どうもお久しぶりです。龍狐です。タケトリモノガタリ、本当のクライマックスバトルです。
49話を改稿したので、そっちの方も是非見て言ってください。
視界が広がったように感じた。世界が
この力だけで、神に至ってしまうと誤解してしまうほどの甘味が、この力にはあった。
しかし、まだ疑問に思うことがある。それは【制約】の内容だ。権能に覚醒するための工程、[はい]を押す前に確認した際、【制約】の内容を知った。
あれはそういうことだったのだ。
確かに『権能』などと言う常識破り、チート能力をタダで入手し、使えるなんて虫が良すぎる話だ。むしろこんなデメリットがあった方が納得できる。
ライラ、レイラ、紅夜――そしてシロ。彼らはこのデメリットのことを承知で権能の力を受け入れたのだろうか。知らなければ絶望しそうだが、不思議とそんな気はしなかった。零夜は三年間、二人と言う人物に触れてきた。シロに至っては500年だ。レイラの人となりも、ライラ経由で知った。全員がこのデメリットを知らないということはあり得ない。
あのシステムの最後の忠告分は、そういう意味だったんだ。
思わず自分が手に入れた
力を持った瞬間、頭にその力の力の使い方が流れ込んできた。不思議と大量の情報を全て飲み込むことができた。これほどのデータなら、知恵熱が出てもおかしくないのだが。だが当然とも言えよう。何故ならデータが流れ込んできたと言っても、全てが一つにされて送られてきた。パソコンで言い換えるのならば、全てのデータを一つのファイルに圧縮してそのまま零夜の脳内に送られ、未解凍状態だというだけだ。
これを解凍する前に迷わず選んだ『才能』に助けられた。もし自分が権能に覚醒したら、こういった『才能』が欲しいとずっと考えてた。事実、この『才能』に早速助けられたのも事実。
『才能』――。『権能』を与えられたものに必ず一つ与えられるもの。シロは『変声』、ライラは『教育』、紅夜は『隠密』、蒼汰は『シリアスブレイカー』と、
「【現幻創消】、発動」
零夜が呟いた瞬間、何もない空間から突如として無数の剣が出現する。アナザーディケイドはその剣たちに見覚えがある。【タイタンソード】に【フレイムソード】、【ドラグセイバー】などのレジェンドライダーたちが使っている武器たちだ。
零夜が指を鳴らすと、その剣たちが一斉にアナザーディケイドに向かって射出される。
アナザーディケイドもすかさず【スピカ・ヴィルゴ(武器の生産)】と【アルゲディ・カプリコーン(複製)】を発動して炎、氷、雷などの属性を纏った武器たちを一斉射出する。
互いの武器が衝突し、破壊され、対消滅を繰り返す。
「――――」
『―――(やはり駄目か。零夜が何を考えているのかさっぱり分からない。零夜が権能に覚醒したから、僕の【ジェニミ・ライフ】も無意味か…)』
双子座の権能【ジェニミ・ライフ】。かつて*1シロ――レイヤが零夜と念話をするのに使っていた権能の正体だ。この権能、『共有』は自分と最も近しい魂の持ち主とリンクし、互いの能力や持ち物を共有できるというある種のチートだ。
そして、その共有は零夜が【アナザーゴースト】として簒奪した魂も例外ではない。魂とは、一言で言えばエネルギーの塊のようなものだ。魂を細部まで操作つかうことのできる【
それに、このジェニミ・ライフは零夜のデメリット除去にも貢献している。零夜は自身能力『
ちなみにその逆も可能で、春雪異変のときに紫の油断を誘うために――ただし、そのためには相手の同意が必要になる――のだが、今までは無理やり許可なくゴリ押しでこの権能を零夜に使っていた。と言うのも、零夜は『権能』に覚醒しておらず、いわば無防備状態だったため、能力を使用し放題だったのだ。
しかしそれも『権能』に覚醒した今、不可能になっている。
だが、それだけならレイヤが残念がる必要はない。ジェニミ・ライフにはもう一つ隠された能力が存在していたのだ。それが『思考の閲覧』だ。要するに対象の心を読むことができる一種のさとり妖怪の能力に近い。
それゆえに零夜の考えはシロには全て筒抜けだったのが、零夜の思考を面白がっていたため、思考が読めることを表に出したことはない。
(だが、なんのつもりだ?このまま同じことを続けていても戦況に変化なんて起きようはずもない。零夜はそんな無意味なことをするはずが…ん)
思考の海に浸っているうちに、ある変化に気が付いた。
『押されている…!?バカなッ!』
そう、それはアナザーディケイドにとって驚愕すべき事実と現実であった。先ほどまで中心でぶつかり合っていたはずの互いの武器が、徐々にこちら側へと向かってきていた。
異変に気付いたアナザーディケイドはすぐに生成数を増やし、対抗しようとした。だがそれでも、戦況は変わりを見せない。
(一体なにが起こって…!?権能は問題なく発動して…)…なッ!
