ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

23 / 68
ユウトのカントーリーグでの成績をちょこちょこ修正。


第12話 リーグ4回戦タクトVSユウト(後編)

 さて。ダークライ、ラティオスを倒して、相手の手持ちは残り一体。一方こちらははらだいこにすてみタックルで体力がかなり減っているが、攻撃力素早さ、ともに最大まで高まったガラガラが出ている。こっちはまだ三体健在であり、相手が残り一体でその状況なら、このままガラガラで行ってもいいんだけど、今回だけは特別だ。

 

『巷では“ダークライ使い”という異名を持ち、また今大会優勝候補ナンバーワンと目され、事実この四回戦までダークライのみでその圧倒的な強さも見せつけていたタクト選手ですが、ここに来て非常に苦しい、大きな大きな壁にぶつかりました! その名もホウエン地方ハジツゲタウン出身ユウト選手! 四回戦まで圧倒的強さで走り抜けてきた選手です! そのスタイルはタクト選手とは一転、様々なポケモンと戦略を駆使するスタイルで、これまでとは全く違う、“新たなポケモンバトル”を我々に魅せてくれました! さて、おっ!? ユウト選手ガラガラをモンスターボールに戻します! ポケモンの交代のようです! 果たして、一体目のテッカニンが出てくるのか、それともここで三体目のポケモンが出てくるのか!? 私個人としてはユウト選手の三体目がどんなポケモンなのかヒジョーに気になるところです!』

 

 ここでテッカニンを出すと、そろそろ怒り出して勝手にフィールドになだれ込みそうなヤツがいるから、それは遠慮しておこうか。

 

「頼むぞ、ラルトス!」

「(やっとね! 待ちくたびれたわ!)」

「オレたちの絆の強さとお前の強さをすべてアイツに見せつけてやれ!」

「(了解! 指示はいいわ。わたしが好きにやるから)」

「まかせた!」

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

 さて、今日も今日とて、私はシンオウチャンピオンマスターとしてタマランゼ会長の隣りでリーグ観戦。またも運良くBブロックの観戦となり、ユウト君のバトルを楽しめている。ちなみに今日はホウエンチャンピオンマスターのダイゴの他に、視察という名目で、カントー、そしてジョウトの四天王を務めるリーフちゃんにシルバー君もこの場にいた。

 今、バトルはちょうどユウト君がガラガラを引っ込めてラルトスをフィールドに送り出したところだった。にしても、あのガラガラならそのまま相手の三体目も即刻KOに出来そうなものなのに何だか勿体無い気もするわ――

 

ガタッガタガタッ!

 

ね――って、一体なに!?

 突然隣りから大きく椅子を引いて床をこする音やその拍子なのか椅子が倒れ込む音が盛大に聞こえたものだから、私は思わずそちらに振り向いた。

 

「……ダイゴ? それにシルバー君にリーフちゃん?」

 

 すると、何やら三人が総立ちになっていた。様子もどこかおかしい。目を見開き、口が少しだが、無造作に開けていて、まるで思いもよらない事態が起きて驚いているという印象を受けた。

 

「……これは……。ボクたちは随分と幸運なようだ」

「……だな」

「……ムリしてでも観にきてよかった」

 

 シルバー君は倒した自分の椅子を元に戻しながら、とにかく三人に共通して言えるのは、腰掛けていた椅子にストンと腰を下ろし、さっきまでとは違う、まさに鷹のように射抜くような目でフィールドを見下ろしているということだ。そして口許もなんだか薄っすらとだけど口角が上がっていて、これから何をするのか何が起きるのかが楽しみだという気持ちがなんだか手に取るように伝わってきた。

 

「三人とも一体どうしたんじゃ?」

 

 タマランゼ会長も堪らず三人に問い掛けてくる。

 

「タマランゼ会長にシロナ、ユウト君のポケモンの中で一番強いと思われるポケモンって知っていますか?」

 

 三人を代表してなのか、ダイゴが逆にそんな質問を投げ掛けてきた。

 それにしても、ユウトのポケモンの中で一番強いポケモンねぇ。

 

「ラルトスかしら?」

「儂はラルトスとボーマンダの同率首位という話を聞いておるぞ」

 

 ボーマンダ? テンガン山に登るときにいっしょにいたあの子かしら?

