本当に申し訳ない。しかし、その分大ボリュームだから見ていってね!
一度消えた、死に絶えたはずの彼女の笑顔が、近づいてくる。零夜はようやく近づいていることを認識した瞬間、零夜はそれを認識した瞬間、顔が赤くなり、そっぽを向いてしまう。
「可愛い~。反応が初心だぞ、このこの」
頭をペチペチと叩いてくる。
零夜の恋愛防御力は、今完全にゼロだ。今まではバカみたいな理性がルーミアの
「俺を」
「ん?」
「俺を揶揄って
「うん。とっても楽しい。私の500年間の気持ちを思い知れ~♪」
先ほどの赤面とは180度違う、ルンルン気分で零夜を精神的にいたぶってくる。そこに容赦なんて一切感じず、鬱憤の溜まり具合が伺える。
「――なんで」
「なに?」
「なんで、俺なんかを好きになったんだよ?俺は最初、お前のことボコボコにしたし、なんなら勝手に連れ去ったしで、恨まれる要素はあっても惚れられる要素なんて、これっぽちもなかっただろ」
「ん~~確かにそうね」
零夜とルーミアの出会いは、最悪と言ってもいい。
零夜は人外とは言え、初めての殺しを経験し、多少は意気消沈していた。すぐに立ち直ったが。そんな状態での、初対面だった。そしてルーミアは零夜のことを『餌』判定してきて右腕を吹き飛ばしたのだから。『
「最初は餌としてしか見てなかったのも事実よ。まぁそのあとこっぴどくやられたけど。……そうだ。あの時の行動の意味、私まだ聞いてなかった。ねぇ、なんであの時私のこと攻撃するの止めたの?」
「―――」
あの時――零夜(アルティメットクウガ:ブラックアイ)がトドメの一撃をルーミアに叩きつけようとしたとき、零夜は攻撃しなかった。その時の拳は震えていて、戦いとは無関係の人間が初めて暴力を振るうような初心さを見せた。
「ゲレルに襲われて助けてくれた時、あなた、「やっぱり、そうだったんだ」って言ったでしょ?それの意味、聞いておきたいの」
「それ、言わなきゃ駄目か?」
「うん、駄目。今まで散々私のこと弄んできたんだから、これくらいのことには答えてもらわないと。出ないと、あなたのことタベちゃうわよ?」
「……今のお前から聞くと、どっちの意味だか分からん。……分かったよ。言うよ正直に。お前を、
「――ある人物?」
「そうだ」
零夜は寝転んだ体勢から一転、起き上がって片膝に片腕を乗せた体勢で座って、話始める。それを見て、ルーミアも隣に体育座りで座る。
「そのとある人物っていうのは?」
「――悪いが言えない。いや、言いたくない。口にして、昔を思い出すのは、苦しくて、嫌だ」
「―――」
稀に見る――おそらく初めて――の、零夜の弱きに、ルーミアは何も言えない。弱音とは、言ってしまえば自分の弱点を見せると同義とも捉えられる。それゆえに、零夜が弱音を吐いたことは見たことがない。
「――そう。なら聞かないでおくわ」
「そうしてくれるとありがたい。―――結論から言うとだな。お前が怯えた姿が、その人物と重なったんだ」
「そう、なんだ」
「ルーミア。この世界のこと、前にシロと一緒に話したよな?憶えてるか?」
「もちろんよ。あの時の衝撃、忘れるわけないわ。まさか自分が創作キャラだなんて、普通信じられないわよ」
時はミラーワールド時代にまで遡る。“なんやかんや”あってシロとの初対面を終えた後、家のリビングで机を囲み話を聞いている最中、彼は(わざと)口を滑らせた。
『この【東方project】と言う創作物の世界で、君がどれほどできるのか、楽しみだ!』
この言葉を聞いた瞬間のルーミアの顔は今でも忘れられない。鬼気迫る顔で、質問攻めにあった。その瞬間、ルーミアは【キャラクター】から【準イレギュラー】にジョブチェンジを果たした瞬間だった。
準イレギュラーは転生者によって関わった人物が、本来の本筋から外れた場合のことを指す。ルーミアは零夜に連れ去られた時点でそうなってはいたが、この一件で確実なものとなった。
「その時に、俺が別の世界から来た『転生者』だってことも明かしたっけ。ちなみに俺を転生させたのは“アレ”な?」
「うん。話には聞いてたけど、性格が全く違うから別人かと思った」
「俺も初めて知ったわ。あの女神の本性」
「ハハハッ」と、二人で笑う。この話を女神は今確実に聞いているだろうが、そんなことはどうでも良かった。生きている間では実現しなかったこの対談を、一秒でも長く続けたかった。
「あまり詳しくは言いたくないが、俺は転生前、とある冤罪をかけられた。その罪は、とんでもなく重い罪。当時殺しの“こ”の字すら実行できる気概も意志もなかった俺からすれば、縁のない話だったんだがな」
「冤罪……」
