東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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94 飴と鞭

 辛い。辛い。辛い。怖い。恐い。なんでなんでなんで。助けて誰か助けてお願い誰か誰か誰か!目の前で、血が、ドパッてなって、暖かさが、抜けて、冷めて、落ちて、落ちて落ちて落ちて――それからそれから揺さぶったのに、叫んだのに、いくら呼びかけても、聞いてくれなくて、なんでなんでなんで。悪魔、悪魔、悪魔だ。目の前の悪魔が、手に抱えている彼女を()()()()()()()変化(した)のだ。許せない。どうしてそうした。どうして彼女が死なねばならなかった。死ぬのは自分だけでいいのに。

 

 

「あぁ、あ、あぁあああ!!」

 

 

 転んで泣き叫ぶ。転んで泣き叫ぶ。転んで泣き叫ぶ。それしかできない。それしか、この悲しみを表現する方法を思いつかない。それでも壊れた心を修復(なお)すことなどできやしない。

 彼はほかの逃避方法を思いつく。それは自傷だ。爪で己の体をかきむしり、床で頭を殴打(なぐ)る。それでも彼が流血することなどない。ここは、精神世界に準ずる場所なのだから。

 

 

「――――」

 

 

 対して女神は、無言でティータイムに勤しんでいた。零夜の悲鳴を完全に無視、または店内のBGMのように認識しているのか、気にする様子はない。

 つまり、零夜の自傷を止めるものは、誰もいない。

 

 床での殴打が終わったあと、零夜はナイフを取り出した。だが、ナイフの刃を見た瞬間、零夜の脳裏に浮かぶのは――ライラ。

 彼女は時間停止の中で、不意打ちを喰らい、倒れた。

 

 

「う、うあ、うあぁああああああ!!」

 

 

 零夜は自分で取り出したナイフを地面に投げ捨て、地震の対処法のように(うずくま)る。ガクガクと体を震わせ、いないはずの外敵に怯える。

 一度考えたら妄想は止まらない。ライラだけじゃない。紅夜は?あのあとどうなった?生きているのか?それとも死んでいるのか?全く分からない。それでも、妄想が膨らめば零夜の心はさらに不安で埋め尽くされる。

 

 

「はぁ…!はぁ…!はぁ…!!」

 

「あーもー。流石に五月蠅(うるさ)いですよ?」

 

「―――ッ!」

 

 

 女神が立ち上がり、いつの間にか零夜の目の前に立っていた。その速度は瞬間移動と間違われてもいい程、一瞬だった。

 女神を認識した瞬間、零夜は顔を恐怖で引きつらせた。

 

 

「あの、私そんなに怖がられることした覚えないんですけど」

 

「―――」

 

「あの、聞こえてます?」

 

「―――」

 

「……これじゃ話になりませんね。流石に全部外したのはまずかったですかね。それじゃあ―――」

 

 

 女神が指をパチンッと鳴らす。感情制御を再び発動したのだろう。しかし、零夜の顔に特に変化はない。

 それもそうだ。女神が施したのは、必要最低限。零夜が恐慌状態でも脳に言葉が届くように、零夜が喋れるようにと、必要最低限の措置しか施していないのだから。

 

 

「これで話ができますね」

 

「ハァハァハァハァ!」

 

「どうですか?自分の愚行が起こした結果は。これも全てあなたのせい。あなたのせいなんですよ」

 

「違うッ!俺じゃない!結果は俺自身が招いた!だが!アイツらを殺したのは、紛れもない(シロ)だ!!」

 

「まだ理解できてないんですね。確かに最終的に彼らを殺したのはシロさんです。ですが、彼があんな行動を起こした理由はあなたにあるんですよ?

 

「――どういう、こと、だ」

 

 

 零夜の行動が、全てストップする。意味が分からない。シロがあの凶行に及んだ理由が、自分(オレ)のせい?どうして、どうしてそんな結末になったんだ。

 女神が顔を近づけてくる。唯一見えるその口元は、とてもよく笑っていて――、

 

 

「なんでって。あなたが弱いからですよ」

 

 

「―――は?」

 

「さっき自分で言いましたよね?彼女たちが死んだのは自分の弱さが招いたことだって。正しくその通りなんですよ。彼には彼の目的がある。まぁ私の目的も彼と一致してるから協力関係にあるのですが、それまでの過程(ルート)が違うんですよね、私と彼って。私は基本的に傍観派なんですけど、彼はゴリッゴリの干渉派。その結果ですかね」

 

「話が見えてこない!それになんの関係があるんだ!?」

 

「もう、鈍い人ですね。要するに、あなたは彼の品定めで脱落したんですよ

 

「―――?」

 

「要するに、彼はあなたが権能に覚醒するか、否か、これを今までずっと見てきたんです。しかしあなたはチキンで女性の要望にちっとも応えられない鈍感ちゃん。彼は区切りをつけたんでしょう」

 

「意味がわからない!なんでその話と権能の覚醒が繋がってるんだ!?」

 

 

