とりあえず、( ・∀・)つドゾー
※ヒカリをラスボスとしたら、シロナはEXボスです
ポケモンリーグ
それはポケモントレーナーなら一度は志すであろう、憧れの場所。そして彼らは、一度はそこに立って勝ち進み、その頂点――チャンピオンマスター――になることを目指す。また、それ以外の者はこの一年に一回のイベントをお祭りのような気分で味わう。
さて、トレーナーなら誰しもが目指す、その光り輝かんとする頂だが、そこに昇り詰めるまでには幾多もの試練が立ちはだかる。
まず、出場するポケモンリーグの地方の、リーグ公認バッジを八つ以上集めるという条件をクリアする必要がある。
その上で次に行われるのが、ポケモンリーグに出場するためのテストだ。
これはどの地方でも言えることだが、その地方のポケモンリーグ運営委員会がとあるダンジョンを指定して、そこを制限時間内に通過した者たちにのみ、ようやくポケモンリーグ出場の資格が与えられる。そのダンジョンには様々な障害あるいはトラップが仕掛けられていたり、強力な野生ポケモンが生息していたり、その中を進む同じくリーグ出場を目指す何人かのトレーナーを倒さなければならなかったりと、トレーナーやそのポケモンたちにとってはかなり過酷な試練となっている。いつしか、このダンジョンのことを『チャンピオンを目指すための最初の険しい試練の道(ロード)』ということで、【チャンピオンロード】と呼ばれるようになった。
さて、ようやく出場資格は得たもののまだまだ試練は続く。
今度はチャンピオンロードを通過したトレーナー同士でブロックごとに分かれてトーナメント形式のバトルを行う。これがいわゆる【予選リーグ】である。
ちなみに昨今はこのチャンピオンロードを通過するトレーナーが増えてきたので、このブロック数、あるいは試合数が増える傾向にある。そのため、チャンピオンロードの難易度を上げるべきだとの声も聞こえるようになってきた。
次に、各ブロック予選リーグ優勝者は【決勝リーグ】というものにコマを進めることになる。バトル形式はトーナメントとなっており、予選リーグと特に大差はないが、大きく異なる点は過去直近の三年間で決勝リーグに進出し、かつ、その期間内に決勝リーグ一回戦を一度でも勝ち抜いた者が、この決勝リーグから加わることである。つまり、今回予選から勝ち上がってきた者と前回大会までの強者が入り乱れて競い合うハイレベルな戦いとなっている。
ちなみにこのことからわかるとおり、過去直近三年以内ならば予選リーグ優勝者はチャンピオンロード、及び、予選リーグを免除される、いわゆる“シード権”が付与されている。
そしてこの決勝リーグにて優勝したただ一人が次のステージへと進む。それが、【四天王リーグ戦】である。これは決勝リーグ優勝者が四天王全員とリーグ戦を行うというものだ。
ちなみに、ここではリーグ戦の名の通り、四天王同士の対戦も行われ、その勝敗数によって、勝敗数が同じ場合はその試合内容から優劣をつけることで、四天王の序列の順位も入れ替わる。また、ここでは四天王の降格という事態も十分起こり得るのである。
さて、このリーグ戦にて一番の成績を修めた者に与えられるのが【チャンピオンマスターへの挑戦権】である。そして、このバトルにて勝利を収めれば晴れてチャンピオンに、負けた場合でも四天王序列一位の座に治まるのである。
――そして今日、チャンピオンマスターへの挑戦権をもぎ取った一人の少年がバトルに臨む――
*†*†*†*†*†*†*†*†
『スタジアムに集まっているみんな、待たせたな! 今日はビッッグイベントの日だ!!』
今オレとラルトスはスタジアムの既にバトルフィールドのトレーナースクエアの中に立っているんだけど……スゲー。なんか今日の実況はイケイケドンドンな、ノリの良いニーチャンだ。ていうか、なんかこの声どっかで聞いたことあるような? ……あ、モーターに電池で走るプラモデルカーに並走するアニメの実況の人にそっくりかも。
