東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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東方妖々夢
12 明けない冬


―――ミラーワールド―――

 

 

「…………」

 

 

森にある、一軒家。

その窓から一人の男性が、外の景色を見ていた。外は、一面真っ白の雪景色に覆われていた。とても幻想的で、綺麗な光景とも言える。だが、その代わりに周りの温度が下がると言う代償もあった。

 

 

「……今日も、雪か」

 

 

 彼はその日初めて言葉を口にした。この言葉は、何回喋っただろうかと心の中で思う彼。その原因は、月にある。この月は、衛星の月のことではない。月日の月のことだ。

 

 

「今は4月―――。確実に、異変だな」

 

 

そう呟く彼は、なぜか笑っていた。彼の言った通り、今は4月。普通なら桜の木に桜が咲いている頃だ。それが、今でも雪が降っている。これは、異変だ。この世界において、異変とは解決しなければ世界に少なからず影響を与えてしまうものだ。普通は慌てるべきところ。だがなぜか彼は、笑っているのだ。

 

 

「冬が続く異変―――いいねぇ。【春冬異変】。奪うに値する異変だ」

 

 

 彼は懐から、白く何も書かれていない小さな本を取り出すと、再びそれをしまった。

そして、彼は後ろを振り返る。

 

 

「―――で、いつまで布団の中に閉じこもってるつもりだ?」

 

 

 彼――【夜神零夜】は目の前にある白い球体に言葉を投げかけた。

その球体は、もぞもぞと動いている。そして、その球体から、黄髪の美女が顔を出した。

 

 

「だって、寒いんだもん…。なんで春の時期に雪が降ってるのよ…?」

 

 

 その美女の名前はルーミア。零夜の捕虜―――と言う名目で居候と化している女性である。

彼女は雪が振り、寒くなった室内に対応すべく、布団を全身に纏っているのだ。だが、それも一時しのぎである。

 

 

「いいからさっさと出ろ」

 

「いーやーだー!出たくないー!」

 

「……勝手にしろ」

 

「あ、折れるの早いわね」

 

 

ルーミアもこの展開が予想外だったらしく、そんな反応をした。

零夜はこういう時意地でもやり通す性格なため、そう簡単に諦めるのは以外だった。

 

 

「―――今はそんなことしてる場合じゃないしな。首謀者ぶっ飛ばして、異変を奪わなきゃなんねぇ」

 

 

そう。今の零夜には重要な目的がある。それが今回早く諦めた理由だ。

零夜の異変を奪うと言う目的は、解決されたら終わりだ。つまり、異変を解決される前に異変の首謀者を倒し、異変を奪わなくてはいけない。

 

 

「異変を奪うなんてどうやってんだか…。どういう原理?」

 

「お前に教えるわけないだろ」

 

「そうよね……」

 

 

そうルーミアは不貞腐(ふてくさ)れる。実際、捕虜にそんな情報を教えることの方がどうかしている。――ちなみにだが、ルーミアが何故零夜が異変を奪っていることを知っているのかと言うと、最近知ったと言うのが答えだ。計画を実行し、誰かの目の前で異変を奪った以上、隠すことなどできない。ならば喋っても構わないと、零夜が喋っているからだ。

 

 

「とにかく、俺は現実世界に戻る。ジッとしてろよ」

 

「はーい」

 

 

 ルーミアの適当な返事を返された零夜は、特に気にすることなく、自身の真後ろにオーロラカーテンを出現させ、その世界から姿を消した。

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

―――雪景色の中、彼は自分と言う存在がその世界に生まれた。

しんしんと雪が振る空を見上げる。とても綺麗で幻想的な空だ。

 

 

「――何度も見てきた雪景色。綺麗なのに、これは異変だなんてな。だが―――綺麗で美しいからこそ、奪いたくなる」

 

 

零夜はそう呟き、雪道の中歩みを進める。雪独特の音が歩く度に鳴る。

 

 

「……寒い」

 

 

すぐに気付くべきだった。よく考えれば今の自分は黒装束しか着ておらず、防寒具と言っていいほどのものを何もつけていなかった。出るすぐになんとかすればよかったのだが、ルーミアとのゴタゴタのせいで忘れていた。

 

 

温冷(おんれい)感の切り離し」

 

 

 温冷感とは、暑い、寒いと思う感覚のことだ。物に触れたときの温かさ、冷たさの感じる際に感じる感覚。それを能力で『切り離し』、温冷を感じなくした。これで体温感覚は気にしなくともよい。ちなみにこれの欠点は感覚を感じないがために体の異常に気付かないという点である。