 女神の会話から察するに、シロが零夜たちに手をかけたのは、()()()()()()と判断されたからだ。だが、そこからが分からない。どうして零夜の鈍感(故意)と権能の覚醒が繋がっているのか、とても理解ができなかった。

 とてもじゃないが、この二つが繋がっているようには思えない。

 

 

「それに、アイツは最後、俺に最後までついてきた理由が、責任を取りたかった!?責任って一体なんなんだよ!?」

 

 

 シロが言った、責任とは結局なんだったのか、理解すらできない。

 品定めをして、責任を取って、そして最後にはおさらば?意味が分からない。行動の一貫性が見当たらない。どれもこれもバラバラにしか思えなくて――思えない。

 シロの意図が全然理解できない。壊れた零夜の心も相まって、頭が混乱していく。

 

 

「そもそもアイツは一体なんなんだ!!?一体アイツは、どこから来たんだ!?

 

「―――それを知るには、まだ早すぎますね。それを知るには、あなたはまだ地位も功績も足りない。Do you understand(お分かりですか)?」

 

 

 最後の一文だけ英語で言ってくる(あお)りが零夜の精神を抉ってくる。怒りと憎しみと悲しみ。様々な感情が渋滞して、先ほどの激情が、どこへいったのやら、収まってしまっていた。

 自分は今、どの感情を表に出せばいい?激怒(おこ)ればいいのか?哀愁(かな)しめばいいのか。困惑している。

 人間、困っているときに、逆に冷静になるときがある。感情の起伏が激しくなるどころが、逆に緩やかになったりする。人間とは、不思議なものだ。

 

 

「さて、お話を戻しましょう。どっちみちあなたの未来(これから)は確定済みです。だから、吐き出してください。あなたの心を、全て。喜びも、怒りも、哀しみも、楽しいことも、全て私は聞きましょう。あなたが二度目の人生でしたかったこと、出来ずとも、その全てを私は聞き、受け入れましょう」

 

「――――」

 

 

 突然なにを言っているんだと、言うべきような言葉だった。突然そんなことを言われても、困惑するだけだ。理解できたとしても、躊躇うような提案だ。

 だがしかし、今の零夜にそんなことを考える余裕などなかった。むしろ、今まで堕天使のようにしか見えなかった女神が、突然女神のようにように見えてきたのだ。一種の錯覚とも言えよう。

 それは例えるならば、神の啓示を乞う神官のごとく。

 

 零夜は瞳から大粒の涙を流し始め、蹲った。泣き顔を見せないためか、零夜がその顔を見せることはない。だが、その声は確実に響いていた。

 

 その光景は、普段の夜神零夜を知っている人物が見たら、目から鱗だろう。それくらい、信じられない光景が目の前で広がっていた。

 

 

「もじ…もじも!!アイツ(ルーミア)と、普通に暮らせていだらって、いまざら、思っでる!出会いは普通じゃなぐども!そのあどは、ぶづうに、愛じ合って、暮らず。ぞんな、ぞんな未来も、出来たんじゃないがって!思えて、ぎだ!」

 

「そうですね。えぇ。それで?」

 

悪人(あく)になんて、なるんじゃながった!!昔の自分が、理解でぎない!!なんで、なんで俺はもっとも嫌うアイツと同種の道を歩もうなんて思っだんだ!?――分がってる!!ゲレルや臘月のような奴を殺すと決意した時点で、俺には悪の道しかなかった!正義なんで、自分を正当化する都合のいい免罪符(レッテル)だ!俺は、俺たち家族を追い詰めた有象無象共になるのが、いやで、結局は、悪の、道ぢか、ながった!」

 

「そうですね。正義なんて都合のいい免罪符。あなたのその考えは正しい。しかしあなたのその考えは膨張しすぎた。それがこの結果です」

 

「――そう、そうだ。俺は、自分の力に、酔ってたんだ。いや、自分の力なんて烏滸がましい!『離繋(りけい)』とか『創造』とか、『ダークライダー』とか、全部あんたからもらった力だッ!所詮は借り物でしかないのに、俺はそれを、自分のもののように扱って、それで悦に浸って、喜んでた!!!圧倒的な力で他者を蹂躙できるその力に、酔いしれてた!俺は、いつ、いつ、いつ間違ったんだよ!!?」

 

 

 仰向けになって泣き叫び、髪を掴みながら眼を隠す。その姿はまるで泣きじゃくる子供。その姿を見て、口元がうっすらと笑っている女神がいる。不気味以外の何物でもない。しかし、そんなことを追求するものはこの場には誰もいない。

 

 夜神零夜は良くも悪くも大人になり切れなかった。19歳と言う大人ギリギリの年でその命を終え、本来輪廻にいくはずの魂はこの女神によって外された。それに3つの強大な力をもらった。彼も年頃だった。そういうものに憧れる年頃でもある。それに追加で死刑囚と言う肩書が彼の感情を暴走させた。