「(それにしてもうるさいわねぇ)」
そして、ラルトスの言う通り、この鼓膜が破れそうな観客の雄叫びもこれまたすごい。テンション最高潮だな。
『今年は初っ端から例年以上の波乱溢れる大会だった! だがしかし! このシンオウリーグスズラン大会の最後を飾るこのラストバトル、ボクは、実は一番荒れることになる気がしてならない! みんなもそう思うだろ!?』
何この煽り上手。会場は、米の大陸横断ウルトラクイズの司会者の「ニュー◯ークにいきたいかー!?」「おーう!!」的なノリで、大歓声があちらこちら、それこそ全方位から上がってくる。
「(あ~、ほんっとにうるさいわねぇ。で、誰なのよ、今ユウトが思ったその人?)」
「ん~、ま、あんま気にしなくてもいいぞ。それより、今日はお前もメンバーに入っているから出るかもしれないんだぞ。大丈夫か?」
「(わたしはいつでも準備万端よ。それよりもわたしは今回ちゃんと出られるのかしら? 寧ろそっちの方が心配よ)」
「……まあ、出せるよう頑張るよ」
「(本当に頼むわよ? お願いね)」
なんてことを言い合っていた間にも話は進んでいて。
『それじゃあ今からその嵐を巻き起こす二人を紹介するぜ!』
……なんか災害呼ばわりされているみたいな気がしてビミョーにイヤ……。
『まずは挑戦者! ひっさびさに四天王以外の挑戦者の登場だ! しかもしかも! 四天王リーグ戦を無傷の四連勝で勝ち上がってきたホウエン地方ハジツゲタウンからの大・旋・風! チャレンジャーーーーー、ユーーウーートーーーオウゥ!』
え、やだ。なにその格闘技の試合のリングに上がる前のようなコール。マジ勘弁なんだけど。
『彼はスッゲェぞォ! なにせ決勝リーグからのルール変更にいち早く対応して、予選リーグで見せてくれた以上の熱いバトルをボクたちに見せつけてくれたんだ! それに心を奪われたみんなも多いんでないかァい!? かく言うボクもその一人だぜ! ヒュー! 愛してるぜ、ベイベー!』
キモッ!? 男に愛してるなんて言われたくないわ! 掘るなよ、絶対掘るんじゃないぞ!?
「(ユウト、掘るってなあに?)」
「……いや、お前はそのまま知らないままでいてくれ。頼むから。ていうか、冗談だから。あんまり真に受けるなよ」
でも、なんだかホッコリ癒されたことに変わりはない。やっぱりこいつはかわいいなぁ。
「(な!? きゅ、急にど、どうしたのよ!?)」
「なんでもないよー」
うん、ほんわかしてなんか元気出たわ。
『つづいてチャンピオンの登場だ! チャンピオンとなって既に十年以上! しかし、その間に敗退は一切なく、ついたあだ名が『不敗の女帝』! でも、ボク自身は『美しき戦いの女神』なんてのを推したいんだな! シンオウチャンピオンマスター、シーーローーナーーーーアァ!』
マジか!? 十年!? なっがいなぁ。
「(でも、今までシロナには負けたことないじゃない)」
「あのな、シロナさんだって最初に会ったときなんかよりは確実に強くなっているんだから、今日勝てるのかわからないだろ」
「(あら、わたしは信じているわよ、あなたが勝つって)」
「あのな」
「(だって、わたしたちはそれを信じてバトルに臨むしかないのよ)」
――少し、目が覚めた気がした。
「(たしかに油断しないで気を引き締めようっていうユウトの気持ちも十分にわかるわ。でも、わたしたちはあなたが勝つって信じてるの。ポケモンはトレーナーを信じてバトルをするしかないのよ)」
「ラルトス……」
「(だから、わたしはいつもみたいに自信に溢れたふてぶてしいユウトの方が好きだわ)」
……なんか、ふてぶてしいってのはちょっと気に食わないが。
「……じゃちょっと、そのふてぶてしさを醸し出してくるわ。サンキュ、ラルトス」
「(あら、そんなの気にすることじゃないわ)」
