もしも、それに対抗しうる存在が居たならば。
それはまさしく、太陽の鞘と呼ばれる存在であろう。
「この瞳を排除して・・・・・・スルトとの契約を、切り離す・・・・・・!」
雪と炎が燃ゆる世界。迫り来る破滅の太陽を睨みながら、現代の戦乙女オフェリアは咆哮する。瞳を輝かせ、彼女はそう宣言した。炎の巨人スルトが現界できた理由。それは、オフェリアの持つ魔眼を要石としたが故。ならば、それを破棄すればスルトは現界を保てない。そう考えるに至るのは当然の帰結と言えるだろう。だが、その行為にはとてつもないリスクを孕んでいる。魔眼とは、脳に強く結びつくもの。それを、繊細な処置も無く乱雑に破棄しようものなら、脳へのダメージは計り知れない。下手をすれば、一生を植物人間として過ごす事になる。だが、だからといってオフェリアはそれを止める事は出来ない。そんな事をすれば、自分を日曜日から連れ出して、美しき
「う・・・・・・あ・・・・・・ああ・・・・・・あああああああああ・・・・・・!!」
溢れる魔力が、オフェリアの脳に叩きつけられる。とてつもない激痛が全身を走る。それでも止まらない。止まる訳にはいかないのだ。
「魔眼と、魔術回路の接続を・・・・・・解除!
魔眼は力を失い・・・・・・要石としての機能も、同時に、消え失せる!」
苦痛に悶えながらも、魔眼はその力を失っていく。これで、スルトを留める要石は消え失せた。後一押し、決定打を打ち込めば、滅びの太陽は黄昏の向こうへと沈む。
───だが、現実は御伽噺のように都合の良いようにはならない。
『オ、オォ、オォォオオオオオ・・・・・・ッ!』
炎の巨人が、蠢く。ナポレオンに喰らった一撃で、動けずにいたはずにも関わらず、唸り声を上げながら、その手に在る太陽を振りかざす。
『不味いッ!このままじゃ、次の一撃がくるぞ!』
「皆さん、私の後ろへ・・・・・・!」
『オフェリアァァァァァッ!』
無慈悲に振り下ろされる一撃。英雄達の力では太陽に届かず、現代の戦乙女は顔を顰める。絶対絶命と思われた瞬間に、それは現れた。
「────え?」
ふわりと柔らかな風と共に、立香達の間を潜り抜け、最前列へと少女は立つ。
『な・・・・・・!?』
「ゲルダさん・・・・・・!?」
北欧異聞帯で暮らす少女、ゲルダ。彼女は困惑の声を漏らす一同へと僅かに振り返りながら、悪戯っ子のような笑みを浮かべている。
「逃げてッ!ゲルダちゃん!!」
立香の声に、ゲルダは反応しない。迫り来る太陽へと向き合い、その瞳はその先にある巨人王を睨んでいる。
「・・・・・・
そうゲルダが呟いた直後、滅びの魔剣が
「な─────!?」
『─────ッ!』
想像していなかった事態に、その場にいた全員が呆然とする。そんな状況を尻目に、ゲルダは巨人王と相対する。
「全く、随分とこの女にご執心なのね。名目上とはいえ、曲がりなりにも貴方と将来を誓った仲なのだから。ちょっとだけ嫉妬してしまうわ」
『─────まさか、お前は────』
スルトに走る動揺。当然だ。もしも、ゲルダが、スルトが思い至った存在ならば、それは自身の
『────は。しまった、あまりの衝撃にフリーズしてしまった・・・・・・というか、なんだね今のは!?ただの人間の少女が、サーヴァントの、しかも巨人王の剣を弾き返しただとぅ!?そんなの、物理的にも魔術的にも有り得ん!一体、何がどうなってるのかね!?』
通信越しに、ゴドルフがそう騒ぎ立てる。
だが、それを咎める者は居ない。彼の今の言葉は、全員が現在抱いている共通の疑問だ。故に誰も咎めないし、返答する事もしない。いや、出来なかった。
「藤丸さん」
全員が沈黙する最中、ゲルダがゆっくりと口を開いた。
「スルトを止めるのは、私の使命。だけど、今の彼はフェンリルを呑み込み、空想樹を取り入れ、本来の形とはかけ離れてしまった・・・・・・だから、私の力だけじゃ足りないの」
振り返ったゲルダが此方を見つめる。その瞳には、今までの年相応な爛漫さはなく、大人びた雰囲気を醸し出している。
「貴方の力を貸して」
不思議とゲルダの言葉を疑う気にはならなかった。あらゆる特異点を踏破し、世界を救ったマスターとしての直感が、彼女に力を貸せと囁いている。
