ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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え~、約一年ぶりですか。放置していて本当に申し訳ありません。
いろいろとありまして少々書く気力が逸していました。

さらに申し訳ないのですが、今後もしばらくは定期的な更新は難しいかと思われます。

このようなグダグダな状態で心苦しいのですが、もしお付き合いしていただけるのなら、これに勝る喜びはありません。
今後もよろしくお願いします。


挿話4 日常 シロナ

 みなさん、こんにちは。シロナです。

 私がいない間に、ヒカリちゃんたちが三つ目のバッジをヨスガシティで手に入れたみたい。

 ただ、そのレリックバッジを賭けたジム戦で、私はユウト君と旅に同道していたヒカリちゃんに、ポケモンの知識等において結構な割合で水をあけられたと感じ取った。

 

「そりゃあ、マンツーマンで叩き込まれているみたいだから、そうなのかもしれないけれど」

 

 やはり、悔しいものは悔しい。

 二人はこの後、ヨスガから東のズイタウンの方に向かうのではなく、南からノモセシティに向かうことにしているという。

 私はこの二人と一緒に旅をすることにした。

 

 というわけで、今回は私たちの旅の道中でのとある日の様子を紹介したいと思います。

 それではどうぞ!

 

 

 * * * * * * * *

 

 

[その一 ポケモンゲット]

 

「あ~あ、ツイてないなぁ……」

「はぁ、やれやれだ……」

「まあ、こんなこともあるわよ、元気出して! ね、二人とも! あ、ほら、二人とも新しいポケモンもゲットできたじゃない! ねっ!」

「ポチャポチャ」

「ラルラル」

「まあ……」

「それはそうですけど……」

 

 今私たちは、この東西に真横に伸びる222番道路を西の方角に向かって歩いている。ひとまず目的地はリッシ湖畔のホテルグランドレイクだ。

 で、この二人、ヒカリちゃんとユウト君は一見すれば肩にジメジメとしたキノコが生えていえるのではないかというほどに、肩を落としてトボトボと歩いている。そんな彼らのポケモンはというと、自分のパートナーのあまりのその様子に「元気出して」とばかりに慰めている。

 なぜこんなにも二人が沈んでいるのかという理由だけど、いろいろ省いて簡潔にいってしまえば、ジム戦が出来なかったためである。

 トバリを出て次のジムがあるノモセシティでは、ジムリーダーのマキシさんはつい先頃カントーに出かけたらしく、不在。

 仕方なく、そこから一番近い、ジムがある町のナギサシティに向かうと、なんと停電により、町にすら入れず。

 ジムのある町と町の間が長いために、それを旅してきた労力を考えると確かに不憫にも感じるけど、こうも落ち込まれると……。

 なにか気を紛らわせるには……――!

 

「ねっ! 見て、二人とも!」

「「え?」」

 

 私が指さす先を見てくれた二人。

 そこにはピンクの羊といってもいいポケモンが腰をおろして木の実を食べていた。

 

「コモモコ~」

 

 さらにあの木の実の味がよっぽど好きなのか、一噛みするごとに頭部と首元のモコモコとした白い体毛と尻尾の先の青い玉が揺れる。

 

「かっ、かわいい~~~!!」

 

 その様子にさっきまで沈んでいた二人のうちの一人が大復活。

 

「ねっ! シロナさん、ユウトさん! あたし、あの子ゲットしたいんですけど、いいですかッ!?」

「いいわよ」

「……うん、いいと思うよ! しっかりね!」

 

 その元気の良さに引っ張られたのか、もう一人も先程の空気は既に放り捨てて彼女を見守る体勢にいた。

 ポケモンゲットには、まずバトルで相手を弱らせるのが必要不可欠。たから、ヒカリちゃんたちはバトルを仕掛けるべく、とびだした。

 

「よーし、ポッチャマ、頼んだわよ!」

「ポチャア!」

 

 って、え? ポッチャマ?