「それで2年間、薄暗い牢屋の中で過ごして最後は死刑だ。……話はその前に遡るが、一回目の面会の時だ。その人物が見せた顔が、お前の顔と被った。それがなんでかは分からん。だが、それが理由だ」
「そんな、ことが……」
そんなこと、当たり前だが初めて知った。今まで零夜の過去には触れてこなかったが、そんな出来事があったなんて、知りもしなかった。
「だから、『計画』を実行したかった。まぁ、それも無駄に終わっただな」
「『計画』?」
「――もう関係ない話だ。聞かないでくれ。……それよりも最初の質問の答え、まだ聞いてねぇぞ」
「あぁ、そうだったわね。……なんか言うのも恥ずかしいけど…まぁ今更感あるし、いっか。私ね、ゲレルに襲われるの、アレで2度目なの」
「そうなのか……って、はぁ!!?」
初耳の情報に、零夜は目を丸くした。そんなこと聞いていない。今までずっと隠していたのか?一体、なんのために?いや、普通に考えればわかることだ。ゲレルの性格からして、襲われたとなればろくでもない話に違いない。まず自分から話したがらないだろう。そう考えれば納得も――
「ちょっと!なに人が話してる最中に考え事してるの!?」
「あ、あぁ、すまん……」
「まぁでも大方予想がつくわ。「なんで言わんかったんだー」って思ってるんでしょ?でも、ずっと忘れてたから、言えなかったの」
「忘れて……そういうことか」
誰しも、苦しいことや辛いことは記憶から抹消したいものだ。あの時のルーミアはゲレルへの恐怖とレイラへの罪悪感に押しつぶされ、防衛本能に従い、記憶の抹消を無意識的に図ったのだ。
その理屈を理解している零夜は、なにも言わなかった。
「済まなかった。辛いこと、思い出させて…」
「もういいの。ゲレルの野郎は完全に消えたし、なんならこの時代の私とも、分かり合えたしね」
「この時代の……って、え?なんだそれ初耳なんだが」
「初耳もなにも、零夜に話す暇なんてなかったし…。ついでだから話しちゃうね。あれはシロが紅夜に渡していた【ライダーカード】から召喚されたライダーたちがこの時代の私を倒した後の話なんだけど――」
「オイ待てそれも初耳だぞッ!?」
* * * * * * * *
「終わった、のね…」
ルーミアは力が抜けて腰を下ろす。まさか過去の自分と直接対決するなんて、思いもしなかった。いや、過去に行くのだからそのくらいの想定はするべきだったのだ。そこは完全に、ルーミアの思慮の浅さが原因だ。
ルーミアは爆発の中からこちらに歩いてくる二人のライダーを見やる。
「あんたたちも、お疲れさま」
『どうってことないさ。俺たちはただ、彼を守っただけさ』
『助けられる命には手を伸ばす。俺はただ、自分の
「随分と、ご大層な欲望ね」
オーズの欲望に、ルーミアは愚痴る。軽口が出る程度には、元気があるようだ。
ルーミアは膝の上に乗せている紅夜の頭をなでる。あの後、氷は完全に溶け切り【
『気持ちよさそうに寝てるねぇ。なに、君って、この子の彼女?』
「ち、違うわよッ!私が好きなのは零y――ハッ!」
『へぇ~。ルーミアちゃんって、その人のことが好きなんだね』
「~~~////////!!」
自分で墓穴を掘ってしまい、赤面する。両手を覆って、下を向く。
『そんなに恥ずかしがらなくてもいいと思うんだけどな。君くらいの美人さんなら、断る男はいないと思うんだけど』
『俺もそう思うな。それで、その人は君のことどう思ってるの?』
ルーミアの恋愛話に、グイグイと食いついてくる
「うう//…零夜の考えなんて、私が知るわけないでしょ…。こちとら、500年アタックしてるのに、接吻もしたこと、ないん、だから、ね…」
言ってる途中で恥ずかしくなり、言葉がしどろもどろになる。
『500年!?はぁ~気が遠くなるような年月だね』
『いやそれで振り向かない男も逆に凄いよ、逆に』
オーズには慰められ、ウィザードは零夜の方を褒めた。褒めるところはそこではないし、そこは褒められるようなところではない。そこだけ明言しておく。
それに、
「まぁ、逆を言えばそれほど堅実っていうか、愚直っていうか、馬鹿っていうか……不器用なところがたくさんあって、悪になり切れない、優しい人。そういうところが、あの人の、魅力、かな?」
『フュ~!ラブラブじゃん。くっついちゃいなよ、いい加減に』
『それが出来ないから、ルーミアちゃん困ってるんでしょ?』
「あ~も~!!この話はお終い!!異論は認めないわよッ!!」
ルーミアの必死の叫びに、二人のライダーから小さな笑い声が発生する。一件落着の油断した状況。だからこそ、後ろの存在に、気付かなかった。
「なるほど、ね…。惚れた男がいるんだ…『私』」
「『『―――ッ!!』』」
