ヘ且ノ <けれど、我らは夢を諦めぬ!ウアアアアアアアアッ!
≡/┐
↑
今更再びリメイクしようと思った作者のテンション
学校帰りというものは非常に甘美なモノだ。
現在、本校舎の3階の用具室程の広さの部屋の窓際で下校中の生徒を眺めている少女は、少なくともそう思っている。
「………………」
この駒王学園はマンモス校のため、巣から離れる蟻のように多くの生徒が帰宅していく姿が眼下に見え、それをどこか儚げで退屈そうに少女は見ていた。
少女の容姿は小麦色の肌にやや暗い金髪。そして琥珀色の瞳を持ち、黒目と合わさることで
「はぁ……」
それに加えて、何気なく小さく吐かれた溜め息を溢した彼女の姿は、およそ少女というには大人び過ぎていた。
スレンダーでありつつも凹凸のハッキリとした体型も去ることながら身長も女性にしてはかなり高く、そして何よりも彼女の"カトレア"という名の花言葉の通り、成熟した大人の魅力から醸し出される独特の妖艶な雰囲気がそれを後押ししている。
まあ、実年齢より上に見られる事が本人にとって良い話かと言われれば微妙なところだが、それでも彼女を見た万人が美女あるいは美人と無意識に考える程度には、人間離れしているのは確かであろう。
「うん……ぅ……」
ふと、彼女は両手を掲げて身体を伸ばして見せた。その際にその背から数対のコウモリのような羽――悪魔の翼が覗く。
彼女は人間ではなく、"悪魔"という種族であるが、この駒王学園の中では秘匿はされどもさして珍しいことでもない。
「本当にあの人はもう……」
話を戻そう。
学校で1日を終え、家へ帰宅する。その間に次に登校するまでの間、家でなにをするかなどと考えている時間が彼女は好きなのである。
まあ、彼女が何を考えているのかというと――。
「帰りたいです……」
単純かつ切実なことであった。
◇◆◇◆◇◆
私の名は
「はぁ……」
何度目かわからない溜め息を吐きつつ私は窓から離れると、部屋の丁度中央に設置された10人掛けぐらいの長椅子の端に座りました。
そして、机の上に3つほど積み上げられた一番上のDVDに目を向けます。
"爆乳保母さん連続奉仕7"
「…………はぁ……」
どこからどう見ても18歳未満お断りのタイトルです。というかこんなものが7作も出てるのですね。いらない知識ばかり
無論、私の私物であるわけもありません。あったら世も末です。それと言うのはこの学園には有名な人物がいる事から話しましょうか。
例えば私は三大お姉さまの筆頭として上げられています。正直、勝手なイメージが独り歩きする要因の1つでしょうから迷惑なことこの上ありませんが。
まあ、一応は良いことなのでしょう。それとは対称的な悪名高い者もおり、今回関係するのはそっちです。
2年に変態三人組と呼ばれている者たちがいます。名前から既に出落ち感満載ですが、文字通り、この学園の中で最も変態の三人組ですね。
その者らのあだ名はエロ坊主、エロメガネ、そして……おっぱい星人です。そして、このエロDVDらはそのおっぱい星人が今日の持ち物検査で引っ掛かった私物なのです。なんで検査に引っ掛かるんですか本当。
そもそも月一の持ち物検査は事前に予告しているため、引っ掛かかる人間自体極稀なのですが……どういうわけかそのおっぱい星人は毎回、毎回引っ掛かるのです。
持ち物検査で引っ掛かった者は没シュート+厳重注意etcの後、放課後ぐらいに本人に返すのが今の風紀委員会のセオリーなのですが、こんなDVDを本人に返したがる人が風紀委員会に誰もいないため、必然的に私に回ってくるのですよ。
その度に返しに呼び出すこちらの身にもなって欲しいものです。別にセオリーというだけで校則上、返さず捨てても良いのですが、それで怨まれたりしても仕方ありませんし。
というかこの情報化のご時世でよくもまあ、こんな部屋に置くのを困りそうなモノを集められるモノですね。感心すら覚えますよ。いや、呆れですか。あれ? やっぱりセクハラ……?
