ウルトラマンビータ   作:りゅーど

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パスカルビーツ

 都内某所。

「……ふん」

 黒髪の青年が、かつてのビータの闘いを眺めていた。

「無駄が多い、これはあいつに教育が必要そうだな」

 その青年は、手を虚空に掲げた。

「行け、ガルベロス」

 

「ゴズュィイイイイ!」

 ガルベロスの登場である。

 スカイハイヤーたちは別の鎮圧に向かい、闘えるのはビータのみ。

「ビィイイイイタ!」

 シュンは、ウルトラマンビータに変身した。

 ガルベロスは分身をした。

 ビータは身構えた。

 三体のガルベロスは、それぞれ目を輝かせながら走り出した。

 ビータは、三人に分身した。

「「「ゴズュィイイイイ!!」」」

「「「ジュワッ!」」」

 しかし、地上から見ているタイガはある事に気付いた。

「ビータの分身が二体いる訳だが……一体何と戦ってんのかねえ」

「それは……私も同じです……」

 リオンは同情するように答えた。

「てかそもそも、どこから怪獣が湧いたの?」

「……まさか」

「……何か気になることがあるの?」

 レナは問いかけに続けてそう言った。

「……黒幕が居そうなんだよなぁ」

 慎太郎はそう言うとアバドストライカーに搭乗した。

「黒幕……あり得ますね」

「その黒幕がまだ近くにいるなら探せないかな?」

 リオンは慎太郎の言葉に便乗して、レナは操作をしながら探せるかどうか問いかけた。

「……いや、普通に難しくないか? 黒幕が人間に化けた星人とかなら分かるが……」

 アカネはそう言った。

 その頃のウルトラマンビータである。

 ビータは虚空の、しかし実態のある幻覚に向けて光弾を放っていた。

「(ウルトラマン……ビータ……何か、動きがおかしい)」

 リオンは何かに気づいたのかビータに向かってマッハストライカーを移動させた。

 マッハストライカー。

 慎太郎がCETにいた頃の記憶を元に再現した、リオン専用機である。

「(まだ操縦が慣れませんが……動きやすいですね。いいえ、そんなこと言ってる場合ではないです……)……ビータ……」

 空中から戦わずにビータの動きを見ていた。

「ジュッ……!」

「ゴズュィイイイイ!!」

「ゴズュィイイイイ!!」

「ゴズュィイイイイ!!」

 三体のガルベロスに苦戦するビータ。

「ッ……! (これが……これで!)」

 マッハストライカーを操作して援護するように銃撃でガルベロス一体に当てた。

 そのガルベロスは本体であった。

「これが……本体ですね」

 リオンは操作してミサイルを当て続けた。

 ビータはそれを見て、その本体目掛けて光の剣をぶつけた。

「ッ……! (ビータの動きが……まさか……ビータはずっと……幻覚に?)」

 リオンは思わず操作をしないで考え込んでしまった。

 ビータは本体を掴むと、ガレリオン光線をゼロ距離ではなった。

「ッ……あ……!」

 リオンは慌てて上に上がって離脱した。

「(あのガルベロス……何か、おかしい……)」

 その瞬間、ガルベロスは消えうせた。

「消えた……!?」

「え!? 本当ですか副隊長……!?」

 アカネは驚きのあまりに無線で聞いてきた。

「……総員待機しろ」

「了解です」

 全員、周りを警戒をしながら待機をした。

「隊長……気配もなにも感じません……」

「撤退したの……ですかね?」

 慎太郎から離れたところで待機したままのリオン達は周りを警戒しながら操縦を続けていた。

「……いいえ、その可能性はまだ分かりません……」

 その日はビーストが出ることは無かった。

「はぁ〜……変なの〜……」

 

 その頃だった。

「……見つけたぜ」

 慎太郎はアバドストライカーから降りると、黒髪の青年の前に立った。

「はぁ、まさかこうも早く見つかるとはな、流石だぜ、ウルトラマンアバドン」

「お前がなぜここにいるかは聞かん……だが、この国に絶望をもたらすならば切るぞ……ダークザギ!」

「やってみろ、アバドン」

 

