今から何百年も前の話だ。
戦国時代、錦田小十郎景竜という侍がいたそうな。
その侍は、巨大な龍を討伐し、封じたそうな。
その龍は、今も『龍塚』に封印されているそうな……。
「というお話を見かけたんですわ」
と、シュンは言った。
「はぁ……あの村の龍神様とは違った形ですね」
リオンは書類の整理作業をしながらそう言った。
「今回はタタリ神だからね」
「それって……一種の怪異みたいなもの?」
後ろからレナが不思議そうに言った。
「きっとそうだよ」
「……また厄介なことにならなければいいが……」
「その話……怪異ならば今現在はどうなっているのでしょうね……呪いとかそういう災いは起きてないのですか?」
「多分そーだろうけど……嫌な予感がする」
シンジはそう言うと、ひとつため息をついた。
「……多分、みんな思っていることだよ」
アカネは椅子に座りながら呆れた顔をしながらそう言った。
「…………しばらくは任務とかが無くて問題ありませんでしたが……油断は禁物ですからね」
「だねぇ」
「でも任務とかの連絡がない限り、ここでゆっくりしていようよ」
「……まぁ……それもそうですね……」
その頃、龍塚では。
白髪で左目を隠した背の低い少年が、謎の機械を持って立っていた。
「龍塚に眠る龍よ、その恨みはらさでおくべきか……。今こそ僕と一緒に全てを滅ぼそう」
その声に反応するかのように、龍塚ではうなり声がした。
「……僕と君が、これで繋がれたね」
『緊急事態発生! 緊急事態発生!』
「……まさかのフラグ回収、かよ……」
アカネはまた呆れた顔をしながらそう言った。
「言ってる場合ではありません……! 緊急事態なら向かいましょう……!」
「TEC特捜班!! 出動!!」
「了解!!」
隊員全員が大きく返事をした瞬間、あっという間にその場からいなくなって各自の持ち場に入った。
その頃である。
龍塚の近くの集落では、その白髪の少年が暴行に逢っていた。
「……? 喧嘩でしょうか?」
リオンは先に到着をしてその場から傍観していた。
少年はただ甘んじてそれを受け入れていた。
どうやら慣れているようだ、しかし彼の手にはなにやら見慣れぬものがある。
「……なにをしているのですか? 喧嘩はダメですよ?」
リオンは我慢の限界のようで前へ出てきた。
「あぁ? 白いゴミなんて価値ねぇだろ?」
そう言うと、暴行の主犯は笑った。
「……彼が何かしたのですか? それに今あなたがやっていることは暴行罪です。彼が問題を起こしたとしても……犯罪ですよ?」
「こいつは忌み子なんだよ! 真っ白で気持ち悪い!」
「……私は……綺麗だと思いますが」
「お前も異教徒か!?」
どうやらこの村、名を悴谷村というのだが、頭がいかれているようだ。
「……異教徒とは? 私は彼の見た目を見てそのまま答えたんです。後、この村で何かあったみたいなので私は仲間と一緒に来たのですが……」
リオンは冷静になったままそう言った。村の名前を見た時は驚愕をしていたが……
「白髪に赤目! どう見ても邪なる何かだろう!!」
「(この人たち、イカれていますね……隊長達はもう着くと思いますが……)」
リオンは完全に呆れてしまい、その場でため息を吐いた。
「……なんという有様だ」
到着早々、レンはそう言った。
「あ、ようやく着いたようですね……私はあの白い髪の青年を綺麗だと思っているのですがね……」
「とりあえず、なぜ通報した?」
「……そうです。何故、私たち……CET特捜班を呼んだのですか?」
「龍塚が大きく損傷したのだよ!!」
「龍塚……とは?」
「かつて村を襲った龍を封じてある塚じゃ……」
「……! (龍を封印してる……塚……ならこの場所は……)」
リオンは基地で龍塚のことについて話していたことを思い出し、その場所がここだということに気付いたようだ。
「……というか、何が起きたんですか?」
「……怪異……ですか?」
『流石にそれないですよね……』と思いながら聞いてみた。
「龍塚が跡形もなく破壊されたんだよ! あれが壊されたら終わりなんだ!」
「……そ、その……壊されたら……どうなるのですか?」
「封じられた龍が甦ってしまう……」
「あ……」
リオンは思わず声を出してしまった。何か不吉な予感と……基地で聞いたあの話が本当なら不味いと予測したからだ。
