ポケモン世界に来て適当に(ry   作:kuro

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誤字報告大変感謝いたします。
特に前回はカロス地方をイッシュ地方としていて盛大にミスっていたようですので。

さて、今回アニメのサントアンヌ号の戦いを見る機会があったので、それを元にして書いてみました。しかし、このお話、もう放送されることは100%ないんですよね。

そしてトウコの性格が皆さんのイメージと異なってしまうということが起こると思われます。
その点にご注意くださいませ。


第5話 せんじょうのコンダクター

「うはー! 気ぃ持ちいー!」

「ラルー!」

「ミロー!」

「モンメーン!」

「マンキー!」

 

 海を進むイッシュからカロスへの連絡船。その甲板に寄りかかってわたしたちは外を見ていた。

 私以外の全員が海を見るのも初めてなため、常よりもテンションが高い。

 

「おっと!」

 

 洋上を吹く風は湿り気が強い上、時折吹く突風には被っている帽子も飛ばされそうな感覚に陥る。まあ、わたしのポニテに引っ掛けてるから早々飛びはしないだろうけど――

 

「モーン! モンメーン!!」

「ってええ!?」

 

 なんと、モンメンが今の突風で海上に飛ばされてしまった。既にわたしたちには手の届かないところを飛んでいる。

 

「モンメン、なんとか戻れない!?」

「モン! モン!」

 

 なんとか両脇の葉っぱを使ってわたしたちの元に戻ってこようとしてるけど、海風に阻まれてなかなかうまくいかない。

 

「たのむ、ヨルノズク! キミに決めた!」

 

 隣を振り返るとボールを振りかぶった後のユウトさん! 出てきたのは宣言通りのヨルノズクだ!

 

「クルルルゥゥ! クル、クルルゥゥ!」

 

 ヨルノズクは心得たとばかりにそのままモンメンの元にまで飛んでいく。

 

「クルルルルルルゥゥ!」

 

 そしてモンメンを背中に乗せるとこちらに戻ってきた。

 

「ありがとうね、ヨルノズク!」

「クル、クルルゥゥ!」

「モンメンも大丈夫だった?」

「モン、メーン!」

 

 助けてくれたヨルノズクにお礼を言って、無事な様子のモンメンをボールに戻した。ついでに、なにかあったら大変なので、全員をボールの中に戻す。

 

「よくやった。お疲れ、ヨルノズク!」

 

 ユウトさんもヨルノズクをボールに戻した。

 

「ありがとうございます、ユウトさん! おかげで助かりましたよー!」

「呼びに来たらこれなんだもの。モンメンが大丈夫そうだったからいいさ。けど、気をつけてよ?」

「はい、スミマセン」

「んじゃ、そろそろ食事っぽい感じだったから、中行こっか」

「わかりました」

 

 苦笑いで許してくれたユウトさんにお礼を言って、わたしたちは船内の食堂に向かった。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

「おお!」

 

 食堂というか、これはもはや何かの大ホールじゃないのかってぐらいにだだっ広い上に天井も高い。軽く三階分くらいまでは吹き抜けって感じだし。

 そして食堂、というかもうホールでいいや、ホールの真ん中は大きく開いていて何もない空間となっているけど、その周りにはそこを囲むような感じであちこちに小さな小瓶にに花が生けられた円形上の小さなサイドテーブルが並んで、さらにその外側に料理や皿が数えるのも億劫になるほどに盛り付けられた四角い大きな料理テーブルが三か所、正三角形の頂点のような位置に並ぶ。

 そして、それに賑わいを持たせているのはこの船に乗っていたのだろう乗客たちと、そのポケモンたちだ。

 

「ほう! どうやらビュッフェスタイルの立食パーティーみたいな感じか」

「ていうよりこれはもうパーティーじゃなくてお祭りみたいなものですよ」

 

 人だかりで分からなかったけど、何やら出店のようなものも並んでいる。そこにはポケモンの様々なグッズや、中にはポケモンすらも売られていた。

 

「うわぁ、なんかコイキングだけは売れ残ったみたいだな」

 

 コイキング。

 非常に弱いらしいけど、きちんと育て上げればギャラドスという非常に強力なポケモンに進化するポケモン。

 

