―――笑えない。
とりあえず、どうぞ。
―――ブラックウィザードは変身を解き、偽名:【ヤミ】として紅く染まった館、【紅魔館】の廊下を歩いていた。本来攻略すべきキャラクターたちは、【博麗霊夢】と【霧雨魔理沙】によって倒されている。『本来』の時間の流れだと【フランドール・スカーレット】は最後に倒すべきであろう存在だが、先に倒したことにより残るは後一人。つまりは黒幕だ。
【紅美鈴】も【十六夜咲夜】も【パチュリー・ノーレッジ】も【フランドール・スカーレット】ついでに小悪魔も倒されているだろう。も倒されている。それにブラックウィザードラゴンに二人を邪魔させている。邪魔する者は誰一人いない。
『一番厄介なのは倒せた…。吸血鬼だから後に回復するだろうが、やりすぎ――ではないか』
「吸血鬼だから殺していなければ問題ない」と、自分に言い聞かせる。実際、彼女を先に倒さなければ何らかの『補正』が入り強制的に彼女と戦う羽目になり、計画がおじゃんになる可能性があったからである。実際に生きているために忘れることがあるが、この世界は一応ヤミの認識では『創られた世界』なのだ。ならば少なくとも本来の流れに沿おうと世界からの修正が少しでも入る可能性がある。
『図書館を探すときあえてスルーしてたが、確実にそこにいますよって言ってるような扉があったからな。確実にあそこにいる』
目的地はすでに決まっている。一度通ったので間違えることはないだろう。
『相手は自称吸血鬼の王…。ならば、それに相応しい姿で挑んでやろう。まぁ、その前にこいつらを倒すか』
ヤミの前に立ちはだかる影が映る。その姿は髪の色や体型なども様々。共通点があるとすれば、『空を飛んでいる』『小柄』『メイド服を着ている』と言う共通点だ。この存在の名は呼称すれば【メイド妖精】。紅魔館が雇っている妖精たちだろう。
『主人を守るために抵抗するか…。いや、統一者がいないのに自由の象徴でもあるこいつらがそんなことするわけ―――』
突如、メイド妖精から色とりどりの弾幕が零夜に放たれた。後ろに飛び、その弾幕を避ける。弾幕が当たった床は一部が崩壊し、瓦礫が崩れている。ヤミが避けるところを、メイド妖精たちは残念そうにしていたり、ブーイングをしているような仕草をしていた。そこから導き出される答えは―――
『やっぱりか。ただの遊び目的。まぁ元からこいつらはそういうヤツだから、あまり気にしてはいないが…』
妖精は自由の象徴。これは侵入者への対処ではない。メイド妖精にとってはただの遊びだ。
そう呟く間にも、メイド妖精からの攻撃は絶えず続いている。いい加減、倒さなければならない。零夜はとある存在を呼んだ。
『来いッ!蝙蝠もどき!』
そう言い放つ。瞬間、何かの黒い影が通り過ぎ、メイド妖精が数体爆散する。その黒い影は蝙蝠サイズほどの大きさ。だが、速度は影がうっすらを見え、メイド妖精を倒すほどのスピードだ。ただの蝙蝠でないことはこれだけで証明できるほどだ。
その存在が、ヤミの前に姿を現した。その姿は一言でいえば『機械の蝙蝠』。零夜の言った通り『蝙蝠もどき』とも言える存在だ。その蝙蝠は黒と赤がメインになっており、黄色い複眼が存在していた。
『お前もこの俺を蝙蝠もどきと呼ぶか』
『実際そうだろ』
その『蝙蝠もどき』の言葉に、ヤミの愚痴で返した。
この蝙蝠の名は【キバットバットⅡ世】。ファンガイアのキングとクイーンに従う身である。
『フッ。この俺にそう言えるほどの胆力だけは、褒めてやってもいいぞ』
『いいからさっさと力を貸せ』