その時だった。
「くく……」
白髪の少年が笑ったのだ。
「……どうかしたのですか?」
リオンは側まで寄って声をかけた。
「はははははは!!!!」
「ッ……!? あ、あの……?」
「ざまあないね!! いままでボクにしてきたこと、全て返してあげるよ!! 憎悪の力でね!!」
白髪の少年は、謎の機械を天に掲げた。
「……!? (あの機械から感じるこの力は……)」
「いけぇっ!! 我が偉大なる神よ!! フェニグァーッ!!」
『バトルナイザー! モンスロード!』
「レイブラット……!? シュン君……!」
あのことに関してはリオンも知っていた。ならシュンも、と思いながら名を呼んだようだ。
「レイオニクス……っ!?」
ここで、レイオニクスについて軽く説明しておこう。
レイオニクスとは、レイブラッドという怪獣使いの力の一片である。
バトルナイザーで怪獣を操り、戦うという。
「まさか、こんなところにレイオニクスがいるなんて……彼もレイブラットの遺伝を……」
「……レイオニクスかよ、めんどくせぇ!」
「ははは、暴れろ!! 暴れろ!!」
「彼を止めないといけません……! 他の皆さんはここから避難してください!」
しかし、住民は動けなかった。
フェニグァの念力である。
「ッ……強いですね。あの動きを止めればなんとか……」
フェニグァは、まず村長の息子を狙った。
火球が高速で村長の息子を……暴行の主犯を狙い、その直後、辺りが燃えた。
「あ……! ……ッ……彼を止めないといけません……! それとあのフェニグァを……!」
その瞬間、空中から無数の弾丸が降り注いだ。
フェニグァ向けて、スカイハイヤーが撃ったのだ。
「どうよー! このスカイハイヤーの威力は!!」
セナは当たったことの喜びで大声で叫んだ。
しかし、フェニグァは全く意に介していない。
そのゲル状の皮膚が弾丸を貫通させ、村民を殺していく!
「や、やめなさい!! ……ッ……!」
リオンは見ていられずパワードバルタン星人となって白髪の少年をハサミで叩いた。
白髪の少年は揺らめいた。
そして、音もなく消えた。
「え……!? まさか、幻覚……?」
その直後、パワードバルタン星人の背後から衝撃が走った。
「ッ……!? な……!」
即座に後ろを振り返った。
そこには白髪の少年がいた。
「偉大なる破神さまの命を帯びて、貴様を殺すのだ。どうせ君もボクの事を笑っているだろう?」
もう正気ではない。
「……私は……笑ってません。それに……私も人じゃないから誰かに見られたら笑い者か嫌われ者ですよ……」
なんとか落ち着かせようと話をする。
「破神さまはボクにこう囁かれた。全てのものを破壊せよと。憎悪を持てと!」
それと共に、少年はパワードバルタン星人を蹴り飛ばした。
「ッグ……! ……ッ……(この少年……力を完全に操っている……どうすればいいのでしょう……)」
その時だ。
「ビィイイイイタ!!」
シュンが光に包まれて、ウルトラマンビータに変身をとげた!
「ウルトラマン……(彼が、あのフェニグァを抑えてくれれば……彼もなんとか止めれるはず……!)」
「シュワッ!」
フェニグァに拳を打付けるビータ、しかしその身体は透き通り攻撃は掠った。
「ジュッ!?」
「!? (あの少年も同じ力を使っていた……あの力は……透明化? いや、蜃気楼?)」
パワードバルタン星人は完全にフェニグァの動きに集中してしまっている。
「てい!」
少年はパワードバルタン星人にタックルをしかけた。
「しまっ……グッ!」
完全に油断してしまい、そのまま吹き飛んで壁に激突した。
「ッ……ウグッ! (つ、強い……あの動きと力を見極めることができれば……どうすれば)」
「シュゥワッ!」
そう叫ぶと、ビータはウルトラスラッシュでフェニグァを攻撃した。
左腕が切り裂かれ、猛烈な腐臭と無数の蛆が漂った。
「なにあれ!? 気持ち悪っ!!?」
アカネは思わず叫んでしまった。
「ッ……? (効いてる……? ですが先ほど透き通ったはずですから……)」
「つまり、フェニグァの弱点はウルトラマン達の光の力か!」
その時である。
「イッギャァアアアア!!!!」
少年が悲鳴をあげた。
見れば、少年の腕は斬られていた。
ちょうど、フェニグァの左腕と同じ位置から先が落ちていたのだ!
