ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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ラルトスの活躍をご期待なさっていた方がいらっしゃったので、Aルート・Bルートという形にしようと思ったのですが、出来がいまいちな気がしたので、こちらは半ネタ扱いということで。


第11‐12話のIF Ver.

『予選リーグはいよいよ折り返し地点を過ぎて大詰めに向かって突き進み始めました! では、これより、予選リーグ第四回戦の試合を始めるぞ!』

 

 バトルフィールドへ続く暗い通路の中で実況の声がやや遠くに聞こえる。

 

「ラルトス、準備はいいよな?」

「(当然。言っとくけど今回はわたしもちゃんと出してよね)」

「当たり前だ、お前の強さをアイツに分からせてやれ」

 

『この四回戦より、ルールが少し変更になったぞ! トレーナー諸君は要注意だ!』

 

 そういえばそんな話があったな。

 なんでも、基本は変わらないんだけど、使用ポケモンの数が三から四に増えるとか。

 

『では、四回戦第一試合に出場する選手を紹介しよう! まずは赤コーナー、ダークライ使いの異名をとるタクト選手!』

 

 観客の歓声が一段と高くなったのを肌で感じる。

 

『タクト選手はシンオウ各地のジム、そして今大会、この四回戦までダークライ一体のみで対戦相手を退けてきた選手だ! その強さはここにいる観客のみんなならよく知っているだろう!』

 

 さてと!

 

『続いて青コーナー、ホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト選手! ユウト選手はここまで様々なポケモンと新しいポケモンバトルで勝利を手にしてきた期待の選手だ!』

 

「行くか」

「(ええ)」

 

 オレたちは暗い通路を眩しいほどの光が射しこんでくるフィールドへの入口を潜っていった。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

「ユウトクン、キミはボクが倒す。そしてキミの言葉が間違いだということを証明しよう」

 

 フィールドで相対したタクトさん。オレが知っている(?)のは、まず、アニメでは伝説のポケモンでのみバトルを行っていること。まあ正直、こんなのはどうでもいいっちゃどうでもいい。パーティに伝説とか幻を入れてたってそれはそれで戦い方はあるし、倒せないこともない。要は戦略さえあれば、それは切り抜けられる。「伝説ばっか使いやがって、アンタ伝説厨か?」なんて、あくまでネタにして楽しむ域を出ないから、せいぜいそれでからかう程度の話だ。ダークライのダークホール連発を催眠厨と揶揄するのも、要は単なる皮肉でしかない。それだって立派な戦術なのだ。否定する気は毛頭ない。

 それから、オレの持論、『強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。本当に強いトレーナーなら、好きなポケモンで勝てるよう頑張るべき』、これを否定したいということ。これも別にいい。世の中にはいろんな考えを持った人間がいるんだから、すべての人に賛同を得ようなんて思ってもいないし、否定してくれたって全然構わない。実際、これまでにも、そういった人たちともバトルしてきたし、中には敬意を表すべき人もいた。

 

 で、最後に、オレのラルトスは弱いとか言って、喧嘩を売ってきたこと。ぶっちゃけ、一番の問題はコレだ。あのときは相当アタマにきてたけど、ただ、例えば格闘技の試合前に対戦相手を挑発し合うという様式美だったと思えば……いや、やっぱダメだ。オレは別に格闘技の選手でもないし、何より一番の相棒を貶されたのはガマンならないわ。

 

「それにしても、ボクの忠告を聞かなかったのか」

「忠告、ですか?」

「ああ。あのとき、ラルトスは入れ替えろって言ったよね? これを忠告と言わず、何と言うんだい? いやはや、なんとも度し難いな。そんなのでボクと戦おうなんて救いようがないよ」

 

 彼はやれやれと肩を竦めてくれている。

 

 アレが忠告?

 

 ふーん。

 

 度し難い?

 

 ふーーん。

 

 救いようがない?

 

 ふーーーん。

 

 ……。

 

 うん。もうダメだ☆

 

 

「(……ねぇ、わたしとしてはあそこまでユウトをこき下ろすとか死刑ものなんだけど、あのゴミぶっ殺しちゃっていい?)」

 

 

 ホントにダメだわ。

 

 いやさ、オレのことだけなら我慢はするよ? でも、あの言葉ってオレのバカサ加減はもとより、ラルトスを変えなければ、アイツには勝てないってことでしょ? つまり、オレのラルトスは弱いと? オレのポケモンたちはアイツにはかなわないほど弱いと?