 

「ポッチャマ、バブルこうせん!」

「ポチャ! ポッチャアァァ!」 

 

 そのまま、ヒカリちゃんの指示の通りに飛び出したポッチャマがバブルこうせんを放つ。バブルこうせん自体は効果いまひとつではなく、普通に効いていた。

 

「んー、ま、これもいい勉強かしらね」

「ええ、ヒカリちゃんもいい経験になります。自分で体験して学習するものに勝るほどの、自分の中に定着する知識というものはありませんから」

 

 私もその考えには賛成だ。トバリからヒカリちゃんを見てきて、私が思ったことがある。確かに彼女はよくよく彼に習い、実践してきただろう。もちろん、知り得た知識を有効に使えることは大変素晴らしいことだ。ただ、ヒカリちゃんの場合、その、頭で知った知識がやや先行し過ぎているきらいがある。

 そして、それを活かしていることによって(もちろん知り得た知識を有効に使えることは大変素晴らしいことだが)、彼女の中には『失敗の経験』というものが少ないのではないか、と思う。ユウト君もそれがわかっているのか、私の隣りに来て、そう言いつつ成り行きを見守っている。

 

「モッコ~」

 

 バブルこうせんが直撃したモココは途端、険しい顔つきになった。白い体毛からビリビリと電気が空気中に放電される。

 

「え、うそ、まさか?」

「モーーコーーー!」

 

 ヒカリちゃんはようやく自分の失敗に気がついてようだけど、一足遅く、そのまま、あのポケモンのほうでんが決まった。

 

「……ポ、チャ? ポ、ポヂャヂャ……」

「ポッチャマ? 大丈夫、ポッチャマ!?」

 

 ポッチャマの体からは絶えず、電気がビリッ、ビリッと走って、ポッチャマ自身体があまり動かないようだった。いや、()()()()のだろう。

 

「ヒカリちゃん、ポッチャマを下げて別のポケモンを出すのよ!」

「ああ! ポッチャマは今のほうでんの追加効果でマヒしているんだ! ここは変えるべきだ! それから図鑑!」

 

 今の話でポッチャマの状態を納得したのだろうヒカリちゃんが、慌ててポッチャマをボールに戻す。

 

「あっ! えーと、えーと! ずっ、図鑑、図鑑!」

 

 取り出した図鑑をあのポケモンに向ける。

 慌ててポケットから取り出してしまったためか、中に合ったハンカチまでも落としていたのが見えた。

 

『モココ わたげポケモン

 フカフカの体毛は電気を溜めやすい。

 また、そこに溜めた電気が満タンになると尻尾が光る。

 自分が痺れない理由は、電気を遮るゴムのようなツルツルの肌を持つため。

 体毛に溜めた電気が満タンになると尻尾が光る。             』

 

「ということは、あのモココとかいうポケモンはまさかの電気タイプ?」

 

 『しまった』という顔色になると同時に、自分のミスに気がついたヒカリちゃん。二体目として、コイルを繰り出した。

 

「コ、コイル、たいあたりよ!」

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 結果を述べると、無事、ヒカリちゃんはモココをゲットした。

 ただ、ユウト君からは

『まずは図鑑で情報を調べるのが先って言ってんだろ、ボケッ!』

という言葉

「いや、そんな汚い言葉、一っっっ言もいってませんから!!」

……と叱られている場面があった。

 

「そこ大事なとこじゃんよ! さらっと、流すなよ! 腹黒すぎだろ、クロナさんよぉ!」

 

 

 コホンコホン

 

 まあこんな風なポケモンをゲットするのはそうしょっちゅうあることでもないのだけどね。ヒカリちゃんは優秀ですよ?(ちなみにマヒしたポッチャマはユウト君が持ってたクラボの実とおいしい水で回復させました)

 

 では次の場面にいきます――

 

 

 * * * * * * * *

 

 

[その二 座学①]

 

「じゃあ今日からは新しい内容としてコレのことについてのお話もしていこうかと思います」

 

