ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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予選リーグBブロック決勝戦
ユウトVSヒカリ

ユウト手持ち:デンリュウ、クラブ→キングラー(ダウン)、グレイシア(ダウン)
ヒカリ手持ち:リザードン、ベトベトン(ダウン)、エルレイド(ダウン)


第16話 予選決勝ユウトVSヒカリ④

 正直二体目がクラブだったことでユウトさんの選出した中にはヌケニンは入ってないと思った。なぜなら、三体目でヌケニンを出した場合、仮にヌケニンでは対処できないポケモンが出てきたら、それで終わりだからだ。あのユウトさんがそんなヘマをするわけがない。

 さて、どんなポケモンが出てくるのか。

 あたしの予想としては、見せ合いの中で見かけたあの六体の中では間違いなくエースだった、ゴウカザルではないかと思っているのだけど――

 

「デンリュウ、キミに決めた!」

 

 いっ!? ここでデンリュウ!?

 まっず。デンリュウじゃリザードンは相性的に厳しい。

 デンリュウの体力が減ってるなら、何とかなると思うけど、残念ながら、そんなことはない。

 

『ユウト選手、最後は電気タイプのポケモン、デンリュウです! 相性はリザードンは飛行タイプを持つため、相性は不利! ヒカリ選手ここからどう攻めていくのか!?』

 

 ……ん?

 ……ちょっと待って。

 

 たしかに相性は最悪。

 だけど、上を見れば、さっきまでの雨模様がウソのように強い日差しがフィールドに降り注いでいる。

 

 ……

 

 これは――!

 

「ヒカリちゃん!」

 

 ユウトさんの張り上げた声が耳に届いて反射的にユウトさんを見据えた。

 

「楽しそうだね、ヒカリちゃん!」

 

 楽しそう?

 思わず、顔に手をやると口角が上がっていて、にやついていたのだとわかった。

 いや、どうなんだろう。なんかすごく挑戦的な笑みを浮かべていそうな気がするのが、自分でもちょっと否定出来ない。

 

「それは『バトルは楽しむもの』だからですよ! それに『バトルは最後まであきらめないで戦い抜け!』、そんなことも教えてくれましたよね!? たしかに相性は悪いです! でも、その程度であたしのリザードンが負けるなんてありえませんから!」

 

 そうだ。今はエルレイドのおかげで、晴れ状態。炎タイプの技にブーストがかかる上、相手のかみなりの命中は五十パーセントにまで落ちてかなり避け易くなっている。

 それもこれもあたしのポケモンが奮起してくれた結果がこの状況だ。ベトベトン、エルレイド、それからこのバトルには出ていないけどポッチャマやムウマージ、ジバコイル、ムクホーク、ギャラドス他みんなの力があったから、あたしはここまで来れたのだ。

 

「ユウトさん、このバトル、あたしたちみんなの力であなたに打ち勝ってみせます!!」

 

 みんながあたしについてきてくれる。みんながあたしの傍にいる。それだけであたしの力は百人力だ!

 

「いけるわよね、リザードン!」

「グオォオォ!」

 

 まるで「なに当たり前なことを聞いている!?」と叱られそうなくらいの気迫でもって答えるリザードン。

 

「よーし! いくわよ、リザードン!」

「グウオワオォォ!」

 

 

 やばい。なんだかすごくたのしいかも。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「リザードン、飛び上がってねっぷう! フィールドを覆い尽くして、デンリュウの逃げ場所をなくしなさい!」

 

 今のヒカリちゃんは本当に楽しそうに見える。あきらめないという思いとみんなで勝ちにいくという気概が伝わってきた。

 

 ポケモンバトルでは何が起こるか分からない。

 たとえ、どれだけ戦略を立ててバトルを計算しつくそうと、バトルには必ず運という要素が混ざり合ってくる。

 あきらめなければ何かにつながるのだ。

 それを彼女はポケモンを通して知ってくれたようで、嬉しかった。

 

 っと、それよりもねっぷうをどうにかしないとな。

 

「デンリュウ! 回転しながらほうでん!」

「リュウゥゥ!」

 

『予選リーグBブロック決勝戦! いよいよそのラストバトルが始まりました! 開始早々、リザードンはねっぷうを放ち、対するデンリュウはほうでんで対抗します! それにしてもこのリザードンはすごい! このフィールドを覆い尽くすほどのねっぷう! こんなに強力なねっぷうを使うリザードンは見たことがありません! デンリュウ、ピンチです!』