 

 

「そんなに寒いワケじゃねぇし大丈夫だろ」

 

 

そう自分に言い聞かせるように、零夜は歩みを進める。

 

 

「ここから先は、気をつけなきゃな…」

 

 

―――ここで、気を付けなければならないことがある。

冬、と言うことは冬の妖精たちが活発的に動いているということだ。そして、冬や雪に関連する妖怪もまた同じ。いくらこの世界が現実だと言えど、元は二次創作(創られた世界)であることを知っている零夜としては、なんらかの補正が掛かり戦闘が起こる可能性を考慮しなくてはならない。

 

 

「いつでも戦闘できるよう―――」

 

 

刹那、どこからか放たれた氷杭が、零夜を襲った。すぐに飛びその攻撃を避ける。

予測していたためにある程度警戒をしていたおかげだ。だが零夜もこの程度の攻撃、すぐに避けられる自身があるため、これにあまり意味はないかもしれない。

 

 

「へっへーん!一人倒したぞッ!」

 

「チ、チルノちゃん!急に人に攻撃しちゃいけないよ!」

 

 

そこには二人の少女が空を飛んでいた。

 一人はかなりと言っていいほどの低い身長、青い服装に氷の羽根を持つ。6枚の氷の羽を持ち、髪は薄めの水色で、ウェーブがかかったセミショートヘアーに青い瞳、青か緑の大きなリボンを付けている。服装は白のシャツの上から青いワンピースを着用し、首元には赤いリボンを巻いている少女だ。

 もう一人は髪の色は緑、左側頭部をサイドテールにまとめ、黄色いリボンをつけている。服は白のシャツに青い服を着用。首からは黄色いネクタイやリボンを付けていることも多い。その背中からは虫とも鳥ともつかない縁のついた一対の羽が生えている少女だ。

 

 零夜はその二人の姿を確認すると、その二人に向けて歩みを進める。

 

 

「あ、まだ生きてたのか!お前スゴイな!」

 

「あ、あの、大丈夫でしたか!?」

 

「…チッ、いきなり攻撃してくるたぁ、いい御身分だなぁ」

 

 

二人の少女に向かって、見えない顔で怒りの形相をする。

 

 

「本当にごめんなさい!ほらチルノちゃんも!」

 

「なんであたいが謝らなきゃいけないんだよ大ちゃん!」

 

「だって奇襲を仕掛けたのはチルノちゃんじゃん!」

 

「それのなにが悪いの?あたいは最強なんだからなにをしてもいいんだよ!」

 

「そんなの最強じゃないよ!最強って言うのは正々堂々正面から立ち向かって勝ち続けた人のことを言うんだよ!慧音先生も言ってたでしょ?後ろから攻撃するのは人でなしだって!」

 

「でもあたいは人じゃなくて妖精だよ?」

 

「そんなのはいいの!とにかく、後ろから攻撃する人は最強なんかじゃないってことだよ!」

 

「ッ……!そ、そうなの大ちゃん!?」

 

「そうだよ!それに、本当に強い人は自分の非すら素直に認めるって、慧音先生が言ってたよ」

 

「そ、そうなのか!おいお前!」

 

 

チルノと呼ばれた水色の少女とはくるりと零夜の方を向き直る。

反省しているのかしていないのかわからない高圧的な態度だ。だが緑色の少女の説得によって、この少女も反省したようで―――

 

 

「さっきは悪かったッ!これはあたいの方が悪かった!だから今度は正々堂々と勝負しろ!」

 

「そういう意味じゃないよチルノちゃん!」

 

 

―――前言撤回。やはり反省などしていなかったようだ。

 少女は謝った。謝ったが勝負を申し込むと言う謎の循環を生み出した。

 

 バカなのか素直なのか、判断に苦しむ。

 そこで……彼は再び口を開いた。

 

 

「いいさ…。徹底的にやってやるよ」

 

「やるんだな!」

 

「えぇ!?」

 

 

 零夜はチルノの勝負を受けたのだ。こんなことしている暇はない。一刻も早く異変の首謀者を倒し異変を奪わなければならない。だが―――ここまでコケにされて、黙っているほど彼もお人好しではない。

 

 

「あ、あの、本当にいいんですか?」

 

「――黙ってろ」

 

「ヒッ!は、はい…」

 

「お前、大ちゃんを怖がらせたな!許さないぞ!」

 

 

 友達なのか親友なのかわからない緑色の少女――大ちゃん。あだ名だろうが、彼女がなんとか止めようとしている。だが、それを零夜が聞き入れるはずもなく、恐喝するとチルノが怒った。もう、訳が分からなくなっている。

 

 

「元はお前が蒔いた種だろうが…。まぁいい。相手してやる」

 

 

 零夜の周りに突如、緑色をした長方形のものが飛び回る。同時に裏が紫色のカードが、その物体にくっついて飛び回る。当然、それに驚いて困惑する二人。

 そして、その物体が零夜の腰に装着される。

 

 

「変身」

 

 

 

OPEN UP!

