ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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祝☆サンムーン発売!
しかし、まだストーリー途中。クリアが全然見えません……。
そして、困ったことにSSの方に手が付きませんw
あぁ、ストックが溶けていく~


第3話 ヒウンシティ散策と対ジムリーダー戦

「着いた! ここがヒウンシティだ!」

 

 あれから、ヤグルマの森を抜け、イッシュ地方で最も長い橋であるスカイアローブリッジを渡り切ったわたしたちを出迎えたのは、天をも衝かんとばかりにそびえ立つ摩天楼の数々であった。多数の近代的な高層ビル群が所狭しと並び立つイッシュ最大の大都会。

 

「うわぁ、ここは相変わらずよねぇ」

 

 昔ホウエン地方に行くときにここから船に乗っていったのだけど、そのときから変わらずの巨大港湾都市っぷりである。まあ、この町から全地方に船便が出ているから当然といえば当然なのかもしれないわね。

 

「ユウトさん! まずはヒウン名物のヒウンアイス食べに行きましょう!」

 

 以前来たときは存在すらしてなかった。ホウエンにいたときに、テレビで見て「なんでわたしが行ったときにはなかったのよ!」と歯ぎしりしたほどだ。テレビに映る長蛇の列に思わずたじろいでしまったけど、でもやっぱり並んででも食べてみたいとは常々思っていたのだ。ヒウンシティはジムがあるけど、ぶっちゃけそんなのは後でいーです!

 

「早く行きましょう! 今日は火曜日なのでもう売り切れてるかもしれません!」

 

 たしか火曜日はすぐに売り切れになるとか言っていたから、もうすぐにでも行って並びたい!

 

「はいはい、じゃあアイス食べて休憩してから明日のジム戦のためにジム見ていきましょうかね」

 

 やれやれといった具合に苦笑いを浮かべてくれてますけど、早く行きますよ!

 

「言っておきますけど、ここでチンタラしててアイス買えなかったらなにか奢ってもらいますからね!」

 

 

 ――……

 

 

「あり?」

 

 ヒウンシティの観光案内ではここ、モードストリートにヒウンシティ名物ヒウンアイスの売店がある。だから早足気味に来てみたんだけども――

 

「列が……ない……?」

 

 わたしがテレビ見て知っていたのは、たった一つの売店のために長蛇の列を作ってアイスを買い求めるお客の姿。

 しかし、いまわたしたちの目の前にあるのはどこぞの寂れた公園にある屋台のような、そんな雰囲気を漂わせるアイス屋。行列のできるという話はおろか、この通りを通る通行人さえ目もくれていない。

 

――ん? へぇ、こんなところにアイスクリーム屋があったのか――

 

「はいぃぃ?」

 

 一人ぴたりと足を止め、アイス屋を見やった通行人がこぼした言葉。これには愕然とした。

 

「まあ、これがヒウンアイスの現状さ。さ、とりあえず買ってオレの行きつけのカフェにでも寄ろうか」

 

 ポンと肩をたたくユウトさんにわたしは気の抜けた応えしか返せなかった。

 

 

 ちなみに、「一人一個しか買えない」と聞いていたアイス、わたしは四個、ユウトさんは二ダース買っていた。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 その後はカフェに行く前に、先にジムに寄ってもらうことにした。なんか一気に肩が透かされたので気分転換の一環として、ちょっとぶらつくことにしたのだ。

 

「この町はやっぱりすごいですねー。わたしだったら完全に迷ってジュンサーさんのお世話になってるか下手したら下水道辺りをウロチョロしてたりして」

「慣れればなんとかなるよ。まあ、オレも最初はトウコちゃんみたいな感じだったけどな。一応『だいたいここにこんなのがある』ってわかってたのに下水道行っちゃったりしたこともあったし。ただ、おかげでイーブイゲットできたけど」

「おお! イーブイですか! いいなぁ、わたしもゲットしたいです!」

 

 イーブイはいろんな進化があるポケモンで何よりもちょーぜつカワイイ! 絶対ゲットしておきたいポケモンだ。

 それにしても。

 手元のアイスクリームに目を落とす。

 

