ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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盛大にミスしていたので、修正しました


第10話 リーグ2回戦

『さあどんどん進めてまいりましょう! Bブロック二回戦次の試合です!』

 

 日替わりで実況の人が変わるらしく、今日はどうやら女性の実況らしい。今までは男性の実況しか聞いたことがないので、なんだかめっさ新鮮です。

 

『まずは赤コーナー! シンオウ地方キッサキシティ出身、ノゾミ選手!』

 

 すると、グラサンを頭にのっけたボーイッシュな女の子が出て来ました。

 

『ノゾミ選手はポケモンコンテストにも出場し、そして数々の優勝を飾ってきたトップコーディネーターという一面も持っております!』

 

 コンテスト優勝かぁ。そいつはすごい。オレはコンテストは全然ダメダメだからなぁ。いや、もちろんそれはゲームとかの話だけど、でもやっぱり実際コンテストは乗り気じゃない。興味が持てなくてねぇ……。

 

『次に青コーナー! ホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト選手!』

 

 ま、そんなのは置いておいて。いくか。

 

「(わたし、出たいんだけどなぁ)」

「いや、ダメだろ」

「(ケチ。わたし、まだこの地方で公式戦一回も出てないんだけど?)」

「四回戦でアイツと当たるだろ?」

「(あのワカメ以外にも出たい)」

「なあ、お前、ひかえめな性格だろ?」

「(これでも十分ひかえてるじゃない! 今までだってずっと自重してたんだから、たまにはやらせてよ!)」

 

 我ながらこのノリはどうなんだろなどと思いながらも、ゲートをくぐっていった。いや、緊張しないことはきっといいことなんですよ? そうですよね?

 

「(ほどよい緊張は頭の回転を良くするって言うわよ)」

 

 ……それもそうか。よし!

 

 パン!

 

 頬を両手で一回叩く。

 いっちょ、やったるか!!

 

 

 * * * * * * * *

 

 

「では、両者、ボールを構えてください」

 

 さて、オレの一番手はもうコイツで決めている。今朝本人に確かめてみたら、本人も気合十分。むしろ、「オレだけでバトル終わらせてやる!」という気合いが伝わってきたくらいだ。

 

『じゃあ、試合を始めちゃってください!』

 

 あ、いまのなんだかちょっとかわいい。ちょっと萌えた。って、そうじゃないですね。

 

「あたしの最初のポケモン! アゲハント、レディーゴー!」

「ハーント!」

「ペラップ、キミに決めた!」

「ペラップ~♪」

 

 出てきたのはアゲハントにぺラップ。砂塵舞うフィールドで、共にはねをはばたかせて宙に浮かび、互いを見据えている 。

 

『さあ、双方最初のポケモンが出揃いました! ノゾミ選手はアゲハント、ユウト選手はペラップです! 相性では虫タイプのアゲハントと飛行タイプのペラップでは、ペラップの方が有利! ノゾミ選手はどのように対抗するのでしょうか! しかし、私、ポケモンリーグでペラップを使うトレーナーを初めて見かけました! 個人的には、ユウト選手がどのようにペラップを使いこなすのかも注目していきたいところです!』

 

 まあ、ペラップってなんというかあまり目立たないポケモンだからな。

 で、ペラップは飛行・ノーマルタイプのポケモン。しかし、飛行タイプならムクホークやトゲキッス、クロバットなんて有名どころがいたりするし、ノーマルタイプは強さならリングマやケンタロス、かわいいどころだったら、ピクシーやプクリンだっていることだし(ちなみにちょっとどうでもいいことなんだけど、ペラップの鳴き声ってゲームと同じらしく、本人が超気張っているのに「ペラップ~♪」って常にお気楽さを漂わせているから、なんだかすごく気が抜ける気がする)。

 

「戻って、アゲハント!」

 

 するとここで赤いレーザー光がアゲハントの全身を覆う。モヤモヤとそれが収縮したかと思うと、彼女の突き出したモンスターボールに吸い込まれていった。

 

『おおっと、ノゾミ選手、ここでポケモンの交代のようです! アゲハントをボールに戻します! はたしてどんなポケモンを繰り出すのでしょうか!?』

 