「・・・・・・うん、分かった。私の力を君に預けるよ」
立香の言葉にゲルダは微笑む。二人の距離が縮まり、互いの指先が触れる。次の瞬間、立香は自分の内の何かとゲルダが繋がった様な感覚を受ける。その繋がった路を通して、己の魔力がゲルダへと流れていく感覚を、はっきりと捉えた。
「それじゃあ、お願いするわ」
「───
「はい。了解しました、
令呪が、真紅に輝く。主より託された願いは、英雄へと渡され、迫り来る滅びを妨げんと励起する。
『な・・・・・・ッ!?立香ちゃん達の前に、サーヴァントの反応・・・・・・!?』
ダ・ヴィンチの声が通信越しに聞こえるが、誰もそれに反応出来ない。
その場にいた誰もが、目の前で起こる非現実的な光景に目を奪われていた。ゲルダが靡かせていた輝かしい金色の髪は、まるで銀世界を切り取った様な色に、その瞳は燃え盛る炎の様に紅い色へと。年相応だった身長は、するりと伸びていき、成人女性程度の高さにまで変化する。その風貌から、幼さは消え失せ、大人の色香が香る。変貌を終えたゲルダは、絶世の美女としか表しようのない、美しい女性へとなっていた。
『───馬鹿な───何故、貴様が!』
その姿を見たスルトは、猛々しく叫んだ。
ゲルダだった女はその叫びを嘲笑う様に笑い、静かにスルトを見つめる。
「何故か、ですって?決まっているでしょう。貴方が居たからです。破滅の魔剣が世界に在るならば、それを封じる鞘があって当然。・・・・・・私達は、決して切り離せない、表裏一体の存在なのですから」
『有り得ん────オ、オォォオオオッ!』
スルトの身に、魔力が滾る。一度弾かれた太陽の魔剣は、再び強く輝き、此処にある遍く命を灼き尽くさんとする。
「巨人王の活性化を確認ッ!オルテナウス、全力抵抗を試みます!」
かつては騎士達が集った円卓を構え、マシュが叫ぶ。全員が、迫る滅びに備える。だが、立香だけは大丈夫だと確信していた。
「大丈夫だよ、マシュ」
「え?・・・・・・先輩?」
「だって、彼女がいるもん」
人工の盾の先に立つ女。彼女は滅びを前に手を広げ、まるでそれを受け入れるかのような姿勢をとる。
「
───遠い神話の話をしよう。かつての神の世界、人の文明が栄えるよりも、遥か昔の話を。
「
太陽の魔剣の力を恐れた主神オーディンと狡知の神ロキは、それが何者かに悪用されぬ為、また滅びを招く要因を消し去る為に、その力を封印する事にした。
「
魔剣を封じる為に動き出した二柱は、自身の神性と権能を駆使し、鍛治に優れたドワーフ達に協力を仰ぎ、一つの防衛機構を鋳造した。
「
生み出された兵器は人の形を持ち、その内に眠る災厄と、
「
星の願いによって生み出され、神すら恐れる破滅を管理する、至上なる太陽の鞘。
其の真名は
またの名を────
「宝具『
世界が、顕現する。炎、死、氷、憤怒、文明、黒、空、楽園、天。世界を滅ぼす炎が、巨大なる九界に捕えられる。
『ガ────オォォォオォオオオオッ!?』
スルトが苦悶の声を漏らす。世界に囚われた炎が、そのまま絡まり、引きずり込まれる。
その防衛機構の仕組みは至って単純。
迎えるものが、世界を滅ぼすものであるならば、それが覆い尽くせぬ程の世界によって滅びを封じ込める。遍く世界、その全てを以て災いを捕らえる、文字通りの星の牢獄である。
『貴様ッ!────シンモラァァァ!!』
「無駄です。貴方の力の大部分を、既に封じました。貴方の炎も、その魔剣も、最早見掛け倒しのハリボテ同然・・・・・・此処までくれば、私の力でも貴方を打ち倒せる」
瞬間、金色の輝きがシンモラの手中に発生する。
「───申請開始。撃滅対象確認。魔力補填完了。範囲設定確認。───限定顕現」
その光は、輝きを曇らせる事無く、尚も眩く世界を照らす。シンモラが拳を握ると、その光は収束し、その形を見せる。
───それは、破滅の魔剣に比肩する黄金の鎌。シンモラを創り出した神々が、最後の対抗策として授けた、陽光の刃。
『オォォオオオ────オフェリアァァァッ!』
巨人の咆哮が空を衝く。その巨体を駆動させ、己に向けられた黄金を滅ぼさんと、励起する。