アナザーディケイドは無意識的に後ろを振り向いた。と言うより確認だ。【アルゲティ・カプリコーン】の『複製』の能力がちゃんと発動しているかのだ。そしてそこには衝撃の光景が広がっていた。
「発動と同時に…消滅してる…?』
アナザーディケイドが見た光景は、自分の武器が複製されたと同時に消滅すると言う現象だった。
この意味不明の現象を余所に、零夜の攻撃は徐々にこちらを押してくる。
『クソッ!』
いずれこのままでは押されるのは確実。ならば次の一手を投じる必要がある。アナザーディケイドは右手に漆黒のエネルギーを纏い、真正面に突き出した。衝撃波による
『あがぁ!?』
拳を突き出し、自分の右手がオーロラカーテンで見えなくなった瞬間、アナザーディケイドの後頭部に強烈な衝撃が響き渡った。その衝撃で体が横転する。
(なんだ、なにが起きた!?)
意味不明、理解不能な攻撃が、アナザーディケイドを混乱へと陥れさせる。だが、そんなことは今重要ではなかった。横転したことによって、武器射撃による攻撃の手を緩めてしまった。それにより、無数の零夜の武器が、アナザーディケイドを雨の矢のように襲う。
『う、がぁ…!この程度で、俺はたじろがないッ!』
横殴りの武器の雨にアンタレス・スコーピオンとサダルメリク・アクエリアスの『抗体』と『回復』の権能でゴリ押しで耐える。零夜は既に権能に覚醒しているため、アナザーディケイドにダメージが通らない道理はない。そのため、痛みがアナザーディケイドを襲うが、それを耐えてアナザーディケイドは突き進む。
『こっちに…こいッ!』
蛇使い座の権能『制圧者の手』の念能力で零夜をこちらへと引っ張ろうと画策する。黒いエネルギーが零夜の体を包み込み、その体をこちら側へと移動させていく。
その間にもアナザーディケイドは零夜の武器の雨でダメージを負っているが、執念とアルファーグ・パイシーズの『体力チート』がそれを可能としている。
『制圧者の手』によって引き寄せられる零夜と、引き寄せている張本人が前に進むことによって、距離が徐々に縮まっていく。そして、直接触れられる距離まで届こうとしている。――だというのに、零夜の表情は一向に変わっていない。胆力が元からすごかったが、『権能』に覚醒してからよほど図太くなっていたようだ。
『ここまで届けば…問題なく当てられるッ!』
拳が届く距離で、今度こそと意気込んでエネルギーを右拳に集めて、一発をぶつけた。だが、その攻撃は空を切った。
『な――ッ』
唖然として、体制を崩したその瞬間、衝撃がアナザーディケイドの顔面を襲い、血反吐を吐いた。
「バカが。どこ狙って打ってんだよ」
自分を侮辱する零夜の声が――目の前から聞こえた。そう、空を切ったはずのその場所で、零夜が立っていた。
訳も分からないまま、殴られ、体制が崩れている瞬間にアナザーディケイドはラムダ・キャンサーの『情報整理』能力で即座に解析を始めた。
(今何が起こった?俺の攻撃は確実に零夜の顔に入ったはずだ。だけどその攻撃は空を切った。そしてその瞬間に零夜の攻撃が俺に当たった。思い出せ、零夜に攻撃が当たりそうだった瞬間を!……そうだ、あの時、俺の拳は
「考える時間はやらねぇよ。大人しくぶっ飛ばされてろ」
『アガッ!!』
体勢が崩れて宙に浮いていたアナザーディケイドの顔面に、追加で零夜が一発入れた。アナザーディケイドの体が地面にぶつかり、強力な衝撃と砂埃が辺り一面に舞う。
『クソッ』
すかさずオーロラカーテンを出現させ、距離を取った。権能で体を回復しながら、零夜の様子を伺った。
『舐めてた…流石に『権能』に覚醒したんじゃ、今までの零夜と違うことは頭では分かってたのに…僕もまだまだだな』
「グチグチうるせぇよ」
『最初からこうすべきだった。観させてもらうよ、君の力』
アナザーディケイドは手をかざし、自身の後ろにうオーロラカーテンを出現させた。そこから、【仮面ライダーG4】【仮面ライダーレイ】【仮面ライダーダークゴースト】【仮面ライダー風魔】を召喚した。
『いけッ!』
レイ、ダークゴースト、風魔が武器を持って零夜へと突撃し、G4が【ギガント】を装備して、零夜に標準を合わせ、発射した。四つのミサイルが零夜を襲う。
「―――」
その状況に焦ることなく零夜は、右手を前に振るう。その瞬間、ミサイルが全て霧散する。次に零夜は向かってくる三人のライダーを視認すると、指を鳴らした。
「ライダーの召喚はお前だけの特権じゃないんだよ」
その
『ライダーの召喚までできるのか…!?』
アナザーディケイドは
この短時間で零夜が見せた
(考えろ…零夜の能力は【げんげんそうしょう】。だがその漢字が分からない。幻覚や幻影を発生させる能力から推測するに、“げん”のうちの一つは『幻』で間違いない。そして俺が複製した武器を消したところから“しょう”の字は『消』。残るはもう一つの“げん”と“そう”の文字。“そう”の文字は大方予想がつく。零夜の能力は『離繋』と『創造』だった。なら“そう”の文字は『創』。予想した情報を統合すると【げん幻創消】になる。『創』と『消』の文字は対立した文字。なら、最初に入る“げん”の文字は――)