「まあ、コイキング時代が大変だからみんな敬遠するのかねぇ」

「でも、ラクして強力なポケモンを手に入れるというのもちょっと」

「だよね! 苦労したからこそそう変わってくれたときの喜びが一入(ひとしお)なんだよ!」

 

 そんなこんなな話をしながら、とりあえず近くの料理テーブルからお皿を拝借。列を乱さないように時計回りに回って料理を取っていく。

 

「いやー、こういうのって本当は他の人との会話を楽しむってのがフツーだと思うんだけど、やっぱりお昼時なんだから食べないとよねー」

「まあ、ほどほどに、ね?」

「だーいじょうぶですよー」

 

 さーて、次は何を取ろうかな、っと。

 

「あら、あなた一昨日のミロカロスの子よね?」

「およ?」

 

 一昨日のミロカロスってたぶんわたしのことなんじゃないかなーと思って呼ばれた方に振り返ってみれば、黄色いお下げ髪の女の人。ああ、たしかにこの前お話した、ええと、たしかパーフォーマーの人。

 

「ああ! 先日はどうも」

「うん。ねえ、あなたもカロスに?」

「そうなんですよ、付き添いの人がカロスの、名前忘れちゃいましたけどなんとかってところに用があるらしくて。そちらは?」

「私はヒャッコクシティで開かれるトライポカロンに出るためによ。ねえ、もっとこっちでお話しましょう?」

「そうですね」

 

 だんだん邪魔になってきそうだったから私たちは近くのサイドテーブルに歩み寄った。今手に取ったお皿はそこに置かせてもらう。

 ユウトさんの方は手を振って人ごみの方へ歩いて行った。

 

 

 

 ■ □■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 トウコちゃんの方は乗船客と楽し気に談笑している。しかも、女の子の乗船客なので、彼女の付き添いだからとオレが彼女たちの輪にズカズカと入っていくのはちょっと遠慮しておきたいところだ。

 なので、他の乗客や物販を冷やかしながら見て回ることにした。

 

「(いっぱいいろんなのがあるわねぇ)」

 

 今、物販の出店をみているのだが、ラルトスの言う通り、まさに様々。オーソドックスにTシャツやキーホルダー、ピンバッチや帽子から、ポケモン型のテントや抱き枕、同人誌っぽいものまである。トウコちゃんが言ってたポケモンも……あ、今、コイキングだけだったものに追加でヤドンにユンゲラー、シードラ、エレブー、ブーバー、パールル、ガントル、ボクレーなんかがいる。中々のポケモンが揃っているし、ブーバーやエレブーなんかのかなり珍しいポケモンもいる。かなりお得感満載のラインナップだな。

 

「(なんかどれも進化が特殊なポケモンばっかりね)」

 

 ……そう言われてみれば、確かに。ヤドンはヤドランへの進化はともかく、ヤドキングへの進化はポケモンセンターの通信交換機械を使っての通信交換が必須だ。それに他のポケモンも、持ち物を持たせる必要があったりなかったりするが、どれも通信交換は必須。しかも通信交換の機械は一人では動かせず、必ず二人の人間が必要である。

 ……つまりはあの売り子のおっさんは……。

 

「OK。オレは何も見なかった。何も考えなかった。いいね?」

 

 むかーしむかしの忘れ掛けていた傷痕に塩を塗り込むようなマネはイヤなんです。

 

「(なに言ってんの? あなた友達たくさんいるでしょ?)」

 

 うん。本当にそれが幸いですし、感謝感激ですよ。

 

 そんなことをつらつら考えていたら、目の前の人集りが騒がしくなった。

 

「よっしゃ! どっちも気張れや!」

 

 中々に威勢のいい声が聞こえる。

 

「いったいなんだ?」

「(見に行ってみましょ)」

 

 ということで、ちょっとイヤなんだけど、あの人ごみの中に突撃。

 

「うお!? なんだ、あのポケモン!?」

「うわぁ、あんな美しいポケモン初めて見たわ!」

「ねぇ、お姉ちゃん、あのポケモンすごーくキレイだね!」

 

 ……ん?

 “美しい”に“綺麗”?

