ようこそ事なかれ至上主義の教室へ   作:田中ハーレム

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櫛田編
プロローグ


 春と言えば何を思い浮かべるだろうか。

 桜の季節でもあり、各地でちょっとした屋台が出ていたりお花見をしたりしている家もあるだろうし。学生が春休みなんかに入った時期には子供向けのアニメ映画が上映されて、それを楽しみにしてる人もいるだろう。その期間のあいだに叔父の家などに帰ったり.....と、だんだん春というか季節の話題から寄り道して道草を食ってしまいそうだが本題に戻るとして、この時期は色んな家が慌ただしい時期であろう 。かく言う俺もそうだ。今年は特に例年通りとは行かずに、受験なんていうバカバカしい(とても大切な)ものがあったからな。

 この話の本題はそこなわけで俺がどこへ進学したのかというと、”高度育成高等学校”である。名前だけ聞くとなんじゃこりゃ、となりそうなもんだがちゃんと卒業した暁には希望する就職、進学先にほぼ100%応えるなどというオーバースペックな名門高校である。

 そんな名門高校には”Sシステム”というものが存在している。Sシステムとはなんぞやというと、生徒には学生証明カードというものが1人1枚発行されており、学校の敷地内ではこれがクレジットカードのように自由に使える。その支払いは日本円ではなく月に1回そのカード内に学校から支給されるポイントが入るのでそれを消費する。今月支給されたポイントは”10万”。1ポイントが1円と等価なので……つまり10万円だ。太っ腹にも程があると言いたい。が俺が配属されたBクラスの担任である星乃宮先生が次の月も同じポイントが支給されるとは限らない、そういう具合に解釈できるニュアンスで話していたので授業態度、筆記テスト、はたまたなにか別のもので支給されるポイントが決まるのだろう。それが個人単位かクラス単位かによって大分変わってくるのだが。

 と、まあこの学校のことについても大分わかってきたところで俺は星之宮先生に名前を呼ばれた。

 高校でもなんでも、登校初日にはどの学校も大体行われる所謂、自己紹介の時間を今は過ごしていたのだが俺の名前が呼ばれたと言うことはその順が回ってきたのだ。何も考えていないのだが無視して机に突っ伏すわけにもいかないので取りあえずは席を立つ。自己紹介と言えば、名前→趣味or特技→1年間よろしくプラスアルファというのが定型だろうか。

 俺はその定型を使うことにしたのだが言ってしまってはアレだが名前以外とくに説明をするものがない。趣味は……特にないしパスだな。特技は……これも自慢できるようなものはないしパス。

あれ、俺ってもしかして何も無い悲しい人間? いや、まて、何か一つくらいはあるはずだ。

 

 

 

 ひゃだ……なにも無いじゃない……!

 

 と、まぁ冗談はさておき流石になにもありませんでしたでは済ませられないので取り敢えずは先に名前を言っておいて後の事はその時に考えよう。

 

「田中誠だ。趣味や特技などで自慢出来るものは特にないがみんなと仲良くしたいと思っている。1年間よろしく頼む」

 そう言って俺が椅子に座ると同時か一瞬遅く、後ろの席の”綾小路清隆”が席を立つ。

 

「綾小路清隆。一年間よろしく」

超絶短文な自己紹介を済ませて席に座る。疎らな拍手が聞こえてくる他には、このクラス自己紹介発案者である一ノ瀬帆波の小さな苦笑いが俺と清隆に分かるぐらいには聞こえた。

 

「清隆、お前そりゃないだろ」

「そうか? 大体こんなもんだろ」

「いや、ほら…もっと自分の特徴とかさ」

「俺に特徴なんてないのはお前もよく知ってるだろ」

「そうだけど……んー、あー、清隆のアホ」

「なんでそうなるんだよ」

 

 変わりに俺が清隆について説明すると、基本は”事なかれ主義”を主軸として行動している所謂、めんどくさがり屋なのだがふとある時にそのめんどくさい出来事に巻き込まれてしまう不幸体質である。が、それを意図も容易くクリアしてしまう”実力”が清隆にはある。”ホワイトルーム”で俺に並ぶ最高傑作と言われた男だが未だに俺でも分かっていない事があるほど難しい男だ。まあ、影が薄いと言われてしまえばそれはそれでそうなのだが。 

 短絡的な自己紹介が終わった所で星之宮先生によって解散が告げられる。今日は入学式だけという事でこの後の予定はなにもない。寮制であるこの学校の周辺は一つの町のようになっておりそれがここの敷地内となっている。なんなら今からカラオケでもゲーセンでも行き放題。それが”最初”の試練だ。

 星之宮先生の話の読み取りを俺が誤っていなければ来月に今月と同じポイントが確定的に入る要素はない。少しでも節約しておくのが頑丈な橋を作っていく一つのコツにもなるだろう。画して俺は渡されたプリントに書かれている自分の部屋番号を見てそこを目指すことにした。

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