『本当に貴様は『あの男』のようなことを言うな。前にも言ったが本来ファンガイアではない貴様が変身すれば命は「そこら辺は能力で解決してるッ!いいから貸せ!」―――そういうのにもそれ相応の礼儀と言うものがあるだろう。まぁいい。力を貸してやる』
弾幕を避けていたヤミは一旦止まり、キバットⅡ世に手を差し出す。
キバットⅡ世はそのままヤミの手を『ガブッ!』とかみつく。服で肌すら見えない体に、ステンドグラスのような装飾が出現すると同時に、腰に鎖が巻かれ、それが【ダークキバットベルト】となって出現する。
『変身ッ!』
キバットⅡ世がベルトの逆立ちするように貼りつき、体全体が銀色に包まれ、それが砕け散ると同時に『それ』は姿を現した。漆黒と赤黒の鎧を身に纏い、頭部の形状は『蝙蝠』を思わせる形。つり上がった暗い青緑を思わせる複眼。その名は―――
『仮面ライダーダークキバ、参上ッ…ってな』
ダークキバはマントをたなびかせ、メイド妖精たちに歩きながら近づく。メイド妖精たちは歩いてくるダークキバを的として弾幕を放ち、確実に当たっているが効いていない。その原因は単純なダークキバの硬度。設定上核爆弾ですら傷一つつかないほどの強度を持っているダークキバの―――【闇のキバの鎧】。弾幕程度で傷がつくわけないのだ。
痺れを切らしたのか一体のメイド妖精がダークキバに突撃してきた。弾幕が効かないと分かり攻撃手段を変えた―――とは考えにくい。妖精の頭になってみれば、単純に色々攻撃して楽しみたいと言うことだけなのかもしれない。そんなメイド妖精に対し、ダークキバは…
『邪魔だ』
―――拳を喰らわせた。一撃だ。たったの一撃。その一撃を喰らったメイド妖精は重力などを完全に無視して横一直線に吹き飛んだ。壁の一部が崩壊し、砂煙が巻き起こる。砂煙が晴れると、その妖精は姿を消していた。妖精は消えると一度自然に還り、また復活する。要するにリスポーンである。
消滅したメイド妖精を見た他のメイド妖精は、驚き、困惑、怒り、焦燥など、さまざまな表情をしているのを見受けられた。そしてその後、妖精たちの攻撃が激化した。
『お前らごときに、構ってる暇はないんだが…』
そんなダークキバの愚痴など知らないと、メイド妖精は次々に攻撃を加えてくる。弾幕で傷付くわけがないため、ダークキバにとってメイド妖精の攻撃は痒くもないのだ。
『
ダークキバの足元に、緑色の紋章が現れる。その紋章の形はダークキバの頭部を模しているような形だった。この紋章の名は【キバの紋章】。これは紋章を模しているが、その実は結界、エネルギー場だ。
ダークキバが掌を上に向けると、それと同時に紋章が大きく広がり、雷のような音が鳴りながら再び地面に投下される。
結界によってメイド妖精たちが地面に伏した。結界の紋章のエネルギーによる強制力が発動しているのだ。そのままダークキバは手を払うと、紋章とメイド妖精たちは爆発した。壁が崩れ、装飾品が倒壊し、床が抉れている。この技は、あえて結界のエネルギーを暴発させて爆発させた、ダークキバオリジナルの技だ。
『フゥン…結構効くんだな』
もちろん、ダークキバには傷一つついていない。
倒壊した廊下を、何事もなかったかのように歩く。
歩き、歩き、歩き。扉の前に立つ。扉のノブに触れ、ゆっくりと前に倒す。ダークキバの目に映ったのは、扉から始まった長く紅い絨毯。その絨毯の最後に目を向けると、そこには階段があった。数段ばかりの階段だ。その階段の一番上には、他の椅子よりも大きい、一言でいえば『王の玉座』だ。その玉座に座っている、一つの影を見つけた。
「……ようこそ。我が館へ」
その影は、一人の少女だった。王の玉座に座り、自らを見ているモノを、見下している目をしていた。