 

 

「……一つ言っておく」

 

 なんと言うか、スーッと頭がクリアになっていく感じだった。

 視界が急に晴れやかになったかのようになり、

 

 

「――テメェのその、プライドが高じ過ぎてお高くとまりすぎた鼻っ柱、叩き折ってやるよ!!」

 

 

そんな言葉がすっと口を衝いて出ていた。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

『さあ、四回戦第一試合、いよいよ始まったぞ! 最初の一体目のポケモン、タクト選手はお馴染み、悪タイプのダークライ、ユウト選手は虫・毒タイプのモルフォンだ!』

 

 さてと、タイプ相性ではモルフォンが有利だけど、ダークライにもモルフォンの弱点を突く技もあるわけで。おまけに相手を眠らせる技のダークホールは相当厄介な存在でもある。

 そういえば、テッカニン使うってシンジ君に言ってたけど、後で謝っておこう。

 

「ボクのダークライは相性程度負けることはない! ダークライ、ダークホール!」

「モルフォン、スピードスター! ダークホールを狙え!」

 

 ダークホールはアニメと同じように掌で生み出した黒い球体状のシャドーボールのようなものを撃つ技で、当たるとそのまま相手を包みこんで眠らせてしまう危険な技だ。避けるリスクより、撃墜させてしまうのが一番の対抗策だろう。スピードスターとオレのポケモンならそれが絶対にできると信じている。事実、モルフォンはいともあっさりと撃墜してくれた。

 

『タクト選手、ダークライにダークホールを指示! しかし、ユウト選手のモルフォンがスピードスターで撃墜! これは素晴らしい攻防だ! それにしても必中技で相手の技を撃墜という手法はもはやメジャーなものになりつつあるようだ! 事実いろいろなバトルでも見られるようになってきたぞ! さて、その先駆者であるユウト選手、タクト選手の強力なダークライに打つ次の一手はなんなのか!?』

 

「フッ、一発でダメなら連発でいくぞ! ダークライ、ダークホール!」

 

 ダークライは今度は、手で作り出したダークホールを、ピッチングマシンよろしく、次々と投げ込んできた。さてさて、これはどうするか。

 

「モルフォン、はね返せるか!?」

「モ~ルフォン!」

 

 任せろ!

 そう言っているように見えた。ならば!

 

「モルフォン、全力でぎんいろのかぜだ! ダークホールをはね返せ!」

「モ~ルフォン!」

 

 モルフォンが力強く翅をはばたかせ始める。それによって風が起こり、それがだんだんと強くなり始めた。ぎんいろのかぜはその風に自身の翅のりんぷんを混ぜて相手を攻撃する虫タイプの特殊技だが、それのおかげで風が光に反射して銀色に光って見えている(だから、ぎんいろのかぜっていう名称なんだろうけど)。

 

「頑張れ、モルフォン!」

「モ~ルフォン!!」

 

 より一層モルフォンが力強く翅をはばたかせて、風が強くなる。あれ、ひょっとして十パセーントの確率で起こる全能力一段階アップを引き当てたりした? なんだかもはや、風というより暴風の一歩手前といってもいいかもしれないぐらいになってきている。そしてそれにより放たれたダークホールに変化が訪れた。

 

『これはすごい! モルフォンのぎんいろのかぜによりダークホールが勢いを落として、いや、これは違う! なんとモルフォン、ぎんいろのかぜによってダークホールをはね返した! 連続で放たれたダークホールがダークライ自身に襲い掛かる!』

 

「なんだと!? 避けろ! 避けるんだ、ダークライ!」

 

 しかし一方、ダークライはぎんいろのかぜのダメージを受けていた。悪タイプに虫タイプの技は効果抜群なのでかなり効いているようだった。

 そしてはね返したダークホールは、一部はフィールドに落ち、一部は互いにぶつかり合って消滅したが、そのうちの一つがダークライに直撃した。

 

「よっしゃ! ラッキー!」

「ちっ!」

 

 ダークライを黒い球体が包み込んだ。

 

「モルフォン! 今度はちょうのまい! 舞い続けろ!」

 

 モルフォンは飛びながらもダンスのステップを踏んで踊るように宙を舞い始める一方、ダークライは黒い球体から解放されはしたが、フィールドに体を横たえてスヤスヤと眠りについていた。

 