 戻したアゲハントのボールを腰に戻して今のものとは異なるモンスターボールを突き出す。

 

「一回戦、キミのバトルを見た。正直、キミは強い。だから、不利な相性では戦わない! ムウマージ、レディーゴー!」

 

 フィールドに投げ入れられたボールから魔法使いをややデフォルメしたようなポケモンが現れた。

 

『ノゾミ選手、アゲハントの代わりにムウマージを砂のフィールドに投入します! ノゾミ選手、これが二体目のポケモンとなります!』

 

 ムウマージ。タイプはゴースト単タイプだが、多彩な技を扱う。例えば、攻撃技では、ゴーストタイプは元より、10万ボルトやパワージェムなどのペラップにとって弱点となる電気や岩タイプの技の他に、草・エスパー・悪・氷・炎タイプを、補助技では、おにびなどの状態異常技から味方へのサポート技もこなせる。さらにはみちづれやほろびのうたなどで相討ちを狙うことが出来る上、ダメージを負えば、いたみわけで相手にダメージを与えつつ、自分も回復するという、まさに“魔法使い”という言葉を体現するポケモンである。

 

「ムウマージ、でんげきは!」

 

 さっそく、弱点技が飛んできた。これを食らうのはやはりよろしくないわけで。

 

「スピードスターで撃墜しろ!」

「ペラップ~♪」

 

 でんげきはもスピードスターも必中技の一つであり、必中技は文字通り、相手に必ず当たる技。これって、原理はさっぱり不明なんだけどいろいろと実験した結果、そのポケモンが指定した対象に勝手にホーミングして向かっていくものらしいということがわかった。だから、そのホーミングの対象を相手ポケモンではなく、『その技』という形できちんと設定すれば、

 

『ノゾミ選手、必中技でペラップの弱点でもあるでんげきはを指示! しかし、ユウト選手も同じく必中技のスピードスターでこれを撃墜しました!』

 

こういう使い方もできたりする。

 さて、ここは是非ともお返しをしなければ!

 

「ペラップ、おしゃべり!」

「ペラップ~♪ ペラップペラップペラップ~!!」

 

 ちなみにおしゃべりは混乱の追加効果がある、飛行タイプの音波攻撃である。音波攻撃は総じて、一度放ってしまえば、こちらは何もしなくても勝手に相手に届いていく性質があるらしい。考えてみれば実に真っ当な性質だと思う。

 

「ムウマージ、まもるよ!」

「マージ!」

 

 ということで、相手がおしゃべりを凌ぐ間、今のペラップは完全フリーであるから、

 

「ペラップ、アンコール!」

 

こんなこともできたりする。

 

『ムウマージ、つい最近判明したペラップ専用技であるおしゃべりをまもるで防ぎました! どちらもノーダメージ! さあ、この後両者いかなる攻防を見せてくれるのでしょうか!?』

 

 いかなる攻防を見せるのかって?

 

「ペラップ、まもるが切れるまでわるだくみ!」

「ペラップ~♪」

 

 ごめん、相手はもうほとんど詰みなんじゃないかな☆ もちろん、対処法はあるんだけど、相手はそれに気づいてないと思う。

 

「ムウマージ、もう一度でんげきはよ!」

 

 ムウマージは改めてでんげきはを放とうとする。しかし、うまくいかずに、またまもるを展開した。

 

「ちょっとムウマージ! まもるじゃなくってでんげきはよ! でんげきは!」

 

 ムウマージとしても、でんげきはを繰り出そうとはしているようだが、しかし、ムウマージはまたまもるを展開してしまった。

 

「ムウマージ、一体どうしたのよ!?」

 

 ここに来て彼女も異常を感じ取ったらしい。トップコーディネーターである彼女のトレーナーレベルは高い部類であり、また、今まで相棒として友達としていっしょに苦楽を共にしてきたはずのポケモンが言うことを聞いてくれない。ムウマージとしても何とかトレーナーの意に沿おうともがいているが、結局はまもるをしてしまい、徒労に終わっている。

