ウルトラマンビータ   作:りゅーど

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マグメル

 その村には伝説があった。

 曰く、その村には鬼が現れると言う。

 曰く、その村には龍神が住まうと言う。

 曰く、その村には龍神信仰があると言う。

「眉唾物だよ」

 タイガはそう吐き捨てた。

「眉唾物……本当にそうか?」

 隣で聞いていたアカネはそう呟いた。

「でもその村の龍って……何かに似てますよね?」

「……かつてワイルド星人が侵略の尖兵として来た際に搭乗していたナースにそっくりだな」

 タイガはそう言うと、哀しげに笑った。

「はあ、あんなもんなんで崇めるんだか」

「そうなのですか……」

「変な村だね」

 女性陣もタイガの言葉に同情していた。

「そのナースが偶然にも助けたのかな?」

 レナはそう言った。

「十中八九偶然だろうよ」

 タイガは吐き捨てるかのように言った。

「もしくはシンギュラリティに達したかだな」

 レンはそう言うと、空になったペットボトルを握り潰した。

「あ、そういえば……その村で何か起きるみたいですよ?」

「ああ、たしかリゾートホテル開発だっけ」

「やはり村人達は猛反対のようです……」

「だよね〜……」

「神の祟り、ねえ」

「なんか……石碑も持っていかれるとかなんとか……」

「そりゃ祟られますよ」

 シュンは呆れた。

「今でも口論をしているみたいですよ?」

「でも……私たちに関係ある話? ナースが復活とかそういうの起きなければ良いが……」

 その言葉を聞いてリオンは少し考え始めた。

「十中八九なんか起きますよ」

 シュンは悲しそうな顔をした。

「……なら、行くしかありませんよね? 隊長」

 リオンはそう言いながら振り向いた。

「……ああ。TEC特捜班! 出動!!」

「了解です!!」

「了解!」

 

