ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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誤字報告大変感謝いたします。


挿話2 いざ! 新天地に向けて出航!

 それはトウコちゃんとジム戦をやった後のことだった。

 

「そうそうユウト君、これもらってる?」

 

 アーティさんが見せてきたのは一通の手紙。

 いや、そんな手紙は受け取ってはいない。

 

「ちょっと見てみる?」

「見ていいのなら是非」

 

 ということで拝見させてもらう。

 ふむふむ。拝借した手紙、まず縁取りは金と銀で装飾されたカロスエンブレムがあしらわれている。さらにこのそのエンブレムの中には黒いものも多く描かれていた。

 なるほど、これで中を見なくてもわかった。オレも何度か使ったことあるからな。

 この手紙の形式は――

 

「で、差出人は?」

「グランデューク カルム、それからグランダッチェス セレナってなっているね」

「そうですか。フフフ。あの二人か」

「これはボク宛なんだけど、残念ながら招待された日の前後も含めてジム戦の予約が数件入っているし、ここのところはアートの方で手が離せないから、どうしてもボクは行けなさそうなんだよね。だから、代わりに行ってもらえる?」

「もちろん。喜んでカロスまで出張りますよ」

 

 ――黒い挑戦状

 

(アーティさんも残念そうだよな。こんなの貰ってもいけないだなんて)

 

 オレは次の町はトウコちゃんとタチワキシティに行くつもりだったが、予定を改めて、カロス地方セントラルカロス7番道路にあるバトルシャトーに向かうことに決めた。

 

 後日、アーティさんと同じ手紙をポケモンセンター経由で受け取ることになった。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 ヒウンシティは港湾都市だが、イッシュ一の大都会なので、きちんと空港もある。調べてみれば、ミアレシティ空港行の便があったのだけど、「いまどき!?」というようなストライキのおかげで半数近くが欠航となり、なんとこの先一週間は満席ということである。数日はキャンセル待ちを覚悟してもらうことになりそうだということで、仕方なくカロス地方行の船便を調べてみれば、一番早くて明日フウジョタウン経由ヒャッコクシティ行の臨時便があったので、それに乗ってフウジョタウンで下船→15・16番道路→ミアレシティ→コボクタウンと経由してバトルシャトーに向かうことを決めた。

 ちなみにフウジョタウンやヒャッコクシティは内陸に位置するが、近くの川や湖が豪雪地帯からの雪解け水が多く流れ込むために、そこそこの流量があり、かつ、最近拡幅掘削工事を完了したらしく、そこを遡上するのは十分可能ということで、ヒヨクシティと同じくらいの港ができたらしい。むしろフウジョタウン側からヒャッコクシティを行き来するのに、万年豪雪地帯の17番道路を通らなくても済むということから、今後は、少なくともこのフウジョタウンーヒャッコクシティ間の船便の需要も増えるのではという話もあるらしい。

 

「むーん、初めての飛行機に乗れなかったのは残念ですけど、でも新しい地方なんて超楽しみです!」

 

 トウコちゃんには事後承諾という形になってしまったが、とりあえずすごく楽しみだという感じだったので、結果オーライというべきか。てかトウコちゃんめっちゃエエ子や。おいちゃん、思わずお年玉ならぬ、ポケモンのタマゴをあげたくなっちゃったよ。

 

「え~!? いや、いいですよ、そんな!?」

「まあ冗談はともかく、それは初バッジおめでとうの記念のプレゼントってことだから」

「えっ!? あ、ありがとうございます!!」

 

 腰を九十度にまで折り曲げるほどのお辞儀。うん、あなたホントいい子過ぎ。是非ともそのまま大人になってください。

 ちなみにあげたタマゴから何が生まれてくるかはまだ内緒。まあ強いて言うなら、カロス地方のポケモンといったところかね。

 

 あーっと、随分話が脱線してしまった。とりあえずカロス行きなんだけど、本来ならばすぐに船に乗船してもよかったのだが、オレの都合に彼女を付き合わせてしまう以上、そこは彼女の願いも聞き入れたいと思ったからだ。

 

「ふわー! 本当にこんな大都会のヒウンシティにイーブイがいるんですか!?」

「ああ、今からそこに連れてってあげるよ」

 

 以前アイスを食べながらこの町を案内していたときに言っていたこと、それを実現させるべく、オレはトウコちゃんを連れてポケモンセンターのある海沿いの通りをスカイアローブリッジ方面に向かって歩いていた。目指すはサムピアというスカイアローブリッジのたもとにある突堤だ。

