「暇」
タイガは半分眠りにつきそうであった。
リオンはそんなタイガを見て溜息を吐いた。
「寝てはダメですよ? 任務や出動命令が来てないからってあまり呑気にならないでください。油断は禁物です」
「いやぁ、別にいいだろぉ? どうせウルトラマンが何とかしてくれるって」
「そこが1番たるんでるところです。隊長も何か言ってくださいよ。新人の前でみっともありませんよ?」
シンジは無言でタイガの頬を軽く叩いた。
「……たるみすぎ」
その口調は冷たく、怒りが籠っていた。
「……流石隊長……」
アカネは少しビビリながらそう言った。
「怖っ……」
セナは小声でそう呟いた。
タイガは飄々としながらも、しかしこう返した。
「事実、結局はウルトラマンがいい所持ってってるでしょ。それにたるみはいまにはじまったことじゃあないし」
さらにタイガはこう続けた。
「だいいち、今の子やれ反戦だ、やれ自衛隊は悪だって反戦教育受けてるじゃないすか? 俺の家のポストにカッターナイフの刃があったこともありますし……俺ら居なくても変わらな」
そこまで言ったところで、シュンはタイガを蹴り飛ばした。
レナはそれを聞いて呆れていた。
「ウルトラマンに頼りすぎも良くないと思う……」
「隊長、お見事です」
「いや、俺じゃなくて新入りくんがブチ切れたんだけど……」
「隊長も叱ったことに感心しているんです。シュン君もお見事です」
リオンはとても褒めてくれていた。母親かな?
「……てかアレ止めろよ」
シンジは呆れていた。
「さっきから黙って聞いていたら変なことばかり言いやがって! こんなバカみたことないぞ!! ふざけるのも大概にしろッッ!!」
シュンはタイガにマウントパンチを浴びせていたのだった。
「蹴って止めても良いですか?」
レナはそう言った。
「軽くですよ?」
「てめぇ、ぶっころ────」
それを言い切る前に、
「ハァッ!!」
レナが軽く蹴りを入れて横腹と溝落ちを蹴った。
「カハッ……」
シュンは蹲った。
「ふぅー……」
「やるぅ〜、レイ」
アカネは笑いながらそう言った。
「ありがとう」
タイガは顔を腫らしていた。
見れば痣も残っている。
「……大丈夫ですか?」
リオンは優しく声をかけてしゃがんで近づいた。
「おぉー、痛え……けどいい禊だったな……」
タイガは細々と言った。
「ありがとう、タイガ」
レナは嬉しそうにそう言った。
「シュン君も任務もないのに怪我とかさせないでください。怪我するのは任務の時だけにしてください」
「……申し訳ありません」
シュンは深深と頭を下げた。
「気にしないでください」
リオンは優しく声を掛けてそう言った。
その時であった。
『K-89-3地区にヒューマノイド型エイリアン出現!』
「! 隊長……!」
「……よし。出動!」
「「「「了解!!」」」」
女性陣は元気よく声を上げて返事をした。
「了解!」
男性陣は相変わらず静かに言った。
そこでは、怪獣王によく似たえりまき怪獣と、ウルトラマンビータが闘っていた。
「ウルトラマン……!」
アカネは驚いた顔をして見ていた。
「また来てくれたのですね……」
しかしシュンは怪訝な顔をしていた。
そりゃそうだ、自分が本物のウルトラマンビータなんだから。
「隊長! あのウルトラマンとあの怪獣に発砲許可を!」
「待て、正気かシュン!」
「絶対にあのウルトラマンはニセモノです、賭けてもいい!!」
「…………隊長、許可を与えてください。私も分かります」
リオンは察したかのように無線で言った。
「……よし。発砲用意!」
ガトリング砲がウルトラマンビータとえりまき怪獣を撃った。
「!! あの怪獣がウルトラマンに化けていたの……!?」
セナは操縦機を手から離さずに驚きながら言った。
「いや違います! 俺の予想では……」