 そう言ってユウト君の両手のひらの上に乗るものは――

 

「これって木の実、ですか?」

 

 ヒカリちゃんの言うとおり、それらは木の実だった。二つあった木の実の内、一つは三、四センチくらいの緑色の木の実で、もう一つが十センチ近くある洋梨みたいな形をした木の実だ。

 

「小さい方はラムの実で、大きい方はオボンの実ね。どっちも随分珍しい木の実だわ」

「正解。流石シロナさん。ミロカロスを育て上げただけのことはありますね」

「ポフィンを作る過程でたまたまよ、たまたま」

 

 ミロカロスへの進化には、ヒンバスの美しさをポフィンで上げる必要がある。ポフィンの材料は木の実なため、いろいろ調べたことがあっただけのことだ。

 

「とりあえず、基礎については粗方話してきました。ですので、これからはそこから少し発展させたものについての話をしていきましょう。まずは“持ち物”についてです」

 

 『発展させた』といっても、まだまだ基礎という土台の上といったところは否めないと感じるのは、きっと正解だろう。

 ユウト君は、私たちに比べれば、明らかに『ポケモン』のあらゆるカテゴリにおいての事実や現象などに造詣が深い。

 だから、私たちが彼に追いつくためには、まず、彼と同じように、ポケモンについてより深い段階で知っていかなければならない。

 ということで、私たちはこの時間を、その知識を得るための時間としている。ちなみにこの時間は、当たり前だが、毎日欠かさず取っている。午前と午後、そして夜といった具合に、日に三度取ることもざらだ。

 

「持ち物、誰が持つかは当然ポケモンですが、これを持たせることによってバトルの質がガラリと変わってくるんです。尤も今は『アイテムの使用禁止』というルールに抵触するおそれがあるので、非常に残念ながらできませんが」

「そういえば、あなた以前リーグで言っていたっけ、『今のポケモンバトルはあまりに面白さに欠ける』って」

「えぇ、そうですね」

 

 私はそこでユウト君の言葉が思い出された。

 

――ポケモンバトルというのは単にポケモンの実力だけでなく、トレーナーの知識や判断力、それから洞察力も大きく勝敗に寄与しています。

――如何に相手のポケモンとトレーナーの様子から相手の手札を読んで、如何にそれらを崩すか、逆にこちらの手札を如何に読ませずにバトルを自分の思い描く展開に持ち込むか。これらはポケモンの実力よりもトレーナーの力の方に重きが置かれます。

――だから、そこに戦略の幅を狭める(持ち物を持たせない)のはバトルが単調したものに陥り易いんです。

 

 例えば、でんじはで麻痺にする。麻痺は相手の動きを阻害するので、それを起点に攻め上げるという戦略を立てていたならば、攻める方はあとは一気に戦局を有利な方向に傾けてくることだろう。麻痺を回復させる手段は数える程しかなく、その行動に対する対処もし易い。

 だけど、ここに『持ち物』を持ち込んだとする。例えばクラボの実なら、ポケモン自身で使える上に、ノーリスクなため、攻め手側が考えていた『麻痺させてから攻撃』という戦略は崩れる。

 崩された戦略(ペース)を立て直すことは容易ではない。だから、攻められた方は攻め手の崩された戦略の隙を突いてのカウンターで、シーソーを逆に傾けるということも出来るだろう。

 そして何も持ち物は無数とは言わないまでも、相当数あるハズだ。私が知っている木の実だけでも三十は下らない。

 今までのタイプ相性やレベル・技の威力で相手を読むだけでなく、持ち物とそれに付随するであろう戦法や対策も読む。

 なるほど、『持ち物』という選択肢を一つ加えただけでこれほど、バトルの読み合いと洞察がより深くなる。

 

「下手すると、持ち物たった一つでバトルの流れが完全にひっくり返ることもあるんですよね。だから、優勢劣勢どちらの側でも最後まで手に汗を握る緊張感を保てます。ついでにそれをやられたときの『ウソだろ!?』って驚きと、それをやったときの『よっしゃー!!』って快感は堪らないものがあるんです! 二人ともこの味を覚えてしまえば、もう絶対にクセになりますよ!」

 

 ……ふふ。

 あんまりにも楽しそうに話すものだから、何だか想像するだけでも『早く知りたい』っていう逸る気持ちが抑え切れないかも……!