「んー! やっぱりこのアイスおいしいですよねー! みんなはどう?」

「ラルー!」

「ロォ~、ロォース!」

「モンメーン!」

 

 どうやら三人ともご満悦なようだ。正直これでなんで人気が下火になってるのかわからない。こんなにおいしいのになぁ。

 あ、ラルトスは両手にアイスを持ってるけど、アイスを持てないミロカロスと持つと飛びづらくなるモンメンのためにラルトスがアイスをサイコパワーで操ってあげています。これもラルトスのいい訓練にもなっているみたいですね。

 

「……あー、それにしても、なんか、すーごいですよねー。その、視線が……」

「……まあ、そーだよなー」

 

 ……いい加減無視することも出来なくなってきた現実を直視し始めるわたしたち。投げやりな答えが返ってきたユウトさんも正直うんざりしているんだろう。

 

 ていうかごめんなさい。これ、きっとわたしのせいですよね?

 

 というのも、ユウトさんのアイスはしばらく溶けないようにしっかりと包んでもらっていたみたいだけど、わたしのはそうでもない。早く食べなきゃということで、三人に出てきてもらい食べ歩きをしていたんだけど、まあ街行く人街行く人全員がわたしたちのことをチラチラ、中にはガン見していく。

 さらには、

 

「す、すごいですね、このポケモン! なんて名前なんですか!?」

「うん、ミロカロスっていうポケモンだよー。いつくしみポケモンで水タイプなんですよー」

「すみません! メッチャ綺麗なんで写真撮ってもいいですか!?」

「あ、私の方もお願いしていいですか?」

「あ、じゃあボクもお願いします」

 

 こんな感じでちょっと歩けばミロカロスの撮影会が始まるわけですよ。捌くこっちがメチャクチャ大変。でも、まあ無下にも出来ないし、ミロカロスもちょっと乗り気な感じがするから、ミロカロスの気が済むまではやってあげようということになった。きっとミロカロス的には進化前はさんざん『醜い』と蔑まれてきたのだろうから、チヤホヤされる今の現状が嬉しいという気持ちはなくはないと思う。

 

「それにまあ、ミロカロス自体相当珍しいポケモンだし、進化方法もわかってなかったから仕方ない部分もあるわな」

「ルートー」

「えーと、進化方法としてはヒンバスっていうポケモンを――」

 

 どうやったらゲットできるのかを聞かれたトレーナーに答えながらそうこぼすユウトさんやユウトさんのラルトスの言を聞きながら、わたしもパフォーマーだという長い金髪のおさげ髪と黒縁の四角いメガネが特徴的な女の子にユウトさんが言っていたのと似たようなことを告げる。

 

「パフォーマーっていうとポロック作るの得意なんですよね?」

「うーん、ポフレは作るの得意だけど、ポロックかー。知り合いに当たってみよう!」

「ポフィンってお菓子でもいいらしいですよ」

「へぇ。いろいろ教えてくれてありがとう! にしても偶々イッシュに来てこんないい情報が聞けるなんてラッキーね!」

「あ、どちらから来たんですか?」

「カロスよ。トライポカロンはカロス発祥でカロスが一番レベル高いから、ポケモンパフォーマーはカロスが一番多いのよ」

 

 なんてことを話してたりした。

 ちなみに

 

「あのヒンバスを進化させちゃうなんてあなたすごいわよね~」

 

なんてことを結構な人が言ってくるので、少し嬉し恥ずかし。でも、ミロカロスが自慢できてやっぱりちょっと嬉しの方に比重が傾くかな。

 

 まあ、そんなこんなでアイスも食べ終えて、ミロカロスたちを戻してヒウンジム見学。

 ちなみに外見的にはポケモンリーグの看板が目に付くので、ここがジムだとわかるけど、見た目は普通のビル。中をちょっと覗いてみると白い繭みたいなのがあり、さらに他にもたくさんの絵が飾ってあって、ちょっと変な美術館かあるいは画廊のようにしか見えなかった。

