呼んでますよ、嫉妬さん R   作:ちゅーに菌

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堕天使から護りましょう

 

 

 

 突然だけど、この駒王には三大お姉様と呼ばれる三年生の先輩がいる。

 

 内二人は紅髪の美少女のリアス・グレモリー先輩と、絵に書いたような大和撫子の姫島朱乃先輩。当たり前だが、俺とは一切関わりがあるわけもない人達だ。雲の上の人という言う印象すらある。

 

 だが、最後の一人……というよりも三大お姉様の筆頭の先輩は違う。なんと俺の知り合いなんだ! まあ、向こうがどう思っているかは知らないが……。

 

 名前は辻堂カトレア。

 

 ハーフではなく生粋の外国人で名前の花言葉通り、まるで成熟した大人のような魅力を持っていて、小麦色の肌に暗い金髪、そして赤縁眼鏡がトレードマークの美人だ。うん、先輩の場合、美少女というより美人だろう。

 

 そのせいで本来の年齢よりかなり上に見られる事から彼女にとってはあまり嬉しくはないと本人は言っている。俺としてはそのままでいいと思うんだが。

 

 ちなみにこれも辻堂先輩が言っていたが、身長177cm、B104、W62、H91、体重65~66kgをふらふらと超高スペックだ……凄まじいおっぱいなんだよな……。

 

 さらに風紀委員会委員長を務めており、容姿と話し方も相まって堅物に見えるけど、実際のところはかなり寛容で、モノ凄くざっくばらんな人柄をしている。後、伊達眼鏡で偽眼鏡っ娘だった。

 

 そんな辻堂先輩と知り合ったのは、1年ぐらい前に持ち物検査にエロDVD持ち込んで引っ掛かった事が切っ掛けだ。

 

 "女帝"とか呼ばれているし、当時は実際そうだと思っていたから辻堂先輩に直接指導されると他の風紀委員に言われ、最初は肝を冷やしたけれど、実際会ってみると……その……かなり変わった人だった。

 

 だってお前……最初に1対1の指導を受けた時……辻堂先輩……。

 

 

 

 頬杖つきながら無表情で俺のエロDVDを1人で見てたんだぜ?

 

 

 

 これ以上ないぐらい唖然とするって言葉がピッタリ当てはまる状態になっちまったよ……。

 

 "こういうモノを見たことが無かったので参考までに見させていただきました"だとか……。

 

 折角だから感想を聞いたら――"控え目に言っても7割強は演出ですね"だそうだ。夢を返してくれ……! あっ、でも"でもAV女優が中々美人さんなので、ちょっと興奮しました"とも言っていたな……夢をありがとう!

 

 でも、俺が知る限り最も優しい女性だ。毎回持ち物検査にわざと引っ掛かって会ってるのにいつも会ってくれるし。ざっくばらん……もといとんでもなく辛辣な事はいうけど完全に正論だし。

 

 それに……俺みたいな奴に普通に接してくれるしな。辻堂先輩曰く、"生まれついた性癖はどうしようも無いでしょう。性格が変えられないように死んでも直せませんよ"そう言われて少し泣きそうになったよ……。

 

 まあ、その後――"とは言え、大概の動物すら時期限定で生殖を行いますから節度はしっかり守ってますけどね"だとか……上げて叩き落とされたけどな……。あの人らしいというかなんというか……。

 

 だから、俺にとって雲の上の人って感じは全然なくて……その……好きな女性だったりする。

 

 とは言っても先輩にとってはただの知り合いの一人程度だろうし、今の関係を壊すのもイヤだから俺から何かするわけでも無いんだけどな……。

 

 

そんな先輩が……。

 

 

「一緒に帰りませんか? 兵藤さん」

 

 

 ……校門の前でギャルゲのヒロインみたいな事言ってるんですけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、俺……どこかでフラグ立てましたか?」

 

 校門の前で待ち伏せて彼を見つけたので声を掛けたところそんな返事が来ました。

 

 はてフラグ?  私はただ単純に友人と帰るということをさりげなく実行しているだけなのですが……大体、あなたに立ってるのは死亡フラグでしょうに。

 

 あっ……でもこう言った学生っぽいやり取りをするのは、小学校から遡っても初め――止めましょう。この話題は誰も幸せになれません。

 