しかし、ニセのウルトラマンビータはえりまき怪獣に立ち向かった。
躰道とはとても思えぬ構えで、えりまき怪獣を蹴り抜いたのだ。
「……まさか、あのウルトラマン……味方なんじゃ」
レンは顔面蒼白になりながらそう言った。
そしてニセウルトラマンビータは、えりまき怪獣に禍々しい光弾をあびせた。
「ですが……あのウルトラマンはニセモノのはずです……何故」
「……予定変更。あのウルトラマンを援護する」
シンジはそう言った。
「ありったけの鉛玉をえりまき怪獣にぶつけろ!」
シンジの叫びに呼応するように、タイガが両砲塔のエイムをし、レンが右の、シュンが左の銃口から鉛玉を高速でぶちまけまくった。
「ちゃんと効いてます!! このまま!」
セナは嬉しそうにそう言った。
「隊長!」
シュンは一つ案を出した。
「……よし、許可する」
「うおおおおい、ウルトラマァアアアアン!!」
シュンの声が爆音となり、ニセビータの耳に届く。
「……何をする気だ?」
アカネは呟いた。
「……?」
「あの怪獣のえりまきを引きちぎれぇ!!」
ニセビータは頷き、えりまき怪獣のえりまきを引きちぎった。
「よぉし! あとは任せろ!」
シュンはそのまま、鉛玉を傷口目掛けてぶちかました。
「……エグい、な……」
「でもちゃんと効いてますので……」
女性陣は多少ビビって引いていた。
「メーサー殺獣砲、発射ァ!」
メーサー殺獣砲のビームと、ニセビータの禍々しい攻撃がえりまき怪獣に直撃。
えりまき怪獣は爆発した。
その直後、ニセビータの体が揺らぐ。その時、シュンの……本物のウルトラマンビータの目は見逃さなかった。
おお、見よ! ニセビータの身体が一瞬、金と黒をあしらった巨人の姿に変わったことを!
「……今のは……」
「帰還しましょうよ」
「ああ」
TEC本部。
「お疲れ様です。皆さん」
リオンは全員に向かってそう言った。
「何とか勝てたな」
シンジはそのあとすこし話し、解散した。
「あのウルトラマン、なんだったんだろうね」
「さぁ、なんだろうな。私にも分からない」
「いや、皆さん分かりませんから……」
「すみません、少し行ってきます」
「? ……分かりました」
「……確かこの辺りに」
シュンは森に足を踏み入れた。そして、人を捜索しているようだった。
「……!? ウルトラマンッ!」
金髪の少女がシュンを見てそう言った。
「……お前が僕の偽物か」
「何か不具合でも?」
シュンはくるりと後ろを向くと、
「……立ち話もなんだ。すこし着いてきてもらうぞ」
そう言った。
談話室では、シュンと先程の少女が話をしていた。
「お疲れ様です。シュン君」
リオンはそう言って隣に来た。
「ああ、どうも」
シュンは笑顔でそう言った。
「……どうしました?」
「いいえ……先ほど1人で何処かへ行ったので、何かあったのかと?」
「……お気になさらず」
「そうですか……でも、ご無理はなさらず……私たちに頼ってくださいね」
「……ええ」
「おやおや? てぇてぇですかな?」
少女は、二人の会話に割って入った。
「!? ……ち、違いますよ……」
「やめてくださいよ」
「えへへ……早とちりでした?」
「おやめください……貴方は?」
「僕はヴェサリウス。しがない旅人です♪」
白々しいぞ。
「はぁ……そうですか。何故ここに? シュン君とお知り合いなのですか?」
「そうだよー!」
「そうなんですか……」
「……さて、ヴェサリウスさん。行く宛てはありますかね?」
「うん! 僕のダーリンがお部屋を手配してくれてるからね!」
「それは重畳」
シュンとヴェサリウスはそう話したあと、黙りこくった。
「……?」
そんな2人を見てリオンは首を傾げていた。
「……ああ、失礼しました」
そうシュンが言った直後だ。
『Y-58-4地区に怪獣出現!』
そんな声がした。
