ブレードが空を切る音。
ビームが通り過ぎる音。
巨大な腕が目の前を掠める音。
背後から見えない塊が飛んでくる音。
誰も喋らず、無心で、自分に出来る事を続ける。
(4対1でこれだけ立ち回れるのかアレは!)
以前は2対1、しかも海上で先生の援護があった。
今回は地上で、3人の援護があるものの明らかに苦戦していた。
いや、無人機の動きが格段に良くなっている。
「オラァっ!!」
ブレードがまたしても空を切る。
速いのではない、読まれている。
「くっ……!」
一夏も苦し気な声を上げる。
エネルギーを節約しなければならない一夏は、ずっと不利なままだ。
セシリアのブルーディアーズは複数人での戦闘にまるで向いていない。
いつ狙われるか分からない状況で立ち止まるなどもってのほかだし、万が一ビットで誤射しないとも限らない。
鳳は積極的に前に出ないが、本人の性格上しびれを切らしそうだ。
要するに、こちらのチームワークがまるで成っていない。
(何か、決定打が要る!)
一夏の零落白夜をエスコートする為の決定打。
この機械野郎の足を止めるにはどうすれば良いか。
「那由太!何かいい案無いのか!?」
「なぜ俺に聞く!」
「なんか、戦った事あるっぽいからな!」
守秘義務を出されて言えなかったけど今ならまぁ良いか。
「前にメルクワンのテストの時に遭遇した」
「ばっ、お前そんな大事な事もっと早く言えよ!」
「あの時は海に沈めた。今回は何の参考にもならんぞ」
「マジか……うおっ!?」
駄目だ、埒が明かない。
振るわれる拳を避ける。
……囮になるしかないか。
「一夏、埒が明かない。決めるぞ」
「……ああ、ちょうどそう思ってた」
一夏からヒートレヴソードを投げ返された。
そして、雪片弐型を構える。
「俺が先行する。しくじるなよ」
「任せろ」
後ろを一瞥する。
セシリアと鳳は油断なく構えている。
万が一失敗しても、もう学園の実働部隊……先生たちが来るだろう。
勝負を決める、俺たちが動ける最後のチャンスだ。
「行こう、ガンダム」
ヒートレヴソードを構える。
そして、跳んだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
真っ向からの唐竹割り。
勿論、当たるはずがない。
無人機は体を反らして最小限の動きで回避する。
「逃がすか!」
一夏が続き、死角から横一閃。
其の軌道上には、俺が居る。
無人機は跳ぶ。
俺は一夏の一閃をかがんで擦れ擦れで避ける。
その姿勢から無人機を追うように跳躍。
もう一度剣を振る。
当たらない。
一夏が俺を飛び越えて剣を振る。
当たらない。
……一か八か!
「コアチェンジ!マーズトゥアース!」
無人機の真下から加速して更に飛び上がる。
2度の空振り。
もう零落白夜は持たない。
だから、行く。
最悪俺が撃墜されても問題は無い。
背中のビームサーベルを抜き放ち……投げる。
それは無人機の腕に刺さる。
この程度脅威でないと判断されたのだろうか。
その勢いのまま俺は無人機の上を取る。
一夏は……俺の反対側。
上下で挟んでいる形になる。
「げっ……!」
エネルギー反応。
ロックオンアラート。
これは、やられた。
もう直撃コース。
「那由太!」
「一夏!決めろ!!」
「!」
ビームの光。
俺は、
「ボルトアウト!」
アースアーマーをパージ。
ビームの奔流にアーマーが飲み込まれる。
弾き飛ばした勢いで無理やり姿勢を変え、ギリギリで避けた。
「コアチェンジ!」
連続換装。
エネルギーの消耗が激しすぎて実戦でやるにはリスクが多すぎるが……今が、そのリスクを負う場面だ。
「ドッキングゴォォォォォォォ!!!」
深紅のマーズアーマーに換装。
既にブーストも一回分しかない。
だが、それで充分だ。
「喰、ら、えええええええええええええええ!!!!」
ブースト全開。
俺に出来る最後の一手。
落下エネルギーとブーストを併用した、ただの飛び蹴り。
アースアーマーを破壊して、無人機の動きが一瞬だけ鈍った。
俺を撃墜したと誤認でもしたのだろうか。
だが、好都合。
「ご、ぶっ……!?」
激突の瞬間、振るわれた腕に腹を殴打された。
だが、向こうも態勢が崩れた。
「今度は、逃がさねええええええええええええええ!!!!」
一夏の声。
俺は、
(シールドエネルギー、ゼロ……墜ちる)
マーズアーマーが砕け散る。
コアガンダムの状態で明後日の方向へ吹き飛ばされ、墜落する。
「那由太さん!!!」
セシリアの声が聞こえた気がした。
「……空が、遠いな」
視界に広がる大空は、まだ遠い。
俺は、アリーナの観覧席に墜落した。