 

『これはどうしたことでしょう! ムウマージ、いつまでたってもまもるしかしません! いったいどうしたことでしょうか!?』

 

 ……やっぱりアンコールって技は知られてないんだなぁ。

 まあ、この世界補助技ってあんま知られてないからムリもないのかもしれない。尤も、かげぶんしんとかまもるとかは相手の攻撃を防ぐのによく使われるから知られているみたいなんだけど。

 

「ムウマージ! なら今度は10万ボルト!」

 

 いや、残念ながら、それもムダ。アンコールってのは、使われるとその直前に出した技をしばらくの間ずっと使い続けるって技で、持ち物が使えない以上、アンコール状態を解除するには交換するしか手はない。

 

『バトルは硬直しています! ムウマージはまもるを続けたまま、ペラップは砂のフィールドに降り立ち、首を傾げながらただただ待ち続けています!』

 

 ちなみに砂のフィールドは足場が文字通り砂だから、重いポケモンは足を取られて思うようには動けないこともある。しかし、ペラップは鳥ポケモンであり、体重も二キロもないので、そんなことはなかったりもする。

 

「くっ、しょうがない! 戻って、ムウマージ! なら、ごめんね! アゲハント、レディーゴー!」

 

『ここでノゾミ選手、ポケモンの交代です! ムウマージを戻して、一度戻したアゲハントを再びフィールドに投入!』

 

 まあ、指示聞かないんじゃあ、そうするしかないわな。

 

「アゲハント、はかいこうせん!」

「ペラップ、ねっぷうではかいこうせんごと吹き飛ばせ!」

 

 宙に浮かび上がったペラップがその翼を力強く羽ばたかせ始めると同時に、熱を持った風が生み出される。それは段々と橙の色を帯び、そして、アゲハントのはかいこうせんが発射されるころには、見るからに高温の突風が巻き起こった。

 ほぼ溜めナシではかいこうせんを放てるあのアゲハントは相当のレベルのようだが、こっちはわるだくみ(特攻二段階アップ)をほぼ限界まで積んでいるので、特殊技の威力があり得ないほど高まっている。

 

「ハ、ハーント!?」

「ウソでしょ!?」

『なんと! ペラップのねっぷうがアゲハントのはかいこうせんを軽々と吹き飛ばしました! 凄まじい威力のねっぷうです! そして、そのねっぷうがアゲハントに迫ります! アゲハントは耐え切ることができるのでしょうか!? タイプ相性、威力共にアゲハントにとっては最悪! 絶対的ピンチです!』

 

 はかいこうせんは呆気なく弾き返したねっぷうは、直後、アゲハントを巻き込んだ。

 

「ペラップ~♪」

 

 本人は楽しそうにしているけど、ねっぷうの余波がこちらにも来ていて結構暑い! 思わず、額に浮かぶ玉のような汗をハンカチで拭った。

 

『す、すごい! フィールドを覆い尽くさんとするかのようにペラップのねっぷうが砂のフィールドに吹き荒れます! こんなねっぷうは私、初めて見ました!』

 

 ねっぷうは範囲攻撃でもあるから、フィールド全体を覆うなんて今のペラップなら余裕です。

 そしてなんていうか、この実況、いちいち私見が多いよね。それでいいんですか?

 

 さて、そんな中でねっぷうが治まった。見ると、砂がジュブジュブと溶けたような感じになっているところがフィールド中に散見されている。これほどの威力、かつ、アゲハントにとっては弱点であったわけだから――

 

「アゲハント! しっかりして! アゲハント!!」

 

 アゲハントは体のあちこちが黒こげの状態で仰向けになって倒れていた。

 

「アゲハント、戦闘不能! ペラップの勝ち!」

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「わるだくみなんて積まれたら、もうあのペラップは止まんねーぞ」

「ねー。これじゃあ相手選手がかわいそうな気がするわ」

 

 今の試合におけるあたしの感想は、シルバーさんとリーフさん、この二人の言葉に集約されていた。ていうか、このままならもうユウトさんの勝ちは確定だと思う。ノゾミさんて人には申し訳ないけど。