 

 

 

その機械音声とともに、光のゲート・【スピリチアエレメント】が出現し、零夜の体を通過する。

通過した後、零夜の姿は変わった。緑のボディスーツ、金色のアーマー、紫の複眼を基調とする姿。頭部が蜘蛛とクローバーを模しているライダー、【仮面ライダーレンゲル】へと姿を変えた。

 

 

「す、姿が変わった!?どうやったんだそれ!?」

 

「チ、チルノちゃん…今すぐ逃げよう…!」

 

「―――?…どうしたんだよ大ちゃん?」

 

「だ、だって、あの人は…!」

 

 

大ちゃん、と言われた少女は気づいたようだ。目の前の存在が、どのようなものなのかを。

 

 

『自己紹介だ。今の俺は【仮面ライダーレンゲル】…。お前等で言う、【究極の闇】』

 

「「ッ!!」」

 

 

 二人の表情は、それぞれ別だった。チルノと呼ばれた少女の顔は、驚愕と怒り。未だ名前の分からない大ちゃんと呼ばれた少女は、焦燥と恐怖の感情が露わになっていた。

 

 

「チルノちゃん!すぐ逃げよう!私たちじゃ手に負えないよ!」

 

「いいや逃げないッ!逃げるなら大ちゃん一人で逃げて!こいつ、大ちゃんの敵だッ!」

 

(かたき)?俺はお前を殺した覚えなんてないんだがなぁ』

 

 

レンゲル―――零夜もあの妖精を殺した覚えなどない。知能があるものならある程度覚えているし、なにより初めて人型を殺ったのはゲレル(ゴミ)のみである。

 

 

「嘘つくな!お前の攻撃が大ちゃんを消し飛ばしたこと、あたいは今も忘れていない!」

 

『いつの話だ?』

 

「千年前だ!」

 

 

 チルノの証言で、零夜は完全に理解した。確かにあの闘いで周りなど気にする余裕などなかった。それに一直線の広範囲攻撃を行ったときに、彼女は巻き添えを喰らったのだろう。

 

 

『あぁ…。あの時か。だが、妖精は死なない。そうだろ?』

 

「それでも!大ちゃんを殺したことには変わりない!今ここであたいが倒してやる!」

 

 

 チルノは自身の周りに冷気を作り、周りの蒸気が凝固し、剣の形となる。氷の羽を羽ばたかせ、レンゲルへと接近し、剣を振るう。

 瞬間、レンゲルは先端がクローバーを模した、伸縮自在の槍型のラウザー、【醒杖レンゲルラウザー】を一瞬にして装備し、チルノの攻撃を受けとめる。

 

 

『妖精の命は軽い。何度死んでも問題ないはずだ』

 

「うるさい!大ちゃんを殺したヤツは許さない!」

 

『お前はそれしか言えないのか!?』

 

 

レンゲルはそのままレンゲルラウザーを一度引き、剣から離す。

 

 

「うわッ!」

 

 

 ずっと前向きに力を入れていたチルノは、急に自身の力を受けとめる物をなくし、そのまま勢いよく地面に投下される。

 そのままレンゲルはレンゲルラウザーを突き出し、チルノに槍先を直撃させる。

 

 

「チルノちゃん!」

 

「クソっ!だったらこれだ!」

 

 

 チルノは自身の周りにいくつもの氷杭(ひょうこう)を作り、それを一気に放つ。

 それに対しレンゲルはレンゲルラウザーを回転させ盾を作り、氷杭を防ぐ。

 

 

『(対処が簡単すぎる…。たった一つ二つ先を考えるだけですぐに攻撃できたり防げる…。設定で、バカって言うのは確かだな)』

 

「攻撃が当たらない!」

 

「チルノちゃん!相手が強すぎるんだよ!私たちが手に負えないって!」

 

「大丈夫だよ大ちゃん!あたいは最強なんだ!闇だかなんだかなんて、あたいにかかれば問題ない!」

 

