赤点取りたくない。
7
ここは、現実の世界とは正反対の世界。『ミラーワールド』
そんな世界のとある森。その森に周りとの風景には似つかない家があった。
その家の外見は、一言でいえば『現代風』。レンガ、
そして―――
「…ほら、飯」
「ありがとう」
そんな家の中、二人の男女が過ごしていた。
男は料理を作り、女に提供していた。ここは決して食堂などではない、ただの一軒家。あること自体がおかしい一軒家だ。
「おいしい…///」
「あぁ」
二人の間に会話は少ない。二人は、決して恋人など、夫婦などと言った関係ではない。
ただの、監禁している方と監禁されている方と言う関係しかない。
あのとき、ここの情報を漏らさないとために彼女をこの世界に監禁した彼。そんな彼の名は【夜神零夜】。幻想郷にて、悪人として名を轟かせている男だ。
そして、監禁されている哀れな女性の名は【ルーミア】。彼女は闇を操る常闇妖怪である。
そんな彼女は人喰い妖怪でもあるのだが、
「…そういえば、あなた。今日はなにかと機嫌が良くない?」
「……そうか?いつも通りだと思ってるが」
「いやぁね。私にはそう見えるだけよ」
「そうか」
ここ何百年と経って、二人の間にはある程度の絆とも言えるものが存在していた。
所詮友情心に毛が生えた程度だが、それでも自分たち以外いない世界にとっては、それは大事なものでもある。
「……行ってくる」
「また修行?」
「……あぁ。毎度言ってっけど、逃げたりすんなよ」
「はッ。それはもう無理だって自覚しているから」
彼女の闇を操る程度の能力は空間を
「それじゃあ、大人しくしてろよ」
「はーい…」
零夜は扉を閉めたと同時に、足に力を入れ跳躍する。
その跳躍は木を超え、山を越えた先の、丘に着陸した。
たった一回のジャンプで、遠くの場所まで移動したのだ。
そよ風が吹く丘の上に彼は立つ。
彼の服装は黒で統一され、風に触れられるごとに黒いコートが風に仰がれる。
「……にしても、ついにこの時が来たか」
彼は、自分の目の前―――【紅く染まった洋館】を目にしていた。
あの洋館こそ、自分の始まりの舞台。そう思うと気持ちがこみあげてくる。
「舞台の幕がようやく開こうとしている……。五百年ほど待ったかいがあった」
『人間』である彼はこの時を、『五百年』も待っていた。始まりのために―――!
そのために、人間である彼はこの時代まで生きるために数えきれないほどの妖怪の命を奪った。
奪うごとに、それを力に変えていた。やがて力も蓄えられ、寿命も延びた。
これもアナザーライダーの恩恵と考えてもいいだろう。だが、不確定要素を残さないためにも、自分の能力である程度保険はかけている。
「……さぁ!!舞台の幕あけだ…!」
瞬間、零夜の後ろにオーロラカーテンが出現し、その場から零夜はは姿を消した。
* * * * * * * *
零夜の視界が暗くなくなったとき、最初に見えたのは紅い空と遠巻きに見える紅い門。
紅い空の理由はすでに熟知している。物語では、この霧は人間にとっては毒だ。
だからこそ、いい。
「俺には効いていない。まぁ当然だな」
彼は人間のようで人間ではない存在になっている。殺した相手から生体エネルギーを奪って無理やり自分のものに変換しているのだから。そして、老わないようにもいろいろと細工している。
「さて、ここには門番がいるはずなんだが――」
そして、この紅い門には、ある人物がいるはずなのだが…
「――
「ウキュ~~~」
彼女は、すでに倒れ伏していた。服のさまざまなところがボロボロだった。
「おそらく、博麗の巫女と魔法使いか…」
この世界で言う、『主人公』たる存在の二人が真っ先に出された。
逆に、ここで動くものはこの二人しかいないことは知っていた。
「
この館の地下にいる
その存在は、間違いなく危険だ。零夜の知識と本能が、そう告げている。ルーミアよりは下の存在だろうが、それでも危険なのは変わりない。だが、そこが楽しいのだ。
「ほんと、本棚には感謝だよ。何百年ぶりの、強敵との闘いだ」
零夜は、倒れている門番を無視して館の中へと入っていくのであった。
そのころ、館の地下。
金髪の、一人の少女がいた。
その少女は、上を見上げながら、こういった。
「ナンダカ、面白ソウナノガ来テルナァ。今度ハ壊レナイデ、クレルカナァ?」
狂気を感じさせる声で、楽しそうに、愉快に笑っていた。
* * * * * * * *
彼は屋敷の玄関を入ってすぐの、大広間に出た。
そして一番に彼が見た者は…
「メイド?」
床に倒れ、気絶している銀髪のメイドだった。メイドの周りには戦闘の跡があり、その証拠に様々なところに小型ナイフが落ちている。これは、彼女の武器だ。
「
この結果は、零夜としてはうれしかった。
彼女の持つ能力、【時を操る程度の能力】は強力だ。時間干渉系のライダーか小細工をしなければ面倒臭い相手だ。
「まぁ俺としては朗報だ。こいつも放っておくとして、誇る候補は『3人』」
零夜の知識で、あと残る勢力がどのくらいいるかは知っている。