声が、聞こえた。とても聞きなれた声が。三人が一斉にその方向を見ると、そこにいたのは、『ルーミア』だった。さっき倒したはずの、『ルーミア』が、いた。
彼女の体は既に満身創痍で、歩くのが精いっぱいだということが目視だけで理解できた。全身ボロボロになり、服も半分以上破けて、血で汚れた素肌が見える。妖艶と言うより、悲痛だ。体感も効かずに、フラフラとよろめいており、体の体幹がなっていないのは、目に見えていた。
『ルーミア』の登場に、オーズとウィザードは再び警戒するも、ルーミアが待ったをかけた。
「待って」
『えっ』
「『私』から、もう敵意は感じないから」
ルーミアがそういうと、各々が武器を降ろして、道を開けた。
その道を、『ルーミア』はフラフラと千鳥足で歩いていく。そして、ルーミアに膝枕され、寝ている紅夜の前で、正座する。
ライダーたちは未だに警戒しているが、本当に敵意を感じないため、ただ静観することに徹することにした。
「――こうしてみると、普通の男の子、ね」
「そうでしょ?なにも考えずに見れば、この子はただの男の子よ」
「私……今まで何のために、生きてきたんだろう?」
「えっ?」
唐突なカミングアウトに、ルーミアも困惑する。
ルーミア自身、当時のことはあまり思い出したくない出来事だったため、断片的にしか思い出せないでいる。
当時は、復讐のことしか考えていなかった。しかし、探しても探してもゲレルは見つからなかった。(ちなみにこの時は知らなかったが、女神によってゲレルが地上で見つからなかった理由――ゲレルが月の住民だったからと言う理由を聞かされた)
そんなことをしているうちに、ある一つの考えがルーミアの中に浮かんだ。“なんで自分は勝てなかった相手を探しているんだろう”と。普通に考えれば当然のことだ。万全の状態で、負けて、女性としての尊厳を壊されそうになった。そんな相手を、何故自分から探す必要があるのか。バカらしいことだ。
この日からルーミアは自己嫌悪に陥り、その結果、無意識下で自分の記憶を封印した。
この『ルーミア』は、その考えに至る前に、復讐相手を見つけてしまった、
「未来の
「――そう、ね。自分が
「羨ましいわ。単純に、そう。とても羨ましい。私ももっと、早く
「えぇ。そうした方がとても楽だったわ。だって、なんのしがらみもなく、生きていられるんだもの」
「――私も、そうしたかったわ」
『ルーミア』はさらに近づき、紅夜の頭を撫でた。その手つきはとても優しく、母親の腕の中のようなぬくもりを持っていた。
「改めて見てみると、この子の寝顔、とてもかわいいわね。まだ子供だから?」
「そうね。私たちを助けてくれた、大恩人が残した、最後の宝物…。あなたは知らないだろうけど、紅夜が今こうして生きているのは、レイラ自身の意志なのよ」
「―――
「えっ?」
「だって、あなたは私。この子があの男の子供だって知っていながら、あなたはこの子を
「――――」
どうやら『ルーミア』には全てお見通しだったようだ。考えが違っていても、もとは『
それを聞いたルーミアは、続きを聞かせた。ライラのこと、紅夜のことを。
楽しく、嬉しい時間だ。ちなみにこの光景を見ていたライダー二人は。
『…なんでさっきまで殺し合いしてたのに、こんなに楽しく話せてるんだろ?』
『
『――なるほど?』
「今のこの子の保護者は、レイラの双子の姉のライラ。この子をここまで育てたのも彼女よ」
「……その人も、とっても強い人なんでしょうね。仮にも自分の妹を殺した元凶の子供。彼女の遺言だったとしても、ここまで育てるのに、どれだけ苦渋を飲んだんでしょうね…」
実際、ライラは当初紅夜を育てることには否定的だった。いくら最愛の妹の最後の頼みとはいえ、自分の妹を凌辱した男の子であり、妹が死んだ直接的な原因である子供を、まともに育てられる自信なんて、なかった。
それでも紅夜はここまで育った。全てはレイラの頼みを全うした、姉の底力だ。
「私には、そんなことできる自信がない…。赤の他人の私でさえ、こんなに恨み辛みを抱えてきたって言うのに……
「えぇ。とてもすごい人よ」
「うん……。私は血縁なんて概念、ないから分からないけど、それは……美しくも残酷な、繋がりを持ってるんだって…分かった」
「うん。そうね」
「ねぇ、あなたは、その男のどこが好きになったの?」
「えっ!?きゅ、急にそれ聞いちゃう?恥ずかしいな、もー…」
『
「交尾とかしたの?」
「ファ/////!!!??そそそそそ、そんなわけないでしょ!?だって零夜、そういうのに全然付き合ってくれないから…」
「あらそうなの?随分とおかしな人ね?」
「ほんとにそう!