 

「だが、言ってしまえば、知らない方が悪い」

 

 うは。本当にグリーンさんて容赦ない。

 

「……グリーンって相っ変わらず、キッツイわね」

「リーフ、それは現実的と言ってもらいたいな。昔から言っているだろう? まあしかしだ。僕たちはあのペラップではないが、アンコールで封じられてから、いいようにやられてしまったこともあるから、あまり強くは言わない方がいいのかもしれないが……」

「ねー……」

「あぁ、苦い思い出だぜ……」

 

 ……グリーンさんたちも同じ経験があるんですね。それに、シロナさんも同じ感じで真っ白に燃え尽きていたこともたしかありましたっけ。

 

 ……ん?

 今ふと思ったけど、あたしってばユウトさんと会ってからの一年足らずで、グリーンさんたちがこれまでユウトさんに味わった戦術を見せつけられて勉強させられてたんだ。

 ……とんでもなくハードだったんだね(泣)

 いや。いろんなポケモンのいろんな戦術を目の前で肌で体感させられ続けた。そう思い直すのよ、ヒカリ! そうしましょう! 記憶の置換は大切なことなんです!

 ……ついでにそれと並行して行われる知識の授業でも、覚えられなかったら、ラルトスのサイコキネシスとかもらい続けたのは何に置き換えよう……。確かに罰があるのは集中を切らさないって点ではメリットもあるのかもしれない。……でもねぇ……ツライ。あんな緊張感はとってもいやぁ……(泣)

 それに今思うけど、ユウトさん、ラルトスはちょっとひかえめだからとか言ってたけど、あのラルトスは絶対ひかえめじゃないよね!? いやそりゃあ、最初はちょっとよそよそしかったけど、それやってるときって結構嬉々としてやってたと思う! てか、思うとかじゃなくて、断言できる! あれは絶対嬉々としてやってた!

 あのラルトスは絶対ひかえめじゃなくてSだ。 いや、Sなんて性格はないけど、絶対にSに間違いない!

 

(ヒカリ、あとでオシオキね)

 

 ビクッ!!

 

 そんな声が脳内に聞こえてあたしは思わずブンブンと首を振り、周りを見回した。

 

「どうしたんだ、ヒカリちゃん?」

 

 三人ともこちらを不思議そうに見ている。

 

「な、なんでもないですよ、なんでも。ハハハ……」

 

 あたしは試合が終わったら、即スタジアムから逃げ出そうって決意した。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「どうした、ラルトス?」

「(なんでもないわ。それよりユウト。今回は試合出るのやめとくわ)」

「そうか? わかった。じゃあ、このままペラップでいくぞ?」

「(ええ。フフフフフ)」

 

 なんだか変なことを考えていそうだが、オレには振りかからなそうだから、今は置いておこう。

 さて、試合の方はというと――

 

「ニャルマー、レディーゴー!」

 

 進化するとデブネコになるけど、ゲンガーやワタッコよりも早いっていう、ニャルマー。ほっそりとして身軽そうなネコ型のポケモンなのにそうなるなんて、今でも俄かには信じがたいんだよな。

 

『ノゾミ選手、ここでニャルマーを投入です! これでノゾミ選手は三体全てのポケモンが出揃いました! 一方、まだユウト選手はまだ一体のポケモンしか繰り出していません! トップコーディネーターノゾミ選手だんだん苦しくなってきました!』

 

「まだまだ! 勝負は始まったばかりよ! ニャルマー、あまえる!」

「ニャ〜ル〜ッ」

 

 まさに猫撫で声を上げるニャルマーから発せられる、ハートっぽい何かがペラップに当たる。

 

『決まりました! ノゾミ選手のニャルマーのあまえる攻撃です! 一回戦でユウト選手のマリルが使い、一気に日の目を見る技となりました! 会場内の皆様には改めてこのあまえるという技の効果をご説明します! あまえるという技は、まず、相手にダメージを与えるという技ではありません! これは相手のポケモンの攻撃力を著しく下げるという効果を持つ、補助技という類いの技なのだそうです! さて、これでペラップの攻撃力はガクッと下がってしまいました!』