『いや、わからない、これは』

 

 そしてねっぷうが吹き止んだフィールドには、

 

『な、なんと、デンリュウ! あの強力なまでのねっぷうを無傷で耐えた! い、いったい何をしたのでしょうか!?』

『おそらく、カウンターシールドです』

『カウンターシールド?』

 

 ダイゴが何か言ってるが、まあそれですね。

 アニメでサートシ君が開発し、ヒカリちゃん、そしてシンジ君すら披露したというアレ。オレのマリルやヒカリちゃんのポッチャマのアクアジェットもカテゴリでくくればそれに属する。尤も、なんというか、オレが言うのもおこがましい気もするんだけど、ネーミングセンスがちょっとねぇ。アニメではメリッサさんが名付け親(メタる場合は脚本家)なんだけど、「もうちょっといい名前とかなかったんですか?」と思う。なので、オレはこの名前はあんまり使わない。もうちょっとカッコよかったら普通に使ってるのになぁ。尤も、名前も含めて(アニメの話とか抜きでね)ダイゴたちに教えたのはオレなんだけどね。

 

『攻撃技を攻撃技でバリアをするという、ユウト選手が編み出した戦法の名前です。具体的に言えば、技の発生時に回転を掛けることによって技の指向性に別のベクトルの力を掛けて、攻撃技で攻撃と防御を同時に行うといったところでしょうか。ログで見ましたが、ヒカリ選手が三回戦のときポッチャマでやったアクアジェットもカウンターシールドの一種です』

『そ、それはすごい! まさにすごい! まるで初めて開ける宝石箱のような、私たちに新たな世界を見せてくれている両選手! すばらしいです! そんな対戦が繰り広げられています!』

 

 ダイゴは事情知らないからオレが発祥だなんて言ってくれているが、はっきり言ってなんだか居心地が悪い。

 まあ、そこら辺のリスクは後で考えることにして。

 

「デンリュウ、フィールド全体にかみなりを落とせ!」

 

 晴れで命中率は下がっているけど、フィールド全体に落とすなら関係はない。オレのデンリュウなら、そういう芸当も出来るしね。

 

「リザードン、つるぎのまいもどきをしながらあなをほって地中に逃げるのよ!」

 

 ヲイヲイ、つるぎのまいもどきをしながらって……。

 “もどき”ってなによ?

 

「グゥオワオォォ!」

 

 わぁー、それなんてエロゲ? じゃなくて、どんなチート? なんかあのリザードン、たしかにつるぎのまいみたいなことをしながらあなをほって地中に潜っていきました。

 

「い、いつのまにそんなことができるようになったんだ?」

「この島に来てからの特訓でですよ!」

 

 なるほど。見てないところで特訓してたのね。というかこの島に来てって、僅か一週間足らずであんなの身につけさせたんですか!? あのリザードンはどんだけ天才だよ!

 

 と思っている間にデンリュウのかみなりがフィールド全体に降り注ぐ。

 

『デンリュウのかみなりがフィールド全体に幾筋も降り注いでいます!』

 

 ひかえめならバリバリの特殊アタッカーを担ってもらおうと思いましたが、のうてんきなこの子(防御↑特防↓)だったので、耐久よりに努力値を振りながらも、攻撃・特攻にも振って、耐久・二刀流戦法が起用できるようにした。

 尤もなんだかんだ言っても、愛情があればそれでいいんです。つぶらな瞳とか、自分の大きさを考えないでメリープ時代のようにじゃれてくるところとかがかわいいんですよ。

 

 まあそこは置いておいて。

 確かに地面は電気を通さない。だから、電気技を回避するために地中に逃げることは悪くない。オレもそう教えたしね。

 でも、今回に限ってはリザードンは地中に逃げるよりは、空高くに逃げた方が良かったかな。

 

「デンリュウ! 続いてでんじふゆう!」

 

 すると、デンリュウが、ラルトスやゲンガーがサイコキネシスを使うかの如く、フワフワと浮きあがる。これでデンリュウに地面技は届かない。

 

「今よ、リザードン!」

「かわせ、デンリュウ!」

 

 そして地中から全身に泥を被った状態で飛び出してきたリザードン。

 おっ! これは……ラッキーだ!

