東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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10日ぶりです。 元気です。

 東方悪正記、どうぞ。


29 理不尽には理不尽を

「命日だとぉ…?この私のか!?ふざけるな!お前は誰だ!!」

 

「てめぇに話すことなんざねぇ」

 

 

 時刻は現在に戻り、鎧の男【ウラノス・カエルム】と、黒装束の男、【夜神零夜】はお互いをにらみ合っていた。

 ウラノスは気持ちよく敵を殺そうと思っていた時に邪魔され怒り、零夜は捕虜を傷付けられて。

 捕虜を使っていること自体問題だが、その全ての責任はシロにある。

 そのため、実質零夜の怒りはウラノスとシロに向けられることになる―――が、今はどうでもいい。

 今この怒りを向けるべきはウラノスなのだ。

 

 

「ならいい!貴様も今ここで死ね!」

 

 

 ウラノスが叫び、無事な手を上げた瞬間、零夜に向かって爆風が押し寄せる。

 

 

「素直に当たる訳ねぇだろ」

 

 

 同じく零夜も手を挙げて能力を行使する。

 『繋ぎ離す程度の能力』を行使し、周りの微粒な『風』をかき集める。

 集めた風を竜巻型にし、自身から引き離すことによって凶風をウラノスの攻撃めがけて発射する。

 風と風、二つの暴風がぶつかり合い、凶悪なほどの竜巻が起こる。

 

 

「―――――」

 

「ちッ!クソがッ!」

 

「似たようなことなら俺にだってできる。互角―――と言うべきか?」

 

「ほざけ!いくら私と同じことができようとも、所詮は真似事にすぎぬ!私に追い付くなど不可能だ…!」

 

「ピーチクパーチクうるせぇよ。―――だが、お前が強いことだって、事実だしな」

 

 

 零夜がウラノスが強者であると認めていた。

 先ほどのプロクス、ヒュードル、タラッタ、デンドロンの一件があるためだ。

 【ヘプタ・プラネーテス】と言う存在は、レイラ同様、零夜も知り得ないイレギュラーな存在。

 風を操れると言うことだけは分かったが、それだけではないだろう。零夜の勘がそう囁いていた。そうやって、レイラのようにボロ負けしてしまった時の二の舞にならないための、防衛本能。

 事実、それは当たっていた。

 

 ウラノスの『天を操る能力』と『指揮をする能力』。この二つに関連性など皆無だが、それぞれが強力な能力だ。

 だが、零夜はそれを知らない。故にまずは相手の出方を探る必要があった。

 

 

「クロ!」

 

「――――」

 

 

―――その時、零夜の後ろから可憐な少女の声が、自身の偽名『クロ』の名を呼ばれた。

 その声の主は、【ルーミア】。だが、その姿はほぼ全裸と言ってもいいほど衣服が摩耗していた。 

 そのため、零夜はウラノスへの警戒と彼女の素肌を見ないための二つの理由で後ろを振り向かず彼女の言葉に耳を貸す。

 

 

「あいつの能力は二つあって、簡単に言うと『天を操る能力』と『指揮をする能力』よ」

 

「二つ、か…」

 

 

 零夜も『繋ぎ離す程度の能力』と『創造する程度の能力』を持っているため、自分と同じ二つ持ちを見たのはこれが初めてだった。

 『創造する程度の能力』は『繋ぎ離す程度の能力』よりも汎用性や応用性などが高すぎるあまり、あまり使っていない能力だが、対してあの二つの能力の使用性能は高いだろう。

 『指揮をする能力』は軍人としてなら喉から手が出る程欲しい能力だろう。

 そして『天を操る能力』。これは一見零夜の『繋ぎ離す程度の能力』みたいに曖昧な能力名だが、その実は強力な能力だ。

 ルーミア戦で見せた彼の戦闘力の高さが、それを物語っている。

 

 

「戦う前にあいつの能力を知れたのは僥倖だったな。礼を言っとく」

 

「あ、ありがとう…」

 

「でも邪魔だから下がってろ」

 

「あ、うん……」

 

 

 役立つ情報教えたのに―――。

 ルーミアの頭にそんな言葉がよぎる。だが、今の自分がここに居ても彼の邪魔になるだけなので、何も言えなかった。

 複雑な心境が彼女を襲った。

 そんな状態のまま、【ニュートンゴースト】によってルーミアは遠く離れた場所まで連行されていった。

 

 

「よし、これで心置きなく戦えるな」

 

「準備は終わりかぁ…!?」

 

「―――――」

 

「貴様ァ!」

 

 

 常に怒っているウラノスの質問に対して、零夜は軽く無視。

 その無視が彼のさらなる逆鱗に触れることになるが、零夜にとってはどうでもいい。

 

 

「お前は、本気で叩き潰す」

 

 

 零夜は能力で亜空間から【ドライバー】を取り出す。

 

 

ゲーマドライバーッ!

 

 

「―――は?」

 

 

 ウラノスの素っ頓狂な声が響く。

 そんな間にも、零夜はドライバー―――【ゲーマドライバー】を腰に装着して、ベルトをまく。

 そんな彼が、懐から取り出したのは、【デンジャラスゾンビ】―――ではない。あのガシャットよりも、さらにデカいガシャット―――【デュアルガシャット】だ。

 デュアルガシャットをゲーマドライバーに差し込む。

 

 

ゴッドマキシマムマイティ!エーックスッ!

 

 

 そのガシャットの正体は、【ゴッドマキシマムマイティXガシャット】。

 最強レベルのライダーだ。

 力の底が不明な相手には、理不尽な力で対抗するしかない―――。レイラで学んだことだ。

 

 

「グレードビリオン、変身」

 

 

 その言葉と同時に、ドライバーのレバーを引いた。

 紫色の粒子が体を包み、零夜は【仮面ライダーゲンム】となる。

 

 だが、変化はそれだけではない。

 ゲンムの頭上には、ゲンムの顔を模した