さて、そんな話をしているうちにシロナさんも入場。その様はたしかに“女帝”を意識させるに十分なほど、威風堂々としていた。
そして、オレ、それからシロナさんも誰彼に言われることなく、フィールドの中央に向かう。そこでオレたちはガッチリと握手を交わした。
「ユウト君、今回私は一人の挑戦者としてあなたに挑むわ」
「いやいや、恐れ多いですよ……というのは建前で、どこまでいけるのか期待していますね」
思わず口角が釣り上がったのを感じた。オレってこんな性格ではないはずなんだけど、つい今し方、ラルトスと話していたから、こんなことが言えたんだなとも思った。
「ふふふ。いいわ、その不敵で挑戦的な笑み。やっぱりユウト君、あなたはそうしていた方がユウト君っぽいわ。私も燃えてくるというものよ」
そうして握手は終わる。シロナさんはクルッと背を向けた。その際、その金糸のような髪が揺らめき、そして、前髪に当てる手が見えた。
「いいでしょう! 私がどれだけ成長したか、あなたに見せつけてあげる!」
そのままその手で前髪をかきあげて薙ぐって行く後ろ姿はかなりカッコよかった。
『スポーツマンシップに則った気持ちのよい握手を交わした挑戦者とチャンピオンがそれぞれトレーナースクエアに戻っていく! その間、改めてこのバトルのルールを確認するぞ!』
さて、ルールとしては、
・使用ポケモンはお互いに六体で、六対六のフルバトル
・ポケモンの交代は双方ともにあり
といった感じで、予選リーグとそんなに変わりのないところもある。
ただ、予選とは異なって大幅に変わったところもあった。
『次にアイテムの使用に関してだ! トレーナーが使うアイテムは禁止とするが、ポケモンが自分で使うことの出来るアイテム、つまり持ち物に関しては一つだけポケモンに持たせることが出来るぞ! なお、この持ち物の重複はなしだ!』
コレだ。コレが決勝までと大幅に違う点だ!
四天王リーグ戦からこのルールが実装された。尤も、“許可”という範疇にあるから、このルールを使わないということもできるが、オレからすれば、ようやくというか、とうとうというか、とにかく待ちに待ったものだ。使わないという手はない。この持ち物の使い方でバトルを大きく優勢に傾けることも出来るし、何よりこれでようやく面白くなれる!
『今大会は変化技の登場と
さてさて、そんな間にオレたちもトレーナースクエアに戻っていた。既に最初に出すポケモンのモンスターボールも掌の中に緊張感と高揚感とともに握られている。
「では、よろしいですか!」
ジャッジがオレたちやシロナさんが位置についたのを見計らい、声を掛ける。
「これより、挑戦者ユウトとチャンピオンマスターシロナのバトルを開始します! では、両者、一体目のポケモンをフィールドの中に!」
それを合図にこのラストバトルが始まった。
* * * * * * * *
『さあ、いま! いよいよシンオウナンバーワンを決めるバトルが始まったぞ! 挑戦者ユウトの最初のポケモンはカポエラー、一方チャンピオンシロナはルカリオ! 両者ともに格闘タイプのポケモンの登場だ! だが、ルカリオは鋼タイプも持ち合わせているぞ! チャンピオン、ここはやや不利か!?』
向こうの先発はルカリオか。ルカリオなら持ち物はいのちのたまで両刀か? でも、いのちのたまは与えるダメージが増える代わりに、自分も一定量ダメージを受けるという効果を持つ。フルバトルは必然的にバトルが長くなるので、それだけいのちのたまで受けるダメージは多くなってくるから、それは避けたいと思うのが心情かもしれない。実際オレは今回このアイテムは持たせていないし。
まあ、判断材料が少ない中であれこれ考えても仕方がない。
そうそう。こっちのカポエラーについては元々ダブル用だったんだが、シングルでも十分に通用すると思って連れてきた。特性の『いかく』も十分決まっているみたいだし、ここは!