「おい、お返しするぞ」
結論へとたどり着きそうだった瞬間、零夜の言葉で意識が戻る。目の前ではライダーたちが戦っており、向こう側では零夜が右手を上げていた。すると、零夜の頭上にミサイルが四つ出現する。奇しくも――いや、確実に狙っている。そのミサイルは【ギガント】のミサイルそのままだった。零夜はそのまま真っすぐ、ミサイルを発射した。
『バカな、そのままじゃライダー共に直撃――ッ、チッ!!』
一瞬、なにをやっているんだと考えたが、すぐにその考えを払拭した。零夜の能力が【げん幻創消】とほとんどの漢字が予想ではあるが分かっている以上、それが正しいのであれば、ただちに行動すべきであった。そして、アナザーディケイドの予感は的中する。
なんと、ミサイルがライダーたちをすり抜けて、そのままこちらへ向かってきたのだ。咄嗟にアナザーディケイドの目の前にG4が立って、アナザーディケイドは自身の目の前に黒いエネルギーの壁を生成した。ミサイルはそのまま真っすぐG4に触れると――着弾し、爆発を起こした。
『そうか…それが君の『権能』か…ッ!!』
アナザーディケイドはバリアを生成し、G4が壁になってくれたおかげで、なんとか無事だった。その代わり、G4は爆散してこの世界から退場したが。零夜の『権能』の力を理解したと同時に、ライダーたちの決着もついた。
上空を出現した皇帝の紋章に、ジャコーダービュートで標的を刺し貫いたレイ、ダークゴースト、風魔をビュートを通して宙吊りし、魔皇力を直接流し込み、赤い稲妻が走った。サガの必殺技、【スネーキングデスブレイク】がライダーたちを襲う。そこを狙いネクロムの【ネクロムデストロイ】とレーザーXのライダーキックが炸裂し、爆散した。
役目を終えたライダーたちが、消滅する。
『【げんげんそうしょう】。あの時はよくわからなかったが、能力を見ればよく分かった。『現実』『幻想』『創造』『消去』。それらを自在に操る『権能』…。【現幻創消】。それが今の君の力か』
「―――」
『創造』と『離繋』。この二つの能力が混ざったことにより生まれた新たな
種明かしをすると、武器を召喚した力が『創造』、複製したばかりの武器や【ギガント】のミサイルを消したのは『消去』、零夜の体やミサイルがすり抜けたりしたのが『幻想』、逆に出現させたりしたのが『現実』の力だ。確かにすごい、すごいが――、
『だけど、その程度なのかい?君の権能の力は?』
「―――」
『君の力はある程度解明したと言ってもいい。だが、一つだけ腑に落ちないことがある』
アナザーディケイドは先ほどのことを思い出す。そう、オーロラカーテン越しの攻撃が、何故か自分に当たったことだ。あのオーロラカーテンは正常に起動していたし、座標だって問題はなかった。あの攻撃、最初は訳が分からなかったが、自分の攻撃が自分に当たったということしか説明がつかない。
『俺の攻撃を察知して、攻撃を俺に返したってところまではいい。普通なら、オーロラカーテンを二重にして俺の方に繋げた、でも十分説明はつく。だが、』
アナザーディケイドは言葉を続ける。
『今の俺は偽物とはいえ【ディケイド】だ。
「――――」
『はは。今の俺とは話したくもないらしい。まぁ仕方ないが。』
今目の前にいる怪物は一度自分を殺した宿敵だ。憎まないはずがない。だが、そんなことお構いなしに
『権能は汎用性が高い。俺、蒼汰、圭太のように字面から派生した能力をいくつも使えるように』
シロの権能はまだ正式名称は明らかになってないが、『自然現象』や『星座』に関連した能力を使用し、蒼汰は『宝石』、圭太は『オリュンポス12神』の力を使う。どれも12の力を使っているように、工夫次第で可能性は無限なものが多い。
ライラの『光操作』やレイラの『ずらす』――『位相操作』も単純そうに見えて広く使える。『権能』に覚醒すれば、その力に耐えられるように体も自動的に強化される。ライラが『光操作』を自由に使えているのがいい証拠だ。
なら、【現幻創消】にもあるはずだ。他にも飛びぬけたなにかが。
「……それなら簡単だ。さっきお前が解き明かした『幻想』の能力でお前の認識を狂わせた。それが答えだ」
『――――』
思いのほか、あっさりと自分の能力の一端を申告した零夜に不信感を感じる。確かに零夜の権能の力は先ほど推理したばかりだ。だからバレた以上隠しておいても意味がないと踏んだのだろう。これが真実だとすれば、『誤認させる力』はかなり厄介になる。偽物とはいえディケイドの力すらも誤魔化すその力に戦慄する。原作キャラにも『認識』を狂わせる能力を持つ者がいる*2*3*4が、その中でも上位に位置するだろう。