彼女の見た目は色の混じった青髪に真紅の瞳。身長などはフランに近い。ナイトキャップを被り、色は白の強いピンクで、周囲を赤いリボンで締めており、結び目は右側で、白い線が一本入っている。
衣服は、帽子に倣ったピンク色。太い赤い線が入り、レースがついた襟、三角形に並んだ三つの赤い点がある。
両袖は短くふっくらと膨らんでおり、袖口には赤いリボンを蝶々で結んであり、左腕には赤線が通ったレースを巻いている。
小さなボタンで、レースの服を真ん中でつなぎ止めている。一番上にはS字状の装飾があるが、永夜抄時の衣装では付いていない。
腰のところで赤い紐で結んでいる。その紐はそのまま後ろに行き、先端が広がって体の脇から覗かせている。
スカートは踝辺りまで届く長さ。これにも赤い紐が通っている。
『お前は…』
「我が名は【レミリア・スカーレット】。この館、紅魔館の主であり、吸血鬼の王だ」
『そりゃあご丁寧にどうも。俺は仮面ライダー…いや、―――あえて、こう言わせてもらおう。【夜の王】と』
「ホゥ…?この私を前に、王を名乗るか」
『事実だ』
「そうか……」
その言葉を区切りに、レミリアは椅子から立ち、蝙蝠の翼を展開して空を飛ぶ。
「私の前で王を名乗ったこと、それ相応の報いをしてもらおうかッ!」
王と名乗ったことがレミリアの琴線に触れたのか、レミリアは自身の周りに弾幕を展開する。
そして、その弾幕を一斉にダークキバへと向けた。
ダークキバは動かない。動かないまま、弾幕に直撃した。
「………」
その状態を、レミリアはまだ警戒している目で見ていた。
何故なら―――
『………』
そこには、無傷のダークキバがいたからだ。
「この程度では傷付かないのね」
『当たり前だ。貴様程度の攻撃、ダメージを喰らうワケがないだろう』
「言ってくれるじゃない。じゃあこれはどうかしら?」
レミリアは虚空から紅く染まった、エネルギー場の槍を出現させた。
「神槍スピア・ザ・グングニル。私の武器よ」
『ほぉ』
「行かせてもらうわ!」
レミリアは翼を羽ばたかせダークキバへと向かい、神槍を突き刺そうとする。
ダークキバはその槍先を手で掴み、拳をレミリアに向ける。レミリアは自らの持つ腕力を用いて無理やり槍を引いてダークキバの拳から解き放ち、足蹴りをする。
「ッ!」
その足をダークキバは掴み、壁へと向かって放り投げる。壁を破壊しながらレミリアは外へ放り出される。
レミリアは空中での方向感覚を失いながらもなんとか取り戻し、体制を立て直す。
「クソっ…!」
『………』
「(くッ…。たった一発でもわかる…。相当強い)」
レミリアは空中でダークキバの情報を少しでも整理する。
―――まずわかっていることは圧倒的な防御力。自身の弾幕を大量に受けながらも傷一つつかない鎧。これが一番の難関だ。それに力だってダテじゃない。自分の足を掴んで無理やり投げ外へ連れ出す荒っぽさ。そんなことは相当な力がないとできない。
「(まず、あいつの鎧をどうするか…。……?待て)」
自身がダークキバの情報を整理している途中で、あることに気付く。
それは、ダークキバが追撃をしてこないことだ。分析するほどの時間は攻撃に費やせばいいだけの話。それをしなかったことには何か意味があるはずだ。
――そこで、レミリアはある一つの仮説を立てる。
これは悪魔で、仮説だ。
「なんであいつはこっちにこない?」
来ないのだ。ダークキバはこうレミリアが空を飛び情報を整理している間も、こちらに来ない。ただ静観しているだけだ。そこから導き出される一つの仮説。
「まさか、あいつ…飛べない?」
そう。ダークキバは飛べないのではないかと言う仮説だ。
もし飛べたのならば今すでにこちらに向かってきているはずだ。