 

 『設定上』、チルノは自称最強だ。確かに妖精の中では上位の存在としては間違ってはいない。だが、この幻想郷範囲で見れば、チルノは雑魚に等しい。強者のいい例は【博麗霊夢】【八雲紫】辺りだ。

 

 

『(確かに他にも、五大老なんて設定あったなぁ…!まぁ今はいいか)』

 

「喰らえッ!」

 

 

雹符「ヘイルストーム」

 

 

 チルノを中心に、氷の竜巻が発生する。そのまま(ひょう)*1が発生し、竜巻に揺られ全方位に雹が散乱する。

 レンゲルはトランプを模したカード、【ラウズカード】を取り出し、レンゲルラウザーにラウズする。

 

 

 

TORNADO(トルネード)

 

 

 

 カードがレンゲルに吸収される。それと同時に、レンゲルの周りに竜巻が発生し、雹を周りにまき散らす。

 

 

「なッ!?あたいのスペルカードが!?」

 

『風はこっちだって使える。これは本来、本職のヤツなんだがな…』

 

 

 レンゲルが使ったカードは、ハートのカード。つまり【仮面ライダーカリス】のカードだ。レンゲルは――零夜はカリスにも変身できるため、クローバーとハート、二種類のカードが使える。

 逆に、スペードとダイヤのカードは持っていないため使えない。

 

 

『次はこちらからだ』

 

 

FLOAT(フロート)

 

 

 レンゲルは『フロート』のカードを使い、空を飛ぶ。このカードはハートのカードであると同時に浮遊能力を付与するカードだ。妖精は――幻想郷の者たちはほとんどが空を飛べるため、少しでも対等に戦うと言うことだ。

 

 

『来い、最強の妖精!』

 

「やってやる!」

 

 

 チルノは氷剣を構える。羽を羽ばたかせレンゲルへと突撃する。レンゲルはチルノの攻撃をレンゲルラウザーで軽く受け止める。氷剣の冷気から成る氷の斬撃は、相手の体温を徐々に奪っていく―――。

 

 

「おらおらおらおらおらおら!!!」

 

『単純。簡単。簡易。とてもシンプルな攻撃だな』

 

「うるさい!」

 

 

 簡潔に言おう。チルノの攻撃はとてつもなく単純だ。ただただ氷剣を縦、横、斜めと一直線に振っているだけ。これでは子供のチャンバラと同じだ。そこには工夫がないのだ。

 

 

『闘いと言うのを教えてやる』

 

 

 レンゲルは今だ攻撃してくるチルノの構える氷剣をレンゲルラウザーで上に弾く。

 

 

「あっ!」

 

 

 飛ばされた氷剣に気を取られたチルノはこの時完全にレンゲルのことが視界に入ってなかった。――それが、闘いにとって命取りだと言うのに。

 

 

RUSH(ラッシュ) BLIZZARD(ブリザード) POISON(ポイズン)

 

 

 三種のカードをラウズし、レンゲルラウザーに吸収される。レンゲルラウザーの矛先をチルノを突いた。

 チルノは悶え苦しむ。チルノの体が紫色に変化していく。――妖精が何故ここまで苦しむのか、それは毒によるものだ。自然の権化である妖精は、自然そのもの。自然にとって毒とは危険物だ。それ故、効果抜群なのだ。

 

 

「ウグッ!」

 

「チルノちゃん!」

 

 

 チルノは毒により地面に激突した。大ちゃんとあだ名の妖精はチルノに駆け寄る。

 

 

「うぐぐ…!」

 

「大丈夫、チルノちゃん!?」

 

『おーおー。毒だけでここまでとは。なかなかに効くな』

 

「お、おい…!毒なんて…卑怯、だぞ!ちゃんと、闘え!」

 

『ちゃんと?バカ言ってんじゃねぇ。勝負の世界に汚いも綺麗もあるか。故に、毒とて闘いの場において正当な物だ』

 

 

 この場合、レンゲルが正しい。闘いに一般的な正当性など持ち込んだらその時点で持ち込んだ方の負けである。なにせ、もし闘いの形式が『殺し合い』ならばどんな手を使っても勝たなければならない。そうしなければ、死んでしまうのだから。故にどんな方法を使っても勝つ。それが正しいのだ。

 

 

『まぁ可哀そうだからもう少し遊んでやる』

 

「クソっ!あたいを、バカにするな!」

 

「チルノちゃんもうやめて!毒が、チルノちゃんの体がもたないよ!」

 

