結局、3日ほど稼働訓練をした結果……。
「……何で飛べないんだろうな」
そう、一度も飛行が出来ていなかった。
「分からん……技師に問い合わせしても初めての事でサッパリだとさ」
寮の部屋の中で俺と一夏はそんな話をしていた。
設置された机に二人で向かい合って座る。
一夏には専用機が既に届けられていた。
彼の腕に着いているガントレット……それが、待機状態だ。
名を『白式』。
その名の通り白を基調としたISで、量産機など比較にならない凄まじい運動性を有している。
その運動性に振り回せれていたが。
しかし、問題点が一つ。
……白式には、武器が近接ブレード一本のみだったのだ。
いくら機動力があっても武器がそれしか無ければ……それに、ISガチ初心者である一夏に運用させるには厳しいものだった。
そしてさらに玄人向けISに拍車を掛ける事態が。
通常ISには、
白式には何故かそれが初期設定で備わっていた。
『零落白夜』。
自身のシールドエネルギーを消費し、相手のシールドエネルギーを削り取る一撃必殺の能力だった。
ちなみに最初の被害者は俺である。
撃ち合いのさ中、フィッティングが完了し急加速、からの一撃。
普通に痛かった。
話を戻そう。
一夏が専用機を得たお陰で、専用機相手に立ち回る訓練にはちょうどいいかと思ったものの……。
機動力だけはあるので照準の訓練に付き合ってもらった。
それでも、飛べない。
「ラファールのスラスターは問題なかったんだろ?」
「ああ……」
「うーん……ISについて、今分かってることはそんなに多くない。何か那由太側に問題があったのかもしれない」
「俺に?」
「何か、迷っていることがISにバレてるのかも」
「迷い……?」
「よくわからないけど、俺が白式につながった時……全部が繋がった気がしたんだ」
「ああ」
「もしかしたら、IS側がお前に対して何か考えがあったのかも」
「ISが、意志を持ってるって言うのか?」
「分からない。けど、そうかもしれない」
「随分ロマンチストだな」
「嫌いか?」
「……好きではない。嫌いでもないが」
「素直じゃない奴」
「うるせぇ」
俺側に問題があるかも、か。
―――――――――
「星海くん。今良いでしょうか」
クラス担任が、俺に声を掛けてきた。
「なんでしょう、先生」
「星海くんの専用機が届きましたよ」
「……本当ですか」
俺の、専用機。
ラファールで戦うもんだと思っていたので、少し困った。
「……あの」
「星海くん。気持ちは分かります。けれど、企業さんが用意してくれた機体で戦うのも……パイロットの務めなんです」
先生にはお見通しだった様だ。
「ぶっつけ本番で専用機に乗り換える事になりますけど……」
「勝てると思います?」
「いえ、9割負けると思いますよ?」
「ですよね……」
教師は時に現実を突きつけなくてはならい。
だから、この話は俺が飲み込むべきだ。
頭では理解してる……けど、俺の中の男の子が反骨心をもたげそうになるのを必死に抑える。
「でも、先生は嬉しいんですよ」
「え……?」
「星海くん、もしかしたらクラスで浮いちゃうかなって思ったんです。でも、こうやって必死に努力してる姿を皆が見ています。負けてしまっても、きっと大丈夫だと思います」
「は、ははは……何ですかそれ。意味わかんないですけど」
「負けても何も失うものが無いってことですよ。仮に勝てたとしたら……とても凄いことだと思いますよ」
「勝ちが見えないからってそう言う事言わんといてくださいよ……」
「ウフフ。ごめんなさいね。男の子と話すのが少したのしくなってしまって。さぁ、行きましょう。貴方の機体が待ってますよ」
――――――――――
IS格納庫。
そこに、俺のISが座して待っていた。
「これは……小さい、ですね?」
通常、現行のISは装甲に覆われている箇所が減る傾向にある。
シールドに守られている為だ。
しかし、こいつは違った。
全身が装甲に覆われている。
顔までもだ。
機体カラーはグレー。
額についているV字のアンテナ。
バックパックに翼が無い……というかスラスターが一つだけポツンとある。
……飛べないから、こんな機体にしてあるのだろうか。
「……一夏の白式と比べて、随分と小柄ですね」
「小さな機体の可能性を模索した結果だと聞いています」
「小さな機体、か……」
確かに小さい。
俺の背丈より少し高い程度だ。
「こいつの名前は、なんていうんですか?」
「『コアガンダム』です」
「ははは……ガンダムか……荷が重いなぁ、ちょっと」
まぁそういう名前つけたいのは分かる。
「さぁ、フィッティングしてしまいましょう」
コアガンダムに触れる。
一度全体が光の粒子となって俺の……左の二の腕にバンドとなって巻かれた。
胸に付いていたエメラルド色の発光パーツが小さくなって巻き付いている。
「コアガンダムを強く呼んでください」
目を閉じ、クリスタルに触れる。
……来い、ガンダム。
――――――――――
「……えっ」
目を閉じていた筈なのに、俺は……気が付けば空の下に居た。
いや、いやいや、ちょっと待て。
さっきまで屋内にいたのに。
……ふと、目の前に誰かが居る。
ポンチョの様な物を着ている……少年だ。
顔は、逆光で見えない。
「あ、あの……」
「思い出してくれ」
「え?」
少年は続けた。
「思い出してくれ。君の、約束を」