 

「リザードン、かえんほうしゃ!」

「グ、グオワ……!」

 

 しかし、リザードンはかえんほうしゃを放つことはなかった。そしてブルブルと全身が痙攣したようになっている。

 

『あーっと、リザードン! 麻痺で痺れていてかえんほうしゃを放てません! しかし、いったいいつのまにリザードンは麻痺になったのでしょう!?』

『さっきのかみなりの影響かな。しかし、リザードンは地面に潜っていたから、電気技を食らうはずがない』

 

 ダイゴの指摘は惜しいところを突いている。だけど、状況が違えば、その結果も変わってくる。

 

「そうか、しまった!? さっきまでの雨!?」

 

 おっ、ヒカリちゃんは気づいたみたいだ。

 そう。さっきのリザードンのねっぷうとにほんばれの影響で少しは乾いたけど、もともとは地面は

 

 ベトベトンのあまごいで地面が水を吸収し切れないほど、ぬかるんでいたんだよ?

 

『そうか! さっきのあまごいだ! 雨でフィールドが予想以上にぬかるんでいたからかみなりが地中にいたリザードンにも届いたんだ!』

 

 イエス、ザッツライト。そういうことです。

 

「ちなみにフィールドは今、若干でも電気を帯びてるから、でんじふゆうの効果は普段より長く続く。地面技は効果はない」

 

 ついでに、なんだかさっきのねっぷうでフィールドの水が熱を持ち始めたっぽいんだよね。あんまりにも熱くなりすぎるとデンリュウにとってダメージにもなり得る。だから、ここででんじふゆうは重要だと思ったんだ。

 で、こんな風な地中に電気技が届いたり、でんじふゆうの長期化、フィールドの熱によるダメージはまさに、ゲームにはない仕様だ。まあ、イワークに、スプリンクラー付きとはいえ、10万ボルトが通るとかいうワケわからん世界だからねぇ(ニビジムでタケシさん相手に実証済み)。

 

「リザードンは麻痺してもはやスピードはお前以下だ! 一気に攻め立てるぞ、デンリュウ! はかいこうせん!」

「がんばって、リザードン! フレアドライブでデンリュウに突っ込むのよ!」

 

 リザードンはフレアドライブ特有の青っぽいエネルギーに包まれる。一方デンリュウがその口にはかいこうせんのエネルギーを充填する。

 

「はかいこうせん、発射!!」

「フレアドライブ、GO!!」

 

 そしてはかいこうせんとフレアドライブ。それはどちらも同じ超スピードで、両者の中間付近でぶつかり合う。

 

「くっ……!」

「が、がんばって……リザードン……!」

 

 その激しいエネルギーのぶつかり合いによって、このフィールドは正直立っているのも辛いほどの衝撃が体を襲う。

 

『ふ、フレアドライブとはかいこうせん……! す、凄まじいまでのぶつかり合いです!』

 

 余波はフィールドだけでなく、この会場全体にまで影響が及んでいるそうです。

 

「り、リザードン! は、はかいこうせんの軌道からズレなさい!」

 

 ま、マズイ!

 

「デンリュウ、パワージェムで撃墜しろ!」

「もう、おそいです! リザードン、全力で突っ込めぇ!!」

「グゥオワオォォ!」

 

 そして全身に炎を纏ったリザードンがデンリュウに突進し、衝突した。その勢いとでんじふゆうにより、まるで超伝導体のごとく、フィールドを滑るように吹き飛ばされるデンリュウ。

 

『決まりました! 炎タイプの大技、リザードンのフレアドライブがデンリュウを直撃です!』

 

「リュ、リュウゥゥ!」

 

 だが、吹っ飛ばされた勢いを利用して、クルッと一回転して体勢を立て直して、なんとかデンリュウは身体を起こして、パワージェムを飛ばすことに成功していた。

 

『ああっと、しかし! デンリュウもリザードンに吹き飛ばされながらもパワージェムで反撃! 効果は抜群です!』

 

「デンリュウ、頑張れぇぇぇ!!」

 

 そして滑る勢いで跳ね上がった泥に全身が塗れつつも、なんとかスタジアムの壁に足を着けて激突は避けたデンリュウ。ただし、もどきとはいえつるぎのまい込み(おそらく1段階アップ)、晴れ下でのタイプ一致フレアドライブの威力は相当なもので、デンリュウはまだフラフラしている。

 一方のリザードンの方も、はかいこうせんのダメージに、フレアドライブの反動、パワージェムの効果抜群ダメージ(リザードンには四倍弱点)でまだ立ち直れていない!