「戻れ、カポエラー!」
「戻りなさい、ルカリオ!」
『おおっと!? 挑戦者もチャンピオンもポケモンを戻したぞ!? これはいったいどういうことなんだ!? さて、今日の解説はホウエンチャンピオンマスターのダイゴさんだ! ダイゴさん、この交代は何を意味するんでしょう!?』
『そうですね。おそらく相性もそうですけど、チャンピオンはカポエラーの特性を嫌がったのではないでしょうか。見たところ挑戦者のカポエラーの特性は『いかく』です。『いかく』は相手の攻撃を下げる効果がありますから、それを嫌ったと思えば、チャンピオンの行動も納得できます。それに挑戦者の方もそれを読んでの交代ということもありえますね』
『なるほど! 相変わらず、レベルが高いぜ! ちなみに持ち物についてはどうですか!?』
『候補は幾つかありますが、お互いまだ何も仕掛けていませんので、今の段階ではなんとも言えません』
『なるほど! 何かわかったら、よろしくお願いします! さて、そんな間に両者の次のポケモンが決まったようだ! はたしてどんなポケモンなんだー!?』
「天空に舞え、ガブリアス!」
「モンジャラ、キミに決めた!」
むっ、ガブリアス!? ということはいきなり勝負に来るか……!?
『おーっと! チャンピオン、ここでいきなりエースのガブリアスを投入したぞ! 一気に勝負を掛けに来たのか!? 対する挑戦者はモンジャラ! 果たして彼は一体何を狙っているのか!? こいつは全く予想できないぞ!!』
赤い靴でカパカパとステップを踏むモンジャラに対して「ガァブァ!」と威嚇し睨み付けるガブリアス。
「先手はいただくわ! ガブリアス、つるぎのまい!」
「ガァブァ!」
ガブリアスが一層吠えると薄青い半透明な西洋剣のようなものが数本ガブリアスを囲むように現れる。そして剣同士がぶつかり合うような独特の音を発して刃の部分が幾度か交差しつつ、ガブリアスの周りをグルグルと周る。最後にそれらがまとめてガブリアスに吸い込まれるようにして消え去った。
『つるぎのまい、攻撃をグンと上げる効果を持つ技ですか。これは本当に、チャンピオンシロナは勝負を決めにきましたね』
『ほお! つまり、ダイゴさん、どういうことでしょう!?』
『ガブリアスにつるぎのまい。これはある種、ガブリアスにとっては王道の勝ちパターンなんです。下手をするとガブリアスだけで相手の六体を全滅にもっていくこともできます。しかもたった一撃だけで』
『たっ、たったの一撃でですか!? そいつはスゲェ!! というと、挑戦者は今かなりピンチってことですよね!?』
『まあ、そういうことになりますね……一応は』
『くぅ~! これは挑戦者ユウト相当ヤバそうだ! 果たして彼はこの難局を乗り切ることが出来るのか!?』
うん、外野が何か言ってるけど、あまり気にするほどのものでもない。
いや、寧ろわかったのは、ここがガブリアスを確実に突破できるチャンスである、ということだ。
「(モンジャラ、頑張るのよ!)」
「モジャ!」
モンジャラのやる気は十分。オレは綻びそうになる頬を引き締めた。
「モンジャラ、とりあえずみがわりでもしておこうか。それとお前なら大丈夫だ。気張っていこう!」
*†*†*†*†*†*†*†*†
「そのモンジャラ、持ち物はしんかのきせきよね」
ユウト君の二体目は草単タイプのモンジャラ。草だからなんとなく特攻が高そうなこと以外は何をしてくるのか、悔しいけどちょっと予想がつかない。ただ、モンジャラはモジャンボの進化前。ならば、一番の候補に挙がる持ち物はしんかのきせき。しんかのきせきは進化前のポケモンの防御特防を一.五倍にする持ち物である。ユウト君曰く、これによって耐久お化けに置き換わる未進化ポケモンが続々と登場して、「進化前だから」と油断していると、なかなか倒せなくて、逆に仕掛けた方が力尽きるという事態にも陥る、非常に革命的な持ち物なのだそうだ。
で、未進化であるモンジャラが出て来たから、少しカマを掛けてみたんだけど、
「さあ、どうでしょう?」
ニヤリとした表情とともに、アッサリと流された。
ときどき思うのだけど、本当にこの子はまだ十代半ばなのかしらね。
「ふふ、いいのよ。単なる確認だもの。でも、いくらしんかのきせきで防御と特防を上げても、モンジャラは草タイプ、ガブリアスに対する効果抜群技はないわね。おまけに今私のガブリアスはつるぎのまいを一回積んだ状態よ? いくらしんかのきせきでも耐えられないんじゃないかしら?」
「ふふ。オレのモンジャラなら大丈夫ですよ。シロナさんのガブリアスの方も努々油断なさらないように。ね?」
揺さぶりにも乗らず、ね。あのふてぶてしさがまたなんともラスボス感が漂うというか、なんというか。
「あなた相手にそんなことはできないわ。でも、なにか厄介なことやられると怖いから、遠慮なくいかせてもらうわね!」
これは本当だ。彼は挑戦者ではなく覇者、そして私は単なる挑戦者、そう思ってないと、あっという間に持っていかれる。ホントの本気。つまり、マジだ!