『星よ・・・・・・終われ・・・・・・灰燼に帰せ!!』
「偉大なる
巨大なる力が衝突する。ぶつかった魔力はその余波で、大地を割り、空を歪ませ、星を震わせる。
『『
「『
光と陽が交錯する。その後の顛末がどうなったか、後のカルデアではこう記録されている。
───太陽の鞘、此処にあり。と
マテリアル
【真名】シンモラ
【性別】女
【属性】秩序・善
【クラス】ルーラー
【ステータス】筋力C、耐久EX、敏捷D、魔力A++、幸運B、宝具EX
【保有スキル】
対魔力EX
魔術への抵抗力。シンモラは下記のスキルの影響により、最高ランクでこれを有し、あらゆる魔術を無力化する。
真名看破B
ルーラーとして召喚されることで、直接遭遇した全てのサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。
神明決裁A
ルーラーとしての最高特権。聖杯戦争に参加した全サーヴァントに対し、二回令呪を行使できる。
太陽の鞘A++
巨人外殻と神に施されし術式により完成した特異体質。彼女の体はその内に終焉の炎があっても滅びず、その外殻もまた、外敵がうちに眠る魔剣に手を出す事を許さない。如何なる手段であってもその身を傷つけるのは困難であり、傷つけたとしても即座に再生する。ただし、その内に内包した神秘が希薄なものの手でつけられた傷であれば、その限りでは無い。
ゲーム内効果
自身に無敵状態を付与(1T)、HPを回復(3T、回復量はスキルレベルに比例)、自身に弱体無効状態を付与(2回/3T)防御力を大幅にアップ(3T)
変幻自在B
自己改造と変化の複合上位スキル。外面に限らず、内面の魔術回路や起源すらも自在に変化させる権能。シンモラは自身の創造主たるロキにより、これを与えられた。
ゲーム内効果
自身にスター集中状態を付与(3T)、クリティカル威力をアップ(3T)、攻撃力をアップ(1T)、防御力をアップ(1T)
原初のルーンA+
北欧のオーディンによって見出されたもの。彼女は創造主たるオーディンによりこの力を賜った為、高ランクでこれを有する。
ゲーム内効果
自身にBusterアップ状態を付与(1T)、相手の防御力を大幅にダウン(1T)
魔力放出(炎)A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。終末の剣の封印を担うシンモラは、その力を限定的に解放する事によって、これを可能とする。
【宝具】
『
種別:結界宝具
ランク:EX
レンジ:不明
最大捕捉:不明
解説 太陽の魔剣を封じる結界。レーヴァテインとは対極に位置する神造兵器。九つの世界を結界として転換、圧縮、構成したもの。その魔剣の恐ろしさを危惧した主神オーディンと狡知の神ロキにより創り出された彼女の本体とも言える。本来はレーヴァテインを封する為のものだが、真名解放すればたとえ、世界を滅ぼす災厄をであっても、封じる事ができる。
ゲーム内効果
敵全体に宝具封印状態を付与(2T)、敵全体にスキル封印状態を付与(2T)、相手の攻撃力を大幅にダウン(3T)
『
種別:対界宝具
ランク:EX
レンジ:1~99
最大捕捉:不明
解説 シンモラがレーヴァテインを譲渡する代わりに求めたという輝く鎌。上記の宝具が災いを封じる為の存在ならば、これは災いを災いで討ち滅ぼすもの。レーヴァテインと同じく太陽が如き神造兵器であるが、その本質は神秘への特攻。その性質が故にこの炎の鎌は炎の魔剣との拮抗を可能とする。
ゲーム内効果
自身に無敵貫通状態を付与、敵全体に強力な[神秘]特攻攻撃
【詳細】北欧神話で語られる、巨人王スルトの妻にして、魔剣レーヴァテインの管理者。現代での知名度は低いものの、その
【人物】銀色の髪と真紅の瞳を持つ美女。その性格は、母の様に慈愛に溢れ、淑女の様に優雅であり、そして裁定者としての厳格さを併せ持つ。コミュニケーション能力は高い為、大抵のマスターとは良好な関係を築く。但し、もしも世界を滅ぼす者と対峙したならば・・・・・・その存在がたとえマスターであったとしも、彼女は容赦無く己の責務を全うするだろう。