二人は、会話に花を咲かせた。笑い、楽しみ、
そんな二人を、
どれほど時間が経っただろうか。二人は、すっかりと打ち解けていた。
「ふふっ。こんなに感情豊かに笑ったのなんて、いつぶりかしら」
「さぁ、私は忘れたわ。私にとっては、大分過去の話なんだから」
「そうだったわね。……ありがとう。
「え、それって、どういう――」
ルーミアが言い切る前に、『ルーミア』の体に変化は起きた。
『ルーミア』――彼女の体は闇へと還ろうとしていた。彼女の体から闇がにじみ出てきて、虚空へと消えていく。次第に、少しずつ、『ルーミア』の姿が薄くなっているように見えた。いや、事実薄くなっている。
「えっ!?どうしたの、その体ッ!?」
「限界、よ。この体を保つのも。時間が来たのよ、お別れの」
「そんな――!?……どういうこと?」
ルーミアはギロリ、とオーズとウィザードを睨む。『ルーミア』にトドメを刺したのは間違いなくこの二人だ。
「殺すな、って言ったわよね!?」
『いやいや俺知らないって!!第一、最後の一撃は俺じゃないし!』
『いやいや俺に振らないで!?ちゃんと手加減したから!』
「……勘違いしないで。私はね、もう生きているのが限界だって言ったのよ」
「…それって」
「えぇ。私はこのまま消えることにするわ。もう、未練はないしね」
澄んだ目で、天を仰ぐ。最初に見た、濁り切った眼とは正反対の、綺麗な目だった。空に輝く満点の星空を、彼女の瞳は映していた。
しかし、まだ問題はある。
『ちょ、ちょっと待ったっ!今の『ルーミア』ちゃんが死んじゃったら、
『あっそうだよッ!!なんとかしないと…!!』
そのことに気付いた二人は、焦り始める。
今、消えかけている『ルーミア』は過去の存在だ。すなわち、未来のルーミアの消滅に繋がる。彼女たちを守るために召喚されたのにも関わらず、その護衛対象を消滅させてしまったら元も子もない。
「勘違いしないで。私は、死ぬわけじゃないわ」
「それは…つまり?」
「私はもう疲れたの。生きることに。だから……あなたの中で、ゆっくりと眠ることにするわ」
「それって…」
「えぇ。私の命、私に預けるわ。私の力、使ってね」
『ルーミア』は、ルーミアに抱き着いた。その瞬間、彼女の体が闇へと還り、ルーミアに吸収されていく。ルーミアの体が闇に包まれる、と同時に、力が溢れてくる。限界の壁を、容易く破り、限界を超えていく。
『おいおい。なんかルーミアちゃん、急激に強くなってきてね?どういうこと?俺まだ状況が飲み込めないんだけど』
『いや俺に言われても…』
『――とりあえず、これは考えたら敗けってやつかな?』
『……そうだね。見守ろう。彼女を』
そしてその状態がしばらく続き、ルーミアを覆っていた闇が消え、なぜか服も元通りの綺麗なものになっていた。
彼女はゆっくりと目を開け、深呼吸をする。彼女の眼は、澄んでいた。目の前を見ているが、見ている世界が、違っているように。
「ふぅ…」
『おめでと。かなり強くなってるね。魔力の量がさっきより段違いだ』
『合体と吸収でここまで強くなるなんてねぇ…』
「――行くわよ」
ルーミアは紅夜を担いで、歩みを進める。
『え、どこに?』
「零夜たちのところに決まってんでしょうが!!さっさとついてきなさい!!」
先ほどの神聖な雰囲気は一瞬で消え去り、いつもの彼女に戻った。そのまま、ルーミアは紅夜とともに森の奥に消えていく。
『――とりあえず、行くか』
『そうだね』
* * * * * * * *
「と、言うのが
「すまん。理解ができない」
零夜は今までの経緯を1から10まで全て聞いたが、理解が遅れる。
今までの話を纏めるとこうだ。
・過去の自分と
・ライダーたちが置いてけぼり
・『ルーミア』が自ら吸収され、二人が合体してパワーアップ
こんな感じである。最初の二つはなんとなく理解できるが、一番最後が全然理解できない。『ルーミア』が一度“死”を選んで、闇に還っていき、それがルーミアに吸収されたところまではまだ分かる。だが、それでパワーアップってどんな理屈なのかさっぱりだ。
一番わかりやすく言い換えれば、漫画的な展開だ。
「シロの奴…マジでなに考えてんだ?」
シロが【ライダーカード】――なにか細工を加えていたはずの――を渡していたなんて初耳だ。しかもその召喚の発動条件は、おそらく持ち主またはそれに準ずるものの命の危機。渡していた相手は紅夜とライラ。最後に裏切るつもりだったなら、何故そんなものを渡したのか。
最初から裏切るつもりだったのなら、渡す意味はない。
しかし別の方面から考えれば話は別だ。利用できるだけ利用して、捨てること。
シロにとって、自分もルーミアもライラも紅夜も、蒼汰以外は利用できる駒程度の扱いだった。その駒を失うわけにはいかなかったため、カードを渡した。この予測が、案外しっくり来てしまう。
「あぁ~イラつく!!シロの野郎絶対許さねぇ…」
「もう。そんなの、何も考えなければいいのよ。もう終わったことなんだから」
「何言ってんだ。俺とお前を殺した張本人なんだぞ?怒らない方がおかしいだろ?」
「でもその割には、怒ってるようには見えないわよ?」
