桜の花びらが舞う、現世ではない、全く違う世界。
その世界に今、三人の少女と、一人の闇の亡霊が佇んでいた。
『足止めは確実だったはずだ。破るのも異変を奪った後だと、計算していたんだがな…』
闇の亡霊、ダークゴーストはそう怒りの声で言い放つ。
あの門の接合は、春度の供給の停止と同時に、霊夢たちの足止めの役割を果たしていたはずだった。
だが、彼女たちの力ならば、いずれは無理やりこじ開けられるほどの接合だ。だからこそ、これほど早い到着は予想外だったのだ。
「あぁ。お前の言う通り、がっちりと接着してくれたな」
「いくら攻撃してもビクともしないし、困ってたのよね」
『ならば、どうやって…―――!まさか!』
「そのまさかよ」
ダークゴーストの驚愕に、咲夜が答える。
『お前か。お前の能力なら、可能か!』
「えぇ。あなたに私の能力が知られているのは遺憾だけどね」
彼女――十六夜咲夜の能力は、時間を操る程度の能力。
字面だけでは彼女が門を破ったこととは関係はないかもしれない。
だが、時間と空間は、密接に関係しているのだ。つまり、時間を操れる彼女は空間さえも操ることができるのだ。
「無理やりはあまり好みではないけど、場合が場合だったから、実行に移させてもらったわ」
彼女はその力を使い、能力で無理やり接合されていた扉を、空間を操って無理やりこじ開けたのだ。
『だが、空間ごと接合したはずだ。いくらお前でも時間が掛かる――そうか。それもお前の能力でなら…』
彼女の本質は時を操る力。時を止め、自らの力だけで扉をこじ開けたのだ。
そこには想像がつかない労力が存在するだろう。だが、物事を完全に遂行することが、彼女にとっての生きがいだ。
「実際、数ヶ月単位で時間がすごく掛かったけどね」
「ほんと、咲夜には感謝だな!」
「そんなに働いたのなら休んだら?」
「お断りするわ。だって、仕事だもの」
『おしゃべりはそれまででいいか?』
「おっと、そうだったな」
「にしても、また姿が違うわね」
今霊夢たちが見ている姿はダークゴースト。前回はブラックウィザードとダークキバだ。たくさんの姿のバリエーションに、一体どれほどの数の姿があるのか、霊夢たちには想像がつかない。
『(時間が止まってれば気づくはずだが…。完全に次元が違ってたがために気づけなかったか)』
ダークゴーストはそう心の中で愚痴る。
ダークゴースト――零夜は特定の姿でしか止まった時間の中動けないが、通常でも生身でも、時間の変化には気づくことができる。
理由としては、オーロラカーテンを使用しているためである。オーロラカーテンは空間と時間を繋ぐ扉的存在。使っているうちに、そういった感覚を感じることができるようになっていたのだ。
そして、彼女の能力も違う次元にまでは影響を及ぼさないようで、違う次元にいた零夜も、気づくことはできなかった。
『都合のいい時にきやがって。そういう仕様でもついてんのかお前等』
「何故か来るときは都合がいいのよね私は。やっぱり、日頃の行いがいいからかしら?」
「それを言うなら私だって!」
「貴方達の日頃の行いがいいのなら、全人類の日頃の行いがいいことになるわよ?」
咲夜の辛辣な指摘が入る。
そんな間にも、ダークゴーストは別のことを考えていた。
『(本当に、都合が良すぎるんだよ)』
実際、彼女たちの登場は都合が良すぎた。
紅霧異変のときだってそうだ。零夜が後から知ったことだが、フランのピンチにもちょうどいい時に登場したと聞いている。実際は待機していたらしいが。それでも事が”うまいこと運びすぎている”と言う点が問題だった。
この世には、主人公補正と言うものが存在する。例えばこの世界で言えば彼女たち、博麗霊夢と霧雨魔理沙がこの世界の主人公だ。