 

「何だかユウトさん、子供みたい」

「ふふ、そうね」

 

 私は、いえ、私たちは、このときの彼の輝かしい顔を忘れることはなかった。

 

 

「ポケモンに関係する木の実は現在六十四種類確認されています」

「六十四もですか!?」

「そんなにあるのね。知らなかったわ」

「尤も、例外は存在しますが、このうちバトルで使えるものや使えても使い勝手が相当悪い、あるいは使い所があまりに限定されているものを除くとなったら、結構減ってきます。ではそれぞれの効果を見ていきましょうか。もちろん知っていることもあると思いますが、ここは一つ一つ確認していきますね。まずはこのオレンの実――」

 

 持ち物はたくさん種類があり、それによって様々な戦術が構築できるようだけど、私たちはまずどんなものがあるのかを知らなければならない段階。

 ということで、その後も、いちばん身近であろう木の実を用いた『持ち物講座初級編(その一 木の実)』が続いた。

 

 

 ――つづいて――

 

 

 * * * * * * * *

 

 

[その三 座学②]

 

「今日はどの子にします?」

「私はこの子にするわ」

 

 そう言って私はモンスターボールの口を片手で上下に開くような形で開ける。

 すると中から光とともに一体のポケモンが現れた。

 

「ヤァ~、ド~……」

 

 飛び出てきたポケモンはやや大きく口を開けながら、首を傾げて私を見上げてきた。

 

「お~! ひょっとしてオレが上げたタマゴのですか?」

「そうよ。でも、ついこの間に孵ったばかり。ヒカリちゃんに次いで二番目ってとこね」

「そうですか。俺のもらったタマゴはまだ時間がかかりそうでしたね」

 

 なぜこんな話になるかというと、私たちは自分の持っていたタマゴを交換し合ったという経緯がある。ちなみにヒカリちゃんは、まだポケモンのタマゴも持っていない上、初心者ということもあり、私とユウト君から受け取るだけだったりする。

 

「ヤァァ、ド~……」

「ラル」

 

あら、ユウト君のラルトスが私の元に来た。

 

「ル? ラル、ラル~」

「ヤ、ド~」

 

 どうやら、挨拶を交わしていたみたい。

 

「ヤァァ~ド~」

 

 にしても、このノンビリ具合、相当癒やし系の部類よね。とってもかわいいわ。

 

「さて、それじゃあ始めましょうか」

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 ユウト君が言った、『何を始めるか』について。

 

「ねぇ、あなたは『このままでいたい』?」

「ヤ~……ド~……」

 

 コテンと首をひねる姿がなんともスローモーションなのもまたいじらしい。思わず、頬が緩んでしまうのを感じる。

 ただ、答えの内容としては「わからない」と言いたいのかな。まだ幼いから仕方ないかもしれない。

 

「なら、まずはヤドン系列の特徴を把握する方がいいんじゃないですか?」

「そうするわ」

 

 私は彼の言うことに従うことにした。まずは私の手元にあるタブレット型コンピューターに目線を落とす。ちなみにこれはユウト君から借りたものだ。

 その画面にはいろいろなカテゴリが並んでいたが、そこから私はヤドン、ヤドラン、ヤドキングの画面をそれぞれ呼び出した。

 まず、目につくのは図鑑番号や画像、おおよその身長や体重といった、調べれば世間に出回っている情報。さらに指をスライドさせていけば、種族値や努力値、進化条件や特性、覚える技、さらにはなんとオスとメスの比率までが事細かに詳しく記載されていた。

 ――ん?