 

「なんですか、これ?」

「うん、ジムリーダーのアーティさんはヒウンジムのジムリーダーであると同時に芸術家でもあるんだ。だからここはジムであると同時にアーティさんの個人的な画廊でもあるんだよ」

「へぇ、まあわたしには芸術はよくわかりませんが。ちなみに兼業の人って他にもいるんですか?」

「イッシュやカロスはかなりいるね」

 

 そんなこんなでジム見学は終了。

 

 今度は順番をずらしたカフェに寄る。

 

「うわ、なんかさっきまでの通りを見てると、ここは明らかにグレードは下がりますね」

「まあ、このスリムストリートは裏路地に近いからね」

 

 ゴミ箱やマンションのごみ捨て場があちこちに設置されているし、影のせいか街灯は燈っているのに若干暗い。全体的にみすぼらしい印象を受ける通りだ。

 

「さ、ここだ」

 

 見れば、普通のビルだけど、一階がシックなレンガ塗りの壁になっていて、赤い縁取りのドア枠と濃い木目調の扉がなんだか落ち着きを与えてくれそうな気がする。

 

「『カフェ 憩いの調べ』、ですか」

 

 扉の横には植木が植えられており、その前に立つこれまた赤い看板に書かれた文字をわたしは読んだ。

 

「そ。シックなBGMだしとても落ち着ける場所だよ。オレのヒウンシティでのオススメだ。じゃあ入ろうか」

「はい」

 

 カランカランというドアベルの音を鳴らしながら、ユウトさんの後に続いてわたしも店内に入った。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 店内は暖色系のランプのような照明に、入口の扉と同じつくりの壁、柔らかい感触を跳ね返すカーペットはどれも心にゆとりと落ち着き、そして癒しをもたらしてくれる。ユウトさんにつられて座席に座る。椅子もふわりと柔らかい。目の前のテーブルも扉、壁と同じらしい。極め付けは店内を流れるBGMだ。どこか物悲しいような哀愁を漂わせる、だけどふとした懐かしさをも抱かせるそれに、なるほどという思いを抱いた。店内を流れる時間の加速が緩められているようで、店内にいる数名の客もこの雰囲気に身をゆだねて楽しんでいるかのように見受けられる。

 

「これは確かにユウトさんが推すだけの場所ですね」

「気に入った?」

「とっても」

 

 こういうところには初めて入ったんだけど、さっそくわたしのお気に入りの場所として格付けされそうだ。

 

「いらっしゃいませ、お久しぶりですね、ユウト様」

「ども、ご無沙汰してます、マスター。あ、これお願いします」

 

 お冷をユウトさんの前に置いて注文を聞きに来ただろうここのマスターの人にさっき買ったヒウンアイスを渡すユウトさん。あんなに買ったのはこういうことだったわけですか。

 

「こちらの女性の方は初めてでいらっしゃいますね」

「え? あ、はい!」

「左様ですか。ではこちらをどうぞ」

 

 そうして私の前に置かれる白い飲み物。なんだか見た目まろやかな感じもするし、ほんの微かに甘い香りもするような? てか私まだ何も注文してないですよ?

 

「こちら、モーモーミルクでございます。当店では初めておいでいただきましたお客様にサービスとしてお配りしているものでございます」

「わぁ、そういうことですか。ありがとうございます!」

 

 モーモーミルクはミルタンクの乳から絞り出される牛乳で栄養満点でおいしいという評価が高い。わたしも大好きな飲み物だ。

 グラスに挿してあるストローからモーモーミルクを吸い上げる。適度な冷たさとまろやかさと甘さ、そしてこの臭みのなさはまさにモーモーミルクのそれである。

 ユウトさんのオススメを二人分注文してさらにもう一口。

 ふと、耳に店内のBGMが強く残った。

 