 何だかここ最近すごく耳にするフレーズですな。

 

「すみません。すみません、ちょっと失礼します。すみません」

 

 一応確認のために、なんとか人ごみを縫うような感じで一番先頭に躍り出る。

 

「ああ、やっぱりそうよね」

「(途中からの半ば予想が当たったわね)」

 

 見れば、トウコちゃん、それからトウコちゃんとさっき話していた金髪のお下げ髪の女性がタッグを組んで、相手方二人のトレーナーとマルチバトルをし始めていた。トウコちゃんはミロカロス、相方がソルロックで、相手方二匹がヤナッキーとユニランだ。

 

「まずは集中してソルロックを落としますよ!」

「わかった! ユニラン、めざめるパワー!」

「ヤナッキー、マジカルリーフです!」

 

 ジェントルマンがキャンプボーイに指示をして、まずは片方を脱落させようということだらしい。こういうダブルバトルにおいては至極真っ当な戦術の一つだ。

 

「ソルロック、ひかりのかべ!」

「ミロカロスはチャームボイスよ!」

 

 一方、狙われたソルロックはひかりのかべでダメージの軽減を狙い、ミロカロスは必中攻撃のチャームボイスで相手全体を攻撃。マジカルリーフもめざめるパワーもどっちも特殊攻撃なのでひかりのかべでダメージが三分の一減、そしてチャームボイスで相手の集中をかき乱してさらに威力を減衰させた。

 

「むう! あのポケモンはフェアリータイプの技を使うのか」

「どっちにしろソルロックを攻撃だ!」

「そうですな。ヤナッキー、ソーラービーム!」

「ユニランはシグナルビームだ!」

 

 ほうほう。大技を使って決めに来たか。

 

「マズイわね。どうする?」

「リリーさん、わたしたちに任せてください。ミロカロス、アクアリング! つづいてあなたの得意技をタイミングをみてぶっ放すわよ!」

 

 ん、アクアリングでダメージ回復ソースを用意して、得意技っていうのはアレか? トウコちゃん、よっぽど初見でのあの技は印象深かったのね(笑)

 

「ゆけっ! ソーラービーム発射!」

「ユニランもいけ!」

 

 ソーラービームは溜めが必要な技、ユニランは元々素早さがかなり遅い。だから、技の発射タイミングが全く同時になった。

 

「今よ、ミロカロス! ソルロックを庇ってミラーコート!」

「ミー、ローッ!」

 

 そしてミロカロスがソルロックの前に躍り出てミラーコートの壁を張る。そして、このミラーコートにソーラービームとシグナルビームが同時着弾。ミラーコートの影響で、まったくの同時着弾が影響したのか、ソーラービームとシグナルビームがそれぞれヤナッキーとユニランに跳ね返された。

 

「ヤナ……ッキー……」

「クゥ……」

 

 そして二匹ともダウン。一方、ミロカロスの方はダメージは負ったもののまだまだの様子。ダメージ量的にはリンドの実も食べたのかもしれない。さらにだんだんとアクアリングの影響で回復していっているようだ。

 

「それまで!」

 

 ウェイターの人がジャッジをしていたようで、ここでバトルが止められてトウコちゃんたちの方に勝利が宣告される。

 

「うおー! すげー!」

「なんだあのポケモン!? 相当強いぞ!」

「お姉ちゃーん! あのポケモンキレイですごくつよいよー!」

 

 これらを始めとして途端に湧き上がる周囲一帯。

 

「(まあ一番美しいといわれるポケモンが一撃で相手方の二匹を一編に倒したんだから、インパクトはバツグンよね)」

「加えて話題性もな」

 

 今あの二人の周りには他のトレーナーも集まっていたが、一番はホウエン地方で有名なインタビュアーさんたちがいることか。といっても目当てはミロカロスとそのトレーナーのトウコちゃんか。恐らくは人生で初めてであろうインタビューを受けている。

 

 そんなときだった。

 食堂の扉がバタンと勢い良く閉じられた音と、壁や窓を覆い隠すレッドカーテンが引かれたのは。

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 それはわたしには一生縁がないものと思っていた。しかし、今わたしにはテレビカメラのレンズとマイクが向けられ、女の人にインタビューを受けている。わたしとしてはこんなのはテレビの中だけの存在だったのが現実にまでなっている。