「ウグ…。でも、大ちゃん!あいつは、倒さないといけないだ!それは、最強である、あたいがするべきで――」

 

 

BIO(バイオ)

 

 

 ――次の瞬間、レンゲルラウザーの先端からツタの触手が生み出され、『大ちゃん』を拘束した。縄で縛る形式で、腹の辺りをグルグルと巻かれる。

 

 

「大ちゃん!」

 

『遊んでやるんだ。もうちょっと楽しませろ』

 

「大ちゃんを放せ、卑怯者!」

 

『まだ分からないか自称最強。妖精は死んでも生き返る。それは常識だ、そうだろ?』

 

 

 レンゲルはチルノと自らが捕縛した『大ちゃん』に問いかける。

 

 

「そ、そうです…」

 

「そうだ!それがどうした!」

 

『だったら俺ごと殺れ』

 

「「ッ!!」」

 

 

 レンゲルから放たれた言葉は、正に青天の霹靂だった。簡単に言えば、レンゲルはチルノにこう言っているのだ。『卑怯な自分を倒したければ、友人ごと倒せ』と。

 

 

『妖精は死なない。ならば殺しても問題ないだろう?』

 

「そ、それは、そうだけど…」

 

「チルノちゃん…」

 

 

 この危機に、チルノは困惑する。この状態で『大ちゃん』ごと撃てば、あいつを倒せるだろう。それに自身を含めて妖精は死んでも生き返る。だから気にすることはない。だが、それを友情と言う名の感情が邪魔をする。友情は素晴らしいものだ。だが、それが時に障害となることもある。とても残酷なものなのだ。もしこのままじっとしていれば、自分が毒でやられてもいずれ復活し、『大ちゃん』も死ぬことはない。

 

 

『さぁ、どうした?早く決めろ』

 

「ウ、グ、…」

 

『……友情が邪魔をするか。友情とは素晴らしいが、残酷でもある。悲しい感情だ。……酷だな。もういい、よくよく考えればお前と付き合っている暇はなかった。せめて、一瞬で終わらせてやろう』

 

 

 レンゲルはツタで捕縛していた大妖精を放し、チルノに向かって落とした。

 

 

「大ちゃん!」

 

「チルノちゃん!」

 

「良かっt―――」

 

 

FLOAT(フロート) DRILL(ドリル) TORNADO(トルネード)

 

SPINNING(スピニング) DANCE(ダンス)

 

 

 ――刹那、レンゲルは竜巻を纏い、チルノと『大ちゃん』に向かってキリモミ回転キックを喰らわせた。

 爆発音が響く。雪が飛び散り、熱で雪が溶けていく。雪が飛び散り、すべてが地面に落下すると、その場に残っていたのはレンゲルだけだった。

 

 

『悪いな。情報を漏らさないために、お前等には見つかった時点で消えてもらうつもりだった』

 

 

 ――普段の彼からは想像できない鬼畜の所業。それもすべて計画と目的のため。自身の不利になるようなことは徹底的に排除しておくのが吉なのだ。

 

 

『まぁ妖精だから「いずれ復活するだろ」

 

 

 レンゲルは変身を解き、零夜に戻る。

 

 

「―――行くか」

 

 

 そのまま何も言わず語らず、異変の元凶の元へ歩いていく。

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

「―――ねぇ魔理沙。あっちの方でなんか爆発しなかった?」

 

「そうか?私にはなにも聞こえなかったぞ?」

 

 

 零夜のいたところから遠く離れた場所。そこには二人の少女がいた。一人は脇を露出した巫女服を着ている少女。もう一人は白黒の魔法使いの恰好をした少女だ。

 

 

「そんなことより、異変の元凶らしい妖怪、迷った際に見つけた猫妖怪、全く異変に関する手がかりが見つからないな」

 

「早く異変を解決しないと、究極の闇に異変を奪われる。そうしないためにも早く解決しなきゃね」

 

「そうだな。よし、いくぜ霊夢!」

 

 

 二人の少女は空を飛び、この異変を解決せしめんと、どこかへ飛んでいくのであった。

 

 

 

*1
積乱雲から降る直径5mm以上の氷の粒のこと




零夜の鬼畜度が―――上がった! ※数字どのくらいにすればいいかな?
まぁ悪役って大抵鬼畜だからこれはこれで正しいのかな?まぁその代わり作者のメンタルやSAN値が減っていくけど。

誤字・脱字報告、感想、是非お願いします。もしかしたら改稿するかもしれませんが、そこら辺は大目に…。
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