だが、それでもこんなにあっさり教えたのが気がかりだ。今の零夜が自分に情報を自分から教えること自体不可解だ。アナザーディケイドは考え込んだ。だが分からない。分からないなら――
『戦って解明するのが一番だ』
アナザーディケイドは両手に漆黒のエネルギーを纏わせ、零夜に突撃する。拳が届く距離まで近づき、拳を振るい、零夜は爽快なステップと軽い足取りで避けていく。
(速い、そして無駄がない!動きの無駄を『消去』してるのか?こんなことまでできるのか!?今の俺のステータスでも追いつけないなんて…!)
今のアナザーディケイドのステータスはこのようになっている。
攻撃:16384
防御:16384
速度:16384
耐久:16384
精神:16384
霊力:16384
魔力:16384
アナザーディケイドの体で――と言うかシロ自体【エルナト・タウルス】の『倍化』に耐えられる最大の強化数値だ。これ以上やると体が
「もういい加減避けるのも飽きたな」
その一言とともに、再びアナザーディケイドの顔面に拳が叩き込まれる。
『あがッ…!』
アナザーディケイドの体がふらつく。攻撃を受けたからだけではない、もっと、なにか――
『力が…抜ける…』
全身から、力が抜けるように感じた。強烈な倦怠感に、アナザーディケイドの体は倒れることはなかったがよろけ、なにが起こったのか頭を整理する。そして、一つの可能性に気付いた。
『まさか…!』
アナザーディケイドは気づいた。すぐに
攻撃:8192
防御:8192
速度:8192
耐久:8192
精神:8192
霊力:8192
魔力:8192
『ステータスが…下がってる…!?』
ステータスが、16384から8192へと下がっていた。この数値はちょうど÷2をした数値であり、半減してしまっていることになる。特殊ななにかされた覚えは一切ない。強いていうなら、零夜に一発殴られたくらいだ。それを思い出し、アナザーディケイドは気づく。
『そうか……
そう、強烈な倦怠感――つまり弱体化が起こる前、アナザーディケイドは零夜に殴られた。それが
『消去』。おそらくこの力が関わっているだろう。と言うか、この力しか思いつかない。『消去』の力がどれほどまでに及ぶのか、全く理解できていない状態だったが、まさか基礎能力まで『消去』できるとは、思いもしなかった。
『まさか…そんな力まで、あるなんて…』
「お前がそう思いたいならそう思えばいい」
『…なに?』
零夜が呟いた言葉に、反応を示す。「そう思いたいならそう思えばいい」この言葉は、説明する意志がないとも捉えられるだろう。だが、そのままの意味で言うのなら、“違う”と言うことになる。ここで聞いても、零夜はきっと答えない。なら、自身が取るべき行動は一つ。
『攻撃あるのみ。最初からこれ一つだ』
「―――」
アナザーディケイドは『権能』を発動する。【スピカ・ヴィルゴ】【アルゲティ・カプリコーン】の力が発動し、全方位にガトリングガンを無数に設置する。さらに【アリエス・ボテイン】の『空間歪曲』を使い、
『追加でどうぞッ!!』
さらにその隔離空間の中に核爆弾レベルの爆発力を有する爆弾を過剰なほど、アナザーディケイド自身ですら数えられないほどの量を投入し、爆ぜる。爆発音はしなかった。無論、空間を隔離したということは、その中身は次元が違うことになる。言い換えるのなら、その空間だけ存在していないことになるからだ。
『普通なら死んじゃうけど、今の君にこれが効くとは考えにくい。さぁ、そこからどうする?どんな能力で俺を圧倒してくる!?』
返事はない。ただ静寂が支配するだけだ。それでもアナザーディケイド――シロは確信する。今の零夜があの程度でやられるはずがないと。短時間だが、何度も見てきた。零夜の新たなる
――少し時間が経って、背後から気配を察知した。
『そこかッ!!』
アナザーディケイドは黒いエネルギーで手刀を創り出し、背後の存在を――零夜を貫いた。決まった。完全に決まった。アナザーディケイドはそれを確信する。
しかし、その確信が誤りであったことにすぐ気が付いた。
『幻影…?』
手刀は、空を貫いていたのだ。真後ろにいたのは、まごうことなき夜神零夜の姿。だが、貫いた感触がない。出血もしていない。顔色を少しも変えていない。すぐさまアナザーディケイドの脳裏によぎったのは『幻想』の力だ。だがおかしい。幻影に気配なんて存在しないはずだ。おかしい。どう考えてもおかしい。だが、今考えるべきはそれではない。幻影を囮に使ったということは、確実に次の攻撃が来るはずだ。
アナザーディケイドはすぐに後ろを振り向いた。反射的に、振り向いてしまった。後ろに
『しま…ッ』
「あぁ、お前にしては凡ミスだったな」
『な…ッ』
「臨機応変に対応できるお前にしては、こんな初歩的な囮に躓くとは、な」
アナザーディケイドは剣で貫かれた――背中を
(はッ?)