主人公補正とは設定・物理法則その他諸々を一切無視した謎の補正のことを指している。
例を挙げれば、
敵がどんなに攻撃をしても当たらないまたは倒れない
逆に主人公が一発でも攻撃を当てると敵が倒れる
主人公の攻撃は絶対に当たる―――などのチート。
今回で言えば都合のいい登場だ。都合の良い時に助け、都合の良いときに現れる。まさに敵さん顔なしの真のチート能力。
『(主人公補正がこの世界でも適応されているとすれば、やはりあいつらは侮れない。一応例外もいるが――。例外がいるなら問題ないか?)』
確かに、この世界には主人公補正が効かない相手がいたはず。名前はまだ知らないが、確かいたはずだ。主人公補正が効かない相手が存在するのなら、自分にも効かない可能性がある。だが、逆に効く可能性もあるため、やはり油断はできない。
『ハァ…。鬱だ』
「あら、じゃあ元気にしてあげましょうか?闘いで」
完全に反対のことを言う霊夢。あちら側は完全に戦う気満々だ。だが、一刻も早く異変を奪わなければならないダークゴーストにとっては、それは邪魔なだけだ。
『お前らはこいつらの相手をしていろ!』
ダークゴーストは右手を突き出し、二本指を立てると、体から15体の黒い幽霊がパーカーを被ったようなスタがの幽霊、【パーカーゴースト】が出現する。
謎の生命体?に霊夢たちは驚愕の表情を浮かべる
『行けッ!』
ダークゴーストが命令すると、パーカーゴーストたちは霊夢たちを攻撃する。
「なにこいつら!?」
「うわッ!」
「ちょこまかと…!」
それぞれに五体ずつが相手をしている状況となる。パーカーゴースト15体を囮にし、ダークゴーストは後ろを向いて、空を飛ぶ。
「待ちなさい!」
当然のごとく、霊夢がダークゴーストに対して静止の言葉を叫ぶが、そんな言葉を聞き入れるはずもなく、階段の上へと昇っていく。
そして―――一段と大きな桜の木が、よく見える場所へと到達する。この木は、当初入ったときから目に映るほどの大きな桜の木だった。そして、そこに春度が集まってきていたため、一段と目立っていた。
『出て来いよ亡霊姫!いるのはわかってんだよ!』
ダークゴーストはいるはずの存在へと、大声を上げる。
――そして、その存在は、姿を現した。
「言われなくとも、出てあげるわよ」
その存在は、ピンク髪のミディアムヘアーに水色と白を基調としたフリフリのようなロリィタ風の着物にピンク色の被り物。帽子の三角の形をした布が何となく幽霊を想起してしまう形。靴は青いリボンの着いたパンプスを着用している美女。
この存在は、一言で言えば『亡霊姫』と言う存在だ。
『初めまして、【西行寺幽々子】』
「あら、私の名前を知っているのね。嬉しくないけど」
『露骨な嫌悪だな』
「あら、バレちゃった?まぁいいわ。それに、まんまと釣り針に引っかかってくれたわね」
『釣り針?……まさかとは思うが、この異変は俺を誘き出すために起こしたのか?』
「全く持ってその通りよ」
ダークゴーストはあまりの出来事に、頭が困惑する。
自分の知っている歴史では、彼女が異変を起こした理由は、先ほどの巨大な桜の木を咲かせることだったはずだ。それが、自分を誘き出す目的に変わっている。歴史の変化に、対応できなかったのだ。
だが、自分が介入している時点で歴史は変わっている。あまり気にすることではないと思うが、ダークゴーストは一応自分の考えを口にする。
『…本当にそれだけか?』
「―――どういうこと?」
一瞬、幽々子が反応を示した。当たりだと判断したダークゴーストは問答を続ける。
