悟は、涙の卒業式を終えて、鷹嘴のリムジンで施設まで送ってもらい施設に入ったところだ。そして、覚悟は、医務室のような部屋に通され施設の責任者から冷凍睡眠装置の説明を受けている。
その責任者である女性は、年は二十代後半辺り、紫色のセミロングの髪型をしており、白衣の下には胸を強調した服を着ていた。彼女は、気だるそうに覚悟に冷凍睡眠装置のことを説明している。
「ーーーという訳で覚醒する条件は、これで以上よ。単純に私達、形式上だけど貴方の上司にあたる政府の者が起こすか、地震、火災とか災害で自動で起きるかね。それがない限りあなたは、あたしが開発した装置の中で地球が終わりを迎えるまで永遠に眠り続けるわ。ああそれと思い出した!」
彼女は、急に気だるそうな態度を変えて、面白そうに笑みを含んで話し出した。
「後、誰かが施設に侵入して、手順を踏まずに無理矢理起こそうとしたら、死ぬように設定してあるから。起こそうとするやつが死ぬんじゃあないわよ。もちろん死ぬのは~~~~~~~」
語尾を伸ばしながら、ゆっくりと覚悟を指差す
「あ、な、た。正義を行う者自体が軍事機密の塊だからね~。拷問とか洗脳とかされるかもしれないし。殺す方法は、あなたの遺体と零式鉄球だったっけ?それすら残らないような、強力な腐敗ガスでドロドロにしちゃうからね。わかった?」
そのようなことを聞かされて、常人なら反射的に怒るか、苦笑いを浮かべるところだろう。
しかし、覚悟はさも当然というように
「了解しました。 」
と無表情に答えただけであった。
覚悟の言葉が自分が想定した答え方、態度ではなかったように彼女は、つまらなそうに軽いため息をついた。
「つまらないわね、正義を行うものってみんなそうなの?まぁいいわ。最後に質問とかない?冗談抜きでこれがあなたが死ぬ前に交わす最後の会話かもしれないわよ。」
覚悟は、その問いに言い淀むことなく毅然と答える。
「私の必要がない世界が永遠に続くなら、それに越したことはありません。」
「そう……わかったわ。質問がないなら早速、睡眠装置がある部屋まで行きましょうか。」
彼女は、部屋を出て、睡眠装置がある部屋の前の扉まで覚悟を先導した。
「この部屋の蓋が空いてるカプセルみたいなものに入れば自動的に催眠ガスが出て、一瞬で眠りにつくわ。」
覚悟は、最後の挨拶というばかり仰々しく敬礼をしてお礼を言う。
「ご説明の中から感じるお心遣い、真に感謝致します。この優しさ忘れません。」
覚悟の最後の挨拶を受けとる白衣の女性は、面倒くさそうに、手をヒラヒラさせて、覚悟に言う。
「やめてよね。堅苦しいの苦手なのよ。ああ、そうだ。もし、災害とか起こって自分で起きた場合は、あたしの名前を確認して見て。もうすぐ火華財閥と徳川財団からも支援受ける予定だし、管理局のトップに立つのも近いわ。だから、自叙伝とか書いてたり、歴史の教科書に乗ってるかもよ?一応教えとくわ。あたしの名前は………………」
ーーーー「おい起きろ!」
本日も昨日と同じように、歩兵に呼ばれ尋問が始まる。
十数分後、尋問室隣の監視室
夕呼は、捕まっている噂の男を確認しに、取調室の隣の監視室にいた。そこでマジックミラー越しに一日目と同じように無表情で座る覚悟を見ながら、隣の取調官に今までの覚悟の様子の説明を聞く。
どんなに脅しても殴っても表情を一切変えない強い男。強姦が本当なら、銃殺刑でもいいという潔い男。まるで感情のない機械みたいな男。各取調官が覚悟と会話し、感じたことはおおむねそんな感じであった。
好意的な評価もあるが、何もしゃべらない故に今日喋らなければ、明日から薬物を使用するらしい。
夕呼は、覚悟をじっくりと観察しながら昨日のことを思い出す。
(結局、あのバイクと鞄の中身はわからなかった。バイクは、解体する要所に分厚い装甲があるし、兵器が入っている鞄は無理矢理解体するとどんなことがあるか分からない。けれど、あの『陸軍葉隠瞬殺無音部隊』と記された刀は、鑑定の結果、作成されたのは確実に50年前とわかった。)
後は、その所有者を見極めるのみである。
今回の取調官は、覚悟と同じような年齢の少女であった。
「どーもー、リラックスしてね。今回は、取り調べじゃなくてお喋りするだけだから。」
人懐こい顔をした少女が対面に座った。
その様子を隣の部屋で見ている取調官が夕呼に説明する。
「香月副指令ならお分かりだと思いますが、あの取調官は、親しみ安さが売りでして。あの喋り方と整った容姿で男は、機密情報をうっかり喋ってしまうんですよ。かなりの腕利きです。」
「…………」
「一昨日と昨日は、覚悟君に酷いことしちゃったよね。ごめんなさい。あの男、みんなから嫌われてるの。ああ、これはあいつにいっちゃダメだよ。二人だけの秘密ね。」
少女は、覚悟にしか聞こえないように少し近づいて喋った。
「了解」