「起きろ! 起きるんだ、ダークライ!」

 

『これは皮肉! ダークライ、自分で放ったダークホールに自分で当たってしまい眠り込んでしまった! ダークライはもはや無防備! ダークライ、大ピンチだ!』

 

 ダークライはトレーナーの呼びかけも届かず、まだ眠り続けている。あんまりにも起きないんじゃあ交代するのも手だと思うんだけどねぇ。

 

『ダークライは眠ってしまって無防備な状況ですが、なぜかユウト選手はモルフォンに攻撃を指示しない! これはどういうことだ!? それに先程からモルフォンが宙を軽やかに舞っているけど、何か関係があるのか!?』

 

 さっきからモルフォンが続けているちょうのまい。これは虫タイプの変化技だが、特攻特防素早さが一段階上がるという、非常に優秀な、言い換えるとぶっ壊れた性能の積み技である。

 さて、時間にしてそろそろ三回分くらいは舞っているはずだから、そろそろ――

 

「ちっ! 仕方ない。交代だ、ダークライ」

 

 ヤツはハイパーボールを突き出すと、そのスイッチ部分からダークライに向かって赤いレーザー光が放たれた。

 タイミングとしてはここがグッドだろう。オレはモンスターボールを二つ手に持った。

 

 

「モルフォン、バトンタッチ!」

 

 

 そしてオレはその二つのボールを振り上げた。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「やった! いい感じでバトンタッチにつなげられましたね!」

 

 観客席であたしは思わず、手を叩いていた。ホント、ちょうのまいを引き継げたのはかなり上々だと思う。それも二回か三回分は舞っていたんじゃないだろうか。それに見てたところぎんいんろのかぜの威力が上がっていたようにも見えるから、ひょっとしたらプラスしてぎんにろのかぜの追加効果も引き継げたのかもしれない。これもしかしてもうユウトさんの勝ちなんじゃないかとも思ってしまう。

 

「なんだ、バトンタッチって? それにテッカニンはどうしたんだろう?」

 

 そういえばだけど、あたしの隣りにはあたしと三回戦でバトルをしたシンジが座っていて、いっしょに観戦している。いつまでかはわからないが、どうやらあたしと同じくユウトさんに弟子入りしたらしい。昨日今日の話なので、ポケモン講座はあまり進んでいないらしいけど。

 

「ああ、それはユウトさんに直で聞いた方がいいかも。というかたぶんもうテッカニンは出てこないと思うし」

 

 とりあえず、シンジの疑問は脇に置いておいて――?

 

 はて?

 あたしの隣りには他にグリーンさんが座っているはずなんだけど一向に反応がない(ちなみにダイゴさんやリーフさん、シルバーさんは大会本部の方に顔を出してこの場にはいない)。どうしたのかと思って、振り向いてみた。

 

「……グリーンさん?」

 

 見るとグリーンさんは口元に手を当てて目を大きく見開いてフィールドを見下ろしていた。

 

「あの、グリーンさん?」

「お、おい?」

 

 あたしたちの問いかけにまったく反応を返さず、そして目を閉じて大きく息を肺全体まで空気を行き渡らせるようにして吸い、今度はそれをすべて吐き出すようにして大きく息を吐いた。そして、瞼を開けてさっきまでと変わらずフィールドを見下ろしているのだけど、さっきまでとは違って目は皿のようにしていて、まるでこれから先すべてを目に焼き付けてみせるという気概が滲み出ているようにあたしには感じた。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

 それはシンジも感じ取っているようで、あたしと同じく息をのんでいるようだった。そして、グリーンさんはそんなあたしたちに気にも留めずにあることを語り出した。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

 さて、今日も今日とて、私はシンオウチャンピオンマスターとしてタマランゼ会長の隣りでリーグ観戦。またも運良くBブロックの観戦となり、ユウト君のバトルを楽しめている。ちなみに今日はホウエンチャンピオンマスターのダイゴの他に、視察という名目で、カントー、そしてジョウトの四天王を務めるリーフちゃんにシルバー君もこの場にいた。

 今、バトルはちょうどユウト君がモルフォンのバトンタッチで能力を引き継いだラルトスがフィールドに出たところだった。にしても、あのラルトスのバトルを見るのはひさしぶ――

 

ガタッガタガタッ!

 

り――って、一体なに!?