零夜はシロに対して怒鳴り散らしているが、表情を見てみると怒っているようには見えなかった。
「……そりゃあ、あんなことがあった後だ。怒るに怒れねぇよ。ていうか、ここで怒ったら敗けだ」
「零夜って
「誰がバカだ誰が。俺が普段ボケっとしてるように聞こえるだろうが」
「分かってる癖にーニヒヒッ!」
「んだと、このやろー!」
零夜はルーミアの首に腕を回すプロレス技、スリーパーフォールドをかけた。無論、攻撃の意志はなく優しくだ。二人の体は密着し、顔は満面の笑みを浮かべている。
「思考放棄なんてするから、シロの論破に論破できなかったんでしょー!それで死んじゃったんだから、情けないわよね」
「うっ!……死んじまったのは、しょうが、ない、だ、ろ…」
「論破?これ論破でしょ!?やったー!!口論で零夜に勝てたッ!!」
ルーミアは零夜の腕の中で、喜ぶ。互いに死んだ経緯すらも笑い話に変えてしまうほど、この時間は二人にとって尊くて、儚いものだった。
それに、零夜の変化も凄まじいものだ。ルーミアとの関係性の変化ももちろんだが、先ほどまで精神崩壊の理由の一つで笑えてしまうほど、彼の精神は回復していた。それもこれも全て、自分と言う存在に
それに、この時間が、永遠に続くわけではないからだ。だからこそ、この時間、この場所では互いに素直になって、
「バーカ。口論で俺に勝った程度で喜ぶなんて、まだまだ子供だな」
「はぁ~?さっきまで自分は子供だーって言ってた人が何言ってんのよッ!あと、私は十分大人なんだからッ!!」
ルーミアは意図して自分の豊かに育った二つの果実揺らして、大人であることを象徴する。その煽情的な光景に、零夜は顔を赤くして、そっぽを向いてしまう。
その反応を見たルーミアは、小悪魔のような笑みを浮かべる。
「あ~私の胸見た~。このエロスケベ!それが素の反応?初々しい~~!」
「うっせぇ…!仕方ないだろ、男なんだからッ!」
「フフフッ、ならこれならどうかしら?」(* ̄▽ ̄)フフフッ♪
ルーミアは零夜の腕から抜け出し、前から零夜に抱き着いた。その際に零夜の胸板に自分の
その際に零夜の鼻腔を、女性特有の香りが突き抜ける。「うっ」と声を出しながらも、体は正直だ。モジモジと体が震えている。今までずっと我慢してきた分の反応が、今ここで出てきてしまっているのだ。
「今までずっと我慢してきたんだから、
「うおッ!?」
ルーミアは零夜を思いっきり押し倒した。彼女の妖艶とした笑みが、さらに近づいてきて、心臓の音がさらにうるさくなる。
「な、なにを…」
「どうせ最後だから…シよ?」
「それってムグッ!?」
突如、零夜の口は塞がれた。――同じ唇によって、だ。その途端に息ができなくなる。鼻で呼吸は可能だが、それすらも忘れるほど、零夜は困惑していた。しかし、思考は一つにまとまっていた。
“甘い”。女性との、初めての、キス、ファーストキスだ。その味は、途轍もなく甘かった。それは幻覚なのかもしれないが、それでもとても甘かった。
さらに零夜の口内に、生暖かいものが入ってくる。舌だ。ルーミアの舌が、零夜の口内を犯そうと迫ってくる。抵抗できるわけもなく、二人の舌は、濃厚に絡み合う。うまい。うますぎる。テクニックが尋常じゃない。意識が飛びそうになる。
ファーストキスがディープキスなんて、贅沢がすぎるだろう。
どれほど時間が経っただろうか。1分かもしれないし、10分かもしれない。もしかしたら1時間も経っているかもしれない。ルーミアは満足したのか、唇を放つ。二人の唇を橋渡しにして、よだれが粘液となって、垂れていく。
「――――////」
「ウフフ。まだ
ルーミアの手が、ゆっくりと、下の方に――
「はーいそこまででーす。その続きは“R-18”がついてしまうので中断してください」
「「――ッ!?」」
突如横に、女神が姿を表した。ゆっくりと、二人は女神の方を向いてしまう。
そしてしばらく経ち、ようやく状況を理解した二人は、急いで離れた。
「「うわぁッ!?」」
「とてもいい反応。私あなたたちへの好感度が少し上がったかもです」
「な、なんで…」
「なんでって、元々ここは私の空間ですよ?興奮のし過ぎでそんなことも頭から抜け落ちてたんですか?」
「「―――」」
そう、この空間は女神が創り出したものだ。それゆえにこの場で最強は女神。つまり何でもできるのも女神。彼女は彼女なりの配慮でこの場から姿を消していたのだ。ただ見守っていただけだ。それがどうだろう。この場でコトをおっぱじめることになりそうになったことを危惧して、出てきたのだ。
「羽目外しすぎてませんか?まぁそれほどタマってたってことみたいですけど…。まぁそれは百歩譲っていいとして、人の空間でナニしようとしてるんですか?私の意志一つで掃除だろうがなんだろうができますが、汚されるのは勘弁です」
「う、うぅ…!」
ルーミアは俯いて、なにも言えない。顔は赤いが、冷静さを取り戻し、自分はなにをやっていたのだろうかと自覚する。だが、彼女にも譲れない思いがあり、反論するに至った。
「だって、もう零夜と会えないから、最後にと思って…」
