EOSを知らない方に対して簡単な説明を。
エクステンデッド・オペーション・シーカーというのが正しい名前。ISの様にと作られたはいいが、余りにお粗末で万人に使えた物でない欠陥品。
IS本編にはほとんど出てこない。
それではどうぞ
インフィニット・ストラトス。ある者には福音を与え、ある者には晩鐘となった機械の名前。女性しか乗れないそれは世界を容易く変えた。
だが、俺たちはその落日を目にする。男性登乗者、織斑一夏の出現によって。
これはちょっとだけ前の日の出来事。楽園の戦士たちの一瞬である。
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「お前が新人か?」
俺は肯く。飛行機で貨物のように送られてきたためか、足元が少しふらつく。他にも複数人いたが、機内から降りた後に皆同じような液体を提供されて飲むようにと命令された。それからだ、気分が優れない。
そもそも、俺は目覚めると飛行機の中にいて、おまけに記憶が失われていた。言葉や一般常識は使えるし、わかる。自分の名前だって覚えている。ただ自分が過去に何をして生きていたかが、ただそこだけがごっそりと抜け落ちていた。
悲しくはないが、自分は空っぽな人形のようであった。
俺たちはエントランスのようなところで待たされていると、向こうの通路からハンチングを被った中年の男性が来た。
「よっこそ楽園へ。俺はジョージ・マクマホン。早速だが、移動しよう。時間がもったいない」
まくし立てるような早口で彼は自分についてくるように言った。なんとまあせっかちな奴だ!と思うだろうが、そんな事を考えている間にどんどんと距離が空いていく。
早口なだけでなく、早足な彼に焦って付いていくと人間よりも大きな機械たちが何十体と置かれていた。
「これは……」
「ま、驚くのも無理はないな。俺だったそうだった」
彼は顎髭を触りながらそう言った。
「これ、EOS……に見えますが……」
俺の右手の癖っ毛野郎が発言した。
EOSとは現在最良の兵器と呼ばれるISを資質が無くても使えるように見よう見まねで開発されたパワードスーツだが、正直な所お荷物でしか無いと一般に言われている。
パワーアシスト込みで稼働時間は十分ほどしかない上に、通常の運用時はバッテリーの消費を避けるためにアシスト機能がオフになっている為に使用者は要らない重りを背負う事になる。
ただの粗大ゴミだ。この後で知ったが、戦場で『足の生えた棺桶』という別名が付くぐらいに酷い代物である。
「ウチの変態博士が意味不明な改造というかそもそもの部分から新しく作ってな、新しいEOSということで
「?」
一同が訝しむ。ジョージと名乗った男の口が三日月のように、醜く歪んだからだ。
「ま、起きたら全て分かるさ……」
私たちの身体が脱力し、急速に眠気が襲ってくる。
一人一人、バタバタと倒れていく。
「な……どうしてこんな……」
辛うじて意識が残っている俺は恨みがましく言うが、男の方はどこ吹く風と言った感じである。
「どうせ、ここに来るやつは"そういう事"だ。人権なんて塵一つない」
一言この髭面の男に文句でも言ってやろうと思ったが、それよりも先に意識は消えた。
「おはよう、諸君。目覚めは如何かな?」
低い声と喧しいアラームで目を覚ます。俺は白い清潔な部屋で綺麗な服を着ていた。
目の前のモニターには汚い白衣の男が椅子にふんぞり返っていた。そいつの態度もあるが、正直吐き気がしてたまらない。頭がぼうっとして、自分がここにいるのか怪しく思える。
「どうせ気分は悪いはずだ、手短に行こう。君らはこのネオスを動かす為だけに連れてこられたモルモットだ。背中を触ってもらえば分かるだろうが、何か取り付けてあるだろう?」
背中に手を回すと服の感触の下に硬い異物が自らを主張している。
「ネオスを動かすには脳みそや脊髄をちょっと弄る必要があるんで君らを改造させてもらった、以上。君らは業務を果たしてくれればそれでいいから」