 17歳で嵌められ、2年間自由を奪われ、苦しんだ。その束縛からの解放で心のどこかでは有頂天になっていたのだろう。彼はこの2年間、外の情報が完全に封鎖されていた。唯一の情報源が面会に来る『家族』だった。それにその『家族』が来る度に(やつ)れていて、話なんでほとんど入ってこなかった。

 その反動が、この結果を招いたのだ。

 

 

「私は、あの世界でどんな脅威があなたを襲っても、撃退できる力を預けました。正直言って、あなたが『悪人』になると聞いたときは驚きましたが、同時に納得もしました。2年、束縛され続けたあなたが、普通に暮らすはずがないと。たった2年。そう、2年です。たったそれだけの期間で、あなたの心は擦り減り、摩耗(まもう)した。どんな物語を見せてくれるのかと思ってましたが、消化不良で不完全燃焼なムカムカな終わり方でしたね」

 

 

 女神(彼女)は全て観ていた。零夜の幻想郷での人生を。それはさながらドラマを見るような心境で。零夜の人生を、完全に見世物扱いした感想に、零夜は涙目で睨んだ。

 

 

「お前の……お前が最初に向けた、俺への感情は、全部嘘、だったのか!?父さんと母さんが、俺を、俺だけを転生させたってのも、嘘だったのか!?お前の、謀略だったのか!?」

 

「―――零夜さん。私、言いましたよね?私はアイツほどクズじゃないんですよ?

 

 

――世界が揺れる。比喩でも何でもない、真っ白な世界が、揺れた。

 女神は零夜の両頬を優しく掴んで、冗談レベルでは済まされない威圧を放ってきた。女神にとって、クズ扱いは自分が本気で嫌悪する神と同類(おな)じに扱われると認識し、本気で怒ってくる。

 

 しかし、零夜の顔は変わっていなかった。泣きながらも、女神に向ける憎しみの瞳は、ただ真っすぐ女神を射抜いていた。先ほどは耐えれなかった女神の威圧。それに今は感情補正のレベルが先ほどより低い。それなのに、零夜は精神力で耐え、真っすぐ女神を見ていた。

 その瞳を見て、女神はため息をついて、零夜の顔を離す。

 

 

「――今のは、私の方が悪かったですね。まさか私の威圧を2回目で耐えきるなんて、適応能力異常すぎません?」

 

 

 事実、先ほどまで心の保護をすべて外して廃人レベルにまで追い込んで、一度話ができるように最低限の措置だけはした。

 そのあとに、こんなまともに会話できるようになるのは、成長を通り越して、異常だ。

 

 

「うる、さい…!!」

 

「もう。叫んだわけでもないのにうるさいだなんて失礼ですね。そんな悪い子のあなたには、もっと屈辱を味わってもらいます」

 

 

 女神が指をパチンッ!と鳴らす。

 

 

「ア゛ッ゛――!」

 

 

 その瞬間、零夜は声の自由が効かなくなる。喉を掴み、発声しようとするも、声は出ない。声の自由が効かなくなった。確実に女神の仕業だ。女神を睨む。

 

 

「―――ッ!」

 

「何をしたんだって顔ですね?まぁでも分かってると思いますが、あなたの発声の自由を奪わせてもらいました。あなたの言葉は、私の思いのままってことです」

 

「―――ッ!!」

 

「ふざけるな、って言いたいんですか?あなたが悪いんですよ?失礼なことしたんだから。さて、では気を取り直して、罰ゲーム発表です。あなたのルーミアさんに対する欲情劣情を、全部思いっきり、洗いざらい全て吐いちゃってください!!

 

「―――ッ!?」

 

 

 それは零夜にとって――いや、知性と理性あるもの全てにおいての死刑宣告だった。人間の3大欲求、食欲、睡眠欲、性欲。上記二つは何てことなくさらけ出せるが、一番最後は別だ。普通は人前でさらけ出すものでもないし、なんならそんなことをすれば社会的にも精神的にも死ぬことは確定事項。

 それにプラスして、500年間溜め続けた欲情と劣情ともなれば、その数は数え知れない。

 

 口が動く。女神の命令に従い、喋ろうとする。嫌だ、やめろ。そんなことをされたら――!!

 

 

「俺は、ルーミアに―――」

 

 

 

――――。

 

 

―――――。

 

 

――――――。

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!死にたい……!!」

 

「もう死んでますよ?」

 

 

 あの後、零夜は醜態をさらし続けた。500年間溜め続けたルーミアへの劣情欲情を全て吐き出した。何度も規制音(ピ――)を入れる自体となった。

 零夜が苦しみながら言葉を吐き続けるところを、笑顔の女神が見ていたこともおまけだ。

 

 

「最悪だ…!こんな欲にまみれたこと、今まで一度も口にしたことなかったのに…!こんなのただの最低クソ野郎じゃねぇか…!」

 

「そうですねぇ。普通ならドン引きして話しかけもしないほどの醜態を晒し続けましたね。しかし私はそんなあなたも認めましょう」

 

「こんなことさせた本人が、なに言ってんだ…!!」

 

 