「生憎、私はギャルゲのヒロインではないのでそういったモノの実装はいたしておりません」

 

「そ、そうですか……。というか、ギャルゲ知ってるんですね」

 

 は? 私の趣味はゲームですけど? あっ、これまだ兵藤さんに言っていなかったかも知れません。

 

 それはそれとして、彼は考えていたことを見透かされた上、否定されたのか顔を赤くしていました。ちなみに今日彼は覗きで女子生徒にしょっぴかれ、2時間ほど伸びていたため、今は最終下校時間近いので人は全くいません。

 

 彼が下校する時間になるまで、隠れて見守りつつスマホゲーで暇を潰していたのでよく知っております。なんで、私が変態な人間ひとりに時間と労力を掛けて躍起にならなきゃならないんですかね。ぷんすこ。

 

「それで一緒に帰りますか?」

 

 ちなみに彼と帰る理由は単純です。日が傾いた頃から悪魔や堕天使は活発になりますから遅いの下校中は格好の時間ですからね。

 

 また、彼の家の周囲の空間には堕天使が近づくと私に伝わる鳴子のようなものを張り巡らしているので堕天使が入った瞬間に私に知らされ、いつでも転送出来ます。

 

 本来ならば、こんなことはせずにめんどくさいので下級や中級の堕天使なんてぶち殺して終わりにしたいところなんですが、相手が組織なので殺す口実――もとい正統な過剰防衛で仕留めたいのですよ。

 

「帰らせていただきます!」

 

「そうですか」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 と、言うわけで帰ることになったのですが――。

 

「………………」

 

 10分ほど経ちますがこの男何も話して来ません。チラチラと横目で見ては来ますがね。1対1の事務室ではあんなにハキハキと話していたと言うのに…内弁慶ですかあなたは。

 

「あの……先輩って家はこっちの方なんですか……?」

 

「……? もちろん、違いますけど?」

 

「えっ、違うんですか?」

 

「はい」

 

「そうなんですか……」

 

「………………」

 

「………………」

 

 なんか言ってくださいよ……私、そこまで社交的な人間でもないんですよ。どっちかと言えば、休日は外出しないで、家族以外とは会話せず、部屋に籠ってゲームとかしたりしながらゴロゴロして過ごしていたいんです。

 

 そんな中身のないやり取りをしたり、考えたりしている内に彼の家の前まで到着しました。まあ、こうなるだろうと多少は思いましたけどね。

 

 ふと彼の方を見るとなぜか絶望的な顔をしています。自分のボキャブラリーと根性の無さでも嘆いているんでしょうかね。奇遇ですね、私も似たようなことを考えていました。

 

 とは言え、まだ月曜日です。少なくとも事が終息するまでは彼と下校するでしょう。さっさと襲撃してきてくれませんかね、有象無象の木っ端堕天使共め。

 

「また、明日帰りましょう」

 

 そう言うと彼は鳩が豆鉄砲喰らったような顔になりました。まるで、全く予想していなかったようですね。まあ、これまではしませんでしたけど、友達と下校するくらい普通ですよ普通。

 

「は、はい!」

 

 そして、勢いの良い返事をしてきたので私は踵を返し、帰ることにしました。いつものそれぐらい調子のいい兵藤さんの方が私は話しやすくて好きです。

 

 

 

 

 

 火曜日、堕天使は来ません。彼はカミカミですが私に質問を投げ掛けて来ました。私はさながら回答者(アンサラー)です。コジマは出てませんよ?

 

 

 水曜日、今日も堕天使は来ません。彼はしどろもどろですが多少は話すようになりました。なんか彼を見てるとエビゾーくんの成長を見ているような微笑ましい気分になります。

 

 

 そして今日は木曜日。未だ堕天使の襲撃はありません。やっとそれなりにハキハキと話すようになりました。

 

 とは言っても聞いてくるのは趣味とか、休みの日は何をしているだとか当たり障りの無いことですがまあ、最初に比べれば随分成長したでしょう。他にも私と下校していることで、クラスの男子や一部の女子に異端審問に掛けられたとかなんとか。私は悪魔かなにかですか……いや、悪魔ですけれど釈然としません。

 