そんなことを思いながら"この円盤でフリスビーでもしましょうか"等と考えているとドアを軽くノックする音が聞こえてきました。
私はノックの仕方からその人物がおおよそ目的の人物であると判断します。ノック音や、する場所は人によって微妙に違うため、恐らく合っているでしょう。
「入ってください。
私が声を掛けるとドアが開き、おっぱい星人――兵藤 一誠が入ってきました。
「し、失礼します」
へこへこと頭を下げながら入ってくる様は罪悪感の表れ、でしょうか? それならば是非とも持ち物検査の日に引っ掛からないで欲しいものです。
ちなみに彼の容姿は10人男子生徒がいれば1人ぐらいいるような容姿です。上の下から中の上ぐらいと言えばわかりやすいでしょうか。服装も清潔的で、よくいる好青年といった普通に好印象を抱けますね。
少なくとも残りのエロ坊主や、エロメガネのように一目ではおっぱい星人だと認識は出来ません。知らなければ好青年にすら見えるでしょう。
だが、彼の目線を見れば直ぐにそれはわかります。既に私の胸に目線が行っているのです。顔を見ろ顔を。
しかもチラチラとしたモノではなく、完全な凝視です。魅了・麻痺・石化でもさせる気でしょうか? 残念ですが私は全て耐性持ちです。ついでに凝視も見切っています。うーん、ロマンシング。
まあ、単に見られ過ぎてもう慣れているだけなんですが……これは明らかにおっぱい星人です。きっと本星は駒王上空に浮いているんですね。撃ち落としてやりましょうか?
「ここへどうぞ」
「は、はい!」
私は掌を上に向け、私の隣の席を差し、着席を促します。すると彼はビクッと震え、私の胸から目線を私の顔に変えるとそそくさと席に座りました。
「さて、兵藤さん」
「はい」
一番上のDVDを摘まみ上げました。そして、ヒラヒラと振りながら彼を半眼で少し睨みます。じーっとです。
「またですか」
「はい……」
彼は目を泳がせ、部屋の窓辺りに視線を向けています。しかし、私の胸に時々チラチラと視線を送ってくる辺り真性と言えるでしょう。ひょっとして、意思とは無関係に女性の豊満な胸部を見てしまう精神病なのでは?
「はぁぁ……」
私は一際大きな溜め息をつくとDVDを机に戻し、彼に向き合いました。それに従うように彼がピンと背を伸ばし、こちらを見ながら固まります。その態度を別のところで示して欲しいものですね。
「いつも言っているように高校は風俗店ではありませんし、規律を厳守するような会社でもありませんので風紀自体をそこまで気にするような場所ではありません。よってこのように検査日にモノを持ち込みでもしない限りはまず指導対象になることなんてありえないんです」
「……毎回思うんですが……それ風紀委員長が言って良いんですか…?」
「毎回言わせないでください。風紀委員長なんて服装と行動だけ模範になってれば良いんです。これも伊達眼鏡ですし」
似合うから掛けてるだけですから。眼鏡を掛けているだけで回りから少し知的に見られやすいので得なんですよ。
「マジですか!? 辻堂先輩眼鏡系女子じゃなかったんですか!?」
「両目8.0以上はあります」
「高ッ! マサイ族の方ですか!?」
「日本では最高2.0までしか測定されないだけで視力高い人なんてざらにいますよ?」
それにマサイ族の方は黒人で、私はただ褐色――気持ち小麦色なだけです。マサイの方々に失礼ですよ。ちなみに名前からはハーフかと思われることも多いですが100%純外国産です。お陰で人の目を惹くしか役に立たない無駄な体型ですよ、クソが。
「そうなんですか……い、いや、俺は辻堂先輩のおっぱ――体はいいと思いますよ?」
「そろそろ真面目な話をしましょうか」
「は、はい!」
そういうと彼は硬直しました。何か言っていた気がしますが、二重に聞かなかったことにしてあげましょう。私は優しいのです。
「覗き、覗き、覗き、セクハラ、覗き、覗き、セクハラ、覗き。これなんだと思います?」
「な、謎なぞですか?」
「正解は今月中に女子生徒から申告のあったあなたへの被害届です。いい加減にしないとそろそろ捕まりますよ? なんのためのエロDVDですか、現実でそういうことをしないための物なのでは?」
「…………はい」
「もっとも学園内で犯罪者を出すような真似は出来ませんから強姦でもしない限りは警察沙汰になることは無いでしょう。するなら学園外でしてくださいね?」
「そ、それだけはしません! 俺は純粋に先輩のような溢れんばかりのおっぱいが好きなだけなんです!!」
……純粋とはいったい……うごごご! 本当にこの方、私にセクハラしに毎回毎回引っ掛かっているのではないんですよね……?