アナザーディケイドに、すぐさま疑問、疑念、不可解と言う感情が襲ってきた。おかしい。どう考えてもおかしい。もうそう思うのは何度目だろうか。アナザーディケイドは後ろを振り向いた。零夜がそこにいると思ったからだ。
状況はこうだ。後ろから気配がしたと思い、後ろに手刀で攻撃したら、それは零夜の幻影だった。だから後ろに本物の零夜がいると思って後ろを向いた。そしたら後ろにはなにもいなかった。そしたら後ろから剣で貫かれた。その証拠に、アナザーディケイドの腹部から猛々しくも荒々しい見た目の、しかも刃部分が全て“かえし”になっているところから、殺意の高さが伺える。だが、重要なのはそこではない。
この状況を素早く簡潔にまとめれば、幻影に攻撃されたことになる
『バカ、な…!』
「――――」
アナザーディケイドは刀身を掴み、後ろを振り向く。そこには、憎悪の表情を浮かべる零夜がいた。零夜は刀身から手を離し、そのままアナザーディケイドを睨む
『その君は…紛れもない幻影だったはずだ…!何故、攻撃が…』
不意に、アナザーディケイドは零夜を
どんな力だ、どうやってこんな芸当を――
『そうか……『現実』と『幻想』の力…。そんなことまで可能とするのか』
アナザーディケイドは――シロは当初、零夜の権能【現幻創消】の意味を解読はしたが、『現実』の力のみは分からなかった。他の三つ、『幻想』『創造』『消去』に比べて、『現実』は抽象的過ぎてどんな力なのか想像できなかったからだ。だが、その力の一端が今、目の前にあった。
『『幻想』で作り出した“偽物”を…『現実』の力で“本物”にしたのか…!』
そう、『現実』の力は『幻想』とセットになって初めて力を発揮する力だ。『現実』の力はその場に存在しないものを存在させる力だ。『創造』の力と似ているが、本質が違う。簡単に言えば、『創造』は無機物にしか効果がないが、『現実』は有機物と無機物、両方に効果があるのだ。その力で、幻影だった零夜を“本物”にしたのだ。
「流石だな、まぁそのくらい頭が回ってくれないとこっちも殺りごたえがない」
『―――ッ!!』
「はっ、もう言葉も出てこないか。ざまぁないな」
前から、アナザーディケイドの正面から、ゆっくりと“零夜”が歩いてきている。アナザーディケイドはその光景にゾッとしたが、すぐにカラクリを理解した。
『そうか…『幻想』を『現実』にできるのなら、
『幻想』を『現実』に、つまりは存在しないものを存在させる力を逆に使うことによって、存在してたものを一時的に存在していないことにできる。ライダーの召喚もこのコンボによるものだ。最初に『幻想』でライダーの幻影を作り、『現実』の力でその存在を本物にする。これがライダー召喚のカラクリだ。しかし、存在を操る力と言っても、本当に存在してた、してないという認識を『現実』の力では操ることはできない。それにそもそも【現幻創消】自体に『存在』自体を消せるような力はない。
突如、アナザーディケイドの後ろにいた零夜が消える。『現実』と『幻想』の力が解除された。支えを失ったアナザーディケイドはふらつきながら、目の前にいる零夜に顔を向ける。
「あぁ。俺の体を一時的に幻影にした。おかげでこの通り、ピンピンしてるぜ」
『まんまと不意を突かれた…。ヴヴヴ…ヴァッ!!』
アナザーディケイドは刀身を両手で持ち、思いっきり引っ張る。かえしがついている以上、引き抜こうとすれば今以上の激痛が走るだろう。ならば、刺された方向に逆らわずに抜けばいい。
アナザーディケイドは剣を思いっきり引っ張り、やがて血で濡れた持ち手が露わになる。その剣を投げ捨てると、アナザーディケイドは傷口を手で覆う。
『傷の治りが遅いし、滅茶苦茶痛い…。あの剣、刃に特殊ななにかが仕込まれてるな…』
「ご名答。お前の回復能力は把握してるからな。少しでも回復を阻害できればと思って、だ。どうだ、俺からのプレゼントは」
『そうだね……。フフフ、ハハ、ハハハハハハハハハハハ!!!!』
「は?」
突然、アナザーディケイドは不適に笑いだした。爆笑だ。腹に穴が開いているにも関わらずの大爆笑だ。これには流石の零夜もドン引きだ。何故急に、このタイミングで笑いだすのか、零夜は理解できなかった。
