IS~この世界の宙が見たくて~   作:塊ロック

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第十一話「踏み出せた一歩」

「ははは……負けたか……」

 

俺は、コアガンダムの状態で空に浮かぶセシリアに手を伸ばしていた。

勿論、そんなものは届かない。

 

負けた。

 

だが、そんな事はどうだっていい。

 

思い出したんだ。

俺が飛ぶ理由を。

 

「この世界の、全部の宙が見たいんだ」

「……呆れた。負けたというのにどうしてそんな清々しそうな声なんですの」

「お」

 

セシリアが俺の傍に降りてきて、手を取った。

 

「サンキュー」

「…………」

「ん?どした?」

 

セシリアがきょとんとした顔になる。

 

「……悔しくありませんの?」

「悔しいさ。でも……飛んだ」

「???」

「飛べたんだ。俺は」

 

ISを解除する。

コアガンダムが俺の左腕に戻る。

 

ありがとう、コアガンダム。

 

「俺は前に進めた。今日はこれで良いんだ」

「はぁ……」

「ありがとなオルコット。今度は、負けねーぞ」

 

俺は、アリーナを後にした。

 

「は、はぁ………………???」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

夜。

少女……セシリア・オルコットは自室のシャワー室に居た。

 

(……星海、那由太)

 

今日戦った男性IS搭乗者。

時代遅れな全身装甲の第1.5世代型ISでこのわたくしの前に現れ……奇妙な仕組みで追い込んできた。

わたくしの勝ちではあったものの、向こうのエネルギー切れによる勝利であった。

 

勝ちは勝ち。

ですけれども。

 

「……煮え切りませんわ」

 

そして、彼の態度。

微塵も悔しがってはいなかった。

 

普通の男性なら負け惜しみの一つでも言うのではないのか?

だが、彼はそんな気もなく……わたくしではなく、空を見ていた。

 

そもそも、わたくしは彼の眼中にすら入っていなかったのではないか?

 

自分の中にある男性像と言うのは、いつも母に頭を下げていた父の姿しかない。

そんなに仲が悪いのにどうして夫婦なんて続けていたのか。

……そして、そんなに仲が悪かったのに、どうして二人一緒に逝ってしまったのか。

 

わからない。

わからない。

 

星海那由太と言う存在も。

こんなにも苛っている理由も。

 

「訳が分かりませんわ……」

 

この日、結論は出なかった。

 

 

 

 

――――――――――数日後。

 

 

 

「……クラス代表?」

 

ある日の昼休み。

食堂で相席になった女子からそんな話を聞いた。

 

尚、これは致し方無い状況なのだった。

毎度毎度一夏と俺だけで席を占領するのはよろしくないのと、奇跡的に席が空いてる事が無いからだ。

 

4人掛けのテーブルに俺とクラスメイトの3人が座る。

 

「そそ。誰にしようかって話よ」

「要するに委員長だろ?誰ってやりたい奴少なからずいるだろ」

「でも、きっと一組は織斑くんだよ」

「星海くん、戦いたいんじゃない?」

「……いや」

 

聞けば代表、という立場にクラス対抗トーナメントの出場義務まであるとか。

 

「どうして?」

「暇さえあればあいつと模擬戦してるし……お互い手の内は知ってるから」

「おお、これが友情……」

「多分違う」

「オルコットはやらないのか?正直、俺のISは1.5世代……旧式だ」

 

そう、一夏と比べると俺はどうしても純粋なパワー勝負に弱い傾向にある。

装備自体堅実で、悪く言えば爆発力が無い。

不利な状況からの一発逆転が狙いにくいのだ。

 

「そうかな……」

「まぁ、期待されてるって意味ならやぶさかではないけど」

「「「………………」」」

「な、なんだ」

 

3人からじっと見られる。

困るんだが。

 

「いや~、星海くん最初ツンツンしてると思ったけど」

「何か親しみやすくなった?」

「いじり甲斐あるよね」

「……ごちそうさま。お先」

「「「えっ」」」

 

一人でさっさと離脱する。

 

 

しかし、親しみやすくなった?

そうだろうか。

 

……何となく、やるべきことを思い出して余裕が戻ったって事なんだろうか。

 

 

 

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