IS学園、資料室。
そこに、セシリア·オルコットは居た。
彼女は無心でキーボードを叩いている。
「………………」
ディスプレイに映されているのは、自身の代表候補生と言う立場を利用して集めさせた……ある事件の情報。
数年前、ISの台頭よりも更に前。
セシリアの両親は、とあるプロジェクトに出資していたらしいと言うのが最近分かった。
「プロジェクト、ヴォワチュールリュミエール」
宇宙開発の為の有り触れたプロジェクト。
ただ、その名前だけ目新しく記憶に少しだけ引っ掛かっていたもの。
なぜ今になってこれを思い出したのか。
「………………」
星海那由太。
そう、星海。
このファミリーネームに心当たりがあったからだ。
……プロジェクト·ヴォワチュールリュミエールは頓挫してしまっている。
よくある資金やらスポンサーやらの問題ではなく……テロの標的となった為。
これも、よくある話だ。
未だ世界は貧富の差を埋める事は出来ていない。
地球の問題を片付ける前に、外に向けるなど。
革命家気取りのテロリストに蹂躙された。
その被害者の中にあった名前。
『星海新太』、『星海彼方』。
宇宙飛行士と、そのオペレーターの……夫婦。
セシリアの両親と、交流のあった二人。
セシリア自身も……一度だけ、会ったことがある。
そのときに、彼らの息子の少年と話をした事を覚えている。
『いつか、僕が宇宙に行く』
その頃、セシリアの日本語は拙いものだったが……彼は、確かにそう言った。
「……思い出しましたわ」
彼女は両手で顔を覆う。
自分の今までの言動。
彼を煽った事。
彼を見下した事。
全てを悔やんだ。
「わたくしは、なんて事を……」
「捜し物は終わったか」
「!」
慌てて顔を上げる。
そこには、なんの表情も浮かべていない1組の担任……織斑千冬が立っていた。
「織斑、先生……」
「入学早々、代表候補生の権限を使って他人の過去を覗くとは……あまり良い趣味ではないな」
「……なっ、そんな、わたくしは!」
「今回は目を瞑ろう。それで、だ」
織斑千冬は近くにあったコンソールのキーを叩く。
セシリアの目の前に仮想ディスプレイが映し出される。
そこには、砂嵐が酷く鮮明には見えないが……確かに、アースリィガンダムが映されていた。
「那由太さん……!?」
「これは一時間前に撮影されようやく送られてきた映像だ」
「何が、起こっていますの?」
「海中動作テスト中に所属不明、正体不明機の襲撃を受けたそうだ」
「なっ……」
「お前には救援チームに急遽だが入って貰う」
「……入学したばかりのわたくしを?」
はっきり言っておかしな話だ。
訓練は確かに積んでいる。
それなりに腕はあると自覚している。
だが、なぜ?
「本来IS学園はあらゆる国の手は届かない。しかし……『強い要望』は無碍に出来ない」
……合点が行った。
イギリスが、正体不明機の情報と男性パイロットの情報を欲しがっていると。
可能な限り星海那由太のデータを抜かせるつもりだ。
「……分かりましたわ」
「本来、教師は生徒を守る立場だ。非力な私を許してくれ」
「いえ、構いません。それに……彼には聞かなければならない事がありますので」