『俺を誘き出すっつーのは、ただの副産物なんじゃねぇのか?本来の目的は別にある』
「…………」
『春度がこちら側に来るのを途絶えさせる前、春度はあの大木に集まっていた。詳しくは知らねぇが、あの木に花を咲かせる、のがお前の目的だな?』
「………正解。よくわかったわね。さすがは究極の闇、とでもいうべきかしら?」
幽々子はダークゴーストの完璧な推理に唖然としていた。だが、その推理をしたのが究極の闇であるのなら、納得がいくと言う顔をしていた。
『あれが特に目立ったからな。状況把握に努めただけだ』
「…そう。まぁいいわ。あなたの言う通り、私の真の目的はあの木を咲かせること。でも異変が起きれば必ずあなたは来る…。だからついでで倒そうかなって」
『ついでか…。俺を舐めすぎてないか?』
「まぁ確かに、周りの反応が過剰過ぎると思うの。でもね、私の能力なら、あなたを一瞬で殺せる」
幽々子の能力―――【死を操る程度の能力】。その名の通り、相手を死に
瞬間、幽々子の周りに無数の幻想的な蝶が生まれる。この蝶こそが、彼女の能力が具現化したものと言ってもいい存在だ。
『なるほどな。単純だが、恐ろしいな』
「そうでしょ?でも―――あなたの魂、どれか
『―――なにを言っている?』
「あら、惚けても無駄よ?あなたの体には、無数の魂が
ダークゴーストは今の発言で完全に理解した。幽々子が言っているのは、アナザーゴーストの能力で吸収した魂のことだ。
アナザーゴーストの能力は、『魂の吸収』。吸収を行うことによって、自身の力を強くする能力。その際に吸収した魂のことを言っているのだろう。
今思えば、プリズムリバー三姉妹や魂魄妖夢が言っていた、『魂の異質』と言うのは、このことを指していたのかもしれない。
「まぁでも、一つだけ『ありえないほど黒く濁った魂』があるし…。それを消せばいいだけね」
彼女の言っている魂は、おそらく――と言うより完全に『ゲレルの魂』だ。
逆にそこまで濁った魂を吸収した覚えは、アレしか思い浮かばない。
だが、これはチャンスだとダークゴーストは考える。今幽々子は、『ゲレルの魂』を『究極の闇の魂』と勘違いしている。その勘違いを利用すれば―――。
『まぁ、俺の魂は目立つからな。バレるっちゃバレるか』
「そう。戯言はそこらへんでいいわよね?じゃあ、死になさい」
幽々子の操る蝶が、一斉にダークゴーストに襲いかかる。
そんな中、ダークゴーストは、避けるそぶりすら、見せず、蝶に群がれた。
「……案外と、あっけなく終わったわね…」
幽々子も、避けもせずに蝶に群がられたダークゴーストに、驚きを隠せなかった。もう少し抵抗すると思っていた。必ず避けるはずの初発。それを避けなかったことが、逆に幽々子を不審がらせた。
「私の能力で死んだ者は、永遠に私の従者になる。せいぜいコキ使って―――」
『変身』
――刹那、蝶たちが破壊される。突然の出来事に、幽々子の顔に焦りの感情が出る。
一体、なにが起きたのか。幽々子の頭は疑問で埋め尽くされた。
『………』
蝶が霧散する中、そこに立っていたのは、一人の骸骨。
髑髏を模した顔が特徴的な、白い帽子を持ち、マフラーを身に着け、額には「S」字の傷模様がある姿の戦士が、そこに立っていた。
骸骨は、白い帽子を被り、S字を隠すように深く被る。
「どういうこと―――!?」
突然姿が変化したことに幽々子は驚愕するが、彼女が驚愕しているのは姿が変わったこと――外ではない。
『どうした?姿が変わることが、そんなに驚いたか?』
「惚けないで……!どうして?どうして!?」
幽々子の表情が、疑問に溢れるものから、義憤の表情に変わる。
何故彼女がそんなに怒っているのか。それは―――