 

「タマランゼ会長の仰ることが正解です」

 

 へぇ、そんなに強いんだ、ユウト君のあのボーマンダって。今度バトルしてみたいわね。

 

「それで、その二体は滅多にバトルには出てこない上、あまり、全力でバトルを行ったという話は聞きません。彼らを本気にさせたことがあるのは僕たちが知っている限り、ただ一人」

「ただ一人……ひょっとしてそれがおぬしの彼、かの?」

「はい、私のツレです」

 

 タマランゼ会長の問いに、リーフちゃんがダイゴに合いの手を入れるようにして答えを口にした。ていうか、ツレ? 彼? いったいだれ?

 

「元、て言うか現カントーチャンピオンマスターだ」

 

 ……ああ。確か今、ジョウトのシロガネ山の奥地で修行しているっていう“最強のチャンピオンマスター”っていう子だったっけ? なんかそんな話を聞いたことがあるような気がする。

 

「当時、ユウト君はカントーポケモンリーグの決勝リーグの決勝戦で当時はまだチャンピオンになっていなかったその彼に負けた。その一年後、またカントーポケモンリーグに出場して、そのときはチャンピオン挑戦権獲得までは行ったけど、今度はチャンピオンになっていた彼にまた敗退した。そうボクは聞いている。しかし、これらはもう何年も前の話で、彼とそのポケモンたちはそのときよりも比較にならない程圧倒的に強くなっている」

「そうよね。その二回目のときは、わたしもユートと決勝リーグ決勝で対戦して、そのときは僅差で負けちゃったけど、今じゃあ余裕で負ける自身があるわ。……イヤな自信だけど」

「俺もこの前、だいたいアイツがこのシンオウに来る前辺りにバトルしたんだが、まるっきり勝てなかったな。なんつーか、まるで手玉に取られた感覚? とにかく試合運びとか戦術がうめぇんだよなぁ」

「まあ、ぼくもだいたいこんな感じでさ。だから、今は誰もその二体の本気を知らないんだよ」

 

 な、なんだかすごい話が大袈裟で大きくなってきたような……。ていうか、仮にもチャンピオンや四天王にここまで言わせるなんてやっぱり彼ってすごいわね。

 

「で、本題だけど、正直、今のユウト君やラルトスがあのタクトという人を相手に本気を出すということはあまり考えられない」

「だけど、俺たちはアイツにバトルで勝つことを目標にしている。ていうか勝ちてぇんだ」

「だから、それに最大の障壁となりそうなラルトスについてを知る絶好の機会なんですよね、今は。たとえ、本気は見れなくてもある程度の実力と戦法が判明すれば万々歳ですよ」

 

 私たちはそうした三人にただただ唖然としながら、このバトルの行く末を見守ることにした。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「さて、どうくるか」

 

 グリーンさんが、ラルトスが出てきてから今までとは違ったピリリとした雰囲気を醸し出して、何かあったのか聞いてみたんだけど、あのラルトスにそんなことがあったなんて。今までいっしょに旅してきたけど、全然知らなかった。

 

『両者三体目のポケモンが出揃いました! ユウト選手はラルトス、タクト選手の三体目のポケモンはなんと驚き、あの伝説のポケモン、ライコウです! それにしてもラルトスとは意外ですね! ユウト選手は未進化のポケモンが多くいるようですが、何か秘密があるのでしょうか!?』

 

 確かユウトさんは、リーフィアやグレイシアに進化してもらうためにイーブイに頼み込んでいたことはあったけど、基本的に進化するかしないかはそのポケモンに任せる傾向があるから、それはあんまりないと思う。あ、そういえば、技を覚えるのに掛かる時間が少し短くなるなんてこともあったかな。でも、そういうのを気にしてる様子はあまり見かけたこともないし。

 

『さあ、まず先手を取ったのはライコウです! ライコウ、シャドーボールを口から吐き出しました!』

 

 エスパータイプであるラルトスにゴーストタイプのシャドーボールは至極妥当なチョイスだと思う。ただ、ラルトスもそれを馬鹿正直に受けることはなくて。

 

『しかし、ラルトスも()る者! シャドーボールをチャージビームで相殺しました!』

 

 チャージビームを選ぶのはなかなかエグい。これは電気タイプの技で威力はそうでもないんだけど、副次的な効果として自分の特攻が高確率で一段階上がるという効果がある。相手を攻撃しつつ自分の能力を上げる、なかなかの技だ。

 

「ついでに言えば、ライコウは伝説のポケモンで特攻もかなり高いはずなのにそれをチャージビームでチャラにするラルトスのレベルはやっぱり相当高いな。ん?」

 

 見ると、相手のタクトという人はまたシャドーボールを指示しているようだけど(周りの歓声とスタジアムが広いせいでよく聞き取れない)、出せないでいるって感じなのかな?