 そんな中、彼はふと妙に真剣な顔付きでこんな質問をして来ました。

 

「先輩ってその……彼氏とかいるんですか?」

 

「今はいませんね」

 

「今は?」

 

「はい、中学生の頃2度程お付き合いをして、出掛ける程度の事はしましたが両方とも1週間持ちませんでした」

 

 私は男運がゼロに等しいのかも知れませんね。どうにも良い出会いというものがありません。まあ、私は悪魔ですので、寿命も長いですから婚期などは全く焦っていないので恋愛などは適当に考えているせいというのは多分にありますね。

 

 ああ、ちなみに恋人は兎も角、友達がいないと言いましたがあれは学内だけの話で学内でなければいます…………ネットで知り合った女友達が1人ぐらい……。

 

「せ、先輩らしいですね…」

 

 あなたに苦笑される謂れも筋合いも全く無いのですが……まあ、良いでしょう。

 

 そんなことを考えていると歩道橋の階段を上がり、丁度中央部付近に差し掛かりました。ふと周りを見ると人っ子ひとり居なくなっていることに気付き、自然と私は足を止めました。

 

「私思うんですよ。断るには断るなりの理由が必要だと。相手の事を何も知らず、タイプでは無いからや、好みでは無いからなどの表面上の理由で断るのは自分の評価基準が最低ランクな上、相手に対する最大の侮辱に当たると思うんですよね。だから私は告白を受けると、とりあえず付き合うようにしているんです」

 

「え? それって……」

 

  私は眼鏡を直してから再度口を開きます。 まあ、彼からすれば私の価値観はちょっとズレているでしょうね。

 

「それ以前に生憎、私は今のところ異性を好きになったことがありません。だからその人物が好きかどうかなんて付き合ってからしかわからないと思うんですよね。ほら、お見合い結婚なんかは結婚してから晩年になって愛が加速するようですし」

 

「要するに告白されれば誰でも付き合うってことですか!?」

 

「そうなりますね。まあ、母が昔ホステスのような仕事をしており、小さい頃から目にしていたせいか、どうも男女の関係を損得勘定抜きに考えられないんですよね」

 

「は、はぁ……」

 

「酷い女だと思いますか? やっぱり中身も外身も自分が納得した人と結婚したいですから。中身を知るには面と向かって接するしか無いでしょう」

 

「なんと言うか……先輩らしいですね」

 

「灰色の青春で悪かったで――」

 

 そこまで言ったところで私は言葉を止めて彼方に視線を向け、それを不思議に思った彼もハテナを浮かべながら私が見た方向を見ます。空を見れば既に日は大分傾き、夕焼けの空が広がっていました。

 

「どうかしたんですか先ぱ――」

 

 次の瞬間、彼の胸元目掛けて飛んできた光の槍を刺さる直前に片手で掴み取りました。ええ、これぐらいなら大した問題にはならないでしょう。やはり所詮は中級堕天使程度、こんなもの仮に直撃しようともピリピリするぐらいで傷にさえなりません。

 

「えっ…? え"…? えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 目の前で止まっている光の槍を見て彼は目を白黒させていますが、今はそれどころではありませんね。

 

 更に彼に向けて迫る光の槍を私は手で止めていた光の槍を振るい、叩き割りました。それにより、手元の光の槍も砕け散ります。

 

 軽く上級悪魔程の魔力を撒き散らしながら彼と下校すれば向こうが諦めるかもとも踏みましたが……どうやら穏便には行かなかったようですね。もう少し強く見せるべきでした。

 

 その上、光の槍による長距離攻撃とは向こうも考えたようです。こちらから彼女を視認は出来ますが、彼を護りながらでは対処が極めて難しい。こちらは街中で派手な魔法を行使するわけにはいきません。

 

 恐らくは報告にあった中級堕天使でしょう。ただの未覚醒神器保有者を襲うには過剰戦力もいいところです。

 

 魔力を手に集中させて蒼い三又槍(トライデント)を創り、三発目を迎撃するのとほぼ同時に堕天使に向かって投擲しますが、予測していたとばかりに避けられ、カウンターのように彼に向けて光の槍が投げられました。

 