 翌日の事だ。

 はぁ……と溜息を吐きながらリオンは書類整理などをしていた。

 昨日の件をまだ考えているように見える。

「……まさかスペースビーストとはな」

 災難だ、とシンジは呟いた。

「……そうですね。私も災難だと、思い込んでいます……」

「変だったね……」

「……まさかな」

「……何か心当たりがあるのですか?」

「……暗黒破壊神が降臨したのやもしれん」

「え? ……まさか、あの……ですか?」

「副隊長、知っているのですか?」

「私の故郷でも有名でしたからね……」

「……ダーク、ザギ」

「ッ! やはり……」

「ソイツ……どんなやつなの?」

 アカネは驚かずに聞き返した。ダークザギのことを知らないせいか余裕な気持ちがあるようだ。

「……奴は、かつて自身の星と、自身の製造者たちを破壊した。そして、スペースビーストたちを隷属させたんだ」

「!? なんてやつだよ……ッ」

「なんでソイツが……ここにいるの!?」

「……狙いはおそらく…….ウルトラマン……ビータ、じゃない?」

「……多分な」

「……なら、命懸け、ですね」

「……やるしかない」

「私たちがビータを援護してダークザギを倒せばいいんだね」

「ビータって……大変だよな。命がけで怪獣と戦って……苦しくないのかな?」

 今レナが言った言葉にリオンはゆっくりとシュンを見た。

「……たぶん、悔しいけど。俺達にはダークザギは倒せやしないよ」

 シュンは緩く首を振った。

「え!? な、なんでそう言えるの……!?」

「……シュン君……」

 リオンは少しだけシュンの言葉に同情してしまった。それほどダークザギが強いのはリオンも聞いたことがあるからか、同情してしまったのだ。

「ダークザギは強い」

「……それは、ウルトラマンよりってこと?」

「並のウルトラマンなら瞬殺」

「ッ……そんなに強いのか」

「でも、ビータだって強いじゃん……! 並じゃない! ちゃんと地球を守っているんだから戦ってくれるよ!」

 その言葉に思わずリオンは後ろでクスクスと笑っていた。

「無理だよ。ダークザギには……コラボ先には勝てない」

 メタいぞバカ。

「……ですが、ウルトラマンビータが無理なら……他のウルトラマンに頼るしかありませんよ?」

「……ウルトラマンノアでしか無理だ」

「……あのウルトラマンノア、ですか……」

「……ウルトラマン、ノア?」

「……神のようなウルトラマンです」

「へぇ〜〜! カッコいいねそれ!」

「そんなウルトラマンも存在するんだ〜……」

「……ウルトラマンにも……種族みたいなのがいますからね」

「……」

 慎太郎はようやく戻ってきた。

 体には無数の傷がある。

「え……? 慎太郎、さん……」

「どうしたんだその傷は!?」

「……ダークザギと交戦した」

「なっ……!? あ、あのダークザギとですか!? し、慎太郎さんは変身できないはずでは……」

「……人間体……?」

「ああ。人間体で闘いやがったよ」

「ダークザギが人間体、ちょっと気になるが……そんなこと言ってる場合じゃない……」

「医務室に行った方が良いよ……」

「(ダークザギが人間体……なら、あのガルベロスはダークザギが……!?)」

「大丈夫よ、美味いもん喰えば大抵治るから」

「流石は超回復能力のウルトラマンアバドン……」

 慎太郎に向けて、シュンはそう言った。

「あら……凄いですね、慎太郎さん……」

「だけど……それでも無理しない方が良いと思う……」

 慎太郎は既にカロリーメイトを食っている。

 食う度に傷が消えていくのがみてとれる。

「こんなに食べてよく太らないよね〜……」

「そして回復力凄っ……」

「……このカロリーメイト、そんなに美味くねぇな。……メシ食いに行ってくるわ」

 慎太郎は消えた。

「アイツどんだけ大食いなんだよ!?」

 アカネはつい言ってしまった。

「ま、まぁまぁ……アカネさん落ち着いてください……」

 シュンはこう言った。

「慎太郎は一日に6万キロカロリー取らないと死ぬからな」

 場が凍りついた。

 

 さて、何時間か経過した頃だ。

 不意に、モニタに何かが写った。

「……! 皆さん、モニターに……」

「聞こえているか、人間ども」

 黒髪の青年が映っていた。

「うわっ……誰だコイツ。電波ジャッチして映してるのか?」

「……ッ!?」

 リオンは口を手で押さえて胸を押さえるように掴みながら驚いていた。

「ふ、副隊長……?」

「電波ジャック、だな」

「……さて。俺の名はダークザギ。お前らの闘いは見ていられん、だからお前らに稽古を付けてやる」

 黒髪の青年はそう言った。

「妻が……ヴェサリウスが認めた相手と聞いていたが、ガッカリだ」

「…………オダブツですかね?」

 リオンは思わず声に出して言ってしまった。てかなんで知ってる? 