 

『これはどうしたことでしょう!? ライコウ、シャドーボールを出しません! ひょっとして三回戦でヒカリ選手がやったように、ライコウの技が封じられてしまったのでしょうか!?』

 

 やっぱり。とすると、ふういんかかなしばりか、どっちかだと思うんだけど、どっちだろう? かなしばりはその技そのものを使えなくする、ふういんはそれを使うポケモンが覚えている技について相手が使えないようにするという技だ。ユウトさんのラルトスはきっちりシャドーボールも覚えているし、他の技も封印すると言う意味ではふういんをチョイスしたのかな?

 

「あれは……めいそうか? 相手が行動不能のうちは積むっていう戦法か」

 

 見ると、ラルトスは静かにめいそうを始めていた。めいそうは特攻と特防を一ランクずつ上げる変化技だ。ラルトスは物理よりは特殊の方が得意だから、妥当な能力アップといえる。

 

『ここでタクト選手、技を切り替えました! アイアンヘッドを指示します! ライコウ、ラルトスに向かって猛然と突進していきます!』

 

 四足歩行の動物よろしく、両前足と両後ろ足を交互に動かして機敏に迫るライコウ(さすがにアイアンヘッドはラルトスは覚えないので、ふういんには縛られず、かつラルトスの弱点でもある)。あとわずかでラルトスに到達するというまさにそのときだった。

 

『あーーっ! いったいどうしたことでしょう! ライコウ、盛大に転びました! なんでしょう!? 私の目には何かに躓いたように見えました! しかし、フィールドにはそれらしいものは当然見当たりません! これはいったいどういうことだーッ!?』

 

 たしかにあたしの目にも何かに躓いたようにも見えた。ちなみに当のライコウは勢い余って草のフィールドをゴロゴロと転がっていた。

 

「……くさむすびだ」

「くさむすび? えっ、あれがですか?」

 

 くさむすびは相手の足もとに草をからませて転倒させる草タイプの特殊技で、相手の体重によって威力が変わるという変わった特徴を持つ技でもある。

 

「……やっぱり強いな。そしてまだまだ遠い……」

 

 グリーンさんが膝の上に置いていた拳を強く握りしめているのが見えた。

 

「あ、あの、あのくさむすびという技で何がどうわかるんですか?」

 

 グリーンさんの反応に思わず疑問を投げかけるシンジ。実はあたしもその言葉は気になった。いったいどういうことなのか。

 

「いいかい。普通くさむすびは立ち止っている相手に掛けるのが基本だけど、それだって避けられる可能性があるんだ。動く相手に掛けるのは、タイミング、距離、相手の状況を加味しないといけないから殊更に難易度が上がる。それをあのラルトスは、自分に向かって突進してくる、一歩間違えれば弱点技のダメージを食らうという状況下の中で、相手にやったんだ。これがどれだけハイレベルなことかわかるだろう?」

 

 たしかに。言われてみればそうかもしれない。少なくとも、あたしのポケモンでは、あのラルトスと同じ状況下で同じことをやれと言われても、とてもではないが、今はムリだ。シンジも思い至ったのか、口をポカンと開けている。

 

『ようやく起き上がりましたライコウ! さあここから仕切り直して攻撃を――、な、なんだあれはー!?』

 

 見ると、立ち上がったライコウの四肢に草が結びついていた。

 

『あれはまさか草タイプの技のくさむすびなのか!? ひょっとしてさっき転倒したのもまさか!?』

 

 ライコウに結びついた草はそのままシュルシュルと伸びていく。四肢に結びつく一つ一つの草が捩れ、脇から増殖してまた捩れ、といったことを繰り返しながら、やがてそれらはそれぞれ太い幹のようなものを形成していく。だんだんと大きく、そしてしなやかに、されど強靭になっていくそれらにつられて、ライコウの身体がだんだんと宙につり上げられていった。四本存在するそれによりライコウはクルリとひっくり返され、足の裏が空に向かい、視界が上下逆さまに反転するだろう位置となった。そして、最終的にライコウは、まるでその四肢にそれぞれロープを結わえられて周囲の四つの木々にそれぞれ結び付けられた形でひっくり返されて宙吊りにされたような格好となった。もし、原始時代ならあの下に火をたけば立派な動物の丸焼きが出来上がることだろう。

