KAN-SENをよく知らない指揮官が着任するそうです 作:平凡な指揮官
ガタン! という大きな衝撃を受け、男は目を覚ました。どうやら乗車中の車が段差を乗りこえたようだ。
「……今どの辺にいるんだ?」
男は前方の運転手に訪ねる。
「基地のある街に入ったところです。あと数分ちょっとで到着しますよ」
「そうか。わかった」
海軍省のある首都から、飛行機と車に揺られること数時間。ようやく着任先の基地に着くようだ。
思い返してみれば、大臣との話から今日までの数日間は本当に忙しかった。ろくに挨拶もせずに出てきてしまった会計課の連中には、後で菓子でも送っておくようにしよう。
そんな事を考えているうちに、車はいつの間にか基地のロータリーに進んでいた。入り口の前には2人分の人影が見えている。
「閣下、遠路はるばるよくお越し下さいました! ようこそ竹敷基地へ!」
車から降りた途端、前任の指揮官からの熱い歓迎を受ける。この前任者とは海軍省で何度か顔を会わせたこのある仲であったが、実際のところ男は彼の無駄に明るい性格が苦手だった。
「道中はいかがでしたか?」
「ああ、快適なものだったよ。もっとも、あの飛行機の揺れには参ったがね」
「ハハハ! 確かに、最近は型落ちのボロしか飛んでいないですからね」
前任者がげらげらと笑いながら話していると、その横に控えていた女性が「指揮官、そろそろ……」と耳打ちをした。前任者に気をとられていたが、彼女はどうやらKAN-SENのようだった。
「ええと……彼女は?」
「ああ、紹介が遅れました。彼女はティルピッツ。ビスマルク級の2番艦です」
前任者はそう言うとティルピッツの肩を軽く叩く。『挨拶しろ』という意味だろう。ティルピッツは一歩前に出ると、丁寧に敬礼をした。
男もそれに対して敬礼を返す。2人の出会いは実にあっさりとしたものだった。
その後、男は前任者とティルピッツの案内で基地庁舎内の執務室へと通された。前線基地ではあるが、その執務室は実に綺麗で洗練されたデザインだった。
「こちらが執務室となります。左手に見える扉は指揮官の私室に繋がっており、指揮官は基本的にそこで生活をしております。そちらの壁にあるのが……」
前任者から部屋の仕組みや物品についてあれこれと説明を受けているうちに、いつの間にか基地に到着してから30分近く経過していた。予定的には、もうすぐ引き継ぎ式と顔合わせが始まるはずだ。
「もうこんな時間か……。どうです閣下、式まではもう少し時間がありますし、私室でシャワーでも浴びられては?」
「そうだな。ちょうど汗でベタベタになっていたんだ。ありがたく使わせてもらうよ」
そう言うと、男は手荷物を持ちシャワールームへと向かった。
「さて……と。じゃあ僕は講堂の方に行くから。ティルピッツ、後は頼んだよ」
「……わかったわ」
前任者も部屋から出ていき、ティルピッツ1人だけが残った。しばらくの間はその場でじっとしていたが、ふと、何かを思いついたかのように男がいるシャワールームへと向かった。
…………男がシャワールームから出てくるのと、ティルピッツが脱衣場に入るのはほぼ同時のことであった。
基地の名前は単純に自分のサーバー名から取っています。
【お知らせ】自分の凡ミスで文頭が空いていない状態で投稿してしまっていました……。前回、前々回の分と合わせて訂正しておきましたのでよろしくお願いします。