この館の主と、友人と、そして―――
「考えていても始まらない。とりあえず図書館を目指すか」
零夜は目的の場所を探す。
その場所を探すことが、闘いたい人物と会うために必要なことだから。
スピードを上げ、一回一回地道に扉を開けて探していく。
開ける、寝室。開ける、食堂。開ける、風呂場。開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、主人が居そうな扉があった。スルーする。開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、開ける、―――
「………見つからねぇ」
一通り、開けたはずだ。率直に言おう。この館は見た目によらず広すぎる。
この空間の広さの種はわかっているが、いくらんでも広すぎると感じる。
「おかしいだろ。全部開けたはずだぞ…?他にどこが―――」
そのとき、零夜の目に、一つの地下へと続く階段が見えた。
「…………」
零夜は思い出した。
――そうだ、目的地は地下だった。と
目的地に行くためにはまず階段を探さなくてはならなかった。
てっきり階段は扉の奥にあるものだと思っていたが、まさかここまで簡単に見つかるとは思いもしなかった。
「ハァ…。序盤からミスった…」
零夜のテンションが一気にダウンしたが、そんな憂鬱になっている暇はないと考え、気分を立て直す。
こんなところで気分を落ち込ませていては、本番で本気を出せないと。
「行くか」
ゆっくりと、降りていく。
降りていくごとに、爆音が聞こえる。何事だろうと一瞬焦るが、焦ってはなにも生まれない。
降りていくごとに、爆音が高鳴ってくる。
そして、長い階段が終わった。
その目に映ったのは…
「ウワァ…」
光る弾幕が、ぶつかり合っていた瞬間だった。
その光景は美しく幻想的で、また酷く残酷にも感じられた。まるで、この世界そのものを現しているかのような闘いだった。
「これが、弾幕ごっこ、ねぇ…」
始めてみたこの世界での戦い。美しい、と言う言葉が漏れそうになる。
それを抑えた、あと、考える。確かに美しい。だが、それだけだ。
零夜が突入した殺すか殺されるかの世界に比べれば、これは単なる遊び。
彼が求めているのは、本気の殺し合い。そんな彼の欲を満たしてくれるのは、やはり―――
「あの、扉の奥…!」
闘いが行われている場所の奥。一つの鉄の扉が見えた。
あの扉の奥こそが、自分が目的とした人物がいる場所…!
「隠密行動隠密行動…」
出来ればバレずに行動したいため、隠密行動を重視し、誰にも見つからないように移動する。
幸い、相手が――2VS1の闘いに夢中になってくれているため、気づかれることはなかった。
「案外楽勝だった。……にしても、なんで二人で戦ってんだ?」
零夜の疑問についてだが、原作だと【博麗の巫女】は最初にルーミアと戦うことになっていた。
だが、その邪魔がないこの世界では、【博麗の巫女】の到着が本来より早まってしまったのだ。だが、そう言ったことにあまり興味がない零夜は、そんなことに気付いていない。
「まぁいいか。…にしても、すっごい魔力だ。……」
息を殺す。できるだけ、この扉の奥にいる存在に気付かれぬように。
もう少し後に戦うことになる相手。楽しみと言うのもあるが、第一に勝たなくてはいけないのだから。
長い長い廊下が続く。両脇の壁についているろうそくが、恐怖をよりいっそう搔き立てている。
「………」
ついには無言になり、ただただ歩いた。
そして、見えてきた一つの扉。この奥にいる。
―――扉の前に立つ。
『着いた…。俺が奪うために、お前は利用させてもらうぞ』
そう呟いた後、扉を開ける。
そして、そこにいたのは…
「お兄さん、誰?」
十歳にも満たない幼児だった。
深紅の瞳に濃い黄色の髪を持ち、それをサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップをかぶっている。
服装も真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着用し、スカートは一枚の布を腰に巻いて二つのクリップで留め、足元はソックスに赤のストラップシューズを履いている。
そしてなにより目立つのが、背中にある翼。だがこれは翼というよりも『七色の結晶が下がった一対の枝』と言う認識の方が正しいのかもしれない。
一件見れば無害な少女だが、この少女の危険性は知っている。
それに少女の方も、あまり警戒心と言うものが見当たらない。
一見、不審人物としか思えない恰好をしているのに、この少女は全く警戒していないのだ。
「……君は?」
「私の方から聞いてるのに…。まぁいいわ!私の名前は【フランドール・スカーレット】」
「…クロ」
「クロ?それがあなたの名前?」
咄嗟に出た偽名。本命を名乗るワケにもいかない。対してあの時八雲紫に名乗った【究極の闇】を今この場で名乗るわけにもいかない。咄嗟のことだった。
言い直そうとしても、少女の中ではすでにクロで通っているようだった。