 

「ただ、途中ちょっとビミョーなところも通ることになるからそこは許してほしいかなと」

「イーブイちゃんのためなら全く問題ナッシングです!」

 

 ……うん。一応これでヒウン下水道通っても「全然問題ないって言ったじゃない」と通せる。もうちょっと細かく物事は聞くべきだよねとも思いながら、オレたちはサムピアにあるヒウン下水道の入口を目指した。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

「うえぇぇ、きったな~い」

「はい、さっき自分で言ったことを思い出しましょう。なんて言いましたっけ?」

 

 ここはヒウン下水道。文字通り、ヒウン中の下水が集まり流れる場所だ。なので、とにかく臭い、おまけに汚い。でも、イーブイのいるヒウンシティの始まりの場所はここからでないといけないし、それにこの下水道はすぐに出られる。

 

 そう思ってはいたんだけど――

 

「オラ、てめぇはもういらねーんだよ! ザコのくせしやがって! 全然勝てねーじゃねーか!」

 

 格好はバツ印が刺繍された黒いベレー帽のようなものを被り、ロングレングスグローブ、ベスト、タイツ、ロングブーツを濃淡はあれど、すべて黒で統一した粗暴で怪しげな男二人組。そして極め付けはベストの左胸に縫い付けられた、アルファベットの反転した“Z”の上に“P”を重ねたかのようなエンブレム。

 間違いない。彼らはイッシュ地方における悪の組織、ロケット団やギンガ団よりも古くから活動していただろうある種の宗教団体。二年前のイッシュを揺るがした騒動で一躍悪名を轟かせ、しかし、多くの人の尽力で消えたはずの存在。

 

「おい、解散したはずのプラズマ団がなんでこんなところにいるんだ?」

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「なっ! 何をやってるのよ、あなたたち!?」

 

 わたしはそれまでこの下水道に入ってから、臭い汚い早くこんなところを出たいとずっと考えていた。

 

「オラ、てめぇはもういらねーんだよ! ザコのくせしやがって。全然勝てねーじゃねーか!」

 

 だけど、そんな思いはその光景を見たことできれいさっぱり吹き飛んでしまった。いや、正確には思わぬ事態に頭からすっぽり抜け落ちてしまったというのが正しいか。

 

「あ、あなたたちこんな酷いことをしていったい何を考えているのよ! ポケモンがかわいそうじゃない!!」

 

 なぜなら、そこで出会った、ユウトさんはプラズマ団って言ってたけど、軍服みたいな格好の奴らが自分のポケモンを痛めつけていたからだ……!

 わたしにとってポケモンを痛めつけるなんてことは理解の範疇外。そんなこと考えたことすらもなかった。だから、そいつらが行っていたことはわたしにとっては『実は現実ではないのかも』とも思えてしまうが、

 

「マ、マン……マッキ……!」

 

そのポケモンの辛く苦しそうな呻き声がこれが現実のことなんだと認識させる。

 

「ハッ、ガキには関係ねーよ。これは大人の話だ」

「ポケモンを痛めつけるのに子供も大人も関係ない!!」

「ハン! うるさいガキだぜ。ピーチクパーチク囀りやがって」

「いや、待て」

 

 すると、もう一人の軍服の奴が、ポケモンを痛めつけていた方の奴の肩を掴んで止めた。

 

「お前、たしか昨日珍しいポケモンを連れていたトレーナーだな?」

 

 珍しいポケモン、たぶんだけどミロカロスのことかしらね。昨日は随分と目立ってたことだし、今日も幾人かには声も掛けられたし。ユウトさんが目立つことが嫌いっていう話も、こういった連中に目を付けられるのを嫌がってのこともかしれないわね。

 

「そいつを俺たちによこせ。そうすればおとなしくこの場は帰してやる。ついでに藪アーボックに突っ込んだ話も見逃してやるよ」

 

 ……うん、なにかしら。なんだか幻聴が聞こえた気がするわ。

 

「なんですって?」

「聞こえなかったんか? てめーのポケモンよこせって言ってんだよ」

 

 ……。

 …………あー、うん。なんだかここ最近人のポケモンをよこせっていうのをよく聞くわねぇ。

 にしても、これ言われるってこういう感じなんだ。

 なんというか、兎角ムカつくとか腹立つとかそういう感情は一切ない。もはや考えるのが億劫になるほど頭が真っ白になって、その後はどうでもよくなるというような? レベル的には激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームみたいな感じよね。うふ。うふふふふ。

 

「うふふふふふふ。ぶっころす」

「そうだな。ちょっと焼き入れようか」

 

 わたしとユウトさんは揃って自分のモンスターボールを投げ入れた。

 尤も、わたしは野球の剛速球を当ててデッドボールを狙う感じでクソ思いっきり投げたけどね。ホウエンリトルリーグ所属舐めんなよ?