 山奥の限界集落、双騎村。

 人口384人のこの村は、半数を老人が占めている。

 そんな村に、TEC特捜班は足を踏み入れた。

「場所はここであっているようです……」

「うわ〜……あそこで口論会やってるよ……」

 セナが指を指した方向には老人と開発者の人達が口論をしていた。

「ならん!!」

「そうでもしないとこの村終わりですよ!?」

「ならんと言ったらならんのだ!!!」

「うっせぇ老人だなぁ」

 タイガは冷ややかにそれをみた。

「! ……あの石碑は……」

 リオンの目に止まったのは、村の中心部に置いてある石碑があった。

 リオンは詳しく見ようと石碑へ近づいた。

 シュンも同様に近づいてみた。

『龍神様之石碑』

 そう書いてあった。

「……本当に龍の形で掘られてますね」

「ですね。……龍神か、こんなもの神なんかじゃないと言うのに」

 その時だ。老人がシュンの襟首を掴んだ。

「あ、シュ、シュンさん……」

「あっ……!?」

「きさまぁ! 龍神様を嘲弄するでないわ!!!」

 爺に襟首を掴まれるシュン。それをリオンが呆然と眺めていたとき、少女の声がした。

「全くもう、おじいちゃんったら……」

「! あ、あぁ……ごめんなさい……私の隊員がご迷惑をおかけしまして……」

「んにゃ、謝らなくていいよ。おじいちゃんはほんっと過激派なんだから……」

 その少女は、はぁとため息をついた。

「そ、そうなのですか……」

「……あ、あたし『榊 カレン』っていうの。よろしく」

「よ、よろしくお願いします。TEC特捜班副隊長の芥川リオンです。……あの……」

「どうしたの?」

「龍神様って……なんですか?」

「あー……」

「この村の人達は神様として誇られていますが……何故、なんですか?」

「伝説があるんだよねー」

「……伝説、ですか?」

「うん、伝説。なんでも、昔やってきた鬼を龍神が退治したんだって。そして龍神はあの黄金岩になったって。けどまあ、あれどうみてもロボットよね」

「ロボ……ですか。あの石碑、どうするのですか? ここはリゾート地ホテルに変わってしまう土地みたいですが……」

「ん、そうだよ」

 その時だった。

「なら……あの石碑は……ッ!?」

 向こうの方で、大声が上がった。

「……まさかですよね……」

「いい加減目を覚ませ! 奴はナース! ワイルド星人の手先だぞッ!? 神なんかじゃない!!」

 シュンがそう叫び、

「いいや!! ワシらの守り神さまじゃ!! 勝手な妄想で龍神様を愚弄するでないわ!!」

 老人はそう反駁する。そのうち議論はヒートアップしだし、

GOD DAMN YOUR'S EYES(くたばりやがれ)!! この老耄(おいぼれ)が!!」

「この罰当たりめ!! 神罰を受けるがいいわ、この小倅(こせがれ)めが!!」

 罵りあいに発展した。

「……なんか……すみません……」

「あーもう!! おじいちゃん早く落ち着いてよ!! そこの兄さんもDAMN ITとか言わないで!!」

「黙っておれカレン!!」

「うわぁ実の孫に暴言とか引くわァ、これだから老害は」

「なんじゃと貴様ァ!!!」

 無言でリオンはカレンを庇うように前へ出た。

「幼き者に暴言は犯罪でもあります。一度落ち着いてください」

「じゃかましいわ若造め!!」

「ええ加減黙らんかい老害」

 シュンの海老蹴りが老人を(おし)のように黙らせた。

「やめなさいシュンさん!」

「老害は百害あって一利なしなんですがそれは……それに加減はしときましたし」

 のちにその老人が精密検査をしたところなんの損傷もなかったどころかステージ2の胃癌が完治していたことは別のお話。

「……それでもダメですからね?」

「はいはい……」

「全く……あ、そうだ。カレンさん……大丈夫ですか?」

「慣れてるわ、大丈夫よ」

「そうですか……それなら良かったです」

「……さて」

 リオンは落ち着いて石碑をもう一度見てみた。

「……(やはりこの龍は……似ている。だけど……聞いた龍神は本当に……)」

「副隊長……?」

 リオンの表情が気になったかのようにリナは後ろから聞いてきた。

 リオンたちは石碑を見ていた。

『龍神の偶像をここに祀る』

 ただそう書いてある。

「…………不思議……ですね」

「ほんと不思議よねえ」

「……ですが……やはりあの宇宙龍ナースなのでしょうか?」

「……さぁね」

「……ちなみに、これはどうするのですか?」

 リオンはリゾート地ホテルの関係者に問いかけた。

「ここはけっこう空気がいいからねぇ。それに土地代も安い」

「リゾートホテルに改装さえすればこの村も発展しますよ、きっと」

「……でも、バチが当たりますよ」

「神罰なんてないですよ」

「その石碑、動かすのですか? 何故か……地盤が少しズレています」

「地盤のズレ……ですか」

「まるで動かしたかのように……」

「副隊長の目は凄いだろ〜?」

 自慢するかのようにアカネはリオンの隣に立った。

「やめてください。アカネさん……」

「……あれ」

 シュンは空を見上げた。

「……え?」

 リオンの言葉と一緒に全員空を見上げた。

「一瞬光ったような……」

「光の反射じゃないのですか?」

 その時であった。

 ズシンと地面が大きく揺れた。

「ッ!? まさか、ですよね……シュンさん」

 そこに居たのは巨大な鬼。

 全員がその姿を疑った。伝説が、現実となって今現れたから。

 伝説にも記されていた鬼、幻呪鬼(げんじゅき)であった。

「……戦えますか、シュンさん」

「はい……行きましょう」

「私が援護します。隊長……許可を」

「許可する。ビッグ・ブラザー起動! テックビートル緊急発進! 行くぞ!!」

「了解!!」

「了解! すぐに起動させます!」

「了解です! カレンさんは皆さんを連れて避難してください」

 

『呪イ殺スノダ……』

 低い声が村を揺るがした。

「……呪い?」

「もうどうでもいいだろう! 撃て! 撃てェ────ー!!」

「了解!!」

 スカイハイヤーからミサイルが発射され、ビックブラザーは頭上から殴ろうとする。

 さらに増援としてのテックビートルからは焼夷弾の空爆を行い、そしてそのうえでテックビートルはアバディウム弾頭弾を発射した! 