 

「あ、あの、えーと、ハイ」

 

 女の人もなんだか優しく誘導してくれていた。それで、少しずつは緊張が解れてきた。そう思っていたときだった。

 

「モンスターボールをよこせ~!」

 

 突然、このホールの扉が閉められ、カーテンを引かれ、そしてさっきまでウェイターやウェイトレス、観客だった人の一部が、突如その衣服を破り捨てて一部はテーブルの皿や花瓶を蹴り飛ばして乗っかっている。

 ウェイターたちは変装で、これが本来の姿なのだろう。そいつらの格好、わたしは忘れるはずがない。なぜなら、わたしは昨日こいつらに会っている。こいつらがポケモンに虐待をしていたことを見ている。こいつらがポケモンを捨てたことを見ている――

 

「我らはプラズマ団! このホールは我々で占拠した! お前たちに出来ることはただ一つ! お前たちのポケモンの入ったモンスターボールを我々に献上することだけだ!」

 

 そんな声がホール内に響き渡り、辺りのザワザワとしていたざわめきはピタリと止んだ。

 

「……本当に……こいつらは……」

 

 心の淵がまっさらになった。

 

「おら、よこせ!」

「やだ! やめてよ! おとーさん、こわい!」

「娘に手を出すのはやめてくれ!」

 

 ……くそ。

 

 …………くそが。

 

 ………………くそ野郎共がッ!

 

 わたしの、いやアタシの中の何かが弾け飛んだ。

 

「ミロカロス、プラズマ団のくそ共にりゅうのいぶき!」

「ミロー!」

 

 モンスターボールを思いっきりの全力で投げ放つ。コントロールは完璧で幼い女の子に手を出していたプラズマ団の股間にジャストミート。さらに、出てきたミロカロスが辺りに陣取るプラズマ団にりゅうのいぶきを放った。

 

「みんな! よく聞きなさい!」

 

 アタシは自分の思いの丈を有りっ丈の声に乗せた。

 

「あなたたちはブリーダーであれパフォーマーであれなんであれポケモントレーナーでしょう!? なら、戦いなさい! 戦うのよ! 自分と友情の誓いを交わした相棒を奪われたくないなら、戦うのよ!!」

 

 ――……。

 

 ――……言う通りだ。

 

 ――そうだよ。あの子の言う通りだ。

 

 ――そうだそうだ!

 

 ――オレも戦うぞ!

 

 ――あたしだって戦ってみせる!

 

 ――わたしも!!

 

 ――僕も!!

 

 ――戦って勝つぞ!

 

 ――おうさ! プラズマ団なんぞのもんじゃいワレ!!

 

 ――おうよ! みんな、姐御につづけ!!

 

 

 よし。いい感じにみんなの心に火が付いた。あとはニトロをぶち込めばOK!

 

「さあ野郎ども! プラズマ団をぶっ飛ばすぞ!」

「「「「「「「「「おう! 覚悟しとけや、プラズマ団!!」」」」」」」」」

 

 うん。みんなその意気や良し!

 よっしゃあ! 全員で叩きのめすわよ!!

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 えっ、ちょ、なにコレ?

 えっ、いやなんか普通にトウコちゃんが音頭を取ったら、場の雰囲気が変わってみんなでプラズマ団にダイレクトアタックし始めた。

 

「ちょっと、なにあなたボサッとしてるのよ! あなたも姐さんを見習いなさい!」

 

 近くの女エリートトレーナーに注意されてしまった。

 

「みんな、纏まって戦うわよ! まずは水タイプGO! 適当に技繰り出して! 次、電気タイプ準備!」

「ほら! 姐さんからの指示よ! あなた、水タイプに電気タイプは!?」

「あ、一応サンダースがいるけど」

「ならそれをもう出しときなさい!」

「アッハイ」

 

 うぇい。

 何この状況。てかなんでオレ怒られてんの?