「ユウトさんこの曲知ってます? なんか何度も同じ旋律を繰り返してるみたいな気がするのですが」

「あぁ、これ? これはいわゆる“いにしえのうた”と呼ばれる曲だよ。イッシュではたぶんここでしか聞けないだろうね」

「おそらくその通りでしょうね。この曲を思い浮かんだミュージシャンの方は偶々あのときのユウトさんが同席されたから出来た曲だと仰っていました。それにこの曲は外に発表するつもりはないとのことです」

「僕はあのときここにいれてよかったよ。なんたって、この曲とあのポケモンを生で見れたんだから」

「それは言えますねぇ。わたくしもあのときの光景が今でも目に思い浮かびますわ」

 

 ユウトさんの言葉をマスターや背広姿の男性や黒いワンピースに白いマフラーの女性のお客さんが補足してくれたようなんだけど……なんだろう、またユウトさんはここでも何かをやったということなんだろうか。ただ、なんとなく雰囲気的に全員がそのときのことを大切にしているという空気が伝わってきて簡単には教えてくれなさそうというのがなんとなくだけど感じ取れた。

 

「ユウトはん、お待ちの間にこちらはいかがどすか?」

 

 カウンター内に戻った代わりに舞妓さんのような喋り方をするウェイトレスの人がわたしたちのテーブルに来る。手には何やら、何の変哲もない箱が、いや、上部に穴があいていてそこから腕を入れることは出来そうな真っ白い箱があった。

 

「あの、この箱は何ですか?」

「いえ、このカフェも開店して長いどすし、ユウトはんにはこの曲への感謝もありますから、くじでも引いてもろうて当たった記念品をプレゼントしましょうっていうマスターの計らいどすよ。いかがどす?」

「なるほど。ということはトウコちゃんも引いてもいいんですかね?」

「と、いうよりもここでくじを引いておらんのは今入店されたあんた方お二人だけなのどすよ」

 

 ウェイトレスさんの言葉に周りを見やれば、皆が当てた品を見せてくれた。見れば、綺麗な石に技マシンっぽいもの、チョッキ、ゴーグルと、いろいろなものがあるみたいだ。

 うん、そういうことなら遠慮なく引いちゃおう。

 

「もちろんお一人さま一回どすからね」

 

 ということで、まずわたしが箱の中に腕を入れ、くじを一枚取り出す。ユウトさんもわたしの後に続いた。

 

 くじは三角に折られていてそれを開くと――

 

「あ、わたし、太陽の石って書いてあります」

「あら、それ大当たりではおまへんどすか! よかったどすね!」

「そうだな。太陽の石なら進化させることも出来るポケモンも何匹かいる。更には手に入れるのはちょっと大変だから、実用的な当たりの部類だな。何よりトウコちゃんのモンメンもエルフーンに進化させられるからトウコちゃんにとってはこれ以上ないっていうほどの当たりだろう」

 

 やっぱり当たりなんだ! ラッキー! それにしてもエルフーンに進化、ですか。気になるなぁ!

 あ、それはそうと、気になるといえば、同じくくじを引いたユウトさんの方にも興味が出るわけで――

 

「ユウトさんはなんだったんですか?」

「ルトー?」

「オレは“ねらいのまと”って書いてある」

 

 ねらいのまと? いや、そんなの全然聞いたことないんですけど。

 

「あら、そのくじは退かしたはずなんどすが、おかしいどすねぇ。なんでそないなハズレくじが入っとったさかいしょう? マスターは入れへんと思うし、あとは誰どすかね?」

 

 うんうんと悩み始めたウェイトレスさん。

 

「ちなみにねらいのまとなんて初めて聞いたけどどんなアイテムなんですかね?」

「ああ、ウチもライモンシティのバトルサブウェイで取ったことがあるんどすけど、『持たせたポケモンが受ける技のタイプ相性のうち、「効果がない」を無視されるようになる』っていう効果を持つ持ち物どす。具体的にいえばゴーストタイプにノーマルタイプの技はまるっきし効かないけれど、ゴーストタイプにこの道具を持たせれば、ノーマルタイプの技が当たるようになるっていう感じどすね」

 