「魂が、一個も感じられないなんて!信じられない!?」
幽々子が怒っている理由。それは、この骸骨からh感じられないのだ。生命には必ずあるはずの、『魂』が。先ほどまで不特定多数の魂が、一つの体に内包されていたはず。それが、
「魂が消えるなんて…!ありえない…!」
『あり得るさ。
「どういうこと…!?」
『変身するのは……少しの間、死ぬ事だ』
「ッ!!」
つまり、今の彼は死んでいるのだ。体が死んでいれば、当然魂もなくなる。死んでいるために、殺せない。
まさに幽々子にとって天敵ともいえる存在だった。殺せない敵に、殺すことに特化した幽々子の能力は効かない。つまり―――
「どうやら、力づくでねじ伏せるしかないようね」
その言葉を皮切りに、弾幕が発射された。
幽々子の弾幕は、一言でいえば華麗。亡霊姫と言われても、全く不自然に感じない、そんな美しい弾幕が、ゲリラ豪雨のごとく降り注ぐ。
そんな雨の中、骸骨はゆっくりと、被弾しながら進んでいく。これはおかしいことだ。
弾幕は、当たれば痛い。これは幻想郷での常識であり、すべての種族に適応されることだ。そんな弾幕の豪雨に、被弾しまくっているあの骸骨が、異質で仕方がない。どうしてあそこまで平然としていられるのか。考えられる可能性は2つある。
一つは、防御力が高いと言うこと。
もう一つは、そもそも効いていないのか。
幽々子にはその判別が、不可能だった。
『そうだ。まだ名乗りがまだだったな―――。俺の名は【スカル】。【仮面ライダースカル】』
『お前は、いくつか罪を犯した』
『それは人の命に係わる危険な罪』
『その罪とは、愚かな好奇心で犯した、哀れな罪』
『罪は許されない、誰もが犯し、永遠に背負わなければならない事柄だ』
『そして、それは俺にも該当する』
『自分でも、それが罪だと知っている。愚かな行為と知っている』
『俺はそれを肯定し、自分の罪と永遠に向き合う』
『自己満足かもしれない。自己防衛かもしれない。だが、それでも俺は罪を犯す』
『だから、俺も罪を背負おう。だから―――』
『さぁ……お前の罪を、数えろ』
左手の人差し指で幽々子を指差し、そう言い放った。
* * * * * * *
「あぁぁぁあ!!鬱陶しい!」
時は遡り、霊夢、魔理沙、咲夜は、自身を攻撃するパーカーゴーストに手間取っていた。
元々、単純計算で1対5と言う絶望的な数の暴力で叩かれているために、一体を倒すのにも、他の四対が邪魔をして倒すことができない。パーカーゴーストたちは、連携が取れすぎているのだ。
「クソっ、くらいやがれ!」
魔理沙が星型の弾幕を放つ。
一番前に紫色のパーカーゴースト、【ノブナガゴースト】が前に出て、手に持った【ガンガンハンド・銃モード】を構えると、自身の周囲にガンガンハンドが複製され、持っているガンガンハンドの引き金を引くと、宙に浮いているガンガンハンドも一斉に弾が発射される。
弾幕はすべて撃ち落とされ、ノブナガゴーストの前に、数体のパーカーゴーストが出る。
白いパーカーゴースト、【ベンケイゴースト】が【ガンガンセイバー・ハンマーモード】を。
青いパーカーゴースト、【リョウマゴースト】が【サングラスラッシャー・ソードモード】を。
水色のパーカーゴースト、【ツタンカーメンゴースト】が【ガンガンハンド・鎌モード】を魔理沙に向けて振るった。
「やべッ!」
魔理沙は自分が乗っている箒に魔力を付与して硬質化し、パーカーゴーストの攻撃を防ぐ。だが、三人分の攻撃を魔法使い以前に人間である魔理沙にとっては到底受けとめられるものではなく、そのまま勢いよく地面に落下する。そもそも、宙に浮いているのだから上に力を入れられれば落ちるのは当たり前だろう。