「ダークザギだ!」

 ザギは鋭く睨みつけた。

「あ、すみませんでした……」

「副隊長、謝らなくていいですから……」

 レナは即座にツッコミを入れた。

「ったく、日時は明日の朝、全員戦えるようにして来い、いいな!」

 ザギはそう叫ぶと、モニタから消えた。

「……いい人なのか悪い人なのか……」

「よくわかんねぇ……」

「はぇー、平行世界のザギはこんなフランクなのか」

 シュンはそう言うと、拳を握りしめた。

「……やるのですか?」

「当たり前だ」

 かくして、ダークザギ率いる暗黒軍団VSウルトラ軍団の組手が始まろうとしていたのだ。

「……ようは宣戦布告ですかね?」

「副隊長、そんな言い方……まぁ、気持ちはわかりますが……(てかあの副隊長がやる気があるなんて珍しい……)」

 慎太郎は挙手した。

「……(この人は傷だらけになりながらもあのダークザギを痛めつけた人……それなりに案があるのでしょうね……)」

 リオンは即座に察した。

「……(このおっさん、なんでもやるな)」

 アカネは地雷ではないと思うが怒らすことを考えていた。

「俺が元いた世界でもダーク系列の奴らはいた。ダークメフィストとダークファウストだ。おそらく三体目はダークメフィスト・ツヴァイだろう」

「多いな!?」

「そんだけいるという事さ」

 地獄だ、と慎太郎は呟いた。

「地獄……ですか。ですが、やることは変わりませんよ……」

「……全力をもって叩き潰せ! いいな!」

 シンジはそう叫んだ。

「了解!」

 一斉に返事をした。

 戦いの準備と覚悟は出来た。

 あとは、明日を迎えるだけだ。

「……(私は……まぁ、その時次第で準備しておきましょう)」

 リオンは寝ずに残りの仕事をやり遂げていた。

 策があると思うが本人にも何か考えているようだ。

 

 翌日だ。

「……んぇ……」

 リオン、案の定仕事をやり過ぎて寝不足となった。

「副隊長……ご無理しないで」

「……行くぞ」

 シンジは静かにそう言った。

「了解!」

 