 

「ねえユウト君、特性の欄に『さいせいりょく』ってあるけど、これってひょっとして?」

 

 ここ数年、既知のポケモンに新たな特性が発見されるということが相次いでいた。ヤドランの特性はたしか『どんかん』と『マイペース』だったはずだから、やっぱり――?

 

「そうです。通常はなかなか見られないので、“隠れ特性”なんて呼ばれていますね。ヤドン系統の場合、『さいせいりょく』が隠れ特性です。ちなみにシロナさんのこのヤドンは恐らく隠れ特性ですよ」

 

 そうなの!? なんとまあ、貴重なポケモンを貰っちゃって申し訳ないというか。

 

「いやいや。オレ、結構楽しみなんですよ、シロナさんがこの子をどんな風に育て上げるのか?」

 

 そこには、どんなバトルが繰り広げられるのか、さも楽しみだという感情がありありとこもっているように感じられた。

 

「あら! そんなこと言われたら、シンオウチャンピオンマスターの名に掛けて応えなくちゃね」

 

 そう。普通とは違う、この特別な子に期待を掛けられているということは、なぜかとてつもなく、気分が高揚してしまった。是が非でもこの期待に応えたいと、本気でそう思った。

 

 

 さて、話は戻して他に目に付くところは――

 

「んー、やっぱり素早さの低さが結構特徴的よねぇ。でも、その分、他が優秀ね」

 

 エスパータイプなので、特攻が優秀なのはさておき、素早さの種族値が相当低い分、その低い値が防御や特防にまわっている感じがする。

 

「そうですね。元々HPも優秀だから、防御や特防に特化すると、相当硬くなりそうです」

 

 そうだ。それに、素早さの低さは逆に強みになったりすることもある。えーと、たしか――

 

「トリックルームですか?」

 

 そうそう、それ。トリックルーム。たしか、少しの間、素早さが逆転する(素早さが低いほど速く動ける)んだっけ。だから、一概に素早さの低さが欠点とはならない。

 

「うーん」

 

 少し離れたところではヒカリちゃんも、タブレット片手にウンウン唸っているのが見える。いつもは私みたいにいろいろと助言されたり討論をしながらやってるらしいけど、今日は自力でどこまで考えられたか試すとかいうみたい。(ユウト君があとで討論するとか言ってた)

 

「あら、この子は結構いろんな技を覚えるのね。随分器用だわ」

「そうなんです。オレだったら、サイコキネシスやなみのりだけでなく、だいもんじで意表を突いてみたり、ひかりのかべやでんじはで後続のサポートをしてみたりとか、いろいろやりますかね」

 

 

 こんな感じで、一体一体のポケモンに将来性やどんな攻撃や戦法があるかなどの討論と最後にまとめを行ったりする。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

[その四 バトル]

 

「ガブリアス、頑張って! こうなったら、最後の手段よ!」

「ガ、ガブッ!」

 

 今日の最後は今日のおさらいを含めてのユウト君とのバトル。今回手持ちはそれぞれ三体。私はほぼエース級を連れていた。けれども、既にもう三体目。ライボルトとルカリオはダウン。

 

「ヤドラン、一旦体力回復だ。なまける!」

「やどー」

 

 一方ユウト君はヤドランとエアームドとあと残り一体。三体目はまだ見せていない。

 

 今回のバトル、私のパーティはエアームドのほえるやまきびしという技で三体全て引き摺り出されて引っ掻き回されて、ガタガタになった。それでもなんとか、エアームドはライボルトの10万ボルトやガブリアスのかえんほうしゃで倒したものの、

 

「ヤドラン、どわすれ!」

 

そこからは当にヤドランの独壇場。なんでって、ヤドランは結構防御が高いから物理攻撃はあまり目立ったダメージは与えられず、なら、弱点の電気や悪タイプはどうかというと、ライボルトのかみなりやルカリオのあくのはどうは、平気な顔して耐え切ってしまった。本当、このときは唖然としたものだし、あのかわいげのある顔が、今回ばかりはこちらをバカにしているように見えて子憎たらしく仕方なかった。