「
「……え?それって、どういうこと?」
思わず聞き返してしまう。零夜も、女神の今の言葉に目を見開いた。
話の内容は置いておくとして、今の女神の言い方だと、二人でいつでもできることだと言いたげだ。
だがしかし、零夜は既にもう一度あの世界へと転生が決まっている。そしてルーミアは復活――
「「あぁー!!!!」」
ここでようやく二人は気づいた。
零夜は生き返り、ルーミアは復活する。それをそのままの意味で捉えれば、二人同時に生き返ることが可能なのだ。二人の中ではこの場でお別れのような雰囲気になっていたため、そんな単純なことにも気付けなかった。いや、気付くことができなかった。
「ようやく気付きました?逆に気づかなかったことに呆れているんですが…」
「いや、お前の性格から考えれば、周りの記憶や歴史が消えた状態への
「あなたの中でどこまで私の評価が地に落ちているのかはわかりました。ですがまぁ今更なので特に気にしません」
「いや気にしろよ」
むしろ、今までの女神の言動や行動のせいでそう思っていた。この
「誰がクソですか?」
「あっやべ」
「―――まぁ仕返しは後でするとして。私はそこまでクズではありません。それくらいの配慮はしますよ」
なにやら不穏なことを呟いていたが、とりあえず
しかし、零夜は女神のことを誤解していたようだ。印象の値が+3くらい増えた。だが仕返しはされるようなので、印象の値が-30くらい下がった。
「でも気を付けてくださいね?転生者であるあなたはともかく、ルーミアさん。あなたは
「「――――」」
「あなた方の行き先は同じ世界ではありますが、別の時間軸となります。それでもいいですか?」
別の時間軸、つまり何がどうなっているのか分からない世界。今までの交流は全て
それでも――
「大丈夫だ。問題ない。なにせ――俺は一人じゃないんだって、気付けたからな」
「零夜……」
「おーアツアツのラブラブでメロメロですね。妬けちゃいます。―――まぁ同じ世界に二人の同一人物がいる問題も、『憑依転生』で全部解決できますから、何の問題もないんですけど」
「「おいッ!!」」
さっきまでの決意が一気に溶けてしまった。
上げて落としてくるのは聞いたことはあるが、落としてから上げてくるのは初めてだ。これだからこの女神は好きになれないのだ。
「さて、おふざけはこれくらいにしましょう」
「ふざけてんな。……最後に一つ聞きたい。ライラと紅夜はどうなってる?」
ライラと紅夜、二人は結局あの後どうなったのだろうか。死んでしまったため分からないが、ライラは背中を深く斬られ、紅夜は片腕が吹っ飛ぶ始末。あの後、二人は無事なのだろうか。
死んでしまったのかと思い込んでいたが、ルーミアの件もある(ルーミアは死んでいるが)。二人には、生きていてほしい。
――あの二人は零夜たちの未来ではすでに死んでいる可能性が高い。
しかし、そう考えるには不確定要素が多すぎる。死んでいるとするならば、白玉楼辺りで二人のことを見ていないのが不自然だ。これは単純に二人のことを見ていないと考えるべきだが、レイラの
(なんであの時ライラは
「――なるほど。確かに真っ当な疑問ですね。しかし、それを聞いたところでなにか意味がおありで?」
「分からないことが一つでもあったら、それは心残りだろ」
「確かにそうですね。ですが、私の口から言えることはその理由はいずれ分かる、としか言いようがありません」
「―――」
いずれ分かる。つまり零夜にその理由が分かる日が訪れるということを意味するだろう。それがいつになるか分からないが、それが聞けただけでも良しとするべきだろう。
「そうか。だったらこれ以上聞かないでおく」
「懸命な判断ですね。それでは決まったところで始めちゃいましょう!!」
「――あぁ、始めてくれ」
「はいッ!!!」
女神は今までで一番いい返事をした。そのまま指パッチンをすると、白い空間が、一変する。
「え――?」
「は――?」
そこは、幻想的な世界だった。
世界すべてが夜で染まり、夜空には満点の星空と、流れ星が無限に流れ、満月が映える花畑へと変わったのだ。花の種類は『
それ以外にも、黒い花の花畑が、別にあった。
他にも外装として、黒いイルミネーションアーチ、風車、
「これは……って、ルーミアお前、その恰好…」
「えっ、どうかし……って、なにこれ!?」
ルーミアの恰好が、いつの間にか
いつもの白いブラウスと黒いスカートの姿ではなく、漆黒のウエディングドレスを身に纏っていた。これには流石の二人も驚いた。
「驚いたでしょう?私からの選別です」
すると、花畑の道から女神がこちらに向かって歩いてきた。
「花嫁衣装。素敵でしょう?」
「いやそれは分かるんだが…」
「零夜!?///」
「俺の服は変わってないのはなんでだ?」
そう、この状況なら零夜の服はタキシードに変わるはずだが、いつもの黒いフード付きの薄いコートを羽織り、黒いズボンと白いTシャツと言ういつも通りの服装をしていたのだ。
「私の気分です」
「……これが仕返しか」
「いやそうじゃなくて!?なにこの状況!?全然意味が分からないんだけど?」
