1万文字には届きませんでしたが、それなりに書いたつもりです。
騎士達が忠誠をこの決定的な結果に捧げている中で、文官の並ぶ我から見れば右側の者の中の1人が口を開き
「龍歴石が選んだとはいえ、少々人選に問題があるのでは。」
と、強い語気で迫る。
(...一眼でわかる。この輩は完璧な階級闘争に吠えているのだ。)
一般庶民から出る、しかも育ちもよくなく、言葉遣いも環境によって異なるフェルトの王選参加に対して、
完璧な《奪う側》と《奪われる側》に当たる貴族と庶民の階級闘争が見て取れた。
どこにでもあることだ。この場合は文官である貴族の方が少々武が悪いが。
なぜならば...
「我々騎士団が、人選を見誤ったと?」
と、騎士団長マーコスの声かけに応じて、武官である騎士達が一斉に文官に対して牽制の如く目を傾ける。
武官 文官との対立は本当にどの世界線でも絶えぬのだなと感じる。
「な、なんか不穏な空気になってきてるぜ...。」
前の方にいるスバルもこの雰囲気を感じ取り、眉間にシワが寄っている。
「ま、俺は気にしねーがな。」
アルデバラン...先ほど騎士と呼ばれていたが、この格好でも騎士なのだなと驚きを感じる...彼がそう言うと
「フェリちゃんもなんともないにゃ...
なぜなら、フェリちゃんの忠誠はもうたった1人に捧げちゃってるわけだしぃーっ。」
と、前に立つフェリックス騎士が中央の4人のうち、緑色の髪をしたいかにも軍人という彼女 クルシュ侯を見つめながらいう。
「私も同じ気持ちだよ。既にアナスタシア様に剣を捧げている。」
さらに前に立つ紫色の騎士 名はまだ聞いていないスバルとどうやら因縁の関係にある彼が話す。
その言葉に反応したかのように、やはりスバルもエミリアの方を見つめながら決心を固くしたようだ。
「時に余は思う。...互いの忠を尽くす事を。」
助言程度に、能動的なスバルへの世迷言を伝える。
「おほぉ〜、中々カッコいい格言だにゃぁ〜。」
それにフェリックス騎士はよく反応するものだ。
「貴官にそう言われても、何も嬉しみが湧かないがな。」
そう私が付け加えると、
「にゃはぁ...プリシラ様の従者は素直ではないにゃぁ...。」
と、項垂れる。
なんなのだ、この生き物は...。猫のような人、人のような猫。
私にはこの世界の常識は見当もつかんが獣人、とでも名付けておくか。
「その者には王になるだけの器がない。」
「品も低く、教育も足りん。」
「まったく、なんて輩を連れてくるのだ。」
文官達の貴族が様々に当のフェルト嬢に愚痴を零し始め、騒がしくなるが
「静かに。」
と、賢人会の先ほどの髭の長い長老が戒める。
彼はやはり国内でも相当な地位にあるらしい。文官達は黙り込んだ。
王不在の中でも国家運営を担う者ゆえに、当然か。
「騎士、ラインハルト。御身が、まず彼女を見出した経緯を聞かせてもらえますかな...?」
と、その長老は真剣な眼差しでラインハルトに問う。
ラインハルトは跪き、美しいとさえ言える格好で
「フェルト様はおよそ一ヶ月前、貧民街の一角で保護いたしました。」
と、彼女がなぜ育ちが悪いのかの理由を公表した。
(なるほど、それもそうか。一般庶民よりも国家指導者達への目が余りにも酷い眼差しだ。)
敵意すら感じるフェルトの目から、彼女を一般庶民と感じることに限界をきたしていた我は合点を心内でつかせた。
「貧民街の浮浪児だとッ...!?」
すると、その事実を捲し立てるかのように、そして顔を真っ青にしてあり得ない事実に顔を歪める文官の貴族達。
「浮浪児で悪かったな!勝手に連れてきたのはお前らだろーがッ!」
当の本人 フェルトはこの理不尽極まりない状況に怒り散らす。
「いつまでもうだうだとつまらん話ばかりじゃ。
まぁ、そんな話しかできぬゆえに貧民街で浮浪児などをやっておったのじゃろうが。」