「飛べないのなら、好都合だわ。喰らいなさい」
レミリアの周りに、一つ一つが巨大な丸い弾幕が現れた。それだけではなく、それより小さな弾幕もちらほらとある。その小さな弾幕から反比例するほどの巨大なレーザーが展開される。それらがすべて、こちらをじっと見ているダークキバに向けて放ち、着弾した。
「さっきのより強力よ。これでどうかしら?」
そんなレミリアの小言も弾幕の音と爆発音によってかき消された。
館の一部が崩壊し、砂煙が舞う。
「これで、やられてくれたらいいんだけど…。――――やっぱり、そうはいかないみたいね」
レミリアは自身の紅い瞳を煙の中に向ける。
そこには、やはりと言わんばかりの、無傷のダークキバがそこにいた。
「チッ、やっぱりダメだったのね。硬すぎるにもほどがあるわよ。私では難しいかも…。フランの能力なら、もしかしたら…」
『………』
レミリアが小言で今はいない
そんな中、ダークキバはベルトの横から一つの笛を取り出し、それをキバットⅡ世の口にくわえ、閉じた。
ファンファーレの音が鳴り響く。
その時地面が―――世界が揺らいだ。
「な、なにッ!?」
あり得ないほどの、一度も体験したことがないほどの大地震。初体験の恐怖に、レミリアは飲まれていた。
――レミリアはそのとき、下の湖に不審な気配を感じた。今まで感じたことのない、未知の気配。その気配にレミリアは息を飲む。
そして、姿を現した。
その存在は、一言でいえば『動く城』。竜と城が、合体している存在だ。
『こい、【キャッスルドラン】!!』
ダークキバが叫ぶと、竜と城が合体した存在【キャッスルドラン】がダークキバに頭を近づける。ダークキバが頭に乗ると、そのまま飛来する。
「――――ッ!」
『俺自体空を飛ぶ力はない。だが、他の力を借りれば行けることだ』
「それは…さすがに反則じゃないかしら?」
先ほどの高圧的な態度とは一変、キャッスルドランを見て恐れをなしたのか、態度が小さくなっている。
『設定上』、彼女は500歳とまだ幼い。この幻想郷では500歳など子供同然だ。ダークキバでさえ1000歳は超えているはずなのだ。
『これは俺が従えているものだ。敵にどうこう言われる筋合いはない』
「だ、だけどこれは流石に―――」
言葉から感じられる通りレミリアは恐れていた、キャッスルドランに。あのドラゴンは強力な力を秘めている。そもそも、キャッスルドランは設定上【ドラン族】と言う種族の最強の種、【グレートワイバーン】を改造して生まれたものだ。元が最強種であるために、レミリアのこの直感は当たっている。そして、何よりレミリアが恐怖しているのは、ダークキバだ。最強種であるキャッスルドランを従えているこの存在が、この竜以上の存在であることなど、子供でも理解できるほどだ。
『やれ』
ダークキバの言葉を皮切りに、キャッスルドランの口にエネルギー―――その名も【魔皇力】が人集まりになり球体になる。そのまま球体をレミリアに向かって放つ。
「――ッ!」
レミリアはそれを体を逸らして避けるが、次の弾が来た。一発二発と次々と一発一発が強力な攻撃だ。避けてもまた一発一発と次の攻撃が来るためにキリがない。レミリアはキャッスルドランに接近するためだ。迫りくる弾をギリギリで躱す。
「喰らいなさいッ!」
ギリギリ、キャッスルドランの頭上に乗っているダークキバに向かい、自身の持っているグングニルを投げた。ただ投げただけではない。自身の持てるすべての腕力、妖力を纏ってでの、自身にできるであろう最大の攻撃を仕掛けた。それだけでは飽き足らず―――レミリアはようやく理解した。