笑い終えたアナザーディケイドは、その醜悪な顔を零夜に向け、高らかに言う。
『素晴らしいよ!!俺をここまで追い詰めるなんて思いもしなんだ!!よくぞここまでッ!!』
「意味わかんねぇな。もう気持ちわりぃから、喋んな」
『そうだね。今の君に話しても、無意味な話だ。そろそろ、終わりにしよう』
アナザーディケイドは腰の血走った眼球にも見える生物的な意匠のベルト型部位を中心に、腕を一瞬クロスさせた。その瞬間、強烈な紫色の波動がアナザーディケイドから放出される。そのままジャンプし、キックの体制を取ると波動を紫色のカード状に変え、まるでディケイドの【ディメイションキック】のようなキックを放った。
「……『創造』、発動」
【現幻創消】の『創造』を発動すると、零夜の右手にシアン色の銃が握られる。その名は【ネオディエンドライバー】。そのカードにディケイドのファイナルアタックライドカードを装填する。
エネルギー状のディケイドのファイナルアタックライドカードが複数、アナザーディケイド目掛けて縦に並ぶ。アナザーディケイドの斜め降下と零夜が引き金を引き、【ディメイションシュート】が炸裂するのは同時だった。互いの攻撃が拮抗しあい、衝撃波が辺り一面を支配する。
『ハァアアアアアアアアアアア!!!』
「……長引かせるつもりはない。もう終わりにしよう」
零夜が左手の指を鳴らすと、アナザーディケイドの背後にディケイドのファイナルアタックライドカードが
『なにッ!?』
その円の中心から、カードの塊のようなディケイドが出現し、ディケイドのキックがアナザーディケイドの背中に直撃する。その衝撃で、アナザーディケイドはキックの体制を崩し、そのままディメイションシュートの攻撃を直に喰らった。
『ヌァアアアアアアアアアア!!!!』
そのままアナザーディケイドを起点として、強烈な爆発が起こった。零夜は自身の体を『幻想』でないものにし、爆風の影響を受けずに済んだ。その光景を見て、零夜は思わず呟く。
「なんだあのディケイド…?」
零夜が召喚したのはコンプリートフォームのディケイドのはずだ。だが、実際出てきたのはコンプリートフォームをもっとゴテゴテに武装して、カードをさらに増やした見た目のディケイド。あんなもの知らないと、出した覚えすらない。零夜が疑問に思っているとどこからか、「サービスですよ」と、そんな声が聞こえた、そんな気がした。
* * * * * * * *
「はぁ…」
荒野の燃え盛る炎の中、ボロボロで血まみれの白装束を来た男が立ち上がった。シロ――ヤガミレイヤだ。シロはあれほど強力な攻撃を前方と後方、両方から受けたというのに、ピンピンしていた。これも【アルファーグ・パイシーズ】の『無限体力』――体力チートのおかげだ。その権能がなければ今のシロは立ち上がることすら困難だっただろう。シロは服についている埃を振り払うと、手に持っていた【アナザーディケイドライドウォッチ】が粉々に砕け散るのをその目で目撃する。
「あーあ、壊れちゃった。まぁ仕方ないか。ディケイドの力で倒されたから」
「元気そうだな」
「あ、見つかっちった。でもいいか」
零夜がシロを発見するが、シロは特に気にしている様子はなさそうだ。真剣な面持ちで零夜とシロは対面する。しかし、顔とは裏腹に軽い口調でシロは零夜に話しかける。
「まさかここまで強くなるとはね。驚きだよ。これなら僕がいなくても安心だ」
「バカいえ。もうお前に頼ることなんざ一生ねぇよ」
「ははっ、その言葉、いずれ破る日が来るだろうけどね」
零夜のきつい言葉にもなんの反応もせず、軽い口を叩くだけだ。もうこの話を続けるだけ無駄だと分かった零夜は、次の行動――質問をする。
「一つ聞かせろ」
「なんだい?」
「何故闘いの場に
「――――」
零夜のその質問に、シロは押し黙った。普通に考えればおかしなことだった。オーマジオウの像。魔王の墓場。シロは尊敬している人物が眠る墓場を闘いの場に設定し熾烈な戦いをしているという状況だ。普通に考えればおかしい。しかし、当初は零夜もシロとの戦闘に集中するために思考を放棄していたが、よく考えれば矛盾点だらけだ。それに、一番決定的なところは――、