その通り。零夜(ツッコミ役)はなぜかこの状況を受け入れていて、ルーミア(ボケ役)が逆に困惑しているという珍現象が発生していた。
「いや逆になんであなたは慣れてないんですか?」
「俺ももういろいろと吹っ切れたからな…」
「駄目!これは吹っ切れちゃ駄目なやつだよ!?ちゃんとツッコんでよ!」
「まぁいいじゃないですかー。さぁ、始めちゃいましょう、結婚式!!!」
* * * * * * * *
「え、ちょ、え!?どういうこと!?」
「どうしたんですか?」
「いやそれはこっちの台詞!?いきなり結婚式ってなに!?」
あまりの唐突な状況変革に、驚いて慌てずにはいられないルーミア。零夜は完全にこの状況を受け入れて(諦めたともいえる)おり、何も言うことはなかった。
「それに零夜もこの状況に慣れないで!?あなたはそんなキャラじゃないでしょう!?」
「それはですねーそれはですねー。私の仕業だッ!」
「あんたかッ!!」
女神が勢いよく自白した。確かに精神を直接操作できたりできる女神の仕業であれば、この零夜の突然の変わりようにも納得がいく。
人間と言うのは、第一印象でほとんどが決まる。そんな第一印象が突然変わったら、人は大抵困惑する。そんな状況を作り出せる力を持つ女神は、まさにはた迷惑でしかない。
「手っ取り早くこの状況に慣れてもらうためですよー。零夜さんったらツッコミ属性ですから、面倒臭いんですよねー」
「逆にあんたからはシロと似たような余計なことしかしないボケ属性が透けて視えるわ」
「あら、嬉しい。そんな誉め言葉をもらえるなんて…」
「皮肉で言ったのよ」
駄目だ。どんな悪態も女神にとっては誉め言葉かそれに類似したものに化してしまう。一度だけ、女神が本気でキレたシーンを間近で見ているため、ルーミアは本能的に女神を怒らすことを避けているのも、一因であるが。ルーミアがその恐れに気付いている様子はない(ちなみにこれも女神の仕業である)
「ですがよくよく考えたらこんな零夜さんを見たら読者の方々もなんだかむずがゆい感じになりそうなので、戻しておきますね」パッチン
「はッ!?なんだこの状況全く意味分からねぇ!?なんで俺慣れてた!?」
女神が指パッチンをした瞬間、零夜の精神が元の形に戻り、この状況にツッコミを入れ始めた。元の零夜に戻って、ルーミアも安心した。
それにしても相変わらず
「では司会進行役兼神父役は私が遂行いたします」
「おいちょ待――」
女神が手をたたくと同時に、大風が吹き荒れる。それは激しくも優しい突風だった。風は大量の花びらを乗せて、辺りに散乱する。それはまるで花びらの霧雨。
あまりの風に、二人して目を閉じた。そんなとき、鐘の音が聞こえた。ゴーン、ゴーン、と、鐘の音が辺り一面に響き渡り、二人の鼓膜に響いてくる。
「あれ…ここは…?」
「なんだ、ここは…?」
零夜とルーミアが今立っている場所は先ほどと違っていた。さっきは花畑と花畑の間で出来た道だったが、そこは花や蔓を中心とした豪華絢爛なステージのような場所だった。月の光でライトアップされた花畑が、いい味を出していた。
手前には、小さなカウンターのような机がある。そこに、女神の姿はあった。
「あ、おい!どういう状況だこれ!?」
「さっき説明しましたよね?結婚式です」
「話が飛躍しすぎてるんだよッ!こういうのはもうちょっと手順を踏んでからやるもんだろ!?」
「そうよッ!やるにしても、心の準備が――」
「いや500年も同棲しているのに今更ですか?」
「「―――うッ」」
そう言われれば、二人にはなにも言えない。事実、零夜とルーミアは500年も同じ屋根の下で暮らしているのだ。そんな状況、傍から見れば夫婦以外の何物でもない。
「もうそんなに長い期間同棲しちゃってる上に、両想いなんですから、もう夫婦になった方が手っ取り早いじゃないですか」
「それを言われると…」
「何も反論できねぇ…」
「ま、そんなわけでッ!!さっさと済ませてしまいましょう!!」
女神が両手を広げると、今まで散っていた
ちなみに全て黒い花で統一されているが、花言葉などは特に考えられずに束ねられている。
「これでより結婚式ぽくなったでしょう?さぁそれでは始めちゃいましょう!!」
「――はぁ。急すぎるが…やるしかないか」
「零夜!?」
「コイツの言い分も一理あるし、何より俺たちでこの状況をどうにかできるわけがない。コイツ、強硬するつもりだぞ?」
零夜とルーミアが女神の方を振り向くと、口だけしか分からないが女神の顔は満面の笑みを浮かべていた。それを見てルーミアも悟った。「これ、強制イベントだ」と。
「だから俺たちがなにか抵抗しても徒労に終わるだけだ。諦めてこの状況を甘受しようぜ」
「うう……なんで元に戻ってもこの状況を受け入れてるの零夜…まさかまたこの
「アマって口悪いな。違ぇよ。俺もこの経験を得て、気付いただけさ。お前がいれば、俺はなんとかなれるってな」
「零夜…//もう、そういう
「分かった。ルーミア、俺はお前を愛してる」
「直球すぎるってッ!!!」