「まあ、真面目な話はここまでにしましょう」
私はDVDを彼の前にずらしました。しっしっもう返って来るんじゃないですよ。
「没収してもカラス避けにしかならないので持って帰ってください」
「あ、はい」
彼はDVDを受け取るとカバンに仕舞い込み、その間に私は時計を見ました。流石にもう少し彼をここに止めておかなければ説教をしたという感じの時間にはなりませんね。
私は机に頬杖をつくと彼を見つめます。それだけで彼は何故か頬を染めますが、そんなことはどうでもいいです。
「ここからはカウンセリングでもしますか」
「あ、はい」
とりあえず、当たり障りの無いことでも聞きましょうか。時間を潰せればなんでもいいですけど。
「学園に入学した目的とかはありましたか?」
言ってから2年生に対する質問では無かったですねと思っていると、彼の目が輝き、握り拳を作ると高らかに宣言しました。
「俺、彼女が欲しいんです!」
「生まれ変わって出直しなさい」
「ヒデェ!?」
おっと、思わず即答してしまいました。この人……それなりに長い付き合いですがそんな目的があったんですか。
「普通に考えて社会人でやったら裁判沙汰の事をやり続けている男性を彼氏にしたいと思う女性はいないと思いますが?」
覗きやセクハラなんて……ねぇ?
「ぐっ……」
彼は口ごもり、微妙に後ずさりましたが、時計を見るとまだまだ時間がありますね。
「後、女性に向かっておっぱいなどと叫ぶのもいただけませんね。体の一部でしか女性を見てない男性なんてゴミですよ?」
「うっ……」
彼は目に見えて狼狽します。まあ、彼には言いませんが、彼の彼女になれるような奴が居るとするなら淫魔か聖人か私みたいな擦れた奴ぐらいの者でしょうな。
「それから兵藤さんはリンス・トリートメントなどで髪の手入れや、お風呂上がりに肌荒れ予防の化粧水や、ニキビなどに気を使っていますか?」
「い、いえ…特には…」
彼は寧ろそんなのは女の子のやることなのではと言いたげな表情になっています。それを見て私はまた溜め息をつきました。
「あのですね。例えば全く同じ女性が2人いたとします。片方がもう片方より髪が綺麗で、柔らかくハリのある肌をしており、ニキビもありません。どちらが良いですか?」
「え? そんなの綺麗な方に……」
「女性から見た男性でも同じだと思いませんか? 普通に考えて」
「なん……だと……?」
彼は凄まじい衝撃を受けたような顔になりました。普通に考えればわかることだと思うのですが……そこまでは考えが及ばなかったようですね。
「あと、それから――」
「もう止めてください辻堂先輩! 俺のライフはもうゼロです!?」
HANASE。まあ、触れられていませんけどね。あと、20分ほど我慢しなさい。ああ……なんだか少し楽しくなってきました。
◆◇◆◇◆◇
無事、彼への建前上の指導を終え、帰路に着いた私は途中で今夜の夕飯の材料を買い終えて家の門の前にいました。
私の家は街の中心からやや離れた場所に建っているかなり大きめの洋館で、母と私、そして住み込みメイド、元聖女、飼い猫の5人で暮らしています。他人に言うとすれば、意味がわからないだろうなと思いつつ、いつも通り門をくぐり抜け、玄関へ続く30m程の私道へ足を1歩踏み入れ――。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
その瞬間、凛とした声が隣から聞こえてきます。私が横を向くと、メイド喫茶でも攻め気味程度にはミニのメイド服を着て、やや薄目の色をしたセミロングの金髪を、シニヨンと三つ編みでまとめた少女がいました。
ただし、言葉では挨拶をしていても一切頭は下げておらず、口にはソーダ味のアイスバーを加えており、どう見ても主を迎える態度ではありません。
まあ、今さら態度がどうとか言う気もないのでどうでもいいです。よく見ると手に大きなハサミを持っているところから庭をキレイに保つため、選定でもしていたのでしょう。
「ただいま戻りました、アルトリアさん。はい、これお土産のアイスです」
「気が利くな」
そう言うと一応、私のメイドという何か――アルトリアさんは少し嬉しげに私からアイスの入った手提げ袋を引ったくりました。
ちなみに前に彼女にとってメイドとは何かと聞いたところ、規律を守るもの――すなわち軍隊だと認識しているらしいです。根本的にわかり合えません。
また、彼女はかの有名な"アーサー王"の魂を受け継ぐ英雄であり、子孫などでもなんでもなく突発的に発生した個人です。それ故にアーサー王の子孫だというペンドラゴン家やら、とあるテロリストの一派やらに狙われて逃亡生活を送っていたのを偶々私が拾ったという次第ですね。