「さあ、ガブリアス! 弱点を突くわよ! ほのおのキバ!」
「ガァブ!」
ガブリアスが大口を開けて、フィールドを滑るように飛び、モンジャラに接近する。後方にはその飛行スピードによって巻き上がった粉塵が尾を引いてガブリアスを追い掛けていた。そのうち、ガブリアスの歯が炎を纏ったが、次にはそれが熱へと変わったのか、炎が消えて代わりに歯の色が煌々と光るオレンジへと変わった。
「くるぞ、モンジャラ! かまえろ!」
「モッ!」
「ムダよ! まずはそのみがわり、一撃で破壊してあげるわ!」
「ガァブ!」
そのままガブリアスはモンジャラの身体にそのキバで噛み付く。すると、モンジャラの身体が、一瞬ノイズが走ったかのようにぶれたのがわかった。
「今のでみがわりが壊れたわね! ガブリアス、そのままほのおのキバを維持し続けなさい! 噛み続けるのよ!」
「モンジャラ、ツタを絡み付かせろ! まきつくだ!」
ムダよ! 私のガブリアスはつるぎのまいを積んで、さらにその上がった攻撃を用いての弱点技よ!
いくらしんかのきせきだろうと、これで終わり――
「にはなりませんよ」
「モジャ!」
ぐっ! なんて硬いのよ、あのモンジャラ! つるぎのまいを一回積んだ状態なのに、あのモンジャラはまだまだ全然大丈夫といった感じで耐えている。
それにしても、まるで見透かされたようなその言い方はなんだか腹立つはわねぇ。
「NDK? NDK?」
「は?」
いやいや、「NDK?」ってなによ? 意味分かんないし。
「さって! じゃあ、次はモンジャラ、はたきおとすだ!」
マズイ! せっかくの持ち物が! なんとか回避させたいけど、まきつくで拘束されていればそれも叶わない! おまけにあの技は交代も阻害してくるからこのままでは……!
『ガブリアス、モンジャラの絡み付いたツタによりまきつく攻撃を受けている! ああっと! 絡み付いたツタが邪魔をしてガブリアス動けない! その間にモンジャラのはたきおとすが決まったー! 落とされた持ち物は……木の実だ! いったいどんな木の実なんだ!?』
『あれはラムの実ですね。効果はどんな状態異常も治せるというものです。ガブリアスに持たせるものとしては、ガブリアスの戦い方にマッチする、かなりいいものをチョイスしましたね。そしてこれでもうモンジャラの持ち物も確定でしょう。しんかのきせきです。これの効果は――』
くっ! たとえ叩き落されても、またそれを回収すればそれを使うこともできる。とにかく何とか拾い上げないとせっかくのラムの実が……!
「そうだ! ガブリアス! かえんほうしゃよ! かえんほうしゃでツタを焼き切りなさい!」
「あまいです! モンジャラ、ねむりごな!」
*†*†*†*†*†*†*†*†
さて、ねむりごなによって、かえんほうしゃを吐かれる前になんとかガブリアスを眠らせることが出来た。
あとは――
「モンジャラ、まずは体力を回復させよう! いたみわけ!」
「モジャ!」
モンジャラの持ち物は大方の予想通りしんかのきせきである。進化前のポケモンに持たせるのに非常に有用な持ち物なのだが、それだけでなく、モンジャラはしんかのきせきによって物理耐久だけなら、あの耐久お化けとして有名なクレセリアをも上回る。だから、物理については本当に硬い硬い。おまけに努力値はHP、防御、特防、素早さに振ってあるので、弱点だって余裕で耐える。尤も、ダメージを受けないわけではない。今回はみがわりも使って、かつ、相手はつるぎのまいで攻撃二段階上昇もあったわけだから、なおさらだ。なので、いたみわけ(自分と相手のHPを足し合わせて半々をお互いに分け与える)をさせて回復させた。
こうごうせいではなくていたみわけなのは、単純にその受けたダメージとの兼ね合いでの選択である。ガブリアスに与えたダメージは、はたきおとすでの攻撃のみ。まきつくはほとんどダメージになっていないだろう。逆にこちらは、先に挙げたようなダメージを負っているので、減った体力はあきらかにモンジャラの方が多いはずである。この状態でのいたみわけなら、モンジャラの回復とガブリアスへのダメージという一挙両得を狙えると踏んだからだ。
さて、ダイゴが今のような解説をしてくれている間にもういっちょいこうか!