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

(うわぁー、ないわー。あれはないわー)

 

 ラルトスのテレパシーが頭に響いてくるけど、その内容については全面的に同意するわ。てか今オレちょっと内股気味になってるし。

 

 いや、あのね、トウコちゃんが恐ろしすぎてね。

 なんだよ、あれ。

 

(サイドスローからの球速のかなり速いモンスターボールを股間にジャストミートさせて一人ダウン、そして出てきたモンメンにもう一方の男のこれまた股間にふくろだたき連発でダウン。何あの子、悪のトレーナー絶対殺すマンなの? それとも悪の男の股間絶対殺すマンなの?)

 

 トレーナーにダイレクトアタックってやっちゃいけないような部類なんだけど、うーん。気持ちは非常によくわかるから、注意しづらい。でも、繰り返すけど、倫理的にマズイことだと思うんだよなぁ。

 

「と、とりあえず、ラルトス、そいつらどっかに捨ててきて」

「(わかったわ)」

 

 うんまあ、とりあえずそういうのはいったん後に考えようかね。

 

「ねえ、大丈夫? えっとー」

 

 図鑑を出して傷ついたポケモンに近寄るトウコちゃん。

 

『マンキー  ぶたざるポケモン

 身軽で木の上で群れを作って暮らす。

 手頃な獲物を見かけると群れを成して襲いかかる習性がある。

 また普段は機嫌がよくてもちょっとしたことでいきなり怒り出し暴れ出す。

 一度暴れ出したら仲間の区別もつかなくなるので、近寄るのは非常に危険。』

 

「そうなの、マンキーっていうのね。ほ~らほらマンキーちゃん、怖くな~い、怖くないよー。わたしたちは怖くないよー」

 

 あのマンキーはあのプラズマ団の連中もオレたちのことも同じ人間というカテゴリで見ているようで、傷ついた体なのに、オレたちを威嚇してくる。そんなマンキーにトウコちゃんは優しく声をかけながらゆっくりとゆっくりと、マンキーに威圧感を与えないようにしゃがみ込んで近づく。

 

「ムッキ」

「大丈夫。わたしたちはあなたを助けたいだけなのよ。大丈夫よ、信じて。大丈夫」

 

 トウコちゃんはマンキーまであと一歩というところまで近づくと軽く腕を広げる。そこから一歩もマンキーに近寄らない。マンキーが動き出すのを待っているのだ。

 

「マッキ」

「大丈夫よ、大丈夫。大丈夫だから」

 

 すると微かにマンキーが足を踏み出す。その一歩は弱く小さなものだったが、確実にマンキーはトウコちゃんの近づいた。

 否、マンキーの方からトウコちゃんに近づいてきたのだ。

 

「大丈夫よ、大丈夫」

 

 トウコちゃんはゆっくりと優しくマンキーに呼びかけるだけ。

 しかし、マンキーの方はヤドンのような歩みがヌオーぐらいにまでになり、そしてついにトウコちゃんの元に到達。

 

「えらい、えらいよ。よく頑張ったね」

 

 そのままトウコちゃんはマンキーを抱えて頭を撫でる。マンキーの方は抱えられたトウコちゃんの胸に頭を擦りつけている。

 

「マンキーをすぐにポケモンセンターに連れていきましょう」

 

 たしかに一刻も早く治してあげることが先決だ。ただどうしても聞いてみたくなったことが一つ。

 

「そうだな。でも、一応聞いておくけど、イーブイの方はいいのか?」

 

「いいんです! 今はこのマンキーの方がよっぽど大事です!」

 

 すごい剣幕で詰め寄るトウコちゃん。

 

(今のはあなたの方が悪いわよ)

 

 そこに戻ってきたラルトスからのテレパシーが届く。

 

(知ってる。底意地が悪かったのも認める)

(あとで謝っときなさいよ)

(わかってるさ)

 

「よし、ラルトス、テレポートだ。ポケモンセンターに移動するぞ」

 

 とりあえず、あとでしこたま謝ろうかな。

 ラルトスのテレポートの光に包まれながらボンヤリと半ばそう考えていた。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 あのあと。