 

「さっきのねっぷうはたしかに凄まじい威力だったわ。でも、さっきも言った通りあたしもキミのバトルは見ていたから、遠慮なく使わせてもらったわ。さっ、もうこれで攻撃技は怖くない!」

 

 あー、うん、とりあえず。

 

 ご愁傷様です。

 

 いや、たしかに攻撃は下がったので物理攻撃技の威力は元のペラップの種族値、性格補正(攻撃が下がる性格)、それから努力値も振ってないから、もはやそれは紙に等しいですよ? でもね、残念ながらオレのペラップは特殊アタッカーなんだ。だから、能力を下げるなら、特攻を下げるような技をやらないとね。尤も、特攻を下げる技って数が少ない上、性別に縛られたり、あるポケモンだけが覚える等々、非常に限定されていたりして普通はなかなか覚えられて使えるものではない。

 だから、この場合は特殊耐久が高いポケモンに交換するか、ペラップの低い防御と特防を突いて一気に強力なアタッカーの技で攻め立てるのが筋なんだけど、もう三体全部フィールドに出ちゃったからそれも出来ない。

 そうすると、あの三体の中では唯一、ムウマージが結構特防高いし特攻も高い部類になる。ただ、わるだくみで上限まで上がった特攻のペラップの特殊攻撃には間違いなく耐えられないと思われる(なにせペラップはわるだくみ一回積めば、現実世界ではド-タクンやブラッキーなんかの特殊耐久が非常に高いポケモンでも、ねっぷうやハイパーボイスで一あるいは二発で沈めるんですから)。そしてムウマージの特殊攻撃が来る前に、こちらの特殊技でムウマージを落とせば問題ない。

 仮にペラップが落とされても、オレにはまだ二体ポケモンを繰り出せる。

 よって、残念ながら、彼女はもう詰みである。あっと、耳ふさがないと。

 

「ペラップ、ハイパーボイス」

「ニャルマー、相手の攻撃はもう怖くないわ! 近づいてきりさく攻撃!」

 

 そしてペラップがタイプ一致特殊技のハイパーボイスを放ち、ニャルマーがペラップに立ち向かっていくが、

 

『ぐぅ~、す、すごい、ハイパーボイスです……! わ、私たちの方にも、このうるさいのの、影響が出ています……!』

 

 たしかに。この会場にいる人間全員、それこそ、観客や実況、はてはジャッジや相手選手さえ、耳を押さえている。

 

「(フフン、こんなこともあろうかと、こんなこともあろうかと、わたしは耳栓を完備していたわ)」

 

 コイツ、もはやポケモンというカテゴリから逸脱してんじゃないか?

 

とか、

 

 こっちはフィールドの環境に目を配りつつ、指示出さなきゃいけないから羨ましいなこのヤロウ

 

なんてことをオレは微妙に思いつつ、このハイパーボイスが早く止んでくれることを願った。

 

 

 そして、ハイパーボイスが止んだ後は――

 

「ニャ、ニャルマー、戦闘不能! ペラップの勝ち!」

 

 一匹の子猫がひっくり返ってケイレンしていました(苦笑)。

 

『す、凄まじいまでのペラップのハイパーボイス! もし私があんなのを間近で聞いていたなら、きっと気絶して耳から脳汁が一部飛び出していたことでしょう! ニャルマー耐えられずにダウン! これでノゾミ選手は残り一体、ムウマージのみ! 後がなくなりました! それにしても、あまえるの効果がハイパーボイスには見えなかったように感じたのはどういうことでしょうか!?』

 

「なっ、なんでさっきのより威力が高いのよ! それにどうしてあまえるが効いてないの!?」

 

 なんだかいろいろ問題がありそうな実況はこの際置いておいて。

 

「どうやらあなた方は大きな勘違いをなさっていると思われます」

「えっ?」

「攻撃力にも物理攻撃力と特殊攻撃力の二つがあって、あまえるが下げるのは前者であって、後者ではない。そしてハイパーボイスは後者にあたるので、あまえるの効果はハイパーボイスにはまったく影響を及ぼさなかったのです」