と、突如プリシラ嬢がフェルトに対して挑発行為に打って出た。
あのお嬢は何を考えているのか。
いや、何も考えてはいない。そう見て良いだろう、ただ興に乗るか乗らんかという彼女の趣味だ。
「あぁ?喧嘩売ってんなら買うぞ。」
と、フェルトもそれに応じる。
とは言っても少し
「図が高い。妾を誰と心得る?」
と、プリシラが我の気持ちを代弁する。
そうだ、図が高くもあるが、売られた挑発行為の買い方にも問題ありの直球のやり方だ。
そのやり方にどうこう言うつもりはないが。流石貧民街の浮浪児ともいえる。
すると、プリシラ嬢は少し閉じていた足を開き、戦闘に備え始めた。
「うわ...姫さん、ソイツは...。」
いくら従者でもアルデバランは流石に躊躇するようだ。
そして、プリシラ嬢は自身が持つその扇子を翳し、フェルトに振りかぶろうとした時
ラインハルトが間に入った。
彼が彼女らの間に入ると、プリシア嬢が振りかぶろうとしていた扇子は空気中で何らかと摩擦し、抵抗し合い止まった。
「失礼します、プリシラ様。」
ラインハルトがフェルトの盾として護衛を果たす。
「...こんな大事な場所で、何を考えているの!?」
と、エミリアも流石にこの喧嘩に声を荒げる。
「躾のなっていない雌犬に、立場というものを教えてあげようとしただけじゃ。」
と、プリシラも引き下がりながら事を堂々という。
「ごめんなさいって、言えないのッ?」
エミリアが率直に要求するが、
「ならば、お前の場合 “ 生まれてきてごめんなさい ” ではないのかのう。
銀髪のハーフエルフ...。」
彼女も口では食い下がらない。
事を荒立てでも、この女 プリシラ嬢は王選の為にも他の候補者への評価を地に叩きつけたいようだ。
「ぇ...ぁ...私は魔女と関係なんて...。」
と、エミリアはその容姿を揶揄されたことに気づき嫉妬の魔女との関連性を否定する。
「ギッ...!あの野郎...。」
スバルも彼女への侮蔑に耐えれなくなってきている。
「姫さん、そこまでにしておいてくんね...あんま敵増やされても困んだよ 俺達ぃ...。」
と、アルデバラン...言うのもながったらしいので省略して、アルも流石にここまでの事は望まないみたいだ。
「全員、お気は済みましたかな?」
長老は長いこと生きてきたのだろう。
こんな状況にも動じずに議事を進めようと促す。
それに応えるかのように騎士団長マーコスが
「では、王選候補の皆様は こちらへ。」
「プリシラ・バーリエル様と、その従者。」
マーコスが名を読み上げる。
「王選など無意味じゃ。妾こそ王に相応しい。
貴様らはただ妾に平伏し、付き従うだけでよい。」
プリシラ嬢は自身あり気に言う。
(...そこまで自身の指揮能力に自身があるなら、
たしかに我々はもはや何も考えずに従えば国は豊かになるかも知れんな。)
とは言え、性格には難ありだ。喧嘩っ早さは指導能力よりも挑発を目立たせる。
「カルステン家当主 クルシュ・カルステン侯と、その騎士 フェリックス・アーガイル。」
マーコスがもう1人、あの緑色の髪をした彼女の名を読み上げる。
(...フェリックス騎士はあの方の従者だったか。)
「私が王になった暁には、これまでの竜との盟約は破棄させてもらう。
親龍王国ルグニカは龍のものではなく、我等のものだ。」
クルシュ侯が答弁をする。
(...なるほど、竜車などは見たが、まさか親龍とまで言われる国だったとは。)
龍との結びつきが深い国家ではあるが、彼女は龍を邪険に扱うと言った。
まだまだ話は深そうだな。
「ホーシン商会法人 アナスタシア嬢と、その従者 騎士 ユリウス・ユークリウス。」
団長が説明する。
「ウチは欲深やから、なんでも欲しい。
商売でいくら成功しても満たされへん。
ウチは、ウチの国が欲しいっ。」
と、アナスタシア嬢は高らかに言う。
商売に心酔した女...わからなくはない。
