ようこそ事なかれ至上主義の教室へ   作:田中ハーレム

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中間試験編
赤点集団と龍園翔


 

 それは中間試験の少し前の日のことだった。最初は櫛田の愚痴からだったのだがどうやらDクラスのテスト赤点候補者のための勉強会があまり上手くいっていないらしい。因数分解もできないようなチンパンジーが多数出現しているらしくそれだけでも頭が痛くなるのだが何やら勉強会を放棄してバスケをしに行ったり部屋に帰ってゲームしたり、はたまた櫛田ちゃんがデートしてくれるなら勉強するだの訳の分からないパンくんの模範的行動をしているらしくその解決のために俺たちは櫛田に駆り出されていた。

 

 

 

 

「一之瀬帆波です。今日はよろしくね」

 

 周りの猿どもが いぇー! と盛り上がる中俺達はただただ冷静だった。

何がどうなっているかと言うと、最初は俺と清隆で勉強会を手伝おうとしたのだがこの池と山内と須藤の赤点クソゴミ集団は女の子のお話じゃないと聞く耳持たずなのだ。つまり、そういうわけで一之瀬に焼き土下座しながら必死に懇願した結果念願かなってDクラスチンパンジーお世話係の一之瀬帆波が誕生したわけだ。

一応図書館だからあまり盛り上がってほしくはないのだが言っても聞くわけないので俺と清隆は隅っこで本でも読んでいることにした。今回ばかりはどうしようもできん。いやまじで。

 ふと、チラリと横を見ると見るからに不機嫌そうな顔でDクラスのチンパンジーを眺めている少女と目があった。

 

「貴方もアレと同じ?」

「一緒にしないでくれよ」

「……そう」

 

それだけ聞いて興味を失ったのか彼女は本に目を戻した。

この不機嫌そうな顔をしている容姿が無駄に端麗な彼女は“堀北鈴音“と言うらしい。なんでも≪Aクラスに上がる≫を信条に掲げているらしくその言葉通りお荷物集団を引っ張って行くために初めに勉強会を実地した彼女だったがあまりのチンパンジーぶりに呆れて赤髪パンジーの須藤と口論の果てにブチギレて勉強会が一度崩壊したそうだ。それを取り持ったのが我らが櫛田桔梗でそこからは今の展開に至る。まぁなんというか、可哀想な娘だ。他のDクラスの人間がどう思っているかは知らないが中にはこうやってAクラスを目指している人間もいるのだからせめて素行と点数くらいは改めて欲しいものだな。いつまでも0ポイント縛りだと流石に他の人間が可哀想だし。

 

「なぁ堀北、Dクラスは楽しいか?」

「何を言ったかと思えば……楽しいわけがないでしょう」

 

最初はツンデレどころかツンツンレベルで話しても口汚く罵られるだけだったが数日経ってみればこのように会話が成り立つレベルには昇格していた。人間の成長って素晴らしいね。

一つ、彼女に提案してみよう。

 

「クラスポイントで買えないものはないらしいぞ」

「……! あなた…」

 

何が言いたいかと言うと、"クラス移籍の権利を買う" ということだ。いくらするかも分からないししもしかしたら普通の生徒を演じている限り到底到達できない金額かもしれない。だがしかし、そのクラスを脱退したいと言うのならばそれが一番可能性の高いことであろう。

隣の清隆とも目が合う。相変わらず何を考えているか分からない顔をしているが俺の言わずとしていることが分からない彼ではない。

 

「2000万ポイントらしいぞ」

 

そう清隆が言った。……え、なんで清隆知ってんの?

 

「……どこのクラスの生徒かは分からないが話しているのを少し聞いた」

 

そっかぁ。それにしても2000万かぁ。自分で提案しといてなんだけど普通に無理かもしれん。

 

 その後は特に話すわけでもなく読書と自主勉強を交互に繰り返していたのだがしばらくして一之瀬が少し深刻な顔をしてこちらに来た。

 

「どうした?」

「いやぁ……ちょっと言いづらいんだけど、あのままだとこのまま勉強してても赤点を免れないっていうか……」

「そうか……」

 

いやまぁなんとなく分かってたけどね? それで俺たちにどうしろと言うのだね君は。いっそのことテストの点数でも買ってみるか? いや、Dクラスの全財産使っても買えるか分かったもんじゃないしそれはやめとくか。

 

「しょうがない一之瀬。時には諦めも重要だと思う」

 

苦笑いした一之瀬は「もう少し頑張ってみる」と言った。 お前は天使か?。

 

 そんな時だった。櫛田が言うにはCクラスの生徒だったろうか。名前は知らないが、須藤もとい、Dクラスの人間を「不良品」といきなり罵り始めそれに激怒した須藤と彼が今にも取っ組み合いを始めそうなくらいに口論になっていた。

 

「テメェ!もういっぺん言ってみろや!」

「何回でも言ってやるよ。この程度の問題も解けないお前らは不良品だとな」

 

あーあー、実にめんどくさい。やっぱり来るんじゃなかった。櫛田は困っていて一之瀬は何回か声をかけているが2人は止まる気配もない。

後に多少の騒動になっても俺たちが無罪だと難を逃れられるように、後の状況把握のために俺はスマホのボイスメモを起動すると一之瀬にスマホを手渡す。

 

「え、ちょ、田中君!?」

「これ以上うるさくされても迷惑だから止めてくるわ」

 

それ以上は何も言わず2人の元へと向かう。一之瀬も何も言わなかった。

いつのまにか集まっていたギャラリーの間をすり抜けて2人の元へと辿り着く。まずは須藤を説得してみることにする。

 

「なぁ、少し静かにしてくれよ。ここは図書室だぞ」

「あ? 誰だよお前。引っ込んでろや」

「……頼むから静かにしてくれ。周りに迷惑がかかってるんだ」

「うるせぇ、これは俺とこいつの問題だから引っ込んでろ」

「……」

 

そこまで喋ったところでついに取っ組み合いを始めた2人を見て呆れて通り越してもう嫌になってきた俺は、少々力技になるが2人を引き剥がすと廊下へと放り投げた。

 

「いってぇ!?」

「テメェ!」

 

2人は俺のことを睨んでくるが知ったことではない。一之瀬と清隆に「帰るぞ」 と言うと清隆すんなりついてくる。一之瀬は櫛田にごめんねと一礼するとこちらに来たのでスマホを返してもらうとボイスメモ閉じる。

 ピコンとスマホが鳴ったかと思うと櫛田から『後で屋上』とメッセージが送られてきた。あいつメッセージ打つの早すぎだろ。

 その後のことは知らないが、後に龍園翔というCクラスのリーダーらしき男が現れて問題を起こした彼を引きずって連れて帰ったと後の屋上パーティーで聞いた。まぁ兎にも角にも、これを機に二度と櫛田以外でDクラスの人間と関わるまいと俺は心に誓った。

 

 

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