「まさか……!! ウルトラマン……! 攻撃をしてはいけません! 彼が……!」
パワードバルタン星人は察したかのように少年に駆け寄った。
「でぃあ……っ!」
ビータは狼狽した。
「(とりあえず止血をしないと……)」
人間体に戻り、急いで手当てを始めた。
「大丈夫です……私がなんとかしてみせます……」
「ど、どうするのこれ……」
ビックブラザーを操作しながらレナは慌てた口調でそう言った。
龍も少年の魂は一心同体のようなもの。これ以上攻撃したら少年の命が危ないからだ。
その時、タイガにある考えが浮かんだ。
「……人柱だ!」
「人柱? そんなのがどこかにあるのか……?」
アカネが答えた。
「ようは生贄だ……つまり、この悪習まみれた村民の魂を喰わせて満足させてやるしかねぇ!」
「いや、魂のリンクを斬るのが先決やで」
「魂のリンクを切る……大丈夫なのそれ? 下手したらなんか暴走とか起きそう……」
レナが少し不安げにそう言った。
「てか生贄は1番危険だ……」
「魂のリンクを切れば弱体化するはずだ!」
「んで、そこに荒御魂に餌をやると」
「……隊長……その作戦でいくのですか?」
「ああ……」
「なら……やるしかありません。生贄の対象者には申し訳ないが……やるしかない」
無線でずっと聞いていたリオンは、なにも言わず……酷く落ち込んでいた。それでも少年の腕を治し続けていた。
「っ、やめろ!」
念動力を駆使し、パワードバルタン星人を突き飛ばそうとする少年。
その裏では、フェニグァとビータが押しあっている。
「ッ……! それ以上、攻撃をしてはいけません。止血をした意味が……無くなります……」
ビータはフェニグァの動きを念力でとめた。
「だから……落ち着いて、ください……ッ」
自分の頭部から血を流しながらも少年をなんとか落ち着かせようと少しずつ近づいている。
少年はもがき、足掻いてパワードバルタン星人を殺そうとした。
その時だった。
ひとりでに左腕が動いた。切り落とされた左腕がだ!
「ッ!? 手が……動いている……?」
その直後、少年の切口にぴたりと切り口が吸い付いた!
「!? ……な、なにをしたのですか?」
「わ、からない……」
その瞬間、無数の魂が吸い込まれていった。
「……まさか……!」
リオンは勢いよく顔を上げて空を見た。
フェニグァが魂を食ったのだ。
そして、バトルナイザーはいつの間にか消えていた。
どうやらビータの下敷きになったらしい。
「う、ウルトラマン……!?」
「……ジュッ」
「だ……大丈夫ですか?」
「……っ」
「ッ……(もう、終わらせないと……彼との魂は分裂したはず、ですよね……?)」
「かえしてよ! かえしてよ、ボクのバトルナイザー!!」
ビータは首を横に振った。
「あなたの復讐は……私たちが終焉させたんです」
「いやだ!! ボクは殺したいんだよ!!!」
リオンは無言で少年の顔に勢いよくビンタをした。
「っ……!?」
「復讐をしたって無意味です。あなたがこれ以上、闇に堕ちるだけ……あなた自身を見失うだけです」
「そんなのただの妄想だ!!」
「妄想ですか? 私は……そう思いません。私だって……あなたと同じなんですから」
「嘘だッ!!」
「嘘ではありません……」
その時だ。
「魂のリンク切断を確認!」
そんな無線通信が入った。
あとはビータの独壇場だ!
「了解です……! (後はお願いします……ウルトラマン!)」
「シュワッ!」
光を付与した回し蹴りがフェニグァを吹き飛ばし、光を付与した肘鉄がフェニグァの腹を抉る!
光弾がフェニグァを撃ち抜くや否や、メーサー砲がフェニグァの頭をぶち抜いた!!
「……終わり、ましたね」
しかし、フェニグァはまだ生きていた。それを視認したビータは、ガレリオン光線でフェニグァをついに滅ぼした!!