石畳に直撃した魔理沙は、石ころをどかしてなんとか立つ。
「いてて…」
「魔理沙、大丈夫?」
咄嗟に咲夜が魔理沙に駆け寄り安否を確認する。だが、見た通りでは大丈夫そうだった。
「あぁ、大丈夫だぜ」
「なら安心したわ。こいつら、厄介すぎるわ!」
咲夜がそう言った瞬間、時を止めたのだろう、咲夜の目の前の景色がナイフ一色に染まる。勢いが止まった状態だったナイフはそのまま威力が動き、狙いへと投下される。
が、ナイフはすべて『音符』によって破壊される。音符とともに流れてくる聞きほれてしまうほどの綺麗な音楽。その方向には、灰色のパーカーゴースト、【ベートーベンゴースト】が音楽を奏でていた。
「音符で攻撃ってありかよ!?」
「だったら!」
咲夜は自身の周りに先ほどより巨大なナイフを大量に配置し、一斉に飛ばした。
この弾幕は巨大な分、耐久性もある。あの音符でも一撃では破壊されないはずだ。
それに、次の狙いはあの音楽を奏でているパーカーゴーストではないのだから。
個々の能力が分からない現在、15体のパーカーゴーストがそれぞれどんな能力を使い、どのように用いるのかが分からない。そのためにも、相手のことを知る必要がある。
巨大なナイフは複数のパーカーゴーストたちに向かっていく。破壊困難な技が、直撃する――とき、鎖が弾幕をからめとる。
鎖に絡めとられたナイフはそのまま一か所に纏められ、まとめて地面に叩きつけられる。
見ると、鎖はバイクのような形状をしたパーカーゴースト、【フーディーニゴースト】によって絡め取られていていた。
「なッ…!」
その後、鎖は外されナイフは地面にごろりと置かれた。
その次に、水色のパーカーゴースト、【ニュートンゴースト】が前に出て、左手をナイフに突き出す。ナイフは一斉に、ニュートンゴーストの左手にまるで磁石に吸い取られる砂鉄のように集まっていき、右手を突き出すとナイフは一斉に咲夜たちに向かって行く。
「四重結界!」
すかさず、どこからか霊夢が結界を張りナイフを迎え撃つ。
四重結界はその名の通り、結界を四重の膜のように張った結界のことだ。
一枚目が破壊され、二枚目も破壊される。三枚目でなんとか防ぎ、ヒビが入っていく。
「ついでにもう一回!」
再び四重結界を張り、守りを厳重にする。
と、同時に三枚目、四枚目と破壊されていた。
「ばらけるわよ!」
霊夢の言葉に、三人ばバラける。それと同時に、結界が破壊され、効力が消えたのか、ナイフ自体が霧散していく。
バラけた霊夢に、赤いパーカーゴースト、【ムサシゴースト】が【ガンガンセイバー・二刀流】を。
ピンク色のパーカーゴースト、【ヒミコゴースト】が【サングラスラッシャー】を構えて飛び、攻撃する。
霊夢はお祓い棒でそれを受けとめ、逆に押し返した。
「おらぁ!」
押し返した後、蹴りを喰らわせ、弾幕で追撃を行った。弾幕を直撃した二体は地面に伏してもだえ苦しんでいるように見える。
「次よ!」
次に視界が捕らえたのは黄緑色のパーカーゴースト、【ゴエモンゴースト】。こちらにゴエモンゴーストが気づくと、ゴエモンゴーストは【サングラスラッシャー】を逆に持ち、振るった。
霊夢は駆ける最中に封魔針を放ち、ゴエモンゴーストがサングラスラッシャーで薙ぎ払い、二人の顔が近くなった瞬間、サングラスラッシャーとお祓い棒がぶつかり合う。
「くッ!!」
そんな中、咲夜は迫りくる攻撃に、ナイフを使って応戦していた。
黄色いパーカーゴースト、【エジソンゴースト】が【ガンガンセイバー・ガンモード】を。
緑のパーカーゴースト、【ロビン・フッドゴースト】が【ガンガンセイバー・アローモード】を。
