見渡す限りの海。
砂浜、水平線。
そして快晴の空の下。
夢という名の大航海へは出ないが。
「……まだ海開きには早いんじゃないですかね」
砂浜で一人そんな事をつぶやく。
隣を見ると、アースアーマーとはまた違った暗い青色のアーマーが鎮座していた。
名は、「マーキュリーアーマー」。
水星の名を冠するプラネッツシステムの新たなアーマーだ。
そもそも、何でこんな所に俺一人で居るのか。
まぁ一人ではないんだけれども。
「星海くーん、準備できましたよー」
先生から声がかけられる。
今回は、臨海学校の下見兼、マーキュリーアーマーの実地テスト。
そして、ISの全環境対応性能の確認と言った所。
数人のスタッフと下見の言い訳の為に来ている先生と、俺。
良いように使われている気がする。
「了解。さて……行こうか、コアガンダム」
腕のクリスタルにそっと触れる。
あれ以来、例の男の子には会っていない。
またいつか会えるときが来るだろう。
その時は、胸を張って答えよう。
俺の夢を。
「コアチェンジ、ドッキングゴー!!」
飛び上がる。
後からやってきたマーキュリーアーマーが分解、バラバラになったパーツがコアガンダムに装着される。
黒いフィン、背中の推進装置、顔を覆うようなゴーグル。
視界に機体名が表示される。
「メルクワン、ガンダム!」
手にしたコアビームスプレーガンに、大型のカバーが装着される。
先端には銛のような銀色に輝く突起。
その両サイドには水中で補助推進の役目を果たす水中用のビットが懸架されている。
「行ってらっしゃーい!」
先生の声を聞いて、俺は海の中へ飛び込んだ。
―――――――――
潜る事30分。
静かだ。
水深が深くなるに連れて周囲は暗くなるが、ISのハイパーセンサーが補正を掛けて明るくしてくれている。
酸素も問題無し、シールドエネルギーもまだまだ余裕だ。
今回はマーキュリーアーマーしか持ってきていないのでメルクワンガンダムに100%エネルギーを割り振れる。
『こちらからもモニターは、まだまだ良好ですよ。もう少し潜ってみてください』
「了解」
……久々に、一人だ。
通信機で繋がっているとは言え、まわりに誰も居ない。
最近は部屋に居ても一夏がいるし、学園の休み時間は誰かに絶えず見られている気がする。
ちっとも気が休まらなかった。
休みの日も別に何処か出掛けるわけでもなく、外に出てフラフラしているだけ。
……なんと言うか、夢は思い出したけれど、漠然と何をするべきかすら分かっていないから迷走している気がする。
宇宙に行くには、ISに頼らざるを得ない。
だが、このままここに居てそれが出来るのだろうか。
世界にたった二人しかいない男性パイロットとして、モルモットの様に使い潰されないのか。
気付けば、思考のドツボに嵌っていた。
『星海くん。そろそろ戻ってきてください』
「……はい」
一人の時間は終わりだ。
悩んでも仕方ない。
やれる事をやろう。