「……シュワッキ!」
「あ、本当に終わりましたね」
「はぁー……今回のはいつもより苦労した……」
レナは深呼吸をして気を落ち着かせた。
「後は……あなただけですよ」
リオンはそう言いながら目を見つめた。
少年は虚ろな目をしていた。
「もう……終わりにしましょう。私があなたを認めているのですから……」
ゆっくりと近づいて声をかけた。リオンの目は真剣な眼差しだった。
少年は舌を噛もうとした。
「やめなさい……!」
リオンは慌てて噛もうとした口を強引に開けて止めた。
「このような手荒な真似はしたくないのですが……やめなさい」
「……なんでさ」
「あなたには、今後のチャンスがあるんです。私は、あなたの雪のように白く綺麗な髪と情熱を持った赤い目が綺麗だと思っています」
「こんなの、化け物の象徴じゃないの?」
「そんなことありません。あなたは神に愛された子なんです。化け物ではないです。あなたはただの……人間です」
リオンはクスッと笑った。その後ろでは他のみんなも安心させるように笑っていた。
「私はその目が好きだよ」
アカネは笑いながらそう言った。
「あんた、まだ未来あんだよ? 煙草吸ってみろ、ぜーんぶラクに」
「未成年者喫煙禁止法ゥ!!!」
「私も、その赤い目がこれからを導く情熱を持った目だと思うよ」
「白い髪も宝石のように綺麗でいいと思います」
「うん、とても綺麗でカッコいいよ……!」
「くたばる前に未来見ようぜ?」
「そうです……あなたはこれからも壁に押されて負けるかもしれません。ですが……あなたは少しずつ前へ出てその壁を砕けると思います。頑張ってください」
「……壁なんて砕けるわけないよ」
「……砕けますよ。絶対に……私だって、本当の姿を隠して過ごしてきた。その分、バレたときの壁に押されて毎日怯えてました。ですが……彼のおかげで私は自分の本当の姿でもここにいて良いと分かったのです。
だから……あなたも砕けます。なにがあろうと、抗うのですよ」
「……無駄」
そう言うと、少年は銃をひったくった。
「あ……! 私の銃!」
そして、自身の頭を撃ち抜こうとした。
「やめなさい!!」
リオンは取り返そうと前へ出た。
その時、シュンが少年の腕を蹴った。
「シュンさん……」
リオンは慌てて銃を拾って取り戻した。
「……無駄なら、その無駄から逃げればいいのですよ。自分の反逆の意志堅固です」
「叛逆? 無理だよ」
「甘ったれんな馬鹿野郎」
「そうだよ。今から諦めたって後々後悔しても知らないぞ?」
「叛逆なんて簡単だよ。今までのことを忘れてしまえばあっという間……!」
「忘れるなんて」
「今この場にさよならすればいいんじゃない?」
「……サヨナラ、か」
そう言うと、少年はどこかからか灯油を取り出してきた。
「あ、私……余計なこと言っちゃった……かも」
レナは口を押さえながら少し震えてそう言った。
「まさか……!」
「……こんな村、きえろ」
そう言って、彼は灯油を撒き散らし、村を燃やした。
「ッ……! (燃える速度が速い……?)」
燃え尽きる村で、彼は笑った。
そして、その日、ひとつの村が地図から消えた。
その後の話だ。
「……本当に、これで良かったのですかね……」
少年は全身火傷だがなんとか一命を取りとめたようだ。
住民に生存者はいなかった。
「わ、私が……あの時……余計なことを言わなければ……」
「レ、レナ……大丈夫だ。あの少年は生きているんだ。だからお前は悪くない」
アカネはなんとかレナを落ち着かせようとしている。
「そもそも元から生存者ゼロだぜ?」
タイガはそういうと、レナの肩を軽く叩く。
「! ……そ、それはそうだけど……」
「それに、アルビノ差別のある村なんて遅かれ早かれ死んでたさ」
「そ、それは……流石に言い過ぎではありませんか?」
「うーん……でも一理ありますね」
リオンの横からセナがそう言った。
「ただでさえ差別差別やかましい世の中だ、どうせパヨクに物理的に燃やされてたさ」
「そうでしょうかね……」
「ああ、そうさ。ただ、少なくとも一人は救えたろ? それでいいんだよ」
「……そうだね……」
レナは理解したかのように落ち着いてきた。
「にしてもレイオニクスか」
「……あの事件に関しては私も存じていましたが……まさか今回このような感じで見られるとは思ってもいませんでした……」
「……ウルトラマンでレイオニクス、そんな奴は居ないだろうなあ」
ヘッドハンティングするのに、とシンジはため息をついた。
「もし……いたらどうします? 流石に敵と判断してしまうのですか?」
「……一時的にメンバーに加えておこう」
「……例え、あの少年のように悪のやり方で使用してたとしても……ですか?」
「……きっと、そのウルトラマンは悪にはなりきれないはずだ」
「……その通りですね。私も、善として使用していると願っています」
その頃、悴谷村跡地。
「ギキィイイイ!!」
ピット星人の操るエレキングが吹き飛ばされていた。
悲しい金切り声がして、その直後、エレキングは倒された。
「戻れ、ゾアムルチ」
その青年は右目を黒髪で隠していた。
紫の飛行帽を被り、赤のジャケットを着ていて、そして手にはバトルナイザーがあった。
「……俺のいた地球ってこんなんだったか?」
その青年の名は諸星慎太郎。そう、我らがウルトラマンアバドンである!!
次回、ウルトラマンビータ。
『オートファジー』
お楽しみに。