 

『な、なんとなんとなんとーー! ライコウ、くさむすびの草によってフィールド中央で中空に宙吊りにされてしまいました! ライコウ、必死でもがきますが、草はただただしなるだけで、まったく効果がなーーーい! ライコウ大ピンチだ!』

 

 そのまま、今度は草が、いやもうこれは大樹といっても差し支えがない。その四つの大樹が大きくしなりだした。それにより、何が起きたかというと、いわば枝葉の先に括りつけられているライコウが、そのしなりの影響を受けて、フィールドに激しく叩きつけられた。さらに凶悪なのはトランポリンの原理と言ったらよいのか、大樹が下にしなる(一歩遅れてライコウがフィールドに叩きつけられる)とそれの反動で今度は上にそれがしなり(一歩遅れてライコウが宙に放り出され)、また、その反動で大樹が下にしなる(そしてまた、一歩遅れてフィールドにライコウが叩きつけられる)というのを繰り返しているということだ。

 

『こ、これはなんてすごい! 本当にこれはくさむすびなのでしょうか!? 私にはまだ「これは別の技なんだ」と言われた方が信じることができます!』

 

 しかし、何度か続いたところで、それに変化が起きた。

 

『これは、もしやでんじはか!? ライコウ、でんじはをラルトスに放ちます! そうか! 麻痺させてしまえばこのくさむすびから解放されるという作戦ですね! タクト選手、実にすばらしい作戦です!』

 

 ライコウは電気タイプなんだから、使えて当然だろう。あたしでもそうすると思うし。

 で、――

 

『おいおい、本当に何が起きているんだーー!? ライコウのでんじはがラルトスにまったく効いていません! いったいなんでだーー!? というか、このバトルは不可思議なことが起き過ぎるぞ!!』

 

 ただ、ラルトスはでんじはを真正面から食らったのにまったく麻痺した様子が見受けられなかった。

 最後の実況の愚痴には全面同意だけど、なんでなのかしら?

 

「……ひょっとして、みがわりか?」

 

 グリーンさんの呟きにあたしもピンときた。みがわりは自分の体力を消費する代わりに自分の身代わりをつくり出す技で、その身代わりが壊れるまでは状態異常は受け付けない。

 

「……完璧な戦略だな。まったく、あれをどうしろというんだ」

 

 やれやれと肩をすくめるグリーンさんを尻目に、

 

 

「とどめだ、ラルトス! サイコショック!!」

 

 

ラルトスが出てきてから初めて出した一声(おそらく?)がそれだった。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「こんな、こんなことが、こんなことがあってはならないんだ!」

 

 なにやらアイツは崩れ落ちて、頭を抱えながら呻いている。その前方には目を回して倒れ伏すライコウの姿がった。

 いやー、しかし、みんな良くやってくれた!

 

「(ユウト!)」

 

 ラルトスがオレの胸に飛び込んできてくれた。もちろんがっしりと抱え込んださ。

 

「ホント、良くやってくれたよ、お前たちは! ありがとう!」

 

 テッカニンとガラガラの入ったモンスターボールがゆらゆら揺れているのを感じた。

 さて、喜びを分かち合っていたオレたちだが、その一方、

 

「なぜだ! なぜ、ボクのポケモンがガラガラやラルトスごときに!」

 

タクトはまだあのようなことを言っていた。まぁ、持論の『強いポケモン』がこうも簡単に破られれば、ああなるのもわかる気がしないでもない。それにオレは、強いポケモンを使うのを悪いと言っているわけではない。

 

「タクト、お前には言っておくことがある。ポケモンバトルに勝つには強いポケモンっていうお前の考えは否定はしない。むしろオレは賛同もしよう。だけどな、ポケモンバトルに勝つにはポケモンのレベル、そして何よりもトレーナーの知識と戦略だ。戦略を練るには自分のポケモンのことをよく知らなければならない。自分のポケモンをよく知るには愛情を持って接しないとポケモンも自らをさらけ出したりはしない。それがないお前はたとえグラードンだろうがディアルガだろうが、伝説や幻のポケモンを持ってこようとオレとオレのポケモンたちはお前になんか負ける気はしない。そして、何より、人のポケモンをバカにするその腐った根性を叩き直さない限りは本当の意味でポケモンバトルは出来ないということを知るべきだ」