モニターが切れてしばらくすると、ドアが開いて先ほど(と言っても時間はそれなりに経っているだろうが)ジョージと名乗った男が全員を呼んでいた。
「おし、洗礼は受けたな。早速接続テスト行こうか」
皆がぼんやりとした、正気を欠いた状態でのろのろとついて行く。
「乗れば大体わかるから、乗ってみろ」
なんとも適当な言い方だが、乗るというよりは着る方がニュアンス的には近かった。自身とネオスの接続で一瞬の痛みが広がるが、それもすぐに消えた。
自分が、大きくなったと感じられた。先ほどまでの吐き気なんか嘘の様に吹き飛んでしまい、俺は一種の興奮状態に陥っていたと思う。
自分の身体を動かす様に自然に機械は動く。右腕にはNo.6と刻印されていて、俺がまるで機械になったみたいだった。いや、なったんだと理解できる。
「よし、成功したな。今から出撃してもらう、武器はこれだ」
収納ホルダーが地面から迫り上がってきた。
アサルトライフル。全自動で、引き金さえ引けば人間なら数秒で蜂の巣にできる兵器。
「ま、一つはそれ。近接武器はそこらにあるから自分で選べ。ダミーとの戦闘だ流石に死ぬなよ?」
そう言ってジョージは去った。
俺たちは各々が近接武器を取って行く。俺はハンドアックスにした。ナイフは俺に扱えるか怪しい。ブレードは長すぎる。持ち運びやすく、最悪力任せに振って、一番ダメージを与えれそうなこれを相棒に選んだ。
案内の看板が黒く錆び付いたワイヤーでぶら下げてある。案内のまま、歩いて進むといくつかカタパルトがあった。
「私はサラ・ニシハラ、オペレーターです。早速、ナンバー1からこれに乗って下さい。」
どんどんとカタパルトのレールに乗って行く。俺も急いで行った。
「ナンバー1〜6番、出撃用意完了。各自出撃して下さい。」
右上に射出の文字が点滅していた。ナンバー6の俺は一番奥のカタパルトに乗る。
「コルネリウス・アルブレヒト、出撃します」
凄まじい加速だ。背後に持っていかれる感覚とともに市街地に飛ばされる。手術で対G性能が強化されているからか、気を失う事は無い。
ズズン!とアスファルトの上に着地する。
「なんて街だ……」
唖然とするくらい、荒廃した街。コンクリのビルディングはひび割れて蔦で覆われており、捨てられたクルマはフレームと骸骨だけが悲しく残っている。
慎重に歩いていると、後ろに誰かが来たらしい。ローカル通信のチャンネルが開いた。俺は通信を許可した。
「よお、俺と組まないか?同期のよしみって奴で」
やけに軽い調子で話しかけたのはカレルと名乗った男。初戦闘なのだから取り敢えず彼とコンビを組んでおいた方が一人よりはマシだろうと思う。
「よろしく頼む、カレル」
適当な情報交換をするが、大した事は分からなかった。そもそも俺は記憶を殆ど存在しないし、彼もおそらく同じなのだろう。
しばらく進んでいると、それは突然にやってきた。
「来たぞ!」
前方から敵が迫っている事を知らせるアラートが鳴る。同じくらいの大きさをした敵がアサルトライフルを打ちながら接近している。
「一旦隠れよう、まだ相手がよく分からん」
「ああ」
バーニアを吹かして後方へ、滑る様に移動する。相手は牽制で弾をばら撒きながら、高速で接近してくる。
「左右から同時に行く。弾幕を張りながら敵を破壊するぞ。やけにこちらより動きが固いからそこを突こう」
「了解だ!」
左右から同時にアサルトライフルでバラマキながらビルの間を縫う様に移動する。移動中に良くない所に被弾してしまい、左腕関節部から下の腕が弾けとんだ。
「チッ!やられた……」
「おいおい、ツイてねぇな」
左手に持っていたハンドアックスを落としてしまった。だが、アサルトライフルの方が利便性が高いので捨て置く事にした。一応、緊急用のナイフがあるが、システムの故障でちっとも出てこない。
俺は焦って後ろへ下がるが、敵の銃口はこちらを捉えていた。