この自由経済体制において、他国や他の勢力から経済的な搾取を成功させれば
それはそれは国家を超えた一大勢力へと成るだろう。
だが彼女はそれを商会としてではなく、国家指導者としての経済第一主義を求めている。
商人の真正とも言えよう女だ。
「エミリア様と、その推奨人 ロズワール・エル・メイザース辺境伯。」
次の、やはり女しかいないが、その女 エミリアは名を呼ばれる。
「私の望みは一つ。
ただ公平である事。すべての人が公平である事を望みます。」
そういうと、彼女は深くお辞儀した。
公平・平等・博愛...どこかで聞き覚えがある言葉だな。
先ほど貧民街から出てきたフェルトという女がいたが、あの様な貧富の差はどの世界でもどの時制でもいる。
そしてその貧民街はこの国の失政を表している。
職に迷う者がいるのは必要な場所へ必要な労働者を雇わないからだ。
貧しい理由は、働く場所を与えられないからというのが最もな理由だ。
ゆえに、この国には強力な指導者が必要なのだ。
思想的に解読すれば、この女 エミリアは
ホーシン・アナスタシアやプリシラ・バーリエル嬢、そしてクルシュ侯とは真っ向から真逆である。
所謂自由主義者というものか。
悪くはないかもしれないが、そのイデオロギーはホーシン商会による自由商業の名の下、労働者に対する圧政を許す事になる。
エミリア嬢よ、君はそれをわかってなお公平を望むか。
心内で色々と思案していると、議事は進んでいた。
「そしてフェルト様とその騎士 ラインハルト・ヴァン・アストレア。」
マーコスが最後の5人目の後継者を名乗り挙げると、
「待てよ。
私は王になるなんて言ってねぇかんな!
誰が王選に出るかよ!」
やはり、理不尽な扱いから故か、怒りと共に声を発するフェルト嬢。
「つまり...フェルト様は王候補を辞退なさると...?」
マーコスが恐る恐る聞くと、
「ッたりめぇだ、くそッ。」
フェルト嬢は自制の聞かないジャジャ馬の様だ。
「戯言だっ!!これまでは非常時ゆえに見逃してきたが、ここまで来れば話にならん!」
先ほど難癖をつけてきた貴族文官が吠えると
「まったくだ。浮浪児を候補者に取り入れようとするアストレア家も、半魔を推薦するメイザース伯にもッ。」
賢人会の中の別の初老の方が言う。
「ハーフエルフを半魔、などというのは 悪しき風習ですよ。」
辺境伯がその侮蔑に答え返す。
が、その賢人はエミリア嬢への侮蔑の目を続けて
「銀髪の半魔のハーフエルフとは、嫉妬の魔女の容姿そのものではないか。
本来なら玉座に入れる事すらも憚れるというのをなぜ理解できんのだ。」
と、捲し立てる。
前に立つスバルもかなり頭にきている様だ。
さらには当人のエミリア嬢でさえ顔を顰めている。
「汚らわしい。」
賢人の最後の 戯言 これだけはスバルも耐えれなかった様だ。
「ふざけてんじゃねぇえッ!!」
その怒声がこの玉座のホール内全体に響き渡る。
その声を聞いた瞬間、エミリアは顔を更に歪めた。
声の主はもちろん、エミリア嬢の唯一無二の従者と聞いたスバルである。
「す、スバルッ。もういいの、やめて。」
エミリア嬢が必死にこのスバルの反抗と、抵抗に否定をかけるが
「いいや やめねぇ...ふっざけんなお前らッ、エミリアに謝れよッ!!」
スバルが更に大きな要求を出す。
(...本当に能動的な少年だ。)
「そこの若造 スバル少年よ。貴様はエミリア嬢の従者であるな。」
と、彼に少し遠目の場所の、従者の整列場から話しかける。
「そ、そうだよ。だからこそ、この大馬鹿野郎どもにエミリアたんの鉄槌を
「もう一度申し上げる。貴官は『従者』だな?」
2度目の語気の強い質問に、彼は少し驚くが、首を縦に振る。
「ならば事は早い。貴様はエミリア嬢に忠実に、忠義と忠誠を尽くすのだ。」
と、従者であるならばの話を聞かせる。
「だけどよ、あんたも聞いただろ!!
エミリアの事をあれだけ
「スバル...ッ!」
彼の話途中で、エミリアはスバルに最後の懇願を叫ぶ。
「ぇッ...。」
スバルもこの必死の彼女の願いに静止する。
「...命令に従うのが従者というものではない。
考え、最善を尽くせ、スバルよ。」
彼に最後の忠告をしてから、口を閉じる。
エミリアもそれを見届けた様で、賢人会の方に面を向け、
「栄誉ある賢人会の皆様、改めて申し上げます。
私の名前はエミリア。火のマナを司る 大精霊パックを従える 銀色のハーフエルフ...。」
彼女は堂々と宣言する。
周囲はその【大精霊】という名に恐れを慄く。
精霊という存在は聞いた事がある。
この世に降りたってから精霊の強力さは知っている。
彼らは特定の条件付き契約と共に契約者にその忠誠を示す。
精霊とは言わば騎士の準軍と言っても過言ではない。
「ハーフエルフである事や、魔女との容姿の共通点から偏見の目に晒されるのはわかっております。
でも、私はそれだけの理由で全ての可能性が失われるのは、断固として拒否します。」
エミリア嬢は自らの意図を伝える。
彼女自身は偏見に慣れてしまっている、ということか。
だが自身への偏見が周囲の、スバル少年の怒りを買い、
彼を終わらぬ闘いに引き摺り込む事が彼女が先程恐れ、彼を止めていた理由である。
「エミリア...。」
彼女の意思と思考を聞いたスバルも、彼女に感嘆する。
「...時に、そちらの御人はどういった立場になるのですかな...?」
賢人の中でも長老の長い髭を携えるマイクロトフ卿がエミリアにスバルの事を聞く。
「あ...えっと、その この子は...。」
そこまで考えていなかった彼女は口籠ってしまうが
「大丈夫だよエミリア、俺も覚悟は決まったからさ。」
ここに待っていたと言わんばかりのスバルの自信げな声が入る。
「えっ...覚悟って、一体何の...。
待って スバルッ!」
エミリアは彼がまた何かしてしまうのかと心底心配の声を出すが彼は止まらない。
(...何をしても、それがお前の選んだ最善なのだろう。)
スバルは壇上へと上がっていき、奇妙なポーズをとりながら
「はじめまして、賢人会の皆々様。
俺の名前はナツキ・スバル。
ロズワール邸の下男にして、こちらにいらっしゃる王候補
エミリア様1の騎士ッーー!!」
彼は右手を人差し指だけ指したまま上にあげ、異様なポーズの第二体型を取りながら堂々と宣告する。
「...ふむ、騎士ですかな。」
賢人 マイクロトフ卿が復唱する。
それはそうだ、彼の身なりはその言葉とは裏腹に見すぼらしい使用人にしか見えないからだ。
「あぁー、少々物知らずな子でしてね。」
ロズワール伯爵も流石にこの言葉には引っ掛かった模様だ。
すると少しの時間たたないうちに、彼 スバル少年の近くに紫色の髪をした彼
先程アナスタシア嬢の従者として説明を受けたユリウス騎士がスバルに近づいてきた。
そして
「話の途中で失礼します。
ですが、どうしても彼に聞かなくてはならない事が。
君が真実、エミリア様の騎士を自称するならね。」
そう言い、中央の壇前へと参りながらスバルを見つめる。
「そりゃどうゆう意味で...。」
と、スバルも犬猿の中と言わんばかりに睨み返しながら彼に聞く。
「君は自分が騎士であると明言した。
...恐れ多くも、ルグニカ王国の騎士団が勢揃いしているこの場でッ。」
ガシャッ...
ユリウス騎士がそういうや否や、騎士達は一斉に自らの獲物である剣を取り出して眼前に構えた。
一線乱れぬ動き...だがこの格式は騎士としては 我から言わせてもらうならば無意味と無骨である。
こんな事をする為に彼らは騎士をしているのではないのだから。
「ず、随分揃った動きだったが、今日のために一生懸命に練習したのかよ。」
スバルがこの一種の芸当に驚いたが、口を開き反抗する。
「そうだとも...王国の威信を知らしめる為にも、我らは自覚と意識を高く持つ...。
君に、それと並ぶ覚悟があるのかな。」
ユリウス騎士はスバルに騎士道への意志を問いただす。
確かに彼に騎士の腕はなく、これといった知恵も頭もない。
だが彼は『戦う戦士』として我は認める。
エミリアへの忠誠は騎士と見劣りしない。
問題は力があるか、ないかだ。
彼は例え力量がなくとも、死との境目で自らの義務を果たす為に何でもするだろう。
彼の異様なまでのエミリアへの忠は、正に騎士そのものと言っても良い。
最も、汚点は『力量がない』のにも関わらず『力量に頼ろうとする』だが。
あの少年にあるのは知恵 知識 情報 頭脳。
力量に勝ちうるほどの物を使う義務があるのだ。
長々と考えていると、彼 スバルも意を決したかの様に
「...俺はエミリアを王にさせてあげたい...いや、王にする...ッ!」
「そうするだけの覚悟が、そうできるだけの力が自身にあると...。」
ユリウスが彼の意志の強さを見ている。
意志の勝利 とはよくいった物だ。
強力な行動動機は、強力な力を生み出す。
それが頭であれ、腕力であれども。
「覚悟なんてたいそうなものじゃねーし?
力不足は承知の上だ。
...けど、俺はエミリアを王様にする。
あの子の願いは俺が叶えるんだッ 」
忠誠心だけは強いなと、感銘を受ける。
物理的な力は持たずとも、彼にはそれだけそれに代わり得るナニカがあるのだろう。
それが彼に忠誠の持続と、自信を持たせている。
「それはあまりに傲慢な答えだ。
そう自分で思わないかい?
...弱い事は、恥じる事であって誇る事ではない。
君はこの場に立つ資格を得る為に励んできたのか。
我ら近衛師団の有り様を貶められる程、努めてきたのか。」
この努力の差を目前にしても、スバルは顔を歪めながら
「...それでも俺はエミリアを王にする...!」
と、頑なに意志を崩さない。
必要とされるのは過去や鍛錬ではない。
過去における鍛錬や積み重ねは、元ある能力を助長させる【進化】でしかない。
このスバルにその様な能力はない。
だが別の面ではどうだ?
コイツは見た目 頭は悪く、身体も弱い。
感情でしか物事を判断できず、すぐに行動に移す。
計画的、効率的な答えを出せない。
だがそれでも、やはりコイツには何か、それを大きく凌ぐほどの何か強大な面を抱えているのだろうか。
そうでなければ、スバルはこんな場所でこんな事を言い張る事はできないのだから。
「わからないな... これだけ否定され、なぜそれでも君はこの場に立とうとする。」
ユリウスが問い詰めると、スバルの眉間の皺は一本また一本と増えてゆく。
「彼女が......特別、だからだ。」
この言葉にはユリウスも何か思い当たる節があったのか、多少の驚きの表情を見せたがすぐに普段の真顔になり
「......君がこの場にいる理由については納得した。
だが、やはり君をこの場に騎士としているのを私は認めるわけにはいかないと思うよ。」
やはりこの男は騎士道へのあり方を
『弛まぬ努力とそれによって得られた成果』
を手にした者がなるべきと考える。
趣味の遊び心ならそうすれば良い。
だが、この世で必要とされるのは、
『今あり得るモノ全てを捧げる』
ことである。
目的のためならば手段を問わず、これは正にそれを示す。
それこそが、生命体として果たすべき任である。
目的を早いうちに幼き頃から決意した者のみが、ユリウス騎士のいう鍛錬 励みという時間を得られる。
決意の遅い早いは確かに大きな差を生むが、その上でも 万人は全てを目的に尽力せよ。
これが私の答えだ。
「何を...!」
スバルは今もなお反抗的に争うが
ユリウスは悲壮な顔で
「
...隣に立ちたいと思う相手に、
その様な顔をさせるのは
騎士ではない。」
スバルはその事実に目を向ける事ができなかった。
後ろに立つ彼の全て エミリア嬢の顔をうかがえない。
スバルは顔を歪めながらそのまま口を開き、恐らく彼の人生中でも最大限の歪曲された言葉を放つ。
「き、騎士がそんなに偉いのかよ...。」
この一言が、持ち場へ戻ろうとしたユリウス騎士を止めた。
「家の生まれで選ばれた道化じゃねぇか!!
親の名の光で格好つけてんじゃ
「
ナツキ・スバル。
それは美しくない。」
そういうと、ユリウス騎士は持ち場に戻り、騎士団たちも剣を下げた。
「っ...。」
スバルは彼の言葉に未だに腹を立てているのか、顔を顰めたままだ。
(...故に、手を出してやろう。)
「ナツキ・スバル。」
彼の名前を呼ぶ第三者の声に彼は少し驚いたが、
「なんだよ、イムホテップさんよ...
この状況がわかんねぇのかよ!!」
と、怒りを八つ当たり気味にぶつけながらこちらを向く。
「
貴様は今、なりたいと思った騎士を侮辱した。
家柄の問題ではない 騎士 スバル。
これは忠誠心と、力の問題なのだッッッ!!!」
強烈な語気と共に彼に伝える。
「
我慢にならぬ容態だから教えてやろう。
貴様のエミリア嬢への忠誠だけは褒めるに値する。
だがお前は従者 騎士と名乗った以上、持ち得る全てを彼女に、彼女の御為に使うのだ。
お前は力もなく、財もなく、頭も弱い。」
そこまでいうと、彼はその事実に真っ向から顔を憤怒に染めて
「なッ...んだよテメェ!!
俺を罵ってそんなに嬉しいかッ?
俺はただエミリアへの不当な仕打ちを
「だからなのだ。
貴様は力がないならばせめて頭を使うべき身だ。
冷静に事を判別するのが出来ないなら、貴様は騎士であっても 無意味 だ。」
「ッ...なんだと...。」
「反抗的な目をするな 若造よ。
これは力が無いにも関わらず【力】に頼ろうとするお前への好意から言っている。」
「...。」
ここまで説明をすれば、スバルといえども理解はできた様子。
考え込みながら、黙り込んだ。
「もういいでしょ...スバル。」
突如、背後にいたエミリア嬢がスバルの背中に手を当て、合図をする。
そして賢人会の者達に顔を向け、
「不要なお時間を取らせてしまい申し訳ございません。すぐに下がらせます。」
といい、エミリア嬢は彼を玉座から出す為に扉の方へと連れて行く。
その姿を見て、賢人 マイクロトフ卿は口を開き
「エミリア様...少なくとも彼は あなたが世に伝わる様な魔女ではないと皆に示した。
いい従者をお持ちですな...。」
と、彼女に温厚の言葉をかける。
が、それとは裏腹にエミリア嬢は振り返り、ただ冷淡に
「スバルは......
私の、従者なんかじゃありません。」
この言葉の瞬間、スバルは目を見開いた。
《 裏切られた。 》
これだけ忠を尽くし、自分なりに最大限を尽くした彼女に裏切りと言える言葉を言われるのは
スバルにとって絶望に近いはずだ。
「ナツキ・スバル殿。退出を。」
この言葉と共に、スバルは玉座の扉を開けられ、退出させられた。
「余も退出を願う。」
我はそう言わずにはいられなかった。
単なる俗人の、他人事のはず。
だが私にとって、彼は放って置けない存在だった。
このもどかしさは何故なのか。
《彼と共に居る事》
それは使命にも等しく感じれる。
「あなたは...何者ですかな。」
賢人会の中の先ほどのマイクロトフ卿が聞く。
「我はプリシア嬢の従者...
という偽りの元入った不届き者、
さっさと去った方が互いの為と存じ上げる。」
「ちょ、ちょっとぉ?妾の名を勝手に使うでない。」
と、プリシラ嬢本人が喚き出すが、
「いいえ、プリシラ嬢 余は御身の従者のフリをしていただけです。
プリシラ嬢 【が】 指示したわけではない。」
「...そうじゃの。」
彼女に悪い様にならないよう務めると、彼女もそれをニンマリと笑いながら了承した。
「ふむ...ではあの少年の事でも慰めてやりなさい。」
この老人も大層な甘やかしだな、マイクロトフ卿。
私はプリシラ嬢の戯言で入れられたものの、侵入者であるのに。
「では。」
と、我は言い残してその場を去ろうとする。
「ぉ、おい、いいのかよ。」
途中、アルデバランから小声で聞かれたが、首を縦に振り、玉座の扉を開いて彼の後を追う。
プリシア ではなく プリシラ・バーリエル嬢でしたね アニメしか見てないと発音から予測しなきゃならんのでわからんかった...