 指定された場所に一同はいた。

「……この気配は……」

「どうせアイツですよ……副隊長」

「よう、TECども、眠れたか?」

 ダークザギ、その人間体である。

 リオンに関してはなにも言えなかった。いつも通りに身体を動かせるから問題ないが……

「……ダークザギ、ですか……」

「ああ」

 ダークザギはそう言うと、一同をある部屋に連行した。

「……この部屋は?」

「嫌な予感……」

 そこにはリングが3つあった。

 どれも人が使うサイズだ。

「リング……なるほど、そういうことですね」

「思った以上に組手で草」

「己の拳で戦うってこと? 武器とかはなし……?」

「……どうでしょうね?」

「お前らは己の拳で戦えないだろう、だから、テレイグジスタンスロボットで戦って良い事とする。ただし! 闘えるのは代表者一名だ」

「……1人、だけ……ですか。(誰かなのかは予想つきますが……大丈夫ですかね)」

「最も強いであろう諸星慎太郎、いやウルトラマンアバドン! お前はこっちのリングだ、極真ルールで行う」

「ふーん任せな、空手は大得意だ」

 慎太郎は既に道着に着替えている。道着の左胸に刺繍された『聖道』の紅い二文字が純白の道着によく映える。

「あ! 空手なら私も!」

「控えなさい……レナさん」

「お前らの中で格闘術に秀でたものを一人出せ」

「格闘術……」

「……私は蹴り技なら得意分野だけど……」

「……よし。レナ! 出動命令だ」

「了解です!!」

「その伝道スーツを着ろ」

 ザギはそう言った。

「スーツ……これ?」

 言われた通りに伝道スーツを身につけた。

「……動きやすい……?」

 試しに回し蹴りをして動きやすさを確認している。

 それと同時に、テレイグジスタンスロボットも動いた。

「ロボ……コイツを倒せば……ッ」

 そう言ってレナは拳と足を構えた。

 その頃、シュンは既にビータに変身していた。

「……(ロボか〜……いつもと違う蹴り技じゃないと難しいかな?)」

「レ、レナ……! 無理さんじゃないぞ!?」

「分かってるよアカネ……いつも通りにやるよ」

 その時だ。リングの上に、闇の戦士たちが姿を見せていた。

「えぇ!? な、なにあれ!?」

「……禍々しいこの闇の力……闇の戦士……です、よ」

 テレイグジスタンスロボットのいるコートにはダークファウストが。

 慎太郎のいる所にはダークメフィストが。

 そしてビータのいる所にはダークメフィスト・ツヴァイが。

「……ッ……油断も隙もできない状況と相手だ……2人なら勝てるかもだけど……私は……」

「レナ……」

「……」

 闇の巨人達は構えた。

「……さぁ、試合開始だ」

 カァン! とゴングの音が鳴った。

 

 まずはダークファウストVSテレイグジスタンスロボットの試合である。

「ッ……やるしかない……!!」

 レナは素早く足を出して構えた。

 ダークファウストは、仁王立ちのまま睨めつけた。

 レナはその場から動かずに周りの確認していた。

 リングにはなにもないはず……

「……!」

 レナは即座に左へ走り出した。

「砕け散れ、フン!」

 ダークファウストは光弾を放った。

「よっ! はぁっ!」

 光弾を避けた瞬間、しゃがんで脛を蹴った。

「(効果がなくても……私には出来る!)」

「ぐっ……」

 ばっ、と大きくバク宙し、ダークファウストはそこからかかと落としをした。

 即座に立ち上がってそのまま回避。

「油断大敵!!」

 そのまま勢いよく腹蹴りを3連続した。

「ぐッ」

 一撃は当たった、しかし二撃は外れた。

 ダークファウストはスピードタイプだ。

「ッ……(動きが早い……その動きに反逆するのは難しいかも……なら……)」

 リング内を走り回って背後に回る。

 ダークファウストは後ろ蹴りを放った。

「鉄拳成敗!!!」

 拳ではないが……左右に避けて飛んで両足で吹き飛ばした。

「ぐあぁっ!!」

 ダークファウストは大きく吹き飛び、リングロープにもたれかかった。

「ちゅーもーく! 喰らいなさい!!」

 リングの端に立ち、そこから飛んで膝蹴りでトドメを刺した。

 ダークファウストの脳は膝蹴りにより揺れた。

「よし……! (このまま起きなければ私は終わり……!)」

 しかし、ダークファウストは立った。

「技あり!」

 どこかからそんな声がした。

 3秒以上蹲ってなどいない、極真ルールに則ったまでである。

「ッ!? まだダメか……!」

 レナはその場からもう一度走り回った。

 ダークファウストは構えると、中段前蹴りを放った。

「!? きゃっ……!」

 少し油断したのかギリギリのところで避けてその場から自分が回し蹴りを放った。

 ダークファウストは避けた。

「ヤバイ……!」

 そして、ダークファウストは肩へのカカト落としを食らわせた。

「グゥッ……!」

 回避失敗。直撃してしまい、足はまだ動けるが片腕の肩が動かせなくなった。

「(ヤバイ……ピンチだ。まだ足が動かせるから平気。私は拳だと無理だから……どうしよ……)」

「砕け散れ!」

 ダークレイ・ジャビロームが放たれた。

「ッ……!」

「レナ!!」

 ダークファウストは余裕そうな表情を見せた。

「……!」

 レナはその光線をそのまましゃがんで回避した。

「仕留めた!!」

 180°の開脚で両足の脛をヒビが入るくらいの勢いで蹴った。

「なっ……ばか、な」

 

 脳 震 盪

 

 レナ、一本勝ち。

「はぁ……はぁ……よ、よし! イッ! (肩が……でも1本ならマシね……)」

 痛めた肩を抑えながらリングから出ようとする。

「レナさん……!」

 リオンは駆け寄ってレナの肩を確認する。

 テレイグジスタンスロボットの衝撃は、モロに入っていた。

 圧覚超過なんてない。痛覚の衝撃というもののせいで、脳が認識バグを起こしたのだった。

「動かない……なら私の勝ちだね」

「骨は……ヒビが入ってます。今なんとか固定しますね」

「ありがとうございます……副隊長」

「残るのはウルトラマンビータと慎太郎……ですね」

 