「俺は『権能』に覚醒してからいろいろ敏感になった。『権能』に合う体に強化されたおかげだな。それで、お前が俺を隔離したあの空間、あの墓だけ対象外になっていただろう。あの隔離空間は墓ごと飲み込んでいたが、アレだけ全くの無傷だったからな」
「――――」
シロは、あの像――墓が傷つくことを非常に恐れている。そうしなければ、攻撃対象から外すなどと言うことはしないはずだ。だが、ここで一つの矛盾が生まれる。そんな大事な墓がある場所で戦いを行ったのは何故かと言う疑問に帰結する。
「ん~……流石に隠し通せないか。まぁ当たり前っちゃ当たり前だけど」
「さっさと言え」
「焦らないでって。そうだね…一言で言えば、
「……俺にオーマジオウの死を伝えて何の意味がある?」
そこが分からない。何故わざわざ零夜をここに連れてきてオーマジオウの死を見せたかったのか。確かにオーマジオウが死んだなんて衝撃の事実、受け入れがたいものだ。そもそもオーマジオウと言う存在はチート級の存在だ。2068年までの全ての仮面ライダーの力を保有し、世界の破壊と創造を可能とする恐ろしき力。そんな存在が死ぬなんて、一体誰が考えられるだろうか。それを零夜に信じさせるという意味で、ここに連れてきたのかもしれない。だが、その死亡の情報を零夜に伝えて、シロは一体なにがしたかったのか。結局はそこに帰結する。
「君は最初、オーマジオウが死んだなんて、信じられなかっただろう?」
「当たり前だ。オーマジオウの強さは知ってるからな」
「そしてその死因は自殺でも老衰でも病死でもない。ましてや事故死や自然現象による死でもない。ここまで言えば、僕がなにが言いたいか、分かるだろう?」
「――――ッ!!」
シロの言葉で、流石に気づいた。オーマジオウの死因が自殺でも老衰でも病死でも事故死でも自然現象による死でもない。そのどれも当てはまらないとするならば、残るは――、
「そう、オーマジオウは殺された。他殺だよ」
「……一体、誰に?」
「女神がクソ野郎と呼ぶ存在にさ」
「――――」
零夜は言葉が出なかった。目の前にいる怨敵への復讐心、憎悪などを全て忘れ、ただ佇む。自身を遥かに圧倒する存在、女神。『権能』と言うシステムを創り出した存在、女神。その女神と同列の存在であり、その女神が死ぬほど嫌悪している存在、通称“クソ野郎”。ソイツが、オーマジオウを殺害した?実際に聞いても、やはり信じがたい。
「信じるか信じないかは君次第だ。それとねぇ、零夜。もうこの際だから教えておくことにするよ」
シロはゆっくりとこちらに近づいてくる。その行動に警戒し、いつでも攻撃できるように身構える。
「あぁ、そんな警戒されちゃ俺も傷つく。でも仕方ない。教えることだけ教えることにするよ」」
「――――」
「君はさぁ、自分の力に疑問を感じたことはないかい?」
「は?」
急に喋りだしたことに、零夜はハテナマークを浮かべる。自分の力に疑問。そんなの今まで感じたことがない。元々、既に終わっていた人生に、女神が新たに道を作り、自分はその道を進んだ。確かに今思えばあの女神が用意した『創造』と『離繋』と『ダークライダー』『アナザーライダー』の力。あの女神の性格を考えれば、なんらかの作為しか感じない。
「はぁ…どうやら分かってないみたいだね」
「……なんだと?」
「君の顔を見れば大体分かる。あの女神様に合ったってことは、彼女の性格を知ったってことになる。だったら僕の質問で最初に考えるのは女神からもらった力自体に疑問を持つだろうけど…そうじゃない」
「だったら、なんだ?」
「何故『仮面ライダー』と言う力に疑問を感じない?」
「―――ッ」
その言葉を聞いた瞬間、夢から覚めたような感覚に陥った。そうだ、シロの言う通りだ。普通に考えれば、おかしいことだったんだ。それを、自分で選んだものではないと、思考停止していた。
「この【東方project】の世界において、『仮面ライダー』とは本来不必要な変数だ。何故女神がそんな本来無駄な要素を付け足したと思う?」
「――――」
今まで、ずっと疑問に思ったことはなかった。ただもらった力に満足して、思う存分使っていただけだった。本来、この世界では「程度の能力」さえあれば十分やっていけるだろう。何故、『仮面ライダー』と言う本来必要ない要素が足されていた?頭が思考でいっぱいになる。