「そっ、そんな!? だってキミはあのキノガッサの技を!」

 

 ……彼女の言っていることは、一回戦でのバトルのときのことだ。一回戦の対戦相手は結構有名なトレーナーだったようで(ちなみにいわゆるゲームでいえばエリートトレーナー)、彼のエースアタッカーであったらしいキノガッサが出てきたときに、オレはあまえるでタネばくだんのダメージをほぼゼロに抑えた。皆としては、それの印象が非常に強かったらしい。しかし、こちらとしては、「そんなことを言われても」と言ったところで、どうしようもない。

 

「くっ! そ、それでもあたしは諦めないわ! お願い、ムウマージ!」

 

 そして最後のポケモン、ムウマージが出て来た。

 

「ムウマージ、もう大丈夫よね!?」

「マージ!」

「なら、ムウマージ! あなたが本当に頼りなのよ! レディーゴー!」

「マージ!!」

 

 さっきの汚名返上名誉挽回とばかりに気合が入っているムウマージ。ムウマージはゴーストタイプなので、ノーマルタイプのハイパーボイスは効かない。

 

「ムウマージ、パワージェムよ!」

「とどめだペラップ! めざめるパワー!」

 

 ムウマージのまわりに宝石のように光り輝く石片が浮かび上がると同時に、ペラップの体が発光し、一気にエネルギーが爆散される。それが、フィールドを包み、そして視界を包む。

 

『パワージェムとめざめるパワーのぶつかり合い! このフィールドの上で立っているのははたしてどちらなのか!?』

 

 

 舞い上がった砂煙が晴れてきた。そして――

 

「ペラップ~♪」

 

 ペラップの鳴き声が砂のフィールドに響き渡った。

 

 

「ムウマージ、戦闘不能! ペラップの勝ち! ノゾミ選手が三体全てのポケモンを失ったため、この勝負、ユウト選手の勝ち!!」

 

 

 その一声の後に、スタジアム内が歓声で爆発する。

 

『決まりました! ユウト選手、その圧倒的なまでの強さで、トップコーディネーターノゾミ選手をわずかペラップ一体のみで退け、三回戦進出決定!』

 

 その大歓声と共に女性実況者の高らかな音声が耳を打った。

 

 

「いよっしゃっ!」

「(おめでとう、ユウト。次の三回戦もこの調子でね)」

「ああ!」

 

 

 ホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト。

 三回戦進出。

 

 

 

 ちなみに。

 

 

「マタドガス、たいあたりだ!」

「リザードン、アイアンテールではね返しなさい!」

 

 たいあたりで迫ってきたマタドガスだけど、りゅうのまいで上がったリザードンの素早さには敵わない。

 

『マタドガスのたいあたりは敢えなくリザードンのアイアンテールで、まるで野球のボールのように弾き返されてしまいました! これは強烈です! まさにホームランといっていいでしょう! その勢いのままスタジアムの壁に叩きつけられたマタドガス、まだ立ち上がれるでしょうか!?』

 

 この実況者、ユウトさんも言っていたけど、本当に大丈夫なのかしら? しょっちゅう不謹慎とかで注意とか受けてたりするんじゃない?

 まあそんなのはさておき、審判がマタドガスのところまで寄って状態を確認する。やがて、あたしたち側の青旗が上がった。

 

「マタドガス、戦闘不能! リザードンの勝ち! テッペイ選手が三体全てのポケモンを失ったため、この勝負、ヒカリ選手の勝ち!!」

 

『強い! 圧倒的に強いです、リザードン! 一回戦で見せてくれたりゅうのまいという技を行ってからはまさに“無双”、“手が付けられない”という言葉がピッタリと当てはまるような強さでした! その強さで以ってテッペイ選手のポケモン三体全てを撃破! ヒカリ選手、三回戦進出決定です!』

 

 

 シンオウ地方フタバタウン出身、ヒカリ。

 三回戦進出。

 

 




アニメからコーディネーターのノゾミが出張参加。
ちなみにノゾミはアゲハントは使っていなかったそうですが、そこはオリジナルということで。

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