茶色のパーカーゴースト、【ビリー・ザ・キッドゴースト】が【ガンガンセイバー】と【バットクロック】を両手に用いて、撃ち、射貫き、連射する。
咲夜もナイフで応戦しているのだが、ナイフだけではどうしても限界がありすぎる。
最も厄介なのがエジソンゴーストとビリー・ザ・キッドゴーストだ。弓のような単発系とは違い、銃は連射可能だ。それに対応するために時間を止めて弾を避けながらナイフを飛ばすしか攻撃方法がないのだ。
「ふッ!」
一応対策はしており、弾の速度を自身の能力で遅め、逆に自身の速度を上昇している。これにより急な弾丸への対策もしっかりしている。
横に走りながら迫りくる球を回避する。その間にもナイフを投擲するが、やはり弾丸によって途中で弾かれる。
「だったら!」
咲夜は接近戦に切り替えようと、時間を止めて三体の後ろに回る。時間を動かした瞬間、目の前に標的がいないことによる焦りの感情が背中越しでも理解できていた。
一気に仕留めようと三体の頭に向けてナイフを一本ずつ放つ。
「(取った!)」
近距離による背後を狙った攻撃。一撃死が確定した―――。
「なッ!?」
そのとき、
その何かはそのままナイフを地面に投げ捨て、逆に咲夜を拘束する。
「しまった!」
空中に浮遊しながら縛られたために、力が入らない。手に持っているナイフで切ろうとしても切れない。このなにかを見てみると、それは緑の紐のようなものだった。
その紐の出所を見て行くと、そこには濃い緑色のパーカーゴースト、【グリムゴースト】が肩から紐を放出して咲夜を拘束していた。
「咲夜ッ!」
一方、魔理沙は空中戦で苦戦していた。
箒に乗って空を掛け、弾幕で攻撃を行っているのだが…。
「こいつらしつけぇ!」
白い法師の服を着た、『サル』『ブタ』『カッパ』が、筋斗雲に乗って魔理沙を翻弄していた。
それだけではなく、巨大で円型のなにかが、ブーメラン式に飛び回って魔理沙の飛行の邪魔をする。
「こいつらの本体を叩き潰して咲夜を助けねぇと!」
魔理沙の瞳には、白いパーカーゴースト、【サンゾウゴースト】の姿があった。
サンゾウゴーストは、魔理沙にはあの三体を指揮している司令塔のように見えた。それに加え、ブーメラン――『チャクラム』による攻撃と、【ノブナガゴースト】【ベートーベンゴースト】が散弾と音符を使って魔理沙を追い詰める。
「一気に叩き潰してやる!」
―――光る。
魔理沙を中心にすべてが光り、七色の光が魔理沙を包み込む。
星型の弾幕が周囲にばら撒かれると同時に、魔理沙は箒の
このスペルカードは周囲に弾幕をばら撒くと同時に、マスタースパークに匹敵する極太の光と共に自機へ突撃する技だ。
彼女らしく派手で、強力な技だ。
そんな技が今、パーカーゴーストたちに、直撃する―――。
「――――えッ?」
―――とき、魔理沙の放つ光と弾幕が、一瞬にして消え去った。
そして、それと同時に魔理沙が地面に落下した。
「ぐッ!」
「魔理沙!?」
拘束されている咲夜も、今の謎の現象に驚愕していた。
魔理沙のスペカが強制終了させられただけではなく、魔理沙が突如地面に落下したのだ。これは、ありえない。なにせ彼女は魔法で空を飛んでいる。彼女が飛行魔法を中断するようなバカなことはしないことは明白だ。それに、あの落下は、まるで
「どうしたの!?」
「わ、わからねぇ…!急に飛べなくなった!!」
魔理沙の口からも、飛べなくなったと証言されている。その謎の現象に驚愕しているのも束の間、攻撃が続く―――
「うッ!」
「咲夜ッ!?」
結果、最初にダメージを受けたのは咲夜だ。だが、彼女が受けたダメージはベクトルが違う。なにせ、彼女の痛みの原因は―――。