 ウルトラマンビータVSダークメフィスト・ツヴァイに移ろう。

「(ビータ……あなたなら勝てると、私は信じてます。あんなこと言っても諦めないの分かってますから!)」

 リオンは心の中でビータの勝利を強く願った。

「ジャァアアッ!!」

 ダークメフィスト・ツヴァイはまるで野獣のように襲いかかった。

 ビータはそれをいなすと、子安キックで対抗した。

「味な真似を」

 ダークメフィスト・ツヴァイは野獣のようにとびかかった。

「……ッ……(アイツの力は強いですね……私は……いや、ダメだ、ルール違反となります、よね……?)」

「ふ、副隊長……! 包帯巻きすぎ……です!」

「え!? きゃあああ! ごめんなさい!!」

 そんな叫び声などつゆ知らず、ダークメフィスト・ツヴァイとウルトラマンビータは組手を繰り広げていた。

 武器の使用を認められた特別ルールの中、ビータはメフィストクロー相手に苦戦している。

 幸い、大振りなので回避は容易かった。

「(あのメフィストクローは……ビータでさえ押してる。ビータが押されて……ピンチ、どうすれば……私も戦えますが、あれは……あの姿でしか……)」

「副隊長……?」

「ぐっ」

 ビータは回し蹴りを放った。

 ダークメフィスト・ツヴァイの肝臓に深深と突き刺さる。

「大丈夫か? ウルトラマンビータ……」

「……大丈夫ですよ。彼が諦めることなんて……まずあり得ません。もし、ピンチなら……私も出たいと願ってますよ」

「ふ、副隊長が……!?」

 しかし、それは叶わぬ願いである。

「…………ビータ……」

 リオンは呟いた。

「ジュッ」

「ジャァアアッ!!」

 一進一退、その時だった。

 ビータの逆突きが、胸骨に入ったのだ。

「あ……」

 リオンはその攻撃が目に入って口を開いたまま呟いた。

「ガフッ」

 ビータは、一撃のもとに倒したのである。

 

 さて、慎太郎とダークメフィストに視点を移そうか。

「フン!」

「ディシャア!」

 互いに互角の鍔迫り合いである。

 下段回し蹴りの応酬かと思いきや慎太郎の膝蹴りが鳩尾に入り、かと思えばダークメフィストの肘打ちが慎太郎の腕を襲う。

「……慎太郎は、なんとか押している……か?」

「いいえ、今はダークメフィストが押してます……ですが、慎太郎があんな奴に負けるはずがありませんよ」

「フン!」

「シャッ」

 おそらく、並の選手では歯が立たないだろう。テコンドーなんて以ての外だ。秒で倒れる。

「流石、慎太郎さんですね……」

「私でもあの動きは難しいよ……凄い」

「せぇらぁ!」

 慎太郎の肘鉄がダークメフィストの肩にぶち当たる。

「あ、終わったか……?」

 しかし、ダークメフィストは生きている。

 互いに楽しそうに組手をしているのだ! 

「……そら、痛てぇだろうがよォ、苦しいだろうがよォ……こりゃお前、相ォ────当幸せだぜ、ありゃ……」

 タイガはそう呟いた。

「……怖っ……」

「でもだから組み手が楽しいんだよ……!」

「レナ……興奮しすぎだ」

「ヒャハハハハハハ!! 楽しいなぁ!!」

 慎太郎はそう叫びながら殴っている。

 ダークメフィストも笑みを浮かべている。

「あの2人の戦い……エグいな」

「エグい、というか怖い……」

「お二人とも、もうちょっとお静かに観戦ができないのですか? お気持ちはわかりますが……」

 実質、リンクの外でずっと話し続けている女性陣だけだった。

 両雄の肉体────

 既に疲弊を通り越したままである。

「ガッファ」

 痛みの上に、積み重なる痛み。

「ぐっ……」

 疲労の上に、積み重なる疲労。

 幾層も、幾層も、幾層も、幾層も……。

 その時だった。

「……!」

 慎太郎の目がカッと見開かれた。

「(まずい、このままじゃ抑えきれない……! 『獣』が……!!)」

 ダークメフィストは勢いづいた。

「ガフッ……(そんな事されたら、お前がお前の体を成さなくなる……! 生かして返せない……!!)」

 それを見て、シンジはこう呟いた。

「……出しちまえ、(そいつ)を」

 次の瞬間、慎太郎はダークメフィストの突きにキレた。

「(祈りやがれッ! ダークザギにも! 仲間の闇の巨人にも! ウルトラマン達にも! 神国日本に御座す神々にも! そして……ベリアルにも! 見せてやる! 俺みたいな人間体で、どこまで獣に────)」