「いいか、これはいわば宿題だ。ヒントはすでに出ている。これを紐解いて、次に合う時はその答えに少しでもたどり着けるよう、期待しているよ」
「次?ここで退散させるわけないだろ。まだルーミアたちがお前のことを殴ってない」
「彼女らにも僕のこと殴らせるつもり?それは後の機会にしてくれ。僕はちょっと疲れたから、じゃあねぇ~」
その時、景色がピキピキと音を立てながら割れ始めた。その裂け目は徐々に広がっていき、やがてこの空間を全てを支配し、――完全に砕け散った。景色はバラバラと割れた鏡のごとく崩れていき、光が世界を支配した。
「―――」
次に零夜が目を開けると、そこは元の場所――月面だった。夜空と殺風景な風景、何度見ても、見慣れた月面だ。
「……あの野郎。最後の最後にとんでもねぇ
『仮面ライダー』の意味。確かに気になるが、今考えることではない。今、すべきことがある。
後ろを振り向けば、三人の人影がある。顔を上げれば、三人がいた。彼女が、零夜の姿を見て、満面の笑みを浮かべた。零夜は歩き、彼女は駆け寄り、飛び込んでくる。それを零夜が受け止めて――決まりの一言。
「ただいま」
「おかえり」
次回辺りでタケトリモノガタリ終了予定です。タケトリモノガタリが完全に終了したら、“零夜たちが介入しなかった世界線”要するにバットエンドルートの投稿もします。そして初期の【東方悪正記】の非公開状態も解除するので、今と前の違いもよく見てみてね。
夜神 零夜
今回無双した人。【現幻創消】を速攻で使いこなしてシロを圧倒した。ちなみに零夜が現幻創消をすぐに使いこなせた一番の理由に獲得した『才能』が関わっている。
非常に徹したけど、やっぱりまだ甘いところがある。それに、迷いも。
シロ(ヤガミ レイヤ)
アナザーディケイドのウォッチが粉々に砕け散って、落ち込んじゃった。すぐに立ち直ったけど。尊敬している人の墓がある場所を戦場に選んだキチガイだけど、その墓が壊れないように配慮していたという矛盾を抱えている。真意が分からない。
零夜に
女神
関与が示唆されている。具体的にどこでと言うと、コンプリートフォームを出したはずがコンプリートフォーム21が出てきたところ。せっかくディケイドの力で倒すんだからと言う女神からのサービス。ちなみに零夜がコンプリートフォーム21を召喚しなかったのは、単純にそのフォームのことを知らなかったから。最新情報仕事しろ。
シロ
3 【ジェニミ・ライフ】
双子座の権能。能力は「共有」。
星座の名前に由来していない能力。
この能力は“魂の性質が似通っている相手”がいて初めて発動する能力。共有相手のあらゆる状態を共有、または譲渡することができる。残機魂を減らすことで、回復・再生する権能。念話も可能。
彼が本当に死ぬときは零夜のストックがなくなった時である。妖々夢にてわざと一回自殺した時に生き返ったのはこれが理由。
零夜とレイヤはある意味双子と捉えてもなんら不思議ではないため、こんな能力になっても不思議ではない。
さらにこの能力は零夜にも使用でき、零夜が『人間には変身できないライダー』に変身する際、変わりに『魂』を消費することによって、そのデメリットを打ち消している。
ジェニミ・ライフには隠された能力が存在し、双子の片割れの思考を読むことができる能力だ。
夜神零夜
【現幻創消】
『離繋』と『創造』の二つの能力が混合し、権能へと覚醒したことで新たに入手した能力。『現実』『幻想』『創造』『消去』の四つの能力が使えるようになり、相手を翻弄しながら戦うことが可能。
『現実』 存在していないものに実体を持たせる力。有機物、無機物関係なく使用可能
『幻想』 存在していないものを視せる力。有機物、無機物関係なく使用可能
『創造』 あらゆるものを創造して創り出す力。無機物限定
『消去』 あらゆるものを消し去る力。無機物限定、生き物でないなら『概念』もあり。
これの他にも、この権能にはさらなる『秘密』が存在する、というかしている。ネタバレになるけど、シロのステータスを半減させた力は本当は『消去』の力ではない。
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