 ウチはもろてすぐゴミ箱に捨てたんややけど、と付け加えたアイテム。

 うん、確かにゴミにしかならないような道具だわ。ていうかポケモンに持たせられる道具ってバトルを助ける役目になるはずなのに、それじゃあデメリットしかないじゃない。……あー、でも、そのゴミにしかならない、というかデメリットにしかならないものを相手に押し付けたりとかすれば――ダメだ、なんかうまくいかなそうな気がして仕方ない。仮に相手がゴーストタイプだったとしたら、別のタイプの技を撃てばそれで話は終わりだし。

 

「それ、思いっきりハズレのアイテムですわよ」

「うん、功労者の彼にそんなのを渡すのはどうかと思うな」

「うーん、やっぱりそうどすどすやろー」

 

 ユウトさん本人はこれでいいという風に納得しているみたいだけど、周りが納得していなかったので、結局ユウトさんはもう一度引くことにはなった。

 そのことにユウトさんは「やれやれ」とそれに苦笑いしながらも、もう一回カサカサと紙がこすれるような音を立てながらくじを引いて、アタリハズレが書かれているくじの部分を開く。

 

「うーん、なるほど。これはなかなか」

 

 ユウトさんはそう言って、わたしを含めた店内にいる全員の期待に応えるために、破ったくじを見せてくれた。

 

「“だっしゅつボタン”、ですか」

 

 そこに書かれていたのはだっしゅつボタンという言葉。またまたわたしには聞き慣れない言葉だった。

 

「うわちゃー、また微妙なものが」

「くじ運が悪いのですわねぇ」

「ちなみにボクそのアイテムの効果知らないんだけど、どんな効果があるんですかね」

 

 様子を見ているにこれまたビミョーな道具らしいけど、はたして?

 

「あー、たしか『持たせたポケモンが技を受けると強制的に交代しはる』ってゆー効果ほなおへんどしたどすかね?」

「うん。それで合ってますよ。さすがですね」

「いやー、一応これやてウチ休みん日はサブウェイに入り浸ってますさかい。一応そん道具ウチも持っていますやけど、なんやに使えそないそややけども使いどころがわさかいなくて持ってるやけなんどすどすやろ。姐はんに聞こうかて、きょうび中々会えずじまいで聞けへんどすやろー」

 

 そんな効果が。う~ん……あ、例えばあまごいみたいな天候変化技は時間で天気が回復するみたいなんだけど、ならば、雨降らせてからすぐに水タイプのポケモンに変えて、とか? あ、でもだったら、その水タイプのポケモンであまごいやればいいし……。わたしもうまく思いつかないなぁ。

 

「それって前確か言ってた、いろいろ教えてくれる女の人、でしたっけ?」

「そないどすねんよー」

「ふーん。まあ何度も言ってますけど、オレはこれで全然かまわないですよ、ホント」

 

 周りは同情の視線を送る中、それでもユウトさん本人は気にせず――むしろ一段と満足したような――そんな表情を浮かべている。

 

「はぁ~ぁ、ユウトはんのクジ運のなさには同情しますな。でも、んー、なら、そうや、ラルトス、あんたも引いてみる?」

「ラル?」

 

 ラルトスが「わたし?」とばかりに指を差しての疑問に「そうそう」と頷いたウェイトレスさん。もはや三度目の正直といった具合か。

 

 ちなみに、ラルトスがやってみたいということでくじを引いた結果、出たのがなんと闇の石。これはわたしの太陽の石同様、特定のポケモンを進化させる道具のようだ。おまけに結構珍しい。つまりは大当たりの部類。

 

「べ、べつにいいし。こ、これも、あ、当たりだし。く、悔しくなんか、な、ないし」

 

 その結果にユウトさんは強がりを言うも声は震えていた。ついでに目元も気持ち潤んでいるような気もした。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 翌日。

 

「アーティさん、ご無沙汰してます」

「ラルラ~」

「やーやー久々だねぇ、ユウトくん。ラルトスも元気そうだ」

 

