IS~この世界の宙が見たくて~   作:塊ロック

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第二十九話「過去」

朝の陽ざしが頬を照らす。

今日はよく眠ってしまっていたらしい。

 

休養日だからぐうたらするのも何だかもったいない気もするが、先日無理をし過ぎた為に体が休息を欲しているのかも知れない。

 

部屋に一夏は居ない。

今日は中学以来の友人に会いに行くと言っていた。

誘われはしたが丁重に辞退した。

 

久しぶりの再会に初対面の人間が同行するのも気が引ける。

次会う時は同行するとの約束はした。

 

 

……そんな訳でだらけ切った身体を伸ばして運動着に着替えるのだった。

しんどいとは言っても身体に必要なのは適度な運動。

最近病院や医務室のベッドに世話になりっぱなしになってるしいい加減身体がなまってきた。

 

「……さて」

 

走りに行こう。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

学園内の敷地を運動着に着替えて走る。

外出するより敷地内走った方が運動になる……正直この敷地出るにはモノレールとか乗らなきゃいけないし。

 

周囲を見渡せば生徒の数は少ない。

花の女子高生、休日に寮に居るのはやはり少数派なのだろうか。

 

「ふぅ……やっば、鈍ってる……」

 

20分くらいジョギングしただけなのに息が上がっている。

事あるごとに医務室に搬送されてるのもあるけど。

 

「体力、戻していかないとな……」

 

つい昔の癖でシャツの裾で汗を拭こうとして……その数少ない女子生徒にめっちゃ見られているのに気が付いてしまった。

 

「………………」

 

バツが悪くなり、手を放してそのまま走り出した。

 

……そう言えば。

 

(実験機のテストパイロットって事で俺にもそれなりの報酬が入ってるんだっけか)

 

未成年労働に引っかからないためにかなり面倒な回り道をしているらしいが、俺にも給与が発生しているらしい。

各国の代表候補生に導入されているシステムだとか。

後で口座を確認しておこう。

前に話を聞いたときに一応口座を開設したんだったか。

 

(あの時は大変だったな……何も分からなかったから)

 

考えてみれば幼少の頃より天涯孤独でずっと孤児院暮らし。

世間知らずだったなぁと改めて痛感した。

 

……そして、孤児院の事を思い出した瞬間……。

 

 

 

『ざまぁみなさい。良い恰好ね、貴方』

 

 

 

 

「っ」

 

脳裏を過った顔。

息を呑んでしまい、呼吸が乱れた。

 

「!!!ッ、ぅぇ、げほっ!!」

 

咽かえる。

吐き気までやってきてしまうのでつい傍の木に手を付けて屈みこんでしまった。

 

「あー……クソ、嫌な顔を思い出した」

 

俺が高校受験に失敗した日。

それはある女が絡んでいた。

……俺が、女に対して良い感情を抱かなかった原因。

 

幸いな事に、そいつはここには居ない。

 

ここまで顔を合わせる事も無い。

 

だから、この気持ち悪さはここで終わり。

 

「クソ」

 

吐き捨てるようにつぶやき、俺はまた走り出した。

 

 

 

 

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