「くっ! ガブリアス、起きなさい! 起きて!! 起きるのよ!!」
「まだです! まだこっちの攻撃は終わりませんよ! モンジャラ、リーフストーム!」
「モ~ジャー!」
モンジャラから吹き荒れる突風に乗って、数え上げるのも億劫なほどの木の葉がガブリアスを襲う。ガブリアスはドラゴン・地面タイプであり、かつモンジャラ自身の特攻も高いので、まずまずといった効き目だろう。
『ねむりごなによって眠ってしまったガブリアス! いたみわけにリーフストームをまともに食らってしまった! これは大ピンチだぞォ!』
『おまけにまきつくの効果でガブリアスを交代させることもできません。ラムの実が使えない今、ガブリアスが自力で起きるしか手はありません』
いや、そんなことはないんだけど。シロナさん、気づいてくれるかな。
「――ハッ! そうよ!! これよ!! ガブリアス、ねごとよ!!」
そう。眠っている状態のときにだけ出せる技のねごと。効果は自分の覚えている技の中からランダムで使う技を選択されて実行するというもの。今回は――
『こいつはなんなんだー!? ガブリアス、眠っているのにダブルチョップでモンジャラを攻撃していくぞ!?』
『しまった! ねごとか! 忘れていた! ああ、ねごとという技は――』
モンジャラとガブリアスとの間はほぼゼロなので、ツタに阻害されながらも一発目のダブルチョップがモンジャラに決まる。尤も、二発目のダブルチョップをただで食らうつもりは毛頭ない。リーフストーム(撃った反動として特攻が二段階下がる)を撃った意味はある意味これである。
「モンジャラ、パワースワップ!」
すると、モンジャラとガブリアスの間で、淡い黄色い光の交換がなされた。
『パワースワップ、自分と相手の攻撃と特攻の能力変化を入れ替える技ですね。これで、モンジャラはつるぎのまいで上がった能力変化を受け取り、逆にガブリアスはリーフストームの反動で下がってしまった能力変化を押しつけられてしまった』
そして二発目のダブルチョップがモンジャラに決まった。尤も、ダブルチョップは物理技な上、二発目はつるぎのまいの効果も消えてしまったので、ほとんどダメージにはなっていないだろう。
さて、最後ギガドレインで体力回復もいいけど、倒しきれなかったらマズイから、ここは確実策の方でいこうか――
「とどめだ、モンジャラ! パワーウィップ!」
いただいた攻撃二段階上昇を生かせる、草タイプの物理最強技。これで倒せなかったら、ギガドレインでもやろうかと思ったけど――
「ガブリアス、戦闘不能!」
ジャッジの声が高らかとスタジアム内に響き渡った。
*†*†*†*†*†*†*†*†
『シンオウリーグスズラン大会の最後を飾るこのラストバトル! 一体全体、だれがこんな結果を予想できたかーーー!? なーーーんとなんと! 我々が知る限り、一度も土がついたことがないあのガブリアスが! あの最強無敵を誇り、チャンピオンマスターシロナのエースポケモンである、あのガブリアスが! ほとんど一方的に攻撃を封じられてダウーーーーーーーンッ!! 序盤から大波乱を見せるこのバトル! はたしてこれからいったいどうなってしまうんだーーー!?』
シロナ
ルカリオ(????)、×ガブリアス(ラムの実)、他4体
ユウト
カポエラー(????)、モンジャラ(しんかのきせき)、他4体
ついでに、皆さんのお力を借りたいことがありますので、活動報告にも目を通していただけますと幸いです。