 殴りかかったところに、ハイキック一閃。

 瞬間、慎太郎の意識は刈り取られた。

 どっ、と膝を着き、前に倒れる慎太郎。

「(あれはッッ)」

「(確実に)」

「……起きない」

 格闘技を知るものならば、絶対にわかる。

 この倒れ方をしたものは────

 

 絶対に、起き上がらないのだ。

「なっ……!?」

「嘘……」

「慎太郎が……」

「…………」

 リオンは何も言わずにその光景を見つめたままだった。

 そう、常人なら起きない。

 しかしだった。

 

 慎太郎は、次の瞬間、

「……押忍」

 跳ね起きていた。

「嘘だろ!?」

「カウントもされずにッッ」

「コンマ秒で立ち上がりやがった!?!?」

「えぇ!? なんで!?」

「あの技なら普通なら起きないはず……!?」

「一瞬倒れて、すぐに起きたよ……」

「…………あの人は……普通じゃないのですよ。あの人は……超人のウルトラ戦士なんですよ」

 ようは『人外』と言いたいようだ。

「……」

 ダークメフィストは、ニヤリと笑った。

 慎太郎は、ただ仁王立ちするままだった。

 ダークメフィストが拳を放つ。

 慎太郎の顔にめり込む。

「(勝っ────)」

 ダークメフィストが確信したその瞬間だった。

 慎太郎はその腕を掴むや否や、左脚を首にかけ、右足で顔面目掛けてひざをかます。その瞬間、信じられない光景があった。

「……やはり超人という人外ですね」

「副隊長……今日なんか辛辣ですね」

 慎太郎の蹴りが、皆の目にはまるで虎が口を開いているかのように見えたのだ。

 虎が勢いよく噛み砕くかのように、慎太郎は膝蹴りをダークメフィストにぶちかます!! 

 そして、ダークメフィストの関節を取り、叫んだ。

「押忍!!」

「あの動き、完全に……テコンドー以上なのでは?」

「え? どういうことだレナ……?」

「極真空手……ねぇ」

 途中でルール無用になったことはさておいて。

「あれで……もう終わるのですかね?」

 慎太郎は疲労困憊であった。

 判定は勝利であったが、その直後に先程と同じ倒れ方をした。

 ビータも……シュンも同様に倒れていた。

 体力切れだ。

「お疲れ様です……お二人とも」

 

 数時間経過した。

「レナさんはしばらく無理なさらないでくださいね……」

「わ、分かってますよ……副隊長」

 レナは攻撃を喰らって片方の肩の骨にヒビが入ってしまい、固定してもらったようだ。しばらくは上手く腕を動かせないだろう。

 慎太郎とシュンは昏睡状態である。

 シュンはメフィストクローの斬撃で体に大きな傷が残っている。

 慎太郎は完全に気を失っているようだ。

「2人はどうする?」

「……運んで基地に戻るしかありませんね」

「運ぶって……男性陣に担いでもらうの?」

「それしかないと思うけど……」

 タイガたちは慎太郎たちを担ぎ、基地に戻る事にした。

 その後ろから女性陣がついていく。

 1番最後にリオンが歩き、戻る途中で後ろを振り返って何かを感じたかのように見つめた。

 ダークメフィストたちは既に回復していた。

 何事も無かったかのように。

「……もう、来ないでほしいですね」

 リオンは呟いてその場からいなくなって帰還した。

「……(次は、私も戦いますよ……私だって、ウルトラマンの敵でも、戦えますから)」

 その決意は、多分届いてないだろう。

 しかし、いずれはそれが『響く』結果に繋がるはずだ。

「……グトゥアク」

 その時、慎太郎は、弱々しく呟いた。




次回
ウルトラマンビータ
『ポッピンキャンディ・フィーバー』
お楽しみに……
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