「効いてる!? 空中からだとよく見えない……!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」

 機銃掃射、そしてミサイル発射!! 

 現代兵器が鬼を襲う!! 

「効いてます……! 流石に現代兵器というのは予想外のようです」

 地上で戦っていたリオンは無線で伝えた。

『オノレ、人間風情メ……』

「人間を襲うあなたに口ごたえはさせません」

 リオンはそう言いながら銃を放ち続ける。

 鬼は日本刀を取り出した。

 その名も『童子切安綱』。かつて酒呑童子を斬り殺し、その後紆余曲折を経て呪鬼(のろいおに)が持ったと言われる刀である。

「ッ……日本刀と銃ですか……」

 銃を構えたままタイミングを見張る。

 その瞬間、テックビートルは墜落した。

 童子切安綱がテックビートルを切り落としたのである。

 シュンは痺れを切らしたのか、ウルトラマンビータに変身した。

「あのテックビートルが……切れた……」

 リオンはあまりの驚愕にその場で唖然としてしまった。

 ビータはテックビートルを地面に優しく置くと、鬼の顔にドロップキックを浴びせた。

「……!」

 リオンは一瞬でパワードバルタン星人へ変身して鬼に突撃した。

 鬼は童子切安綱を振るおうとした。

「はぁ!」

 その持つ腕をハサミで挟んだ。今にも斬りそうだ。

 鬼は冷静にパワードバルタン星人を蹴り飛ばした。

 その直後、ビータは背後から鬼の金的を蹴った。

「ッ……グッ……!」

 パワードバルタン星人はもう一度突撃をした。

 鬼は動じずにビータを蹴り飛ばし、パワードバルタン星人をビータの方に押した。

「え!? っ……!」

 ビータに勢いよくぶつかる。

「すみません……」

「ジュッ……」

 ビータは許すというかのようにうなづき、その後こう呟いた。

Damn it(くそったれ)……」

「……ごもっともです。せめて、あの刀だけでもなんとか……」

「あああああああああの鬼!! ミサイル放ってもまだピンピンしてるぅ! 私の攻撃を喰らいなよぉ!」

 空中からセナは叫んでミサイル攻撃を続けた。

「冷静になれ!」

 シンジはそう命じた。

「ッ……すみません隊長」

 セナは深呼吸をして冷静を取り戻した。

 悪戦苦闘……まさに今の状況だった。

 その時だった。

 金色の何かが、鬼を縛り上げた。

「!? アレは……」

 パワードバルタン星人だけじゃない。全員が鬼を見た時と同じ、目を疑った。

 金色の龍。

 宇宙龍 ナースである。

「ナース!? なんでここに!?」

 アカネは大声を上げて言った。

「耳、イッタ……」

「……鬼が……苦しんでます」

「少なくともここじゃあ神として崇められてる。てことは擬似的な神格を得たってことじゃねーの?」

 と、タイガは怠惰な口調でそう言った。

「そんな奇跡、あるんだね〜……」

 レナは操縦を辞めずにそう言った。

「隊長……これは味方と判断してもよろしいですか? 今なら……チャンスです」

 パワードバルタン星人はそう言った。鬼が縛られてもがいているこの間、トドメを刺すことができる。

 しかし鬼はナースを振りほどいた。

 その時だった。

 ビータはナースをぶん回した。

「ロープ扱い!?」

「一応、本来は敵ですからね……」

 そして、ナースは勢いよく鬼を縛り上げた。

 ビータは無言でガレリオン光線を照射した。

「ワーオ……やっぱりロープだ」

 アカネは笑いながらそう言った。

「言ってる場合ではありません……! 隊長! トドメの許可をお願いします!」