 ただ、ガブリアスに対してはユウト君もさらに警戒しているらしく、あのなまけるとかいう回復技らしき技でちょくちょく回復している。尤も、ドラゴンクローやりゅうせいぐんでも大ダメージは与えられなかったのだが。

 そこで私は最終手段として、

 

「ガブリアス、げきりんよ!」

 

この技を選択した。

 げきりんはしばらくの間、此方の指示を聞けなくなる上、げきりんが終わると疲れ果てて混乱するというデメリットがあるのだけど、威力だけは私のガブリアスの技の中では最強なのだ。正直あまり使いたくはなかったが、この際そんなことも言っていられまい。

 正直、ここでこのヤドランを突破しなければ勝ちは絶望的だ。逆に、ここを突破出来れば道が開けてくる可能性がある。些か厳しい賭けでも乗らざるを得ないわけで。

 

「耐えてくれよ、ヤドラン!」

 

 ヤドランも普段より気持ちキリッと顔を引き締めて(?)、どっしりと構えを取った。

 

「いきなさい、ガブリアス!」

「踏ん張れ、ヤドラン!」

 

 そして、そのままげきりんが決まる。

 ヤドランは倒――

 

「――よく頑張った、ヤドラン!」

 

れない――!!

 でも、げきりんは連撃技。一回耐えたところで二度目は――!

 

「お返しだ、ヤドラン! カウンター!」

 

 

 * * * * * * * *

 

 

「まったく。あなたってあきれるほど強いわね」

「いや、そんなことは……」

「私、一応これでもシンオウのチャンピオンよ? それがいいようにあしらわれるなんて」

「はははははー……」

「おまけに、あなた、今回は私に花でも持たせようとしたでしょ? エアームドのはねやすめって技、あれ回復技っぽいのに一回しか使ってこなかったし」

「はははは……」

「回復できるタイミングもあなたなら見つけられるのだろうし」

「ははは……」

「次からは手を抜かないでマジでやってほしいわね。なんだか余計に傷つくわ」

「はは……申し訳ありませんでした」

「シロナさん、もうこの辺にしときましょう」

 

 私たちはとある街道沿いのポケモンセンターの一室にいる。寝る前に今日のことの反省と明日の方針が主な話題だ。

 尤も、私自身やさぐれてどうしようもなかったけど。

 

「まあ、ヒカリちゃんの言うことも尤もね。今日はこの辺にしておくわ」

「ありがとうございます、シロナさん」

 

 正直、こんなのは単なるあてつけにすぎない。我ながら子供っぽいとも思ったけれど、今日だけは勘弁してほしい。

 

「もういいわ。じゃあヒカリちゃん、お風呂行きましょうか?」

「はい!」

 

 彼を尻目に私たちは部屋を辞した。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

 少しして隣のヒカリちゃんが問いかけてきた。先程のことだろう。

 

「どうなのかしらね。彼の強さに嫉妬してしまったのかもね。よくわからないけど」

「それ、すっごくわかります。ほんのちょっと上なだけの年なのになんであんなに強いのか。なんでそれだけポケモンのこと知ってるのかって思っちゃいますもん。あたしにポッチャマをくれたナナカマド博士より詳しかったりして」

 

 そう。冗談じみて言っているが、ユウト君のポケモンに対する造詣は想像以上に深いものがある。彼は一体どれだけの時間で、どれだけの努力で、それを身につけるほどに至ったのだろうか。

 そして知識を蓄えることは物事への理解へとつながる。私もここにきて、よりポケモンへの理解が深まったことを日々実感している。

 

――彼の見る世界はどんなのだろうか。

 

 おそらく私たちには見えていないものが見えているに違いない。

 私もいつかそんな世界を彼の隣りで――

 

「さっ、明日のためにリフレッシュよ」

「はい、シロナさん!」

 

 明日は明日。また頑張ろうという気概が沸々と湧いてきた。


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