「! シュン君、向かいましょう……!」
「……ええ」
「(今日はいつもより多いですね……でも、怠けてる場合ではない……!)」
リオンは先に戻って準備をし始めた。
その地区には、三体の怪獣がいた。
有翼怪獣 チャンドラー。
冷凍怪獣 ギガス。
そして、どくろ怪獣 レッドキング。
「な、なんでこんなに一気に……!?」
「先ほどのと合わせて合計4体目です……」
「ピギャァアアッ!」
「グゴロォアアア……」
「ヒィイヘェヴゥアウ!!」
怪獣たちはそれぞれ口々に叫んでいる。
「うるさい……隊長、襲撃許可を」
レナは他の機体を指示した方へ待機させて襲撃を待っている。
「無論だ、スカイハイヤーはバルカン砲で、ビッグ・ブラザーは肉弾戦で撃滅したまえ」
「了解!」
言われた瞬間、即襲撃した。
ビッグ・ブラザーはギガスを攻撃した。
ギガスは冷凍光線を口から放った。
「回避……!」
タイミングよく冷凍光線を回避して操作しながら襲撃し続けた。
「グゴロォアアア……!」
ギガスは、そのいかり肩から強烈かつ素早い拳を放った。
「っ! よっと……!」
機体が逆さまになった状態で襲撃をする。回避もタイミングよくできている。
もっとも、ギガスの方に気を取られていたせいで、背後から進撃するレッドキングには気づいていなかったが。
「……! しまっー」
レッドキングの太い尾がビッグ・ブラザーを薙ぎ払う。
「うわぁ! っ……くっ……! (操作が……)」
「レナさん!」
その時だった。
赤い光が二つスパークするや否や、二人のウルトラマンビータが現れたのだ!
「ウルトラマンが……2人?」
「これは一体……」
「……」
「僕も一回はやってみたかったんだ~♪」
「……デェゥア! (やるぞッ!)」
本物のビータはゾフィーに似た構えを取り、ニセビータはラフに構えた。
「! ……(今の声って……)」
リオンは今の声に聞き覚えがあるように感じた。
ニセビータはバb……おっと、ビータスティックを召喚した。
「…………(あの、声は……まさか、先ほどの……)」
「副隊長……!」
「! ご、ごめんなさい……」
「……空爆開始!」
スカイハイヤーから無数の爆弾が投下される。
それはすべてチャンドラーに命中し、チャンドラーの右翼が千切れたのだった。
「よしっ!!」
レナはとても喜んでいた。
「デェゥア!」
本物のビータは手からチャクラムじみた光輪を放った。
アンヘルハィロゥという技だ。
「ウルトラマンって……凄いですね」
リオンは小声でそう呟いた。
「えーい!」
ニセビータの方はレッドキングと互角の戦闘を繰り広げていた。
しかし、レッドキングの尾の攻撃でビータスティックが吹き飛んでしまう。
「あっ────……!」
その直後、ニセビータは尾の攻撃で吹き飛ばされ、ビルの瓦礫に潰されかけた。
「きゃっ……!」
そして、一同は目を疑った。
「…………え?」
「なん……!」
「……は?」
「……nyeh」
「お〜……」
「あら……」
「……すごい……」
「いったた……あっ」
そこにはウルトラマンビータはいなかった。
そこに居たのはババルウ星人。
ニセビータの正体は、ババルウ星人 ヴェサリウスであったのだ!
「あれは……」
「ババルウ星人だ!」
レナは声を上げてそう言った。
ヴェサリウス姉貴、コラボありがとナス!
「……なんという事だ」
ババルウ星人ヴェサリウスは、拳を握った。
「おい、ヴェサリウス!」
ビータがヴェサリウスの脳内にテレパシーを送った。
「攻撃はしてはいけません……あのババルウ星人は……あのウルトラマンの味方のはずです」
「? なんで分かるのですか?」
アカネが無線からそう言った。
「……なんとなく、です」
「……立ちな」
ヴェサリウスにビータは手を差し伸べた。
さあ、反撃開始だ!