先ほどの魔皇力の攻撃は、すべてレミリアを殺せるほどのエネルギーを纏った攻撃だった。当たれば一瞬で自分は灰になっていただろう。レミリアにはそんなマイナスな自身があった。故にこれはここに来る際に知らされた
「まだまだよッ!」
追撃を掛けるがごとく、大量のスペルカードを一気に発動させた。これは普通にルールに反しているが、もはやこれはルールのついている遊びではない、ただの殺し合いだ。ならば、自分を生かし、相手を殺すために全力を注ぐことは、なにも間違ってはいない。それが当然のことなのだ。
神槍を始めとした攻撃が、キャッスルドランへと降り注ぐ。
一回一回の弾幕の数が多いのがこの【スペルカード】の特徴だ。
キャッスルドランは巨大な弾を放つが、それも単発だ。同時多発な攻撃には対処しきれない。
そのまますべての弾が被弾し、キャッスルドラン全体が、煙に覆われて見えなくなった。
「こ、これなら……」
一度の多大な攻撃に、流石のレミリアも息を切らしていた。
相手は強大な防御力を誇る自分以上の怪物だ。ならばその怪物に一矢報いるためにはこれほどのことする必要があった。自分の今できる最大の攻撃。これほど短時間で本気を出すと決めたのは初めてかもしれない。500年も生きていれば大抵のことは忘れる。それは人間でも同じことだ。レミリアは煙の中を見つめる。
気を抜いてはならない。あの強大な存在に、気を抜いたら終わりだ。そう自分に言い聞かせ、煙の中を見―――た瞬間、煙の中から、紅く染まった目がこちらを見ていた。
「ッ!」
咆哮が鳴り響く。その方向は大地を、湖を、振動し、響かせる。咆哮が鳴り響き、煙が一瞬にして晴れる。
そこには、無傷のキャッスルドランが存在していた。
「あれだけ喰らわせても…!!?―――――?あいつはどこ!?」
キャッスルドランの頭部に、ダークキバの姿が見当たらなかった。あの煙の中に乗じてどこかに言ったのだろうか
?ダークキバの姿を見つけるために当たりを見渡すレミリア。だがその姿はどこにも見当たらたない。
「一体どこに―――」
「ッ!!」
突如聞こえた機械音声。その音にレミリアは気づきその方向を見上げる。その方向とは上だ。真上だ。つまり空。そこには、両足をつけ、両手を広げながら宙を浮いている―――否、落ちているダークキバがそこにいた。
「そこかッ!」
レミリアは再び神槍を召喚し、落ちているダークキバに向かって行く。ダークキバは飛べない、そう仮説を立てている。ならヤツは愚策に出たと、そう考え込んでいた。が―――近づいていくときに、それに気づいた。
「―――ッ!もしかして…!」
レミリアは今更になって気づいた。あれは落ちているのではないと。『攻撃体制』だったと。
「しまッ――あがッ!!!」
急接近してくるダークキバの、両足蹴りをまともに喰らったレミリア。
ダークキバはそのまま膝関節を一回折り、再び伸ばすッ!レミリアはそのまま急降下し、地面に突撃してしまった。石畳を抉り、小石を、大きな石をまき散らし、瓦礫によって無理やり彼女の勢いは殺された。レミリアの白い服はすでに所々が破けており、泥にまみれている部分があるほどだった。
「う、ぐぅ…!」
『これで、終わりだ』
「あなた…目的はなんなの?」
『目的……何故それを急に?』
「攻撃したのは私だけど、ここに来た以上なにかしらの目的があるはずよ」
『フゥン…。再生までの時間稼ぎか』
「ッ!」
『その顔だと図星だな』
ダークキバの言う通り、レミリアは少しでも時間を稼いで自身の回復と再生をするつもりだった。が、それも一瞬にして見破られた。
『まぁいい。理由はただ単純。この異変に用が合ってきた』
「異変…?私が起こしたこれのこと?」
レミリアは紅く染まった夜空を見上げる。