 あの繭だらけのジムに入ると、すぐさまこの男の人と出会った。茶色のくせっ毛に緑色の瞳、首に巻いた赤いスカーフはまだいいとしても、緑と赤の縞ズボンと蝶の形をしたバックルが非常に個性的な男性。ちょっと痛い人のようにも見えるけど、どこか飄々とした雰囲気も感じさせる人だ。

 

「紹介するよ、この男性がこのヒウンジムのジムリーダーを務めるアーティさんだ」

「よろしくねぇ、かわいいお嬢さん」

「あ、はぁ。よろしくお願いします。あ、わたしはカノコタウンのトウコっていいます。今日は対戦よろしくお願いします」

「あううん、はい。んまぁ~、よろしく~」

 

 ……なんだろ、なんかこの人、歯切れが悪いわね。そんな感じな人じゃなかったような気がしたんだけども。

 

「んじゃあバトルフィールドに移動しようか。付いてきて」

 

 そのあと、前衛的な(よくわからない)繭の道に吸い込まれながら、たどり着いたのは、これまたぜ……もういいや、わけわかんないフィールド。一応白線が引かれ、客席も設けられているんだけど、なぜか地面がペンキをぶちまけたような様々な色で構成されているんだから。奥には絵画の額に収められたポケモンリーグの絵が飾られている。その前にはいくつもの色のペンキが無造作に置かれていた。

 

 

「さて、ジム戦てことでいいんだね?」

 

 

 それまで飄々としていたアーティさんからは感じられなかった真剣さが感じられた。

 

「はい!」

 

 負けじと声を張り上げる。ここで気合いで負けていたら、ジムバッジなんて取れない!

 

「そうかい、いい返事だ。じゃあルールの説明と行こうか」

 

 そうして提示してきたルールというのがこれだ。

 

 ・二対二のシングルバトル

 ・道具、持ち物(ポケモンに持たせる道具)の使用はなし

 ・ポケモンの交換は挑戦者(つまりはわたし)のみOK

 

「本当は普通の三対三のバトルにしようかと思ったんだけど、キミはまだポケモンをもらったばかりだし、ジムバッジを一つも持っていないって聞いたからね。特別に持ち物使用なし、二対二って形にしたんだ」

 

 ん? わたしいつまだ所持バッジ0個って言ったかしら。

 そう思っているうちにアーティさんはトレーナーズスクエアに向かうのではなく、なぜかバトルジャッジの位置へ。って、え!? なぜに!?

 

「今回は特別な人にジムバトルをやってもらおうと思ってね。だから、ボクは今日はジムリーダーじゃなくてジャッジだよ。つーことで、今日の臨時ジムリーダーは――」

 

 アーティさんはそのまま右手をジムリーダーが立つべき位置に差し向けて――

 

「彼だ」

 

 そしてわたしはその先を見やると――

 

「ども! アーティさんに頼んでやらせてもらいました!」

 

 そこには笑顔でこちらを見るユウト(全国チャンピオン)さんが――!!

 

「って! えええええぇぇぇ!?」

 

「それじゃあこれより、ヒウンジム臨時代理ジムリーダーユウトと挑戦者トウコのバトルを始めるよー」

 

 わたしの驚愕を張り付けた声とは対称的に、アーティさんの間延びした声でわたしの生涯初めてのジム戦の幕が切って落とされたのだった。

 




ポケモンパフォーマーはアニメXYでちょろっと出ていたリリーっていうソルロックを連れている子です。ピクシブ百科事典のポケモンパフォーマーの項目が一番詳しいかな。


ウェイトレスは京言葉を話すトレーナーにしようかと(実際にいます)思ったんですが、京言葉わからず。

『京言葉』で検索すると、『京言葉 変換』って関連キーワードがある

京言葉変換サイトがイパーイ。

「なら、これ使えばええやん」

ということで“京都弁に変換もんじろう - 言葉・方言変換サイト”というサイトさんの変換機能を使わせていただきました。
ただ、京言葉含め、「ここおかしい」ということがあればご指摘お願いします。

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