俺は銃撃されず、カン!と変な音が鳴った。
その後に敵は弾切れが起きたのか、ライフルのトリガーをカチカチと何度も引き続けている。その隙が戦場では致命的であり、全てが遅かった。
高速で放たれる弾丸は合金製の特殊装甲を削る。ただ、俺たちの機体を傷つけるには至らない。こちらの攻撃で機能不全を起こしたのか、元々弱っていたのか分からないが、敵は動きが鈍くなると直ぐに穴だらけになって、煙を上げてその機能を停止した。
「よし、完全に破壊しよう」
カレルはアーミーナイフで駆動系を完全に潰した。コクピットも確実に破壊した。何の感慨も起きないのを見るに、記憶がなくなる前の俺も大概頭がおかしかったのだろうか。
いや、戦場じゃあおかしくならざるを得ないか。と勝手に一人で納得した。
「終わったな……」
「死ぬかと思った」
一つ終わって安堵したいが、そんな事をしている暇は無い。次の敵が今にも襲ってくる可能性があるからだ。
その後はビギナーズラックとでも言うのか、背後からの奇襲などで敵を二体ほど倒せた。生命と生命のやり取りは心をより硬く鋭くするが、少なくとも心地の良い物ではなかった。
日が暮れる頃になると弾数も、エネルギー残量もスズメの涙程しかない。その時ようやく通信が入った。
「残った者は帰還しろ、座標はここだ」
マップが送られてきた。少ないエネルギーを温存しながら座標の位置へ行った。偽装された入り口から地下に入り込んでいく。
マップから見ると全七層のジオフロントでかなり広い。マーカーが表示されているので迷う事は無いだろうと思った。
「貴様らが最後か……」
無表情でこちらを見る眼帯の男。全身真っ黒な服で、ナイフで切りつけても傷一つ付かなそうな頑丈さだった。
「ナンバー6とナンバー18、整備ドックに行け」
「先行ってるぞ」
ドックの方向が表示されてもじっとしている俺を察して彼は行った。そうして、俺は気になってある事を尋ねた。
「質問しても、よろしいですか」
「一つだけだ」
「ここは……なんなんですか?」
「……お前の名前は何だ?」
「コルネリウス・アルブレヒトです」
唯一覚えている名前を言うと、眼帯の彼の眉が少しだけ動いた気がした。恐らく俺の気のせいであろうが。
「……成る程な、いいだろう。ここはエリアE、
「一体なんだ……?」
「質問は終わった。」
眼帯男は去った。
いくら考えても何も思いつかないし、時間の無駄と悟った俺はマーカーが点滅している箇所、即ち整備ドックへと向かう。
整備ドックはこのジオフロント内で一二を争う大きさだ。俺たちが駆るマシンの整備はパーツの修繕や、出力の調整、部品交換などある。武器だって修復が必要だ。
要するにこの部屋は必要な大きさなのである。
マシン用のレールに乗せて、俺は降りる。降りるとベルトコンベアーがゆっくりと運んでくれる。整備のことはからきしであるからプロに任せるのが一番だ。
それよりも、降りたときに腕時計型端末が利き腕に巻きついてさっきから取ろうとするがちっとも外れやしない。邪魔な物を取りたい俺の気持ちと裏腹に一件のメールが来ていた。
C層談話室に来てください
ハワード博士という人物から送られてきたメール。
直ぐにでも行きたい所だが、通路で使える小型カートでは最低二十分以上かかる。
定期的にやってくる貨物輸送を兼ねたリニア列車は今回運悪くC層談話室の方向には行かないし、乗り心地が最悪であることは一目瞭然だった。
仕方ないので小型カートを使うと、倍以上の時間がかかった。
俺は談話室に入っていく。
「やあ、随分と遅かったじゃないか」
白衣を着て、縁無しメガネをかけた老人が柔らかそうなソファに腰掛けていた。
「コーヒーと紅茶、どちらが好みかな?」
最近ガンダムのプラモデルの一種であるドーベン・ウルフを買ったのですが、めちゃくちゃカッコいいです。全身が武器でまみれていて、緑の色がまた素晴らしいかった。