 零夜の顔が、醜態で顔が真っ赤に染まり、涙目になっていた。彼は完全に女神に遊ばれていた。女神は形式状カルマ値はマイナス最大レベルらしいが、彼女はそのレベルに恥じない外道っぷりを発揮していた。

 普通に考えて自分(ひと)の劣情を全て吐かせるとか、ド畜生極まりない。汚い。さすが汚い。

 

 

「でも書かなかっただけマシじゃないですか?まぁ全部書いたら“R-18”がついちゃうので流石にやりませんが」

 

「なんの話をしてんだよ、お前は…?」

 

「まぁまぁ。いいじゃないですか。それよりも……私はとても満足しています!私の中のムカムカ、消化不良、不完全燃焼が完全に消えました!」

 

「それは、良かったな…!」

 

 

 完全に女神の気分上げに使われた。零夜は内心で悪態をつくが、これ以上何かを言えば更なる醜態を晒す羽目になるため、心の中で貶しておく。

 

 バカ!アホ!ロクデナシ!バーカ!バーカ!バーカ!

 

 

「誰がバカですか?あと語彙力死んでますよ?」

 

「―――あ」

 

 

 零夜はあまりの恥ずかしさのあまり、忘れていた。女神が心を読めるということを。つまり零夜の悪態は女神にすでに筒抜けであり、言葉にしなくとも意味なんて欠片すらなかった。

 零夜は顔を上げる。ベールで隠れているが、あの顔はなにかよからぬことをまた企んでいる顔だった。

 

 

「全く……全然学習しないんだから困りものですよね」

 

「いや、あの、それは…」

 

「言い訳は不要です。どうやらまだお仕置きが足りないみたいですね。次はなにがいいかな~」

 

「――ふざけんなッ!!どこまで俺を辱めれば気が済む!?」

 

 

 零夜の堪忍袋の緒が、ついにキレた。もう女神の怒りとかどうでもよかった。自分と女神しかいないこの空間でも、自分の恥ずかしい部分が赤裸々と暴露されてしまうのはもう勘弁だ。

 それに女神も本来の業務を忘れているように思える。そのくらい楽しんでいた。

 

 

「あらあら。怒っちゃいました?」

 

「当たり前だッ!こんなことして…何の意味がある!?」

 

「え、私が楽しくなります」

 

「―――」

 

 

 零夜は無言で拳を握る。右腕を大きく振りかぶって、そのまま女神のすまし顔へ一撃を――、

 

 

 フニッ

 

 

「――――?」

 

 

 零夜の思考がストップする。激情に駆られていた感情が、一瞬で沈静化する。今、現在進行形でなにか柔らかいものに触れている。しかし、彼の右手は今空を切っているはずだ。一面の白い空間。いるのは零夜と女神だけ。だというのに、空中に柔らかいなにかが存在していた

 零夜は冷静さを取り戻して、女神に語り掛ける。先ほどの感情とは180度の違いだ。人間、予想外のことが起きれば以外と冷静になる。

 

 

「おい女神。この空間にこんなものあったか?」

 

「あ~それは…」

 

「何もないところに柔らかいなにかが存在してるんだが……。これもお前の仕業か?」

 

 

 零夜はその柔らかいなにかを掴みながら女神の方を向く。零夜はこの柔らかい空間を自分を落ち着かせるために用意したものだと思っていた。

 しかし、女神の口元が歪んでいる。あの口が表す感情は――苦笑いだ。ベールで隠れている女神の顔は、今絶賛苦笑いを作っている。

 

 この時、零夜はしめた、と考えた。あの女神に一泡吹かす言い材料が手に入った、と。

 

 

「お前、コレを気にかけてるな?お前に一泡吹かすいい機会だ」

 

「あ~……どうなっても知りませんよ?」

 

 

 女神が顔をポリポリと掻く。頭の上に?マークを浮かべる零夜だったが、妄言と定めて零夜は柔らかいなにかを掴む力を強めた。

 

 

「ヒャウッ」

 

 

「―――ん?」

 

 

 力を強めた瞬間、どこからか声が聞こえた。

 目の前には、白い空間が広がるだけでなにもない。しかし目の前には柔らかい物体があることは確か。そして、すぐ近くで声が聞こえた。零夜は左右を確認するが、何もいない。いるのは苦笑いしている女神のみ。

 この場を詳しく調べてみることにした。その場をグルグルと回転して、ところどころを触っていく。柔らかいところや、微妙に硬さがある場所がある。どうやらこの場にだけ、見えないなにかがあるのは確実だった。

 触っていくと、鼻が反応する。華やかな匂いが、零夜の鼻腔を貫いた。とても柔らかな香水を嗅いでいるようだ。穏やかながらも、しつこすぎない、いい匂い。

 

 

(しかし、この匂い。どこかで嗅いだことがあるような…)

 

 

 そんな気がしてならないが、そのことを頭の片隅に置いた。

 

 

(本当になんだこれ?)