芯はキチンとした人にも関わらず、性格が歪んでいる原因はそういった生い立ちでしょう。多分、ペンドラゴン家に生まれていれば、それこそ生前のアーサー王のように育っていたのかも知れません。
「アルトリアさんが私が帰る前に仕事を終えてないなんて珍しいですね」
私は嫌みでも何でもなく事実を述べました。アルトリアさんは家事が得意で、仕事もとても速いんです。まあ、料理は苦手で出来上がったモノが大雑把なので、私が家にいるときは私がしているんですけれど。
よって、放課後過ぎの今の時間まで外の仕事をしているのはとても珍しい事だったりします。まあ、広い家をメイドほぼ一人で掃除しているのですから贅沢も催促もしませんがね。
「ああ、午前中に少し気になることがあって調べていた」
アルトリアさんは私が買ってきてアイスの袋をまさぐりながら呟きます。
「"
私はそれを聞いて目の色を変え、少し考えてからアルトリアさんに問います。そのとき、無意識の内に多少の焦りと怒りにより、私の身から蒼色の魔力が少し噴き出していました。
「……目的は家の者ですか?」
「そう慌てるな。だったら既に私が掃除している。この街の神器保有者が目的らしい。だから放っておいた。はぐれなら兎も角、他勢力と事を構えるのは面倒だからな」
「そうですか」
その答えに私は安堵し、噴き出していた魔力は私の中に戻りました。しかし、アルトリアさんはどこか歯切れ悪そうに更に続けます。
「まあ、蛇足だが……」
「なんですか?」
「この街の人間の神器保有者の3人中2人が既に殺されている。」
私はその言葉に目を大きく見開く。そして、こういった事態が想定出来たハズなのに今の今までその対策を怠っていた自分を呪いました。
領地を持つ悪魔の仕事はあくまでも領地の支配と運営。そこに住む人間や神器保有者の保護は職務に含まれませんし、する必要も普通はありません。ちなみに運営とは人間とその他の種族との均衡を護る事です。
この領地を治める同学年のリアス・グレモリーはそんな悪魔にしては珍しく、領民を護ろうとする人間的に言えば人格者であり、悪魔的に言えば三流以下の甘ちゃんでしたので多少は信頼していましたが……やはり経験が圧倒的に足りな過ぎたようですね。
「彼は……」
私はアルトリアさんの両肩を掴み、しがみ付くように迫りました。
「兵藤 一誠はどうなったのですか?」
「ご安心なさらず、最後の一人は彼だ」
「そうですか……」
私はその言葉で全身の力が抜けたような感覚に襲われ、アルトリアさんから離れると額に手を置きました。良かった……彼の最後に見た者が私だなんて笑えない冗談ですものね。
うーん……でも、十中八九堕天使は彼を殺しに来るでしょう。何か対策が必須ですか……。
「ん?」
アルトリアさんを見るといつもの子供向けではない目付きがさらに鋭くなっているように感じられました。ついでに半眼で睨まれているような気もします。
「なんですか?」
「いえ……ただご主人様ともあろうものがなぜ"男"一人にそこまで肩入れするのかと」
なぜか男というところを強調していた気がしますがきっと気のせいでしょう。ですが、彼女の言いたいことはよく理解できました。
「アルトリアさん、学園での私を客観的に述べなさい」
私が眼鏡を直しながら呟くと、アルトリアさんはほぼ即答で口を開きます。
「駒王学園3年にして2年生から風紀委員会委員長を務め、生徒会長選挙では立候補もしていないにも関わらず、現生徒会長である支取蒼那に3倍の大差を付ける票数を持っていたが、本人が生徒会長になる気は無いと明言した事で――」
「いや……自然発生した黒歴史ではなく生活態度や交友関係などを……」
「学園での生活態度は極めて模範的かつ、成績は常にトップ。それらと成熟した容姿から付いた異名は"女帝"。そして異名通り――」
アルトリアさんはそこで言葉を区切ると、小さく嗤ったように見えました。後で覚えていなさい。
「生徒との交友関係は全くといっていいほど……"無"だ!」
「ええ……ええ……! 悔しいですが大体事実です……!」
同じクラス含めたほぼ全ての女子生徒は私を出来る女性の理想像といった目標にするか、本能的に嫌うかの2通りです。
大概の男子生徒はほぼ確実に私と何らかの理由で対面するか会話すると、ガチガチに固まったまま要領の得ない話をした後、早足で立ち去り、私から大分離れたところでやべー、辻堂さんに話しかけられた!とか他の生徒と話して盛り上がるんです。
あなたたちにとって私はなんなんですかと小一時間問い詰めたいところですが、まあ、それも面倒です。私自身そこまで社交的な人間と言えるかと言えば微妙なところですしおすし。
つまり私にとっての異性の知り合い、或いは男友達などと言われる者は兵藤 一誠を除いて他にいないのです。それどころか学校には女友達1人いませんがね!