 

「(諦めなさい。ユウトだってイラっとしたでしょ?)」

「いや、それはしたけど。でも」

「(正当防衛よ、正当防衛。あるいは緊急避難ってやつ?)」

「お前、ポケモンなのになんでそんな人間の法律に詳しいのよ」

 

 まあ言われてみれば、ここは自分のポケモンを奪われないようにするための正当防衛。さらにはここは洋上、脱出するのは当然難しい。転覆の危険すらあったといわれれば緊急避難の適用もあるか。

 

「サンダース、キミに決めた」

「ンダース!」

 

 とりあえずこの波に一応乗っておくか。

 

 

「さあ、まだまだ行くわよ! 水タイプ交代! 電気タイプ行け! 次、岩タイプ、格闘タイプ準備!!」

 

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「飛行タイプとエスパータイプGO! 飛行タイプはかぜおこし系の技よ! エスパータイプはサイコパワーで攻撃!」

 

 四方八方から技やポケモンが飛び交う様を背景に、ラルトスを見やる。

 

「ラルトス!」

「ラルラ!」

 

 いい返事だ! フェアリータイプでの攻撃でも出番はあったのに疲れている様子は全然見受けられない。

 

「ラルトス、ねんりきよ!」

 

 返事を返したラルトスはピョンと前に躍り出ると、他のエスパーポケモンに交じってねんりきの攻撃をプラズマ団にお見舞いする。ラルトスの攻撃は他のポケモンよりも若干劣っていたようだが、相手がプラズマ団であれば、それで十分だった。

 ここまでいい感じにいろいろなタイプのポケモンの技をプラズマ団にぶつけてきたが、奴らの疲弊具合は相当なものだ。

 ならば、だ。

 

「次、麻痺か眠りにできるポケモン準備! みんな、そろそろ仕上げといこうじゃないの!」

「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」

 

 うん。全員いい返事ね!

 さあ、最後気張っていくぞ、オラァ!

 

 

「ラスト! 全員で痺れさせるか眠らせろ!!」

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

 

 

「ふう、これで全員かしら?」

「そのようです!」

 

 今アタシがロープで縛り上げたプラズマ団の一人が最後なようだ。

 プラズマ団は散々甚振られ、トドメにしびれごなやさいみんじゅつとかで全員が麻痺か眠らされているために、あっさりとこうして縛り上げることができる。

 

「そう。じゃあ、こいつも連行しておいて」

「ハイ! おいお前、姐さんの縛り上げたゴミを連れていけ」

「うっす」

 

 目の前で敬礼を返してくれて、こうしてわたしのお願いを聞いてくれる女性トレーナーはリリーさん。さっきはアタシとタッグバトルでペアを組んでくれた人だ。カロス地方で活躍するポケモンパフォーマーの一人でもあるらしい。そして今、あのプラズマ団はジャノビーを連れたトレーナーにつるのムチで引きずられてどこかに連れられていった。

 

「ありがとう、おつかれさま」

「いえ! 姐さんこそお疲れ様です!」

「みんなもおつかれさま」

「「「「「「「「「「「とんでもありません!」」」」」」」」」」」

 

 アタシの言葉に、皆が皆、全員敬礼を返してくれた。

 

 うん、これ結構気持ちいいかも。

 

「それにしても……」

 

 一息ついて辺りを見渡せば、料理や皿、テーブルなどが散乱している。さらには先ほどのバトルの余波で水浸しであったり、氷漬けだったり、焼け焦げていたり、ズタズタだったり。

 汚い。あまりに汚い。

 手が出せなさそうなところは多々あるが、自分たちでも何とかできそうなところもある。

 

 ……よし。

 

「皆、アタシたちは客だ。だけど客とはいえ、自分たちで暴れて汚したものは自分たちで片付けるべきだ。だから、もういっちょ、飛ぶスワンナ跡を濁さずって感じに綺麗にしていこう」

「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」

 

 そういうわけでホールにいる全員で大掃除。

 

 ちなみにこれで、ごみはきれいさっぱり片付けられた。

 

 ただ気になったのはその最中、ユウトさんがあたしにインタビューしていた人に頻りに頭を下げてお願いをしていたこと。

 いったい何だったのだろうか。

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

「ねえ、トウコちゃん?」

「はい? なんですか、ユウトさん」

 