 突然隣りから大きく椅子を引いて床をこする音やその拍子なのか椅子が倒れ込む音が盛大に聞こえたものだから、私は思わずそちらに振り向いた。

 

「……ダイゴ? それにシルバー君にリーフちゃん?」

 

 すると、何やら三人が総立ちになっていた。様子もどこかおかしい。目を見開き、口が少しだが、無造作に開けていて、まるで思いもよらない事態が起きて驚いているという印象を受けた。

 

「……これは……。ボクたちは随分と幸運なようだ」

「……だな」

「……ムリしてでも観にきてよかった」

 

 シルバー君は倒した自分の椅子を元に戻しながら、とにかく三人に共通して言えるのは、腰掛けていた椅子にストンと腰を下ろし、さっきまでとは違う、まさに鷹のように射抜くような目でフィールドを見下ろしているということだ。そして口許もなんだか薄っすらとだけど口角が上がっていて、これから何をするのか何が起きるのかが楽しみだという気持ちがなんだか手に取るように伝わってきた。

 

「三人とも一体どうしたんじゃ?」

 

 タマランゼ会長も堪らず三人に問い掛けてくる。

 

「タマランゼ会長にシロナ、ユウト君のポケモンの中で一番強いと思われるポケモンって知っていますか?」

 

 三人を代表してなのか、ダイゴが逆にそんな質問を投げ掛けてきた。

 それにしても、ユウトのポケモンの中で一番強いポケモンねぇ。

 

「ラルトスかしら?」

「儂はラルトスとボーマンダの同率首位という話を聞いておるぞ」

 

 ボーマンダ? テンガン山に登るときにいっしょにいたあの子かしら?

 

「タマランゼ会長の仰ることが正解です」

 

 へぇ、そんなに強いんだ、ユウト君のあのボーマンダって。今度バトルしてみたいわね。

 

「それで、その二体は滅多にバトルには出てこない上、あまり、全力でバトルを行ったという話は聞きません。彼らを本気にさせたことがあるのは僕たちが知っている限り、ただ一人」

「ただ一人……ひょっとしてそれがおぬしの彼、かの?」

「はい、私のツレです」

 

 タマランゼ会長の問いに、リーフちゃんがダイゴに合いの手を入れるようにして答えを口にした。ていうか、ツレ? 彼? いったいだれ?

 

「元、て言うか現カントーチャンピオンマスターだ」

 

 ……ああ。確か今、ジョウトのシロガネ山の奥地で修行しているっていう“最強のチャンピオンマスター”っていう子だったっけ? なんかそんな話を聞いたことがあるような気がする。

 

「当時、ユウト君はカントーポケモンリーグ本戦でその彼に負けた。しかし、これも何年も前の話で、彼とそのポケモンたちはそのときよりも比較にならない程圧倒的に強くなっている」

「そうよね。そのときはわたしもユートと対戦して、そのときは僅差で負けちゃったけど、今じゃあ余裕で負ける自身があるわ。……イヤな自信だけど」

「俺もこの前、だいたいアイツがこのシンオウに来る前辺りにバトルしたんだが、まるっきり勝てなかったな。なんつーか、まるで手玉に取られた感覚? とにかく試合運びとか戦術がうめぇんだよなぁ」

「まあ、ぼくもだいたいこんな感じでさ。だから、今は誰もその二体の本気を知らないんだよ」

 

 な、なんだかすごい話が大袈裟で大きくなってきたような……。ていうか、仮にもチャンピオンや四天王にここまで言わせるなんてやっぱり彼ってすごいわね。

 

「で、本題だけど、正直、今のユウト君やラルトスがあのタクトという人を相手に本気を出すということはあまり考えられない」

「だけど、俺たちはアイツにバトルに勝つことを目標にしている。ていうか勝ちてぇんだ」

「だから、それに最大の障壁となりそうなラルトスについてを知る絶好の機会なんですよね、今は。たとえ、本気は見れなくてもある程度の実力と戦法が判明すれば万々歳ですよ」

 

 私たちはそうした三人にただただ唖然としながら、このバトルの行く末を見守ることにした。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「さあ、いくぞ、ラルトス!」

「(了解。ウフフ、力がみなぎるわ)」

 

 それはそうだろう。蝶舞と銀風引き継いでるんだから。

 

『さあ、ここでお互いポケモンを交換したぞ! ユウト選手はラルトス、タクト選手はなんとホウエン地方の伝説のポケモンのレジアイスだ!』

 

 レジアイスか。特防がべらぼうに高い伝説のポケモンだったな。特殊アタッカーのラルトスには少し厳しい気もするが――

 

「いってみるか」

 

 そしてオレはある技を指示した。

 

 

 ラルトス、――――!!