『そうだ。それに用があった』
「そう…なら分かったわ。負けてしまった以上、この霧を出しておく意味もないわ。逆に、出していたらあなたは――『そうじゃない』――?じゃあ何?」
レミリア自身、彼、ダークキバは自身が出した紅い霧――異変を解決しにここに来たのだと思っていた、が、それは本人によって否定された。
『俺は言っただろう。『異変』に用があると』
「どういうこと…?」
レミリアには理解できない。ダークキバの考えていることが。不理解から来る、疑問がレミリアの思考を覆った。
『時に―――お前は言ったな。『私では難しいかも…。フランの能力なら、もしかしたら…』と』
「ッ!!」
聞かれていた。小さな小言だったはずだ、それが聞かれていた。
「それが、どうしたの?」
『最初からその可能性はお前の頭で切り捨てていただろうが、お前のところに来る最中にすでにそのフランは倒した』
「―――ッ!!貴様ァァァア!!!」
一瞬にして、レミリアの堪忍袋の緒が切れた。再生され切っていない体を無理やり起こして、ダークキバを怒りの形相で見つめる。先ほどの、今までの彼女からは考えられないほどの怒りが、彼女の口から吐き出されていた。
「フランを、フランをどうした!?」
『……殺した、と言ったらどうする?』
「お前を許さない!!私の命に代えてでも、お前を殺してやるッ!!」
『理解できないな。あの娘は狂気に
「黙れ黙れ黙れ黙れェ!!」
『お前とあいつは顔が似ている。それに苗字も。姉妹なのだろう。だが、あいつの能力は強力すぎた。だから幽閉したんだろ?』
「あぁそうだ!だが、それがどうしたッ!」
『では聞こう。何故お前はあの娘を幽閉した?』
「どういうことだ…!!」
『殺すことだってできたはず。なのになぜそれをやらなかった』
「できるわけないでしょう!!たった一人の大切な妹なんだからッ!」
レミリアは今、自分の本音を語っている。怒りと、自分の目の前にいる存在の恐怖が混ざり合っての出来事だ。簡単に言えば自暴自棄。レミリアの逆鱗に触れたダークキバは、それをただただ聞いて、質問をしていた。
『では、何故そんな大切な妹を監禁した?』
「それしか、あの子を生かす方法がなかったからよ!危険なのはわかってるッ!だけど、あの子を生かす方法がこれしか思いつかなかったッ!フランに嫌われてもいい、フランに蔑まれてもいい、フランに怒られてもいい、フランが生きているのならッ!私はァァァアアア!!!」
レミリアは息を荒上げ、ただずっと、ダークキバを怒りの形相で見つめ続けている。
『なるほどな。……いい姉妹愛だ。それをずっと大切にしろ』
「お前に言われる筋合いはないッ!それに、フランに私がなんと思われようとも、私がフランを思う気持ちは変わらないッ!決して変わることのない、揺るがない事実よッ!!」
それは、レミリアの今まで封じ込めていた想い。自らの妹のために、その妹に嫌われようと、貶されようとも、それを甘んじて受け入れる覚悟を持った者の言葉だ。妹を想う気持ちが、十分に感じられる一言なのだ。
「もう一度聞くぞ、フランを、フランをどうした!!!」
『……見ろ』
「なにを―――!」
ダークキバはレミリアの後ろを指さした。
レミリアは突然のことに、考えることもせずただ後ろを振り向いた。
そして、それを見た瞬間、硬直した。なぜなら、そこには―――――
「フ、フラン…?」
「お姉さま…それって本当なの…?」
【博麗の巫女】博麗霊夢。
【普通の魔法使い】霧雨魔理沙。
そして、レミリアの妹である、フランドール・スカーレットが、そこにはいたのだから―――
誤字脱字チェック・感想お願いします。
ダークキバ イメージCV【武田航平】