零夜はついに開き直った、と言うより開き直りすぎた。500年ため込んだ感情を全て曝け出す、それはどれほどの羞恥心に耐えなければならないのか、想像もつかない。しかし、そんなこと関係ないと、零夜は率直に、ルーミアに己の想いを伝えたのだ。
ルーミアも、ただでさえ恥ずかしいのに、さらにド直球に愛の告白をされれば、恥ずかしいを通り越して言葉にできない感情で溢れかえっていた。
「なんだ、直球で言えって言ったのはお前だろ?」
「そこまでしろとは言ってない!ていうか私全然想像してない!急にそんなこと言われたから、恥ずかしいのよ…それに、それに、ぞれ、にぃ…!!」
声を荒げて叫ぶルーミアだったが、次第に呂律が回らなくなっていき、紅い瞳から大粒の涙が零れていた。急に泣き出してしまったため、零夜は困惑した。単純に泣いた理由が分からないのと、急な状況に対応できないというのが理由だ。
オロオロと戸惑う零夜に対して、ルーミアは泣き叫んだ。
「500年だよ!?500年!!私は500年間
「ルーミア……」
「だから……悲しいと同時に嬉しいの。私の500年は、決して無駄じゃなかったんだって…ッ!!」
「――すまん」
謝罪し、零夜はルーミアを抱きしめる。
「―――」
「俺は、ずっと怖かったんだ。大切なものがまたこの手から零れ落ちて、腐り
もう二度とあんな気持ちはしたくない。その決心一つで500年と言う年月、欲を抑え込んできた。ありとあらゆる欲望を、決意で抑え込んで、抑圧してきた。全て、過去の悲劇を繰り返さないために。
「だけど…幸せになるために
「さぁ、御想像にお任せ致します」
「だが、お前の荒治療のせいというかおかげと言うか、俺は自分自身の気持ちに気づけた。――ありがとう」
「…………それ、お礼になってるんですか?お礼なら、もっと感謝の念を込めて言ってくださいよ」
そう言った女神の声は柔らかく、笑っていた。口元の、僅かな微笑み。暖かい家族の団らんを見守る、親のように。
「でもまぁ、私はそういう結婚はできなかったので羨ましいですね」
そんな女神の小さな呟きを、誰も聞き取ることはなかった。
そして突如、零夜はルーミアの両手を強く、優しく掴んだ。突然のことに、ルーミアは顔を赤らめるも、不快な思いはしなかった。
零夜の心臓の鼓動が、早くなり、高くなる。緊張しているのが手に取るように理解できた。少し間が開き、ついに零夜の唇が、動いた。
「だからルーミア。俺の我儘な、自分勝手なお願いを聞いてくれ。………俺と、結婚、してください」
「―――喜んで、受け入れます」
零夜が勇気を出して放った一言に、ルーミアは笑顔で涙を流しながら、受け入れた。
ゴォオオオン ゴォオオオン
それと同時に、鐘の音が響き渡る。その鐘の音色は、二人の
その音色と同時に、女神が誓いの言葉を口にする。
「それでは新郎【夜神零夜】さんは、【ルーミア・夜神】さん、あなたを健やかなる時も、病める時も豊かな時も、貧しき時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦【ルーミア・夜神】は、【夜神零夜】さん、あなたを健やかな時も、病める時も、豊かな時も、貧しい時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「もちろん、誓います」
「それでは、誓いのキスを」
「えっ、それはさっきやった…」
「あれはルーミアさんが一方的にやったから無効です。そもそもあのキスはなんであろうとカウントには入れません」
「あ、そう…」
「それでは、もう一度……誓いのキスを」
互いの顔が赤面しているのが分かる。同時に心臓の鼓動もうるさい。それでも、二人の顔の距離は徐々に近づいていく。二人は瞼を閉じて、そして――
唇を、重ねた。
夜神零夜(新郎)
ルーミアに己の本心を聞かれたことで吹っ切れて、ついに本当の自分を表に出して、彼女への行為を露わにした。
いきなり結婚式とか言われて戸惑っていたが、いつの間にか女神に精神操作されて状況に慣れてしまっていたが、途中で女神自身が解いたために元のわけわからないぞ!?の状態に戻った。
最後にこの経験を得たことで、権能が開花。『離繋』と『創造』が統合したことによって権能、『現幻創消』が発現した。
ルーミア(新婦)
500年の恋が、ようやく叶った。
ついでに強化の理由も明かされた。強化の理由は過去の自分との融合によるものだった。融合の理由としては、『ルーミア』自身がそう望んだことと、同一存在であるためになんのリスクもなくパワーアップすることができた。
恋がようやく叶って、良かったね!!
それにしても、いきなりセ○クスは手順飛びすぎじゃないかな?まぁそれほど溜まってたってことだろうけど。
女神(神“父”?)
今回はあまり干渉しなかったが、自分を突き通して場を滅茶苦茶にかき乱した。
そして、二人の結婚を見て、一言呟いていたが――。
「あの子は元気でしょうか?一応責務もありますし、久しぶりに見に行きますか、遠くから♪」
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