ようこそ事なかれ至上主義の教室へ   作:田中ハーレム

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8年ぶりらしい

 自分の部屋の番号付近のところにたどり着いたところでふと気づいた。そこは確かに自分の部屋であろう場所なのだが一人の少女が通せんぼしていたのである。

 

「一ノ瀬……だったか?」 

 

クラス内では結構目立っていたためフルネームで覚えていたのだが若干の気恥ずかしさから記憶はあやふやなことにしておく。いや、なんか恥ずかしいじゃん女子の名前呼ぶの。分かれよ。

 すると一ノ瀬が待っていたといわんばかりにこっちを振り向く。

 

「田中くんやっときたぁ、どこか寄ってたの?」

「いや、生活必需品と今晩の夜食を買いに行ってただけだ」

俺の手元には複数のカップラーメンと生活用品の入った二つの袋が握られている。

「偶には自炊しないとだめなんだよ?」

「どうにも苦手でな」

 

嘘だ。別に苦手ではない。めんどくさいのだ。大事なことだからもう一回言う。めんどくさいのだ。ポイントの話もあるしいつかは節約のためにしようとか考えているが今はめんどくさいのだ。そういうことにしておいてくれ。

 

「ふーん」

 

そういうと一ノ瀬が視線を落とす。女の ふーん ほど怖いものはない。この先何が待っているのかとビクビクと返答を待っていると彼女が自ずと口を開いた。

 

「Sシステムについてどう思う?」

「どうって?」

「やっぱり毎月10万ポイントの配布っておかしいと思うんだよね」 

 

そういうことか。確かに一般高校生に毎月10万円給付していると考えれば現実的にあり得ない話だ。星之宮先生の話では毎月ポイントがもらえるとしか確定事項として話していなかった。すなわちもらえるポイントは変動する、と俺は推測したのだが合っているのかはわからない。もしかしたらただの勘繰りすぎかもしれない。

 

「俺の見解だから会ってるのかは知らないが、おそらくポイント自体は毎月もらえるけどそれは10万ポイントではないと思う」

「というと?」

「これからの授業態度や成績でもらえるポイントが減らされるんじゃないかってことだ」

「なるほどね」

 

暫し考えるしぐさをすると一ノ瀬は言った。

 

「ありがと田中君」

「おう、こんなもんでいいならいつでも聞いてくれ」

「うん!頼りにしてるね」

 

また明日。そう言って彼女は去っていった。 これが俺と一ノ瀬の始めてのエンカウントである。

ポイントの件は時が来ればわかることであろう。

 俺は部屋に入る。別に特段普通で学校中に監視カメラが仕掛けてあったようにこの部屋にも仕掛けられているのではないかと身構えたのだがそういうわけでもないらしい。健全男子高校生の私生活など部屋に戻ったらオ〇ニーや自慰行為、センズリの他に異ならないので監視カメラがあろうものならナニが映るのかわからないのでありがたい話である。

なんだか夜食を食べる気を失ってしまった俺は45って風呂入って寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日はポイント支給日。結果から言うと俺の推測は当たっていた。クラスポイントは最大1000で10万ポイント支給される。今回はAクラスが940ポイント、Bクラスが650ポイント、Cクラスが490ポイント、Dクラスが0ポイント。まぁつまり、俺たちのクラスは65000ポイント支給されて気の毒なことにDクラスは0ポイントが支給された。気づいた方もいるのだろうがクラスは優秀な順にアルファベットで分けられているらしい。つまりAクラスが一番優秀でDクラスが一番平凡、というかは不真面目。そして俺の前にはAクラス様出身である”坂柳有栖”がいるわけだ。

 

「……お久しぶりですね”誠”君」

 

 彼女の存在はしっていたし、時折こちらを眺めてくる情熱的な視線のおかげでなるべくエンカウントしないように気を付けていたのだが、運命とは非情なようで。というか俺は会ったこともないし話したこともないのだが彼女の脳内保管で下の名前で呼ぶほど仲が良かったことにされているらしい。

 

「8年ぶりですね」

 

かわいらしい仕草でそういう彼女を目の当たりにして少々滅入ってしまいそうだ。なにそのストーカー発言。とてもとても怖いのですが。

 

「綾小路君にもよろしくと伝えておいてください。ではまた機会がありましたらゆっくりとお茶でもしながらお話ししましょうね」

「……あぁ」

 

先天性心疾患の影響らしく杖を携帯している彼女は危なっかしく教室へと向かっていった。

 もしかするともしかしなくても俺の平穏な学園生活はたった今失われようとしているのかもしれない。

そう思うと今後のことを考えてげんなりしながら俺は教室へと、重い足を動かした。

 

 

 

 

 

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