「隊長、もう一度襲撃しても……」
「許可する! ビッグ・ブラザーはチャンドラーを狙え!」
「了解!!」
そう返事をし、2人に当てないように移動しながら襲撃をする。
「ピギャァアアッ!」
チャンドラーは、左翼でビッグ・ブラザーを殴った。
「きゃっ……! な、なんのなんのぉ!」
機体のバランスを調整して再度襲撃する。
チャンドラーは残った左翼でビッグ・ブラザーの腹部にラリアットをした。
「うわぁぁぁぁ!」
「リナさん……!」
大きく倒れるビッグ・ブラザー、その直後チャンドラーの右目が潰れた。
スカイハイヤーの放った銃弾だ。
「その気持ち悪い目ん玉、グズグズにしてやるぜ!!」
次いでチャンドラーの左眼も潰される。
チャンドラーは倒れ、蠢いていた。
「きゃっ……! っ!」
不時着をしてなんとか機体から降りた。
「また派手に壊れちゃった……」
ビッグ・ブラザーは半壊していた。
しかし、チャンドラーは既に息絶えていた。
「……私は地上から援護します。ビック・ブラザーの回収は後で頼みます」
「了解です」
どうやら、チャンドラーが死んでいる事に気付いていないらしい。
「ん……? あ、死んでた」
「今更かよ……w」
レッドキングはヴェサリウスに立ち向かった。
レッドキングのその攻撃は、しかし。
「遅い!」
ヴェサリウスの前では、とてもとても遅くお粗末なものであった。
レッドキングはビルとビルの隙間に頭を突っ込んだ。
「ハァッ!!」
グラビティザギ──本来ならばダークザギの放つ技だ──を放つヴェサリウス。レッドキングにグラビティザギがぶち当たり、レッドキングは大きな傷を負う。
その直後、ヴェサリウスはババルウスティックをその手に呼び出し、そのババルウスティックを目にも止まらぬ速度で刺突した。
「ババルウスティンガー」
静かにヴェサリウスはそう言うと、次の瞬間、レッドキングは膨張し、そして爆発した。
「ゼィヤ!」
ウルトラマンビータはギガスを蹴り飛ばした。
そしてガレリオン光線を放ち、勝利した。
哀れギガス。
シュンは一同と離れた場所にいた。
「……フゥ」
そう言って、メビウスという煙草に火を付けた。
「……よう」
黒髪の青年が、シュンに声をかけた。
「アンタは……」
「妻が……ヴェサリウスが世話になったな」
その青年は静かにそう言うと、柔らかい微笑みを見せた。
「いえいえ、こちらこそ……ありがとうございます」
「……フン、ウルトラマンビータ。ヴェサが認めたってことか?」
「さァ、どうでしょうね」
そう言ってタバコを握りつぶすシュン。
「……じゃあな、次会う時は敵かもしれねえがな」
そう言うと、青年は目を赤く光らせ、闇の中に紛れ込んだ。
闘いは終わった。街は派手にぶっ壊れている。
「……また上から色々と言われますね……」
「上司は色々とうるさいから……」
「……あれ、シュンは?」
「……え? あれ? どこへ行ったんでしょう……」
「おーい!」
「あ、この声は……」
叫び声の方へ身体ごと顔を向けた。
「おぉ──い!!」
シュンの声である。
「お〜、どこに行ってたんだ?」
アカネは嬉しそうに笑いながら言った。
「いや、すみません……。途中で事故にあっちゃいましてね……」
それを表すかのように、確かに彼には轢かれたような傷があった。
「え、だ、大丈夫ですか?」
「見てのとおり、もう大丈夫です!」
「それなら……良かったです」
「だからさっきから無線も何も反応しなかったのね〜……」
「……始末書だな」
シンジはそう言って、笑った。
「あはは……仕方ないですね。報告書を出すついでに書いて……全員で怒られましょうか」
「うげ……」
「はは、だな」
シンジはそう言って、ただただ笑ったのだった。
シュンは、あらぬ方向を見ていた。
「? …….どうしたのですか?」
「……なんでもないですよ」
シュンの向いていた方向では、一人の青年と一人の少女が、仲睦まじく歩いているさまがあったのみである。しかし、二人は深い闇に包まれ、やがて姿を晦ましたのだった。
そこには黒洞々たる夜があるばかりである。
「……強く生きろよ、ヴェサリウスさん」
シュンは、誰にも気づかれない声でそう呟いた。
次回
ウルトラマンビータ
『セイデンキニンゲン』
お楽しみに