 いやらしい……彼さえいなければこの距離でも6秒あれば片付けられると言うのに……。反応を見れば彼の周囲に他の下級堕天使や、はぐれエクソシストが控えているのでしょう。6秒でも今の彼を殺すにはお釣りが来ますね。

 

「案の定ですか」

 

「うわっ!?」

 

 周囲で光力の反応が増えるのを感じ、彼を地面に倒すと"12枚の悪魔の翼"を解放し、彼を片腕で抱き締めながら檻のように囲いました。

 

 次の瞬間、色の若干違う三本の光の槍や、多数の光力の銃弾が翼に当たりますが、威力が低過ぎたようで私の翼に傷をつけることすら出来ないようです。まあ、一撃でも彼に当たったら大惨事ですがね。

 

「死ねや悪魔ちゃんよぉぉぉぉ!!!!」

 

「なんですかあなた?」

 

「――なぁっ!?」

 

 量産型の光力の剣と銃を持ち、私へ真っ先に襲い掛かってきた白髪の少年を12枚の翼のうち1枚を攻撃に転化させて剣と化して迎撃します。それだけで光力の剣は私の翼に一合も耐えきれず柄ごと弾け飛びました。

 

 それ以外にも近付いてくるはぐれエクソシストを更に翼を攻撃に転化させ、周囲を凪ぎ払う事で近付けないようにしますが、根本的な解決にはなりません。有象無象の人間など殺したところで意味もありませんし、私は殺しを好む質でもありませしね。

 

「はぁ……」

 

 まあ、相手が上級悪魔だと思ってその程度の対策で襲い掛かってきただけでも良しとしましょう。仕方ありません……なぶり殺しにはされないでしょうがここままで彼に被害が及ぶでしょう。

 

「これは最終手段だったのですが……」

 

 私の翼と腕の中で目を白黒させている彼の前に目を向け、飛んでくる中級堕天使の光の槍を魔力の三又槍で弾き、エクソシストたちを死なないように相手をしながら彼に問い掛けました。

 

「兵藤さん」

「え? あ? は、はい!」

 

「あなたからすればこの状況は非現実的にも程があるでしょう。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですからと認めなくとも構いませんし、夢だと思い込もうとも構いません。ですが、少なくともこれは現実です。私がいなければあなたは即座に駒王学園の一般生徒から、喋らない肉塊へとジョブチェンジすることになるでしょう。ですからこの場で選択してください」

 

 顔だけ半分ほど彼に向けると更に言葉を放ちました。

 

「生きたいですか? 死にたいですか?」

 

 彼は唖然とした表情になりながらも声を張り上げ、予想通りの回答をしました。

 

「生きたいです!!」

 

「よろしい」

 

「うわぁぁ!?」

 

 私は彼の身体を背中から抱えるとそのまま空に飛び上がります。

 

 向こうも飛んで追い掛けながら光の槍を飛ばして来ますが、UFOキャッチャーでぬいぐるみを取るように胸の前で彼を抱えているため、必然的に私の背後を攻撃する形になり、縦横無尽に振るう翼によって彼に届くわけもありません。

 

 更に翼の後ろに多数の魔方陣を浮かべ、そこからルナティック顔負けの魔法の弾幕が飛び出します。とは言え、街に着弾させるわけにはいないため、空に向かう角度で放っているので、避けることは容易いでしょう。また、私が上級悪魔よりも上だと確信したとも思います。

 

 流石に不味いと踏んだのか、堕天使達は渋い顔をしながら飛び去って行きました。さて、これでとりあえず今日は大丈夫でしょ……。

 

「せ、先輩のおっぱいが背中に……さ、さっきもおっぱいが胸に押し付けられて……」

 

「へー、ほうほう……座席無し、安全ベルト無し、死亡保障無しのフリーフォールをご所望ですか? 明日の朝刊の見出しはこうですね。空から青年がッ!」

 

「すいません! なんでもありません!」

 

  全く……話には聞いていましたが、本当に他者を巻き込むプロですね。"二天龍"と言うのは……。私は彼が気絶しないように庇いつつ音速の半分ほどの速度で駒王学園の"オカルト研究部"へと向かいました。

 

 こうなったら私のような没落貴族の端くれではなく、本物の貴族様に丸投げです。

 

 

 

 

 






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