 

「デンリュウ、踏ん張ってくれ!! これがラストなんだ!! かみなりパンチ!!」

「リザードン、がんばって!! からげんきよ!!」

 

 立ち直ったデンリュウが、今度は壁を踏み切り板代わりに踏んだ勢いで、リザードンに飛んでいく。

 しかし、ダメージは凄まじかったらしく、リザードンに向かっていくスピードは常のものと比べ、格段に劣っている。その間にリザードンは立ち直り、からげんきの体勢になって突っ込んできた。

 

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」」

 

 

 スタジアム内に二人の願いすらこもる言葉が駆け巡った。

 

 

 デンリュウとリザードン。二体のポケモンが接触する。

 

 

 それと同時にスタジアムを白色の閃光が包み込んだ――

 

 

『で、デンリュウのかみなりパンチ、リザードンのからげんき! 両者とも全身泥まみれの満身創痍! もはや、これが両者の最後の一撃となったでしょう! はたして、どちらが最後までこのフィールドに立っていられるのか!?』

 

 

 閃光が止む。

 

 交差する二体。

 

 彫像のように静止する二体。

 

 このまま止まったままを連想させるものだったが、しかし!

 

 そのうちの一体。

 

 グラッ

 

 よろめいたと思うと、

 

 バッッシャン

 

 大きな音を立て、かすかな泥を跳ねながらフィールドに沈んだ。

 スタジアムを静寂が包む。ジャッジが近づいた。

 

 そして――

 

 

 

「リザードン、戦闘不能!」

 

 

 オレはワナワナと

 

「ヒカリ選手が三体全てのポケモンを失ったため、この勝負、ユウト選手の勝ち!!」

 

 心の底から湧く感情に

 

「予選リーグBブロック! 決勝リーグ進出者はホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト選手!!」

 

 打ち震えていた。

 そしてその瞬間、スタジアム内をまさに爆発と言っていいほどの熱気、歓声が包み込んだ。

 

 

 

 *†*†*†*†*†*†*†*†

 

 

 

「ありがとう、リザードン」

 

 あたしはボールにリザードンを戻した。耳はスタジアム内の歓声で、バカになったんじゃないかというぐらい、何も聞こえない。正直何が起きたのかわからなくなっていたのか、しばらくボーっとしていたんだと思う。

 

 

「ヒカリちゃん?」

 

 

 すぐ目の前にユウトさんが現れるまで。

 あれ?

 ここどこ?

 

「ここは?」

「フィールドへの入口だよ」

 

 そ、そういえば照明もフィールドを照らすものとは全然違う、普通に室内を照らす用のものだった。

 

「あ、あの、ユウトさん」

 

 すると、ユウトさんはあたしに向かって右手を差し出してきた。

 

「え? え? え?」

 

 あたしはわけがわからず、何度もユウトさんの晴れやかな顔と差し出された右手に視線を行き来させていた。

 

「ありがとう、楽しかったよ」

 

 あ……。

 

「あたし、も、です」

 

 あたしはその手を右手でしっかりと握り返した。

 

「あ」

 

 いつのまにあたしの視界が波打ち始めていた。そしてだんだん歪み始めていた。目頭がだんだんと熱くなる。鼻になにやらツーンとした感覚が駆け抜けた。

 

「あたし」

「ヒカリちゃん」

 

 ユウトさんはそう言ってあたしの顔を自分の胸に押しつけた。

 

 あたたかい。

 

「ゆ、ユウ、ト、さん、あ、あた、あたし、ヒック、そ、その……」

 

 そこから先は言葉にならなかった。

 

「うん、うん」

 

 ユウトさんはやさしくあたしを抱いてくれ、そっと頭に手においてくれた。

 

 あたしは膝の力が抜けて座り込んでしまった。それでも同じように腰を落として、まだあたしを抱いてくれている。

 

 今までユウトさんとの特訓で勝ったことなんて一度もない。

 

 でも。

 でも、それと比べて。

 

 同じ負け。

 同じ負けのはずなのに。

 どうして。

 

 どうしてこんなにも!!