 ポケセンにテレポートしたオレたちはすぐさまジョーイさんと彼女に付く看護師のタブンネにマンキーを預けた。マンキーの方はすぐさま緊急処置をするということで処置室に連れていかれた。

 

「さっきは本当に申し訳なかった」

 

 オレはそこで先ほどの言動に対しての誠心誠意の謝罪を行った。さっきタマゴをあげたときにトウコちゃんがやったようなことと同じことをしてだ。

 

「あの、ユウトさん?」

「キミのことを少し試してみたくなってしまったんだ。時と場合を考えるべきだったし、何よりキミに不快な思いをさせてしまった。大変申し訳ない」

 

 とりあえずそんなこんなで謝り倒してなんとか許しを得ることは出来た。

 

 ふと、ドアがスライドする音がすると、さっきマンキーを連れていったジョーイさんが処置室から出てきた。

 

「あのスミマセン、お手伝い願えますか?」

 

 理由を聞けば、なんでも、マンキーがひどく怯えて威嚇してくるのでうまく治療ができないのだという。

 

「あのマンキー、あなたには心を許しているようだったみたいだし、もしかしたらあなたが近くにいないから怖がっているのかもしれないわ。だから、特別に中に入ってマンキーの傍にいてあげてほしいの。お願いできる?」

「そういうことなら喜んで!」

 

 そうしてトウコちゃんはジョーイさんに連れられて処置室に入っていった。

 

「これは、いつまで掛かることやら」

「(だいぶ待ちなのは確定よね。その辺で適当に座って待っていましょう)」

 

 オレたちは近くの空いているソファに腰掛けてトウコちゃんが出てくるのを見守った。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

 結局。

 

「ふぁ~あ、まさかポケセンのソファで一泊とは」

「(ちょっと疲れたわねぇ)」

 

 昨晩治療は終えて出てきたジョーイさんとタブンネ。

 

『治療は終えました。もう大丈夫だとは思いますが、念のため、明日の朝まで経過を見ます』

『タブンネ~』

『彼女でしたら、マンキーの傍にいたいとのことで、許可を出しました。なので、たぶん明日まではここにいるのではないでしょうか』

『タブンネ~』

 

 というわけで、トウコちゃんはマンキーの傍でお泊り、オレたちも付き添いでポケモンセンターにお泊りが決定した次第である。流石にトウコちゃん置いて宿に戻るっていうのはないなと思った次第で。

 おかげで、眠いし肩が痛いしといったところ。ラルトスも口元を手で押さえて欠伸をしている。

 

「あれ? そういえば、ソファで寝て一夜を明かすって別に外で野宿より全然マシじゃね?」

「(そういえばそうよね)」

 

 二人して首を捻っていたら、目の前の処置室のドアが開いた。

 

「おっはようございます! ユウトさん! ラルトス!」

「マキッキー!」

 

 両腕にマンキーを抱えたトウコちゃんが元気よく挨拶をしてきた。マンキーの方もどうやら一晩経って完全に回復したようだ。

 

「おはよう、トウコちゃん」

「(おはよう、トウコ)」

「トウコちゃん、そのマンキーどうする?」

 

 なんとなーく予想がつく中でオレは問いかけてみた。

 

「ハイ! この子はわたしのポケモンとして私が育てていこうと思います! マンキーもそれで納得してくれました。ねっ、マンキー」

「マンキッキー!」

 

 うん、まあそうだろうなぁと予想通りの答えが返ってきた。もし、オレがトウコちゃんの立場なら、そうしちゃうし。

 

「というわけなんで、ユウトさん、一つお願いがあるんですが」

 

 人差し指の先を合わせてツンツンしながら申し訳なさそうなトウコちゃん。

 正直メッチャかわいいです。

 ただここでそれを出すと変態みたいである。

 

「ん? なんだい?」

 

 なので、自然体に、あくまで自然体に聞き返す。

 

「実は手持ちのモンスターボールが切らしてたみたいで今一個もボールがないんですよ」

「うえ゛っ!?」

 

 ただ、そんなことはこの一言で思いっきし消し飛んだわ!

 

 いや、あのねトウコちゃん。トレーナーがモンスターボール切らしてどうすんのよ……。なに、じゃああのときイーブイゲットしようってときどうしようと思ったわけ?

 あれか? ゲットするのが楽しみで忘れてたとか? んで、最終的にはオレに泣きついてきたとか?