「あ!そうだクロ!私と一緒に遊ぼうよ!」
少女―――フランは楽しそうに笑っているが、目のハイライトは失われている。
この状態を、零夜は――クロは知っている。
――これは、『狂気』だ。
フランの瞳を見て、クロは笑う。
「遊ぶ?一体なにで?まぁ決まってるけどね」
「あははッ!そうだよね!じゃあ一斉に言おうよ!」
「お、いいね」
クロはわざとらしく、フランは無邪気に笑う。
「「せぇ~~~の」」
二人は楽しそうに笑う。
それはまるで本物の兄妹みたいに。何も知らないものが見たら、ただの仲慎ましい兄妹なのだが、二人はそんな関係ではない。近い方で言えば『お友達』だ。そして二人はそういう関係でもない。ただの『初対面』だ。
だが、二人にはなにか通じるものがあるのか、ここまでになっているのだろう。そして、溜めに溜めた言葉から出たのは―――
「「
「ハハッ。わーい!お兄さんと一緒だ!」
「フフ。そうだね」
―――本当に、何も知らない者から見ればただの兄妹や友達なのだ。
彼と彼女は、ただ、
「早速やりたいんだけど…。その前に、君はなにを使うんだい?」
「言わなきゃダメ?」
「最初に色々決めなきゃ
「そうだね!私、バカだったなぁ~~。
「そっか~~。俺も、使えるんだ」
「そうなんだ!私とお揃いだね!」
「それじゃあ、終わるのはいつにする?」
「そんなの決まってるよ!せっかくだし、また一緒に言おうよ!」
「いいぞ。それじゃあ」
「「せぇ~~~の」」
『「死ぬまで!!」』
この瞬間にて、決まった。この
この一言が、狂気に染まったハナシアイが、今この瞬間終わりを告げた鐘でもあった。
「ハハハッ!ソレジャア始メヨウヨ!」
「そうだなぁ。それじゃあ、俺はこれを使うとするよ」
クロもクロでここのことを予習してきた。
この世界の未来を『作品』『ゲーム』として知ったクロには、その対策ができていた。
あの少女――【フランドール・スカーレット】の能力は【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】。
あの能力はただ単にパンチやキックであらゆるものを破壊できる能力ではない。あれは、『対象が物ならばなんでも破壊できる能力』だ。
これは後に【
――――その時、
クロの左手の中指に『黒い指輪』と腰に手が出現した。そしてクロはその指輪を腰の手にかざすと、そこに【黒い魔法陣】が出現してそこから手を模したドライバー、【ウィザードライバー】が形を成していく。
ドライバー オンッ!
「ナニソレ?」
「見てればわかるさ」
クロはドライバーのレバーを動かし、手の向きを変える。同時に左手の指輪も形を変え、仮面の形になる。
シャバドゥビタッチヘンシーン!
シャバドゥビタッチヘンシーン!
ドライバーから流れる音声が、部屋に響く。
手をかざし、あの言葉を口にする。
「変身」
クロはドライバーに左手をかざすと、クロの目の前に【黒い魔法陣】が出現してそれが通りすぎる。
フレイム! プリーズ!
ヒーヒー!ヒーヒーヒー!
クロの姿が変わる。黒い姿に黒いマント、すべてが黒。黒い魔宝石が禍々しい姿をしていた。
そ の魔法使いの名は【ウィザード】。だが、それはこの姿の本来の呼び方ではない。
この姿の名は――
『【漆黒の魔法使い】……。さしずめ、【仮面ライダーブラックウィザード】…か』
クロ改め、【仮面ライダーブラックウィザード】。ブラックウィザードはコートを仰ぎ、フランを見据える。
「スゴイ!スゴイ!ドウヤッタノ!?」
フランは喜んでいるが、すでに声のトーンの調子がおかしくなっている。否、先ほどとはなにか違う。
そう思わせる何かがある。
『魔法だよ』
「スゴーイ!私モコンナコト出来ナイヨ!」
『魔法使い同士、楽しくやろうか…!』
「ウン!」
フランは鋭い爪をむき出しにして、まるで獲物を見る獣のように構える。
ブラックウィザードは足を前に出し、構える。
「ジャア……
『あぁ。思う存分遊んでやる』
フランは、虚空から深紅の燃える剣を取り出し、ブラックウィザードは【ホープウィザードリング】をかざし、『コネクト』の魔法を使用した。銀色の剣【ウィザーソードガン・ソードモード】を召喚した。それからは早く、お互いがその場から姿を消した瞬間、二人の中心に二人が出現し、お互いの剣がぶつかり合った。衝撃波が生まれ、二人以外のすべてが壁際に追いやられる。
「オ兄サンモ剣ヲ使ウンダァ」
『そっちが使うならこっちも使う。道理に適ってるだろ?……さて、行くか』
―――瞬間、地下で剣をぶつけ合う音が響き渡った。この時はまだ、廊下の奥の奥、図書館にいる人々がこの音に気付くことはなかったが、それでも少女たちが彼に会う時も―――近い。
ついに始まった『原作』…!零夜はどのように関わっていくのだろうか?
誤字脱字報告・感想、お願いします。
黒いウィザード、だと【ダークウィザード】と【漆黒の魔法使い】に分けられるので、このブラックウィザードは【漆黒の魔法使い】の方です。
変更点:変声機使用シーンの追加。