 

 バトルの勝ち負けは抜きにして、バトル後はそのトレーナーと交流することが多い。シロナさんのいう『ポケモンバトルはトレーナー同士の最強のコミュニケーションツール』というやつだ。しかし、人のポケモン、ひいては友達を侮辱するような輩とよしみを交わすことなんてないはずだ。だから、彼はそれを直さなければ、そういうことを知ることもできないのだから。

 

 さて、そんな中でジャッジがライコウの元に立ち寄り、状態を確認して、そして、青い旗が揚がった。

 

「ライコウ、戦闘不能! よって、この勝負、タクト選手が三体目全てのポケモンを失ったため、ハジツゲタウン出身、ユウト選手の――「い、異議あり!!」 どうかしましたか?」

 

 ん? タクトはジャッジに何やら文句があるようだ。はて、別におかしなことも何もなかったし、いまさら何の異議があるんだ?

 

 

「最初のダークライとテッカニンの試合のとき、あちらは交代の際、テッカニン、そしてガラガラが同じフィールド内にいた! これは1対1のシングルバトルというルールに反する!」

 

 

「なっ!?」

「(なんですって!?)」

 

 あろうことかそんなことを言ってきた。

 ていうか、なにをバカなこと言ってるんだ!? あれはれっきとしたポケモンの技であり、ルール違反なわけがないじゃないか!!

 

「よってボクはこのバトルについては無効であると申告する!!」

 

 その言葉はスタジアムに波紋のように広がっていったような気がした。

 

『たしかにタクト選手の発言も尤もな気もしますねぇ……』

 

 おいおい、ちょっと待てよ。たしかにメジャーな技を使っていないわけじゃなかったが、でも禁止されるような技は使っていないし、何よりもルールに触れることは一切していないぞ!

 

 ところが、その波紋が広がりきる前に、

 

 

『その異議、ちょっと待った!!』

 

 

またさらに別の一石が投じられた。

 タクトの抗議を止めたのは、スピーカーから聞こえてはきたが、シンオウ地方に来てからはよく聞き慣れた声。

 

『タクト選手の今の異議ですが、私は違うと思います』

 

 それはシンオウチャンピオンマスターのシロナさんの声だった。

 

『バトンタッチはあまり知られていないだけで、れっきとしたポケモンの技です。ポケモンリーグにおいてポケモンの使用できる技に制限はありません。よって、私は今の抗議をシンオウ地方チャンピオンマスターとして棄却したいと思うのですが、審判の方はいかがでしょう?』

 

 フィールド内での勝敗はジャッジが宣言することで決まる。つまり、フィールドではジャッジが一番偉いわけで、タクトの異議と、シロナさんのそれに対する意義と正当性の判定をジャッジに委ねたわけだ。

 

 

 そして――

 

 

「――たしかにそのバトンタッチというのポケモンの技であると判断していいでしょう! よって、このバトル、タクト選手が使用ポケモン三体すべてを失ったため、ユウト選手の勝利とします!!」

 

 

 ほっ。一時はどうなるかと思ってかなり焦ったけど、オレは予選リーグ決勝戦にコマを進められることに相成った。

 

「とりあえず、あとでみんなにはお礼を言いに行かなきゃな」

「(そうね。特にシロナには本当に感謝だわ)」

 

 

 

 ホウエン地方、ハジツゲタウン出身、ユウト。

 予選リーグ決勝戦進出。

 




グリーン、ダイゴ、シルバー、リーフ
「あんなのをいったいどう対処しろってんだ!!」


* * * * * * * *


さて、前話の前書きでも書きましたが、タクトファンの皆さま、本当に申し訳ありません。そして、アンチヘイトが嫌いな方も申し訳ありません(ちなみに私もアンチヘイトは苦手な類です)。
当初の予定ではここまでのものになるはずではなかったのですが、書いているうちにあれよあれよ暴走を始めてしまってこんなことになってしまいました。

ちなみにこのSS内でのタクトの手持ちはダークライ、ラティオス、ライコウ、レジアイス、ファイヤー、スイクンとしています。一応、ダークライ以外は準伝説でそこそこバランス良くかためてみました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。