率直なところ、他人に迷惑かけておいて未だに謝罪の一つもない須藤に腹が立ってるから素直に「はいどうぞ」と渡したくないという俺の心情がかなり優先されたのは事実だが、ここで一つ貸しを作っておけば今後何かに利用できるかもしれないというのもまた事実である。
Dクラスに貸しをつくってなんの役に立つかといえばそうでもないのだがどうせなら櫛田にでも作っておけば利用できる機会はあるだろう。
と、言うわけで櫛田の部屋へと来たわけなのだが。
「誠くん、お久しぶりですね」
櫛田はめちゃくちゃ顔が広いから知り合いでもおかしくはないだろうけど休みの日に部屋に呼び込んでチェスするような間柄なんて俺はこれっぽっちも聞いてないぞ。
「誠くんもやりませんか?」
しない。誰がお前みたいなストーカーとチェスするか。そんなことより早く用事を済ませて帰ろう。
「櫛田。この前の勉強会のことなんだが解決策を持ってきた」
「解決策?」
「ああ」
そう言って櫛田に清隆から貰った2枚のプリントを渡す。
「どちらもこないだの小テストと同じ問題だが片方は同時期に出題された過去問だ。右上にに年月が書いてあるだろう。つまるところこの学校は毎年同じテストが出題される可能性が高いからお前のコミュ力を生かしてポイントで上級生から過去問を回収してこい」
「へぇ……これ、田中くんが?」
「いや、清隆だ」
「ふーん」
そこに興味を持ったのか
「やはり、綾小路くんは侮れませんね。」
お、そうだな。ていうかめっちゃ普通に知り合いみたいな感じで話してるけどお前と俺たち面識は一切ないと思うんだが。
そんな俺の心情も知ってか、彼女は口を開いた。
「ホワイトルーム」
櫛田はハテナマークを浮かべているが、その一言で俺の警戒心を強くさせるには十分だった。
「お前…!」
「ふふふ、そう警戒しないでください」
「俺たちの事情を知っているならこれ以上関わるな」
俺たちは≪ホワイトルーム≫の“脱走者“だ。この外から干渉を受けない高校なら暫くは安全に過ごせると思っていたのだが、既に刺客は送られてきていた。目の前の坂柳有栖という女はもしかしたらとんでもないレベルでやばい女なのかもしれない。
「まぁそう警戒しないでください。事情は分かりませんが少なくとも私はあなた達と好意的な関係を築きたいと思ってます」
ニコニコと笑みを浮かべながら言っている彼女。事情は分からない? ならなぜ俺たちの過去の事を知っている?。だが少なくとも
「言ってろ。言っておくが俺たちはホワイトルームに戻るつもりは毛頭ないからな」
そう言うなや否や俺は櫛田の部屋を後にした。