言ってて悲しくなります……なんなんでしょうおっぱい星人しか友達がいない女って……。
「兎に角、このまま彼が死なれると私は本格的にボッチになってしまうんです」
「惨めだな」
せめて歯に衣ぐらい着せていただきたいものです。
まあ、男を強調していたので、遠回しにアルトリアさんは、私が彼に引っ掛けられて18未満お断りな目に会わされるのではないかと心配なのでしょう。相手が悪名高い人間ですし。本当に根は優しい人ですね……ですが……。
「あのですね。アルトリアさん」
私は確信を得つつ満面の笑顔で呟きました。
「彼は変態に見えますが中身はヘタレです。私を押し倒すような根性があるわけもありません」
本人がいたら胸を押さえてウボァー!とか言いながら膝から崩れ落ちそうですが、そこそこ長い付き合いですので私がよくわかっています。
「左様でございますか……」
「まあ、とりあえずそろそろ家に入ります」
そう言って話を切り上げると、アルトリアさんはまだ庭仕事が残っているそうなので私一人で家に入っていきました。
◆◇◆◇◆◇
「お帰りなさいカトレア!」
リビングに入ると私とどことなく似た20代後半ほどに見える女性が飛び付いてハグしてきました。
「ただいまです。母さん」
母さんの名前は辻堂ヒナ。私を女手一つで育て上げたシングルマザー。わけのわからないまま生き倒れていたところ、昔働いていたスナックバーのママに拾われたのが母さんの最初の記憶だとか。要するに20年以上前の記憶がありません。
異常なほどの力持ちだったため、働いていた時代は率先して力仕事をしていたとかなんとか。購入した
スナック時代に客に見せていた特技は小指1本で握力計の針を振り切れたり、頑張ると蒼い光を出せるとかなんとか。ちなみに辻堂ヒナという名前はそのスナックのママさんから付けて貰ったとのこと。
「うふふ、学校は楽しかったですか?」
「はい、それなりに」
「ならよかったですね」
母さんは太陽のような笑顔で私に笑い掛け、そのまま視線を私が持つスーパーの袋に移した直後、母さんのお腹がくぅーっと音を立てました。
まあ、母さんをどんな人かと一言で言うのなら――。
「今日のご飯はなんですか……?」
なんというか、大きな子供みたいな人です。まあ、実際のところ母さんは記憶が消えたことで、まっさらな素の人格
「カレーライスです。今すぐ作りますから待っていてくださいね」
「はーい」
母さんはいい返事をするとリビングのソファーで目を輝かせながら待つ体勢に入りました。変で子供っぽい人ですがそれを差し引いても母さんは私の大好きな人です。
今の関係を変えたくありませんし、誰にも母さんに手出しはさせません……この世には知らない方が良いことの方が多いんですよ。ね、母さん。
「んー? 何か言いましたか?」
「いえ、何も」
私は学生服の上からエプロンを着るとキッチンに入りました。
Q:なんで投稿やめた! 言えっ!
A:だってツファーメ・テレアク・レヴィアタンさんとか、イングヴィルド・レヴィアタンちゃんなんてキャラ出てくると思わなかったから……(言い訳)。