 

「そんなに気になります?でしたら下の方から調べるといいですよ」

 

「―――?」

 

 

 女神が急にそんなことを言ってきた。

 先ほどまで苦笑いしていたというのに、なんだこの変わりようは。そう疑問に思っていても、この場で出来ることなど限られている。結局は彼女の言いなりになるしかできないというわけだ。

 

 その事実(こと)に歯噛みしながら、零夜はしゃがんで、この謎の空間の下――地面の方に手をかけた。すると、スルっと、手触りの良いなにかを掴んだ。とても薄く柔らかい、これは――

 

 

「布?」

 

 

 透明な布だった。意味が分からず首を傾げる。なんだろうかと思いながら引っ張ってみると、若干の抵抗が感じられる。なにかに引っ掛かっているような、そんな感じの引っ掛かりだ。

 

 

「引っ掛かるものなんてねぇしな…。もうちょっと強く――ッ!!」

 

「あっ!」

 

 

 強く引っ張ると同時に、また誰かの声が聞こえてきた。布が全て零夜によって引っ張られ、見えなかった謎の空間の全貌が、明らかになった。

 そこにいたのは、人だった。絹糸のような長い金髪、宝石のような紅い瞳、豊かな胸、引き締まったくびれ、大きな臀部、白いブラウス、黒いワンピースの女性が、その場に姿を表した。

 ちなみに、その女性は羞恥で顔を赤くしていた。

 

 

「――え」

 

 

 零夜はその女性の姿を確認すると、目を(こす)る。見間違いじゃない、夢じゃない――今この状況が夢と同じようなものだが――幻覚(ゆめ)ではないと、把握できた。

 

 

「ルー、ミア?」

 

 

 その女性――ルーミアは、赤くなった顔(涙目)で零夜を見上げた(身長差で)。

 かく言う零夜は、未だに現状を理解できていなかった。何故?どうして?先に死んだはずの彼女がこの場にいる?零夜の脳内は『困惑』で埋まっていた。

 

 

「お前、なんで、ここに…?」

 

「はーい。それは私の方から説明しますよ」

 

 

 零夜の困惑を余所に、女神が大きな声で切り出した。

 女神曰く、「零夜の魂を呼び寄せされるのだからルーミアの魂を呼び寄せることくらい造作もないこと」なのだそうだ。

 確かに理に適っており、納得するに値する理由だ。だがしかし、零夜が聞きたいのはそこではない。

 

 

「いやそうじゃなくてだな。コイツがいる理由は理解した。だが、なんでこいつがここにいるんだ!?」

 

「それって同じ質問……じゃありませんね。同じように聞こえて違う質問ですね。ホント、日本語って難しいですね」

 

「なに?お前外国の神なのか?」

 

「いえ、日本の神様ですけど?」

 

「日本の神が日本語苦手とか言うんじゃねぇよ」

 

 

 自国の国の言葉が難しいという神など、目も当てられない。そう思いながらも、質問の答えを聞くことを忘れない。

 

 

「では質問に答えましょう。彼女がここにいる理由はですね……私の独断です

 

「は?」

 

「詳しく説明すると、あなたがルーミアさんのことをどう思っているのか、ルーミアさん本人に知ってもらいたかったんです。お互いの気持ちを知らないまま死ぬなんて、悲しいにもほどがありますからね」

 

「なるほど。――で、本音は?」

 

「ラブコメみたいなので面白くて。私、ドタバタ系のラブコメ大好きなんですよね」

 

 

 違う。こんなの恋愛物語(ラブコメ)じゃない。ラブコメの漫画とは無縁の生活を送っている零夜でもわかる。こんなものをラブコメとは決して言わない。

 前世(かつて)、ラブコメ漫画の議論を一方的にされた経験(こと)があるが、こんな内容のラブコメはなかったはずだ。

 

 

(今時のラブコメは進化してるものなのか?いや、そんなことはどうでもいい!)

 

 

 零夜はいろいろと冷静に考え始める。そして――一つの結論に、辿り着いた。

 もし、もしもだ。その考えだした結論が、当たっているとするならば…。零夜の口から、言葉(“あ”)が漏れる。

 

 

「――あ」

 

「気づきましたね?あなたが目覚めたとき、彼女は既にこの場にいました。つまり!あなたの言葉、あなたの本心、あなたの欲望!!全て!!彼女の耳に入っているのですよ!!

 

「――――/////」

 

 

 女神が高らかに笑い続ける。その笑い声さえ聞こえないほど、零夜の目線はルーミアの顔に釘付けになっていた。ルーミアの姿を確認した時から、最初からなっていたあの顔。あの顔の理由が、自分の欲望まみれな下種な言葉の数々?