 その夜、オレとラルトスはトウコちゃんの船室に訪れた。

 この後の彼女の反応がどうなるのか気にはなるけど、なんとなくニマニマが止まらない。

 

「ねえ、テレビ見た?」

「あ、いえ。ちょっと図鑑見てました。あとはユウトさんに教えてもらっていることの復習です」

 

(勉強熱心ね)

 

 たしかに。でも、そんな彼女にオレたちは余計にちょっとこれを見てもらいたくて仕方なかった。

 

「ちょっとこれを見てほしいんだけどさぁ」

 

 そう言ってオレはタブレット端末を操作。画面にはある一つの動画の再生ボタンが中心に描かれている。

 オレはタブレットを彼女に渡してそのボタンをタップした。すると始まる映像。画面右上には簡易なテロップ、画面下には字幕が書かれている。

 

『さあ野郎ども! プラズマ団をぶっ飛ばすぞ!』

 

 そんな音声が大音響で聞こえた。

 

「うぇっへい!?」

 

 うわー、なにそれすごい面白い(笑)

 

『ありがとう、おつかれさま』

『いえ! 姐さんこそお疲れ様です!』

 

「えっ!? ちょっ!? なんですかこれ!? えっ、これわたし!?」

「そう。これさっきのトウコちゃんとその舎弟たち」

「(まるで極道の妻みたいな感じよね)」

 

『みんなもおつかれさま』

『『『『『『『『『『『とんでもありません!』』』』』』』』』』』

 

「ちょっ!? なんでわたしヤクザのトップみたいな感じで傅かれてんの!?」

 

 盛大にあたふたするトウコちゃん。

 

「いや~、さっきの極妻は本当によかったよ~」

「!?!?!? イヤ~~~~~~~~!!」

 

 トウコちゃんはベッドに飛び込んで枕に顔をうずめて膝から下をバタバタさせている。

 

 うん、これはこれでかわいいんだけどさあ

 

「(さっきとは全然違う姿に草)」

「そうだな。てかお前、その単語どこで覚えた?」

「(ネット)」

「あなたポケモンなのに文明の利器使い込み過ぎじゃね?」

 

 ふと足バタバタを止めて、今度はガバッと起き上がったトウコちゃん。

 

「ユウトさん! どうしてこんな映像があるんですか!?」

「え? そりゃあテレビに映ったから」

 

 その一言に今度は真っ白になって崩れ落ちる。

 

「いそがしいな(笑)」

「(ちなみに全国放送だから拡散は避けられない)」

 

 たぶん今頃動画サイトにメッチャアップされてるだろうね。SNSでも拡散し放題。

 ついでに編集前の素のデータもインタビュアーのマリさんとダイさんにお願いして、頂いている。

 

「わ、わたしのイメージが。わたしが築き上げてきた元気で理知的なイメージが……」

 

「(えっ? そんなイメージあったかしら?)」

 

 そこはオレも疑問。

 とりあえずトウコちゃんはそのままベッドに潜っていってシェルダーみたいに殻に籠ってしまった。

 

 

 そして翌日――

 

 

「「「「「「「「「「「姐さん! お勤めご苦労様でした!!」」」」」」」」」」」

 

 

 フウジョタウンで下船の際、盛大に見送られたトウコちゃん。

 彼女の顔色は終始引きつっていた。

 

 てか船は刑務所じゃねえっつうの。

 それともあれか?

 頭目としての義務を果たしたから『お勤め』なんかいな?

 

「(行きましょう、ユウト。わたしたちとあの子は関係ないわ)」

 

 とりあえずオレとラルトスが他人の振りをするのに変わりはなかった。

 




正直なんでこうなったのかわかりません。その場の乗りと勢いで書いてたら自然とこうなったんや。
まあ無理矢理補足すると、純真培養で育ったトウコちゃんがプラズマ団の汚さに耐え切れないで、別の人格が発動しちゃった、とか?
とりあえずこの辺はあまり突き詰めて考えていくことはしません。
ドツボにハマりそうだし、すっごいシリアスになりそうだから。

ちなみに最後の言葉はノリ。
不適切な場合正しい表現への修正をご協力お願いします。

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