同じ艦娘同士仲良くしようよぉ…(´Д⊂   作:蒙古襲来

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第2話

 

 「よかったら私たちと一緒にご飯食べない?」

 

 その申し出はあまりに突然で、あまりに予想外なものだった。そしてその一言がどれだけ周りをざわつかせ、戦慄させたことか。電を憐れむような視線はより一層悲壮感を増していくばかりで、電自身も周りの反応にキョトンと首を傾げている。

 

 「………」

 

 周囲の空気を察したのだろう、精鋭部隊を代表してお誘いをした神風は顔を俯かせ、キレイな赤い前髪が彼女の表情を隠した。しかし自身の発言が周りを騒めかせた原因になっている以上、顔を下げたままではいられないと責任を感じたのだろう。神風はすぐに顔を上げて今の言葉は忘れてと発言を取り消そうとした。

 

 だが………

 

 「もちろんなのです!」

 

 「…えっ?」 

 

 電の返答に思わず神風だけでなく、神風の後ろで控えていた精鋭部隊の面々、さらには周りにいた艦娘たち全員が目を丸くした。

 

 「…実はこの鎮守府に来て間もないのです!だからお友だちが出来て嬉しいのです!」

 

 「お、おともだち…?」

 

 キャッキャッと喜ぶ電を前に神風は自身がどきどきしていることに気が付いた。まるで胸にポッカリと開いた穴をゆっくりと満たすように…暖かかな気持ちがじんわりと浸透していく。

 

 「さ!早く行くのです!電、もうお腹ペコペコなのです!」

 

 「きゃっ!?ちょ、ちょっと!」

  

 さっきまで神風のお誘いにキョトンとしていたはずの電はどこへいったのだろうか、見違えるほどに積極的になった彼女は神風の手を掴んで食堂の方へとグイグイ引っ張っていく。その一方で、電に手を引かれる神風はひどく慌てた様子で、なぜか彼女の赤髪と同化してしまうくらいにその顔を赤くしている。

 

 「待って!放して!」

 

 「…?」

 

 神風の発した大声に再び周りがざわめいた。そして電から放された手をサッと引っ込めると、引っ張られたことで少々乱れてしまった振袖を直しながら神風はすぅすぅと呼吸を整えているようだった。

 

 「神風お姉さま…」

 

 神風の背中に張りつくように付いて来ていた残りの精鋭部隊メンバーは、自分たちの姉が激しく動揺しているのを心配しながらも、お友だちと言われた時に感じた胸の高まり…言いようのない初めての感情に各々困惑していた。その為、目の前ですぅすぅ深呼吸している姉に掛けてやる言葉も見当たらず、同じように()()()乱れてしまった呼吸をすぅすぅ整えることしか出来ないのであった。

 

 「…どうしよう

 

 「ん?どうしたのです?一緒に食べるんじゃないのです?」

 

 「………」

 

 姉妹たちの視線を背中に受けて口をモゴモゴさせていた神風だったが、電が嬉しそうに自分の言葉を待っていることや周りの好奇の視線に耐えきれなくなってしまい、ついに………

 

 「ふ、服が汚れてるからあとで待ち合わせましょう」

 

 と声を震わせながら告げるので精一杯だった。

 

 □□□ 

 

 「おともだちかぁ…!」

 

 電に言われた一言を呟く度、思わず神風の表情は緩んだ。

 

 電たちの前から逃げるように立ち去ったのがつい一時間前のことだ。ドックで血に染まった体を洗い流した神風型一同は約束の時間が刻々と迫る中、どうにも落ち着かないようで………

 

 「髪、ちゃんと巻けていますか?変ではないですか?」

 

 「ねえねえ姉貴、この服似合ってるかな?変じゃない?」

 

 自室に戻ってからは姉妹共々、いつもより念入りに身だしなみを整えることで頭がいっぱいになり、部屋の中を意味もなく歩き回っていた。

 

 「まさか本当にお友だちが出来るなんて……泣いてしまいそうです」

 

 「泣いたら駄目よ、旗風。せっかく友だちが出来た記念日なんだから!」

 

 「そう言う姉貴も泣きそうじゃないか…!」

 

 姉妹艦たちの浮足立つ様子を眺めながら、神風は今までのことを思い出していた。 

 

 姉妹一緒に鎮守府に着任し、大切な人たちを守ることに必死になっていたあの頃。神風型は最前線で深海棲艦を狩ることにとにかく力を注いでいた。

 

 『鎮守府を…!みんなを守りたい!』

 

 練度の低い艦娘も多数在籍していたからこそ、自分たちが頑張らなければいけないと全力だった。

 

 『………』

 

 神風型の努力もあってだろう、鎮守府は誰一人離脱者を出すこともなく、平和だった。

 

 『……あれ』

 

 しかしいつからだろう、神風型を見る周りの目は()()()に怯えているようだった。

 

 『…あっ』

 

 気が付いた。戦場でも、鎮守府に帰ってきてからも…神風型は血まみれだった。敵の返り血か、はたまた自分の血か…常に血を纏い、血に濡れていた。

 

 『神風型とは関わらない方がいいよ』

 

 いつからかそう噂されるようになった。それでも神風型は怒ったり、弁解したりすることはなかった。

 

 『頑張らなきゃ…。私たちが頑張らなきゃ…!』

 

 神風型は鎮守府の皆のことが好きだったのだから………

 

 「神姉さん、リボンが曲がってますよ!」

 

 「へっ!?いけないいけない!」

 

 妹の指摘にハッとし、我に返った神風は慌ててリボンを直そうと後ろに手を回そうとした。

 

 「………」

 

 そしてリボンを結い直しながら、ふと電の言葉を思い出す。

 

 お友だちが出来て嬉しいのです!

 

 「…えへ」

 

 あの時、電は初めて見る顔で、ほんの少し…ほんの少しだけ言葉を交わすつもりだった。もしかしたら怖がらせてしまうかもしれない、無視されてしまうかもしれない…。そんな思いも神風にはあったが、どうしても話し掛けてみたかった。

 

 血だらけの自分たちを見ても受け止めてくれた初めてのおともだち…。

 

 「神風姉!早く!約束の時間に遅れちゃう!」

 

 「あ、待って待って!」

 

 見ると姉妹艦たちは支度を済ませたのか、ソワソワしながら神風を待っていた。待ってと声を掛ける神風の声はどことなく弾んでいる。

 

 いつもより少し固く結んだリボンを揺らしながら、神風たちは初めての友だちの元へと急ぐのだった。

 

 




電の語尾を!からwに変えると煽っているように見える件。
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