 

 

 * * * * * * * *

 

 

「あ、あれ?」

「(ひょっとしてわたしたち、なにかやっちゃった??)」

 

 スタジアムは広大なのにまるで音が聞こえない。シーンと静まり返っている。遠くにある別のスタジアムの歓声が聞こえてくるぐらいの静けさだった。

 

「な、なんなんだ……。いったいなにをしたんだお前は」

 

 あのタクトは膝をついて茫然とした様子で呟いている。さっきまで髪を振り乱していたから、最初よりもワカメ具合がひどくなっている。

 

「なんでだ、なんでボクのポケモンがたったの一撃で……わけのわからない光の攻撃たった一撃でやられてしまったんだ! 伝説だぞ!? ボクのポケモンはすべて伝説のポケモンなんだぞ!? それが! あんな一般ポケモンの、あんな未進化のラルトスなんかにやられるなんて!?」

 

 タクトの慟哭がスタジアムに響き渡るが、正直そんなことはどうでもいい。ていうか、アイツ、まだオレのラルトスを侮辱するか。

 

『ゆ、ユウト選手、ラルトスの何らかの技によりタクト選手のポケモンを一撃、たったの一撃ですべて退けてしまいました……』

 

 あのー、あなた始めるときはメッチャフレンドリーな実況してましたよね!? キャラ変わってません!?

 周りを見渡してみたんだけど、なんかやっぱりシーンとしている。……えっと、なにか反応プリーズ……。

 

 ……

 

 ……

 

 …………

 

 …………さーて、ホントこの状況、どうしようか?

 

 

 

『少し、よろしいかしら』

 

 

 

 そのときオレにとっての天使が舞い降りた。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 オレがラルトスに指示した技。それはエスパータイプの特殊技のアシストパワーという技だ。アシストパワーは基本の威力は二十なんだけど、能力変化が一段階上がるごとに、その基本威力にプラスして二十の値が加算される。威力の計算式としては

 

 総合威力=基本威力20+20×上昇した能力変化のランクの数

 

という形で表される。今のラルトスの場合、ぎんいろのかぜで攻撃・防御・特攻・特防・素早さがそれぞれ一つずつランクが上がり、ちょうのまいが三回で特攻・特防・素早さがそれぞれ三回ずつ上がった。

 さて、これを先程の威力の計算式に代入すると、

 

 20+20×14=総合威力300

 

 ついでにいえば特攻は四段階アップ。数字にして当てはめると、三倍は上昇してしているわけで。

 

 うん、オーバーキルってレベルじゃねぇぞ。

 

『みなさん、ところどころ不明な部分もあると思うし、説明が長くなってしまって申し訳ないわね。とにかくそのアシストパワーはとんでもない威力に上がっていた。だから、たとえ伝説のポケモンであるレジアイスもファイヤーもスイクンも耐えられなかったわけね』

 

 あー、シロナさん。ホンマ、ホンマありがとうございます!

 

 ぎんいろのかぜ、ちょうのまい、バトンタッチから始まったコンボの説明を懇切丁寧に説明してくれていた。

 

『いえ、もはや耐える耐えないとかそんな話ではないわね。粉砕よ粉砕、もういやって言うほどコナゴナにね』

 

 ……ハイ、なんだかスミマセン。お願いですから、そんなふぶきが吹き荒れるような冷たい視線は勘弁してください。

 

 とにかく、なんとかそのおかげで、スタジアムに音が戻ってきた上、オレはリーグ決勝に進むことになった。

 

 

 そして、このバトルは永遠と語り継がれる伝説のバトルとなった(泣)。

 

 

「(わ、わたしは関係ないもん! ユウトだけよね!? ねっ!?)」

 

 うるせえよ!! お前もオレと一蓮托生だよ!!

 




シロナ、ヒカリ、リーフ
「ちょっとは自重しなさい、このどアホ!!!」
グリーン、ダイゴ、シルバー
「そして、あんなの相手にどうしろってんだ!!」

ユウト、ラルトス
「あの……なんかスミマセン」


やりすぎは良くないよね! だからきっとバトル出してもらえないんだよ、ラルトスちゃん!

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