「紹介しよう。彼女がおまえを救い出し、インペライザーと戦い、学園を守った人物。更識 簪だ。」
千冬姉の口から出た、聞き馴染みのある人物の名前。手に水滴が落ちてきた。顔に手をやると、どうやら泣いてしまっていたようだ。
「……か、簪?千冬姉……それって…。」
「あぁ、お前の彼女が目覚めた。お前がインペライザーとの戦いをしている最中のことだ。」
「簪は、今どこに?」
俺は体の痛みも忘れ、千冬姉の肩に手を伸ばす。しかし、体は素直なもので、痛みに負け体勢が崩れた。
「まったく、手の掛かる弟だ。」
千冬姉に支えられ、ベットに戻る。お茶を差し出されたので、半分くらい飲み干す。
「落ち着いたか?」
「あぁ。それで、簪は今どこに?」
「すぐ外に居る。私は事後処理が残っているのでもう行くが、お互い目が覚めたばかりだという事は忘れるなよ。」
「っつ///」
千冬姉に弄られ、顔が熱くなっていくのを感じた。俺の顔面がウルトラダイナマイトしている間に、ドアが開き、千冬姉と入れ替わりで別の気配がこの部屋に入ってくる。
「……一夏。」
さらさらとした水色の髪。ルビーのような赤い瞳、携帯用ディスプレイとしているメガネ。そして俺の名を呼ぶ、ずっと聞きたいと願っていたその儚い声…。
「簪…、ごめん。俺、君を守り切れなかった。ずっと、あやまりt…痛っ!」
突然額に少し強めの衝撃が走る。前を見ると、デコピンをしたような手が俺の顔の前にあり、簪は涙ぐんでいた。
「…バカ。」
「ご……ありがとう。おかえり、簪。」
「うん。ただいま、一夏。」
簪の頭にゆっくりと手を伸ばし、そっとこちらに寄せ、唇重ねた。
「ところで、どうやってインペライザーと戦ったんだ?」
俺は一番気になっていた質問をぶつけた。既に大敗を喫した後というのもあったが、目覚めたばかりの、それも数年寝たきりだった人間が勝てるような代物じゃなかった。
そう思っていたのも束の間。臨海学校直前に見舞いに行った時よりも、体がしっかりしていたことに気付いた。
「それは、これのおかげなんだ。」
イスに座っていた簪が立ち上がると、左前腕を見せるように曲げ上げる。炎のような光が腕を包み込むとそこにあったのは…
「メビウスブレス。」
「うん。目が覚めたとき既に左腕にあったの。それに……」
「それに?」
「夢の中…だったのかな?あったんだ、ヒビノ・ミライに。」
「!?ヒビノ……ミライ。ウルトラマンメビウス本人に?」
「うん。一人の迷える青年を助けるためにこの地球に来た。それは、君じゃないと叶わない。力を貸してほしいって。」
「そうなんだ。光の国から助けたいと思われるような善い人間が居るんだな。」
「それは「それはいっくん、君だよ。」え?「え?」」
「はろー、束さんだよー。二人が再開を終わらせた時点で、入るつもりだったんだけど、緊急事態が発生したので、まずはホログラムで失礼するよ。インペライザーが再び学園内で出現したよ。いま、ちーちゃんが迎撃してるけどいつまでもつか…。申し訳ないけど、いっくん。」
「はい?」
「ナイトブレスをそこの女に渡して。」
「え?」
ホログラムとして現れた束の表情は真剣そのものだった。
「今その状態でいっくんが戦場に出ても、足を引っ張るだけ。その娘なら完璧とまではいかなくても、力を引き出せ「わかった」え?」
「簪、君を戦場に送り出したくはない。でも、今ここを救えるのは簪だけだ。みんなを、千冬姉を、よろしく頼む。」
右手で簪の左腕を掴み、ナイトブレスを移すイメージをする。元々出現していたメビウスブレスに重なるように、ナイトブレスが簪の腕に出現した。
俺の意識はそこで途絶えた。
二十五話にして、ヒロイン更識簪が目覚めました。
簪「完全復活!パーフェクト更識様だぜ!!」