「か、解放された?」
拘束から解放され、地面に落下したときの痛みだったからだ。
何故解放されたのか、二人の頭は疑問でいっぱいだ。それに追い打ちをかけるかのごとく―――。
「えっ?うあぁ!」
「霊夢!?」
今だゴエモンゴーストと力比べをしていた霊夢の叫びが響く。二人がそこを見ると、前に倒れる瞬間に浮遊する霊夢の姿があった。
「あ、あぶな…」
「だ、大丈夫か?」
「えぇ。こいつら、急にどうして―――」
三人が周りを見ると同時に、異常性が感じられた。
パーカーゴーストの追撃が行われなくなったと思えば、パーカーゴーストたちは皆、同じ方向を向いているのだ。これを異常と言わずしてなんという。
「全員が、同じ方向を向いている…」
「あ、あっちになにが―――」
この異常性に霊夢たちも息を飲み、パーカーゴーストたちが向いている方向に顔を向ける。
自分たちを無視してまで、
『――――――』
――ゴクリ。
三人がそう息を飲む。
そこにいたのは、
身長は成人男性の平均身長より少し大きい程度。体型は痩せ型。逆にそれ以外の特徴が分からなかった。
『――――――』
その白いモヤはなにも喋らない。
しばらくの沈黙が続いたとき―――パーカーゴーストたちが、各々の武器を構える。
剣を構え、銃を構える。そしてそのまま…
『――――――』
―――パーカーゴーストは駆けだし、一斉に白いモヤに向かって攻撃した。
赤い斬撃が、電撃の弾丸が、緑の矢が、重力と反重力が、無数の弾丸が、音符が、七つのエネルギー弾が、炎の斬撃が、炎の渦が、桃色の斬撃が、水色の斬撃が、紫色の弾丸が、青いエネルギーを纏う鎖が、緑の弾丸を、白いチャクラムが、一斉に投下された。
攻撃は一点に。ただモヤに向かっていき―――
『――――――』
瞬間、攻撃が霧散する。
それだけに留まらず、風が霊夢たちを横切った瞬間、全体に衝撃波のようなものが走る。
「「「………ッ!!!」」」
手で顔を覆い隠し、なんとかガードするが、体が後ろに押される。足に力を入れてなんとか踏みとどまる。
風が収まり、三人が目を開けると、
「嘘、でしょ…!?」
「あ、あんな一瞬で…!」
「やられた…!?」
そこには、パーカーゴーストの姿はなかった。あるのはただ、白いモヤのみ。
何故パーカーゴーストがいないのか、理由は分かっている。あの衝撃波のようなものだ。あれで、一瞬にして消滅したのだ。
一体、なにが起こったのか、霊夢たちにはわからなかった。
『―――――――』
霊夢たちの動揺を無視して、モヤはなにかを取り出した。
それは、白いモヤそのものとは違い、ちゃんと実体――実物と言った方が正しいだろう。質量を持ったものを、モヤは持っていた。
それは、一言で言えば『時計』のような見た目をしているもの。手のひらサイズに収まる、小さな黒い時計。
『―――――――』
その時計が現れた瞬間、空中に
その幻想的な景色に、思わず見惚れてしまうが、あんなもの、先ほどまでなかったはずだ。つまり、あの時計が現れたからこそ、この粒子のようなものが見えるようになったのではないか?
そんなことを考えているとき、粒子が一斉に時計に吸い込まれていく。
時計は光輝き、やがて―――
時計は色を持ち、見た目が変わり、意味不明の音声が流れる。
時計を懐にしまうような仕草をし、実際に時計が消えた。そして―――白いモヤの顔のような部分は、霊夢たちを見る。
「こっち、見たわよ」
「そうだな…」
「あんたたち、気を抜くんじゃないわよ。あの攻撃がいつ来るか分からな―――」
霊夢が言葉を言い切る瞬間、霊夢たちの見える世界が、白い光に包まれた。
感想待ってます。