「全砲門!! 撃てェ────ー!!」

「了解!」

 全員が一斉に返事をした瞬間、ビック・ブラザーとスカイハイヤーからはトドメのランチャー。

 パワードバルタン星人はバルガン砲を放った。

 鬼はその攻撃を受け、消滅した。

「よし……! 任務完了!」

「伝説は、本当だったんだ……」

 ビータは無言で空へと飛び去った。

 パワードバルタン星人はその場でリオンへ戻った。

 

「……バチが、当たりましたね」

 リオンはリゾート地ホテルの関係者に睨みながらそう言った。

「……開発中止、か」

「ほれみろ! 余所者が手を出すからこうなるのだ!! 死んでしまえ!!」

 ある老人は、猟銃を取り出し、関係者を撃とうとした。

「やめなさい!! その銃を今すぐ下ろしなさい。銃刀法違反で逮捕しますよ?」

 リオンは前へ出て庇った。

「それとも……またバチが当たりたいのですか?」

 それを見咎めたかのように、シュンはその老人の頭に強烈な蹴りを浴びせた。

「鉄拳制裁────────老害はさっさと首吊って死ね」

 あまりにも無慈悲であった。

「あ……だからやり過ぎですよ」

 リオンは呆れていた。

「ですが、この村は龍神様がいるのは証明されましたね。この村は神様に守られています。きっと、この村は復旧できますよ。開発ではなくて、復旧として協力するのはどうでしょう?」

 リオンは少し笑いながら関係者に向かってそう言った。むしろ『やりなさい』という鋭い睨みで訴えていた。これはした方がいい。

「任せておけ、その程度なら朝飯前だ」

「丁度資材もありますし、設計変えて立派な神社に仕立てあげよう」

 そんな議論をしている一方で、天高くからはナースの鳴き声が響いた気がした。

「龍神様を司る神社…………私は賛成です。他の皆さんは?」

 リオンはそう言いながら空を見上げた。

「……あのナースが神様なんて驚きましたね。シュンさん」

「ええ。十人十色……反省しなくては」

「それと無慈悲に他人に暴力を振るうことも反省してくださいね? CET特捜班として情けないですよ?」

 後ろでは全員がクスクスと笑っていた。まるで説教されている息子と説教をしている母親のように見えるからだ。

「あーはいはい、あれに関しては指導ということでなんとかひとつ」

 見苦しい言い訳である。

「やり過ぎです」

 リオンはキッパリと言い切った。正論でもあるからだ。

「ですよねぇ」

 どっと笑いが起こった。

「全く……」

 リオンは呆れながらも笑っていた。

「シュンは相変わらずだね〜」

「ちゃんと反省しないと隊長の鉄拳を喰らうよ?」

「もしくは反省文だね」

 リオンの後ろからレナ達が揃いも揃って言っていた。

 無論、シュンの頭に痺れを切らしたシンジのカカト落としが綺麗に決まったことは言うまでもないだろう。

 

 暫く日時は過ぎた。

「この村はなんとか安定しているそうです」

 新聞の記事を全員に見せるように広げて指を指した記事にはあの村のことが載っていた。

「お! あの龍神様の石碑、綺麗になってる」

「なぁ、なんか鬼退治の銅像とかいうモノがあんだが……」

「あ、これかな?」

「……なんか、鬼がリアルだな」

「てかこの銅像……」

 その銅像には、スカイハイヤー、テックビートル、ナース、パワードバルタン星人、鬼、そしてウルトラマンビータが美しく刻まれていた。

「……黒歴史になりそうだ」

 シュンは複雑そうな顔をした。




次回
ウルトラマンビータ
『ネロイズム』
お楽しみに
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