その言葉に覚悟は、表情を変えずに答える。
少女は、元の自分の席に戻るとまた明るくしゃべる。
「そうね、じゃあ今日は逆に覚悟君の質問に何でも私が答えちゃう。先にいうけど彼氏はいないよ。後、私のスリーサイズ以外だったら何でもOK!」
夕呼は、その言葉を聞いて感心する。
(上手いわね、逆に質問させて相手を探ってる……。)
「お心遣い、感謝致します。では…………」
覚悟は、深くお辞儀をした後、彼女に次々と質問を投げ掛けた。質問内容は、現在の西暦、日時から始まり、主に覚悟の世界と照らし合わせるような質問であった。しかし、その質問で大東亜戦争での日本の無条件降伏、世界規模の地殻変動、新東京の新エネルギー暴走事故と聞いたこともないような出来事が飛び出してきた。
その単語をマジックミラー越しに聞いた夕呼は、白銀武を思い出す。
(あの男が語る第二次世界大戦の顛末、白銀と同じ事を言っているわ。けれど、その後が違う。地殻変動、エネルギー暴走事故、まさか……。)
そして、質問がBETAや戦術機に及びそうになったとき、少女は、覚悟の質問にストップを掛けた。
「覚悟君、一杯質問してくれてありがとね。けど、ごめん!実は私も仕事上、報告書を書かないといけないの。だから、一つだけ私の質問に答えてお願い。」
「答えられる範囲でよければ」
「じゃあ、覚悟君のいう管理局の上司って誰?もしその人が実際にいたら、それで疑いが晴れるかも?」
「恥ずべきことなのですが、今朝方思い出しました。私の上司は、『香月夕呼』という女性の方です。」
取調官が夕呼を見ながら、わざわざ問題なさそうに言う。
「下手くそな嘘ですな。」
夕呼は、当たり前といった顔で取調官を見返した。
「・・・・・・コホン。じゃあおまけでもう一つ、覚悟君はあの時、何故地面から出てきたの?」
「あれは、私にも分からない。眠っていたらいつの間にか、部屋ごとかあそこにいた故、脱出した。」
「・・・・・・・・」
真実にも関わらず、適当なことを言っていると判断された覚悟に、少女がため息混じりに顔を伏せて呟く。
「ふ~~~。これだけ、質問に答えてあげたのに、覚悟君は意地悪だなぁ。」
そして、少女は顔を上げた。その表情は、先程の人懐こい笑顔から、一瞬でサディスティックな笑顔になり、覚悟に脅すような口調で迫る。
「覚悟くーん、いい加減喋らないと自白剤と拷問のダブルパンチで『嬲り物』にしちゃうよ?私もそんなの悲しいよ~」
「嬲り、モノ?」
少女の口から漏れでた禁断の言葉を聞いた瞬間、無表情だが穏やかだった覚悟の目付き、雰囲気が先程の少女以上に一瞬で変わる。
「え、な、なに?」
「貴様!一体?」
雰囲気が変わった覚悟に驚く少女と危険を察知してマシンガンのロックを外す兵士。その雰囲気は、マジックミラー越しに見ている夕呼達にもビリビリと伝わってきた。
「雰囲気が変わりましたわね?」
「今までで一番の反応です……」
ガシャン!
覚悟は、座っているパイプ椅子を弾くように起立した。それに驚き兵士がロックを外したマシンガンで構えるが……
「貴様座れ!座らんと……え?」
ビリビリビリビリィィッ!
絶対に破れないはずの特殊ゴムとアラミド繊維でできた軍の拘束具が一瞬で破かれた。
現実ではあり得ない覚悟の行動を、ポカンとした表情で見る少女と兵士。
「誰にも人間をモノ呼ばわりする権利はない。」
と覚悟は、少女に向かって射殺すような目を向けながら、怒気に孕んだ静かな声で宣言した。
二人は、覚悟の声で呆けた状態から一瞬で我に帰るが…
「ヒ、ヒィィィィッ!」
「うわぁぁぁぁ!」
兵士の方は、恐怖のあまりマシンガンを覚悟に発射した。
そんな想像を超えた状況に夕呼と取調官は、急いで指示を出す。
「早く!衛生兵を!」
『馬鹿者ぉ! 殺す……な……』
暴走する兵士の行為を止めるため、マイクで怒鳴る取調官だが、先程の拘束具を破る光景よりもあり得ない光景が目の前に現れ息を飲む。
「香月副指令……あ、あれはいったい?」
覚悟は、狙いが定まらないマシンガンから、少女を庇うように銃弾を受けきっていた。
しかし、マシンガンによって蜂の巣となるはずの覚悟の体は、皮膚から滲み出るように発生した光輝く金属によって、すべての弾丸は止められ無傷であった。
夕呼は、それを見て興奮した笑みを浮かべる。
(間違いないわ!あいつは、白銀と違う平行世界から来た、この世界で滅びた悪鬼の一族!そして、未知の兵器やあの鋼鉄の体は、もしかしたら46文書の…………)
夕呼先生がどう動くか考えると、どうしても書くのに時間がかかりますね。
睡眠装置の毒殺システムは、原作通りです。作中で一番要らない機能だと思います。
日本刀の柄に瞬殺部隊の文字が書いてあるのも原作通りです。回想シーンで父親の朧が実際に持っています。
後は、月狼の側面に日本刀を装備できるのは、嘘です。
そこは広い心で許して下さい。