 

「ポッチャ」

「マージ」

「ジbrrrrrr」

 

 すると、バトルに出なかったポッチャマ、ムウマージ、ジバコイルが出て来た。みんな、あたしに寄り添ってくれているのか、なんだかとっても近く感じた。

 

「勝って喜びを分かち合うのもポケモン、負けたとき涙をぬぐってくれるのもポケモンなんだよ。だから、心配して出てきてくれたのかも」

 

 そう頭の上から聞こえてきた声に、今度は別の意味においても、目頭が熱くなった。それと同時に胸の辺りが温かくなったようにも感じられた。

 

「あ、ありが、み、みん゛」

「うん、うん。でも、今は泣いちゃってスッキリした方がいいかも。ここは誰も見てないからさ」

 

 もうそれであたしの我慢は限界だった。堰を切ったように溢れ出す熱い液体、嗚咽を押さえきることはもはや不可能だった。

 

 

 * * * * * * * *

 

 

「落ち着いた?」

「は、はい」

「あ、今のは気にしなくていいからね」

 

 は、はは。

 好きな人にあんなダサいところ見られるなんてちょっと気恥ずかし……い?

 はれ?

 

「あ、あのですね、ユウトさん!? えと、あの、その!?」

「ど、どうした、ヒカリちゃん!? 何をいったいそんなに焦ってるんだ!?」

「あ、あの、あのですね!? あ、あた、あたしが負けた原因の評価をお願いしまっす!!」

 

 あー、言ってから気がついた。

 なんであたしこんなこと言ってんのよ。もっと違う話題あるでしょ。それに最後の「しまっす」ってなによ「しまっす」って。

 

「あ、ああ。そうだね」

 

 そして何にも気がつかないユウトさん。このニブチン!

 

「そ、それにしてもヒカリちゃん」

「あんですか!?」

「い、いやぁ、その……これだけは言っておきたいんだ」

 

 

 ――強くなったね、ヒカリちゃん

 

 

 その言葉が耳を打ったときにあたしのすべてが止まった。

 

「あたしなんて、ユウトさんに比べたらまだまだですよ」

 

 そう。あたしなんてまだまだ全然強くなってなんかいない。

 だって、ユウトさんはバトルが始まる前に言ってた、『オレがここに出すポケモンはみな、オレがシンオウ地方に来てから捕まえたポケモン、育て始めたポケモンばかりだ』って。つまり、あたしと一緒に育て始めた、しかも、ユウトさんはあたし以上に旅の途中でポケモンを入れ替えて育てていたから、今日の六体の育成に掛けられた時間は明らかにあたしよりも格段に少ないハズ。

 それに何より、テンガン山のときのように所謂“本気パーティー”を組んでいない。

 

「どうしてテンガン山のときのようなパーティーを組まないで、シンオウで育て始めたポケモンばかりでバトルしたんですか?」

 

 だから、気になって聞いてみた。それで来てたら、あたしなんて本当に鎧袖一触で倒されていたハズだから。

 

「ん~、いろいろあるけど一つはヒカリちゃん、キミとのバトルを楽しみたかったから、かな」

「あたしとのバトルを?」

「そっ。そのためにはヒカリちゃんと同じ条件じゃないとね。実際、ホント良かった。久しぶりだよ、あそこまで手に汗握る、ヒヤヒヤした、だけど心躍るバトルは」

 

 

 ――ありがとう、ヒカリちゃん

 

 

 ……あー、なんだろう。あたしってこんな単純だったかな。

 なんか今の言葉でさっきまでの沈んで気持ちとかが一気に消えちゃった。なんか雲ひとつない快晴って感じ! だけど、胸がホカホカとあったまるこの感じ。

 

「それに、オレの持つ知識をほとんど教えた人はヒカリちゃんとシロナさん、キミたちが初めてなんだ。だからさ、自分の育てた弟子がどれほど成長したのか気になるじゃない?」

 

 ……弟子……か。なんかちょっと風が吹いて雲が出てきたかも……。

 

「……弟子、ですか?」

「うん、そうだね」

 

 そう、か。まだまだ、違う方としては見られないか……。

 

 まっ、今はまだいいや。

 

 まだ、あたしはユウトさんに並びたてるほどの実力を持ってない。

 ただ、そのときが来たら、告白しよう。

 そう思った。

 

 いや、そう決めたんだ!




とりあえず前バージョンのプラチナ編ラストまで。

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