 

「はぁー、まあ今回は特別に一個あげるけどさぁ」

「ありがとうございます!」

「でも、大いに反省してよね」

「えへ☆ てへぺろ!☆」

「いや、かわいくしてもダメなものはダメだから」

 

 いや、スッゲーかわいいんで曲げちゃいそうなんですけど、ここは心を鬼にするところだ。

 

「(とりあえずサイコキネシス雑巾絞りでいいかしら)」

 

 うん、あなたはブレないし、ハードよね。初回なんだし、ぜひ軽めにしたってください。ヒカリちゃんみたいに怯えられるの嫌でしょ?

 

「(わたしの調教に抜かりはないわ。それに、あの震えた目で見られるとゾクゾクしてたまんないのよね)」

 

 んな恍惚とした表情すんなよ!

 しっかし、やっべーな。オレってばどうして相棒がこんなになるまで気が付かなかったんだろ……。

 

 とりあえず、そういった諸々は後にして、モンスターボールを一つトウコちゃんに手渡す。

 

「ありがとうございます!」

 

 ボールを受け取ったトウコちゃんはマンキーを床に下ろして、自身もマンキーと同じ目線の高さになるようにしゃがみ込む。

 

「マンキー、準備はいい?」

「ンキ!」

 

 しっかりと頷いたマンキーにトウコちゃんはコツンとモンスターボールを当てた。

 すると、当てたボールはその大口を開き、赤い光とともにマンキーを飲み込む。マンキーを飲み込んだモンスターボールはトウコちゃんの手元を離れて床にポトリと落ちると、そこで小刻みに揺れ始めた。ボールスイッチ部分は脈を打つかのごとく赤く点滅している。

 しかし、それらもすぐに収まり、ボールは静かになった。

 トウコちゃんがオレの方を見る。オレもコクリと頷き返した。

 それによって、トウコちゃんはそのボールを手に取った。

 

「やったぁ! マンキー、ゲットだね!!」

 

 こうしてマンキーが正式にトウコちゃんのポケモンになり、トウコちゃんの手持ちはタマゴのポケモンも含めて五匹となった。

 

「おめでとう、トウコちゃん! さ、港に行こうか! いよいよ、カロスに向けて出港だ!」

「ハイ!」

 

 こうしてオレたちはポケモンセンターを後にして、ヒヨクシティ行の船が出る波止場、プライムピアに向かった。

 目指すはカロス地方、バトルシャトーだ!

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「やれやれ。やっとか」

 

 照明が落とされた暗い部屋の中、その中を照らすのは彼の目の前に広がっているパソコンの液晶画面の光のみだった。

 

「首尾はどうかね?」

 

 すると男が息をつくのを図ったかのように目の前の液晶画面が切り替わり一人の男が映し出される。男が知るかの男は二年前よりも明らかに年老いてさらに余裕を失ったというのが印象だ。ただ変わらないところもある。

 例えばプラズマ団の誇る――今は自分とこの男の二人だけとはいえ――七賢人の一人であるとか、例えば実質のプラズマ団を率いる首領であるとか、例えばその右目を覆う赤いモノクルであるとか――

 

「これはこれはゲーチス様、ご機嫌はいかが」

「まあまあだな。で、どうなんだ?」

 

 その男は画面の中の男に対してそう挨拶をした。

 そして画面の中の彼も適当にそれを返す。

 

(しかし、本当にお変わりになったな)

 

 ヴィオはこのやり取りだけでそれを痛感する。二年前まではもっとウィットに富んだ返しをして話しているとつくづく笑みが零れてきたものだった。それが今や――

 

「ええ、問題ありませんとも。あとは船が出航するのを待つだけです」

 

 男の逆鱗に触れるのを防ぐべく、ヴィオは手短な返答のみを返す。

 

「そうか。期待している。では」

 

 そうして男からの通信は一方的に切られたのだった。

 

「やれやれだ……」

 

 男――七賢人が一人、ヴィオ――は深く椅子に沈み込み、二年前までのことに思いを馳せたのだった。




出航と出港
意味を調べてみたら、
 出航は船や航空機が出発すること
 出港は船が港の外へ出ること
ということで、出航は船にも飛行機にも使う、出港は船にのみ使うとのこと。
「今回は船旅なんだからどっち使うんじゃい!」ってことで調べていくと、海上自衛隊では
 出航は定期航路などの客船が航海に出ること
 出港は軍艦などが不定期に港を出て航海すること
とのこと。
めでたく(?)“出航”の方を使うこととなりました。
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