 その事実を知った零夜は――、

 

 

「~~~~~~~~~~~ッ!!!」

 

 

 言葉にならないほどの、羞恥による叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

「もう死にたい」

 

「死んでますけど?」

 

 

 零夜が零した言葉を、女神が真面目に返してきた。このやり取りも二回目である。

 零夜は顔を隠し、ルーミア達に背中を向けて寝っ転がっていた。零夜なりの逃避方法である。

 

 無理もない。先ほどの欲と劣情まみれの言葉を、全て本人に聞かれていたのだから。まともな感覚を持っている人間ならば、普通は立ち直れない。ルーミアが顔を赤くしていたのも、そのためだ。「自分と○○○(ピ―――)したい」だとか「ヨゴしたい(意味深)」だとか聞かされれば、無理もない。

 

 

「いやーそれにしても滑稽ですね。意気消沈した男にその男の本性を知り赤面している金髪巨乳美女!

写真撮っていいですか?」

 

「「やめろッ!!」」

 

 

 いつの間にか手に持っていた高性能カメラ(一眼レフ)を堂々と見せつける女神に、二人が一斉にこちらを向いて叫んだ。二人の顔は共通して、怒り3:羞恥7と言った感じだ。

 

 

「あら息ピッタリ。微笑ましいですね」

 

「そんなことどうでもいいわよ//…。ていうか!!なんであんなことしたの!!?」

 

「え、だって知りたくありませんでしたか?彼があなたのことどう思っているのか?」

 

「――――」

 

「結果、彼はあなたにいっそ清々しいと言えるほどに欲情劣情を抱いておりました!!そこであなたの反応は?」

 

 

 女神は手を未だに寝転がっている零夜に向けた。女神の顔はベールで分からないが、笑っているように――笑っていた。

 彼女はこの状況をあからさまに楽しんでいる。このあとルーミアがどのように行動するのか、今零夜に対してどんな感情を抱いているのか、まるで漫画やアニメを見ているような、違う世界からの視点で見ているようだった。

 

 そこでルーミアが出した決断は――

 

 

「フンッ!!」

 

 

 女神を殴る――『殴打』だ。ルーミアの拳は、女神の顔面目掛けて放たれた。しかし、当たる直前、女神の姿が蜃気楼のように消え去る。

 しかし、女神の姿が消えたはずなのに、女神の声が聞こえた。

 

 

『危ないじゃないですか。いくら同性とは言え顔を狙うのはどうかと思いますよ?』

 

「うるさいわね。私、あなたのような高みの見物かましてるいけ好かない奴は嫌いなの。それと、今のは零夜を苦しませた分よ」

 

『あらあら。嫌われたようで残念です。せっかく機会(チャンス)を与えてあげたのに』

 

「余計なお世話なのよ。いいからさっさと去りなさい」

 

『はーい。私はお邪魔なようですので、あとは若いお二人で』

 

 

 その言葉を最後に、女神の声は聞こえなくなった。それと同時に、ルーミアは深くため息をつく。今のやり取りで、完全に羞恥心がどこかへ飛んで行ってしまった。これも彼女の策略なのかもしれないが、今はどうでもいい。

 ルーミアはまだ蹲っている零夜の方へと歩き出し、歩みを止める。

 

 

「零夜」

 

「―――」

 

「零夜。聞いてるの?」

 

「――すまん。お前に合わせる顔がない。俺、今回最低なことしかしてない

 

「あ~……」

 

 

 ルーミアは零夜が言った自分に対する劣情の言葉を思い出す。実は零夜がこの空間で目覚める前、ルーミアは既に目覚めており、女神から透明マ○トを借りてその場で零夜と女神のやり取りを聞いていた。状況の説明もされないまま姿を隠されたため、困惑しながらも状況を理解している最中での、あの零夜の言葉だった。あの時声を出さなかった自分を褒めたいところだ。

 

 ちなみにその時のやり取りの一部始終である。

 

 

「これをかぶってください。インビシブルコート。決して透明マン○ではありませんのでご注意を。かぶると透明になって姿を消せまーす」

 

「別にどうでもいいんだけど……○の部分に悪意を感じるのは、私の気のせい?」

 

「気のせいです。それともなんです?そういうの意識してたりします?」

 

「んんんんんんんなわけないでしょ////!!?」

 

「反応があからさま過ぎません?」

 

 

 こんな感じである。ちなみに○の部分に悪意を感じるのは、当たっていたりする。

 ルーミアはゆっくりと、零夜の隣で体育座りをする。

 

 

「確かに、私今日零夜に、すっごく(はずかし)められちゃったな~~。零夜、私に欲情してたんだ~。私のこと屈服させて、自分の思い通りにしたいって、零夜って前から思ってたけど、Sなんだね」

 

「――やめてくれ」

 

「それに私が透明○ントで零夜の隣で隠れているとき、零夜が最初に触ったのは胸の方。それからいろいろなところ触られたっけ。お腹だとか、お尻だとか、足だとか、手だとか、さらにはシタの方も触られそうになったわ。まさかあんなに胸を強く掴んでくるなんて。思わず声出ちゃったじゃない」

 

「――マジで、やめてくれ」

 

 

 零夜のSAN値はとっくにゼロを振り切っていた。無自覚と強制とはいえ、度重なるセクハラ発言にセクハラ行動。常識人なら罪悪感が湧かないはずがない。零夜もちゃんと常識人ポジションにいるため、例外ではなかった。

 すぐに叫びたいが被害者(ルーミア)被疑者(零夜)が強く当たれるはずもなく、ただ「やめてくれ」と懇願するしかない。しかし、ルーミアがその口を止めることはない。

 

 

「それに、今まであんな素振り見せてこなかったけど、まさか500年間ずっと我慢してたなんてね~。なんで私も気付けなかったのかしら?」

 

「――――///」

 

「まぁそんなことはいいわ。――よいしょ、っと」

 

 

 ルーミアは零夜にさらに近づいて同じく寝っ転がって、零夜と対面になるようになった。零夜はそれに驚き、真顔になる。

 

 

「これでようやく、二人きりになれたわね。またとない機会だから、たくさん話しましょ?」

 

 

 そう言った彼女の顔は、妖艶としていた。

 

 

 




 夜神零夜(本日の被疑者&被害者 その1)

 女神に精神の保護を完全に外されたことによって一度は精神崩壊を起こした。女神に恐怖し、まともに話ができない状態に。
 しかし女神によって再び会話はできる状態に戻された。そのままシロに「品定め」されたという事実に驚愕する。
 自らの罪を自覚し、改めるもすでに遅し。何故ならすでに死んでいるから。
 その際に女神の逆鱗に触れ、威圧を受けるが、二度目で耐えてしまっている。いくらなんでもあり得ない事態である

 逆上して偶然にも後ろにいた透明化していたルーミアの胸に当たる。そのあと、女神がなにやら渋い顔をするので、「これは奴を困らせるチャンスだ!」とプチ復讐を思いつき、実行する。知らずとはいえ、零夜はセクハラを超越したレベルのことをした。詳しくは下記参照。そしてそれを知った瞬間声にならない悲鳴を発した。

 本人が言ったように、彼、今回最低なことしかしてない。

零夜(合わせる顔がない…)



 ルーミア(被害者 その2)

 実は零夜よりもこの空間で一足先に目覚めており、女神にインビシブルコート(透明マン○)を強制的に(むりやり)つけられた。そのため零夜が起きたときには、彼に感知されなかった(死んだばかりで感覚が鈍っていたから)。

 零夜の本心を知ったとき、隣で赤面してたし、なんなら【タグ問題(じじょう)】でカットされた部分を聞いたときは、赤面を通り越して頭から煙でたし、なんならお腹部分が疼いたりもした
 零夜が精神的にダメージを受け、喚き散らしているところに胸が痛くなる。最終的に保護が外され一度精神が完全崩壊した際には、抱きしめて落ち着かせようとした(しかし本人の精神ダメージが大きすぎたため気づかれていない)

 零夜の近くにいすぎたため零夜が女神を殴ろうとして大きく振りかぶった手に自分の胸とぶつかった。そこからバレる。目線で女神に助けを求めるが、当の本人は苦笑いで助けてくれないどころかアドバイスをしてくるため、心の中で罵倒した(なお、その罵倒はもちろん本人に聞こえている)

 女神のアドバイスで、零夜に胸、お腹、尻、背中、髪の毛、太もも、挙句の果てにデリケートゾーンまで触られた。零夜じゃなかったらすぐに殺してた(すでに死んでるが)。

 最後に女神によって自分の存在がさらされ、二人でともに叫んだ。



 女神(本日最大の加害者)

 実は二人の魂をこの空間に呼び出しており、あとでサプライズ(詐称)をするからとインビシブルコートを渡した。
 零夜を精神的に思う存分痛めつけた後、あちらからムカつく言動をされて威圧するが、耐えられてしまい、零夜の適応能力に驚かされた。心の中で冷や汗をかいた。

 腹いせに零夜の心の内(ルーミアへの感情や想い、劣情)を全てさらけ出して本人に聞かせた。
 零夜がルーミアの胸を触った際の苦笑いは、アレ実はブラフ。本当は心の内で大爆笑しており、笑いを隠すための表情だった。二人の赤面は退屈を紛らわす良い魚のつまみ。
 そのあとルーミアに殴られそうになるが、余裕で回避。今現在も、二人のことを暖かい目で見守ってまーす。







女神がこの場で予定していた本当の計画(二人をくっつけろ大作戦)








 零夜は無言で拳を握る。右腕を大きく振りかぶって、そのまま女神のすまし顔へ一撃を食らわした。


「フフッ」


 しかし、女神の体は蜃気楼のごとく消え去り、零夜の攻撃は外れた。


「なっ!?」

「ここは私の空間ですよ?ゆえに私の思い通りになるのです。この空間は」

「――ッ!」


 後ろから女神の声が聞こえてきて、零夜は急いで振り返ると、いつの間にか女神が佇んでいた。


「ゆえにあなたの勝ちはあり得ません」

「そんなこと…!」

「あぁ、ちなみになんですが。今私はこの空間のルールを、このように設定しております」


 女神が、虚空から漆黒のナイフを取り出した。いや、出現したという表現が正しいだろうか。女神の手から()()()()のようなものが出現し、それがナイフへと変化した
 そのまま女神は、右手でナイフを持ち、左腕を切り落とした


「ッ!!?―――?」


 「トチ狂ったか?」と思いながらその光景を見ていた零夜だったが、次の瞬間違和感に気付いた。本来、女神の腕が地面に落ちるはずだったのに、女神の腕は健在だ。先ほどと今の変化は、女神の腕を包んでいたインナー製の袖が斬った部分からなくなり、女神の傷一つない美しい腕が露わになっていた

 そして肝心のインナー製の袖は、地面にポトリと落ちていた。


「これは…?」

「この空間では、人体に傷害を及ぼすことはできませんが、着用している衣服はこの通り、影響が出るようになっています」

「なんでそんな謎設定にした!!?」


 つまり、この空間は人体には無害だが衣服には有害な空間になっているということだ。なにこのカオス。


「つまり。私が攻撃を続ければ、あなたのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が露わになります」

「なんだそれ!?意味は分からんが、なんか理解(わか)る気がして怖いわ!それは全力で阻止させてもらうぜ」

「できますかね?あなたごときに」

「お前が俺に与えようとしている屈辱。逆にお前に与えてやるよ。お前の衣服が切れるのも、お前自身が見せてくれたしな!」

「キャー、へんたーい。零夜さんのエッチ―」

「バカにしてるだろてめぇ!よーし分かった。てめぇの服全部斬って、その面拝ませてもらおうかッ!」


 感情の籠っていない無機質な声で叫んだ。よって零夜はおちょくられてキレた。確実に舐められている。神と人間では確かな実力差が存在し、女神が舐めてくるのも無理はない。しかし、そんなことで諦める男ではなかった。

 零夜は『創造』の能力で刀を生成すると、女神に対して縦に一太刀、“八文字*1”を浴びせた。

 しかし、女神はそれを当然のごとく、流体のごとくひらりと避けてくる。


「チッ!」


 次は喉を突く。これには当たるが、問題はその次だ。零夜はそこから右斜めにかけて下に振り下ろす――が、この瞬間に女神の姿が黒く染まり、泥のようになって地面に落ちて消える。


「ッ!?」

「無駄ですよ。あなたに私の服は斬れません」


 女神の姿が、零夜の背後にて再び出現する。やれやれと両手を広げ、困ったポーズを取り、零夜の精神に直で触れてくる。


「それ言うと俺が変態みたいに聞こえるだろうが!」

「事実そうじゃないですか」

「ふざけんなッ!」


 さらに逆上し、零夜は地面を蹴り刀を振り上げる。
 女神は、動かない。


「細切れに……してやるッ!!」

「幽体化」


 女神がなにか呟いた瞬間、女神は()()()()()()後ろに下がった。


「フンッ!」


 女神に向けて、零夜は刀を振るう。その一回に見えた斬撃に、実際は100以上の全方向による斬撃を行った。体が人間に戻ったとはいえ、技術はそのままだ。ただ、これ以上を行うと、肉体の方がついてこれないが。


「――ッ!?」


 直撃した。確実に当たったはずだ。しかし、女神の衣服に変化はない。むしろ、手応えを感じなかった。まるで、空を斬ったかのように、感覚がまるでないことに気付いた。


「流石の私も全裸になるのは勘弁ですので。そんなに私と言うボンキュッボンのスタイル抜群妖艶美女のデカパイや○ンコをみたいというのなら――」

「誰がんなこと言ったァ!!」


 確かに女神はその条件を全て揃えているが、零夜はそんなこと一言も言っていない。しかし、女神にとっては例外だった。


「これは思春期の男子全員の共通意識じゃないですか!ですが――その役割は、私ではなく、彼女に任せることにします」

「何を言って――」


 その瞬間、女神の姿が完全に消えた。――と同時に目の前で白と黒の衣服が細切れになり、生まれたままの姿になった美女の姿が


「ヒャ///――!」

「ハ?」


 心の底から呆けた声が出た。あまりの事態に、脳が理解を拒んだ。と言うより理解することをしたくなかった。
 そして、今の状況を説明しよう。今、零夜は跳躍しながら斬撃を行った。つまり、物理的な法則で零夜の体は前へと進んでいる。

 ――つまりは。


「キャァ!」

「うぉお!?」


 時間が進む。


「いてて……え」

「うう……///」


 零夜の眼に映った、金髪の美女――その正体は、【ルーミア】だった。そして全裸だった。ルーミアの顔は羞恥で赤く染まっており、理性(こころ)を揺さぶるには十分な要素が詰め込まれていた。
 何故?どうしてここに?という様々な疑問もあるが、まず一番最初に彼らが行った行動は――。


「うわぁあああああああああああ!!」

「きゃぁあああああああああああ!!」


 叫ぶこと、だった。



 眼福です。ありがとうございました。



 これがサブタイトルの意味。


 評価:感想よろしく!

*1
頭から胴体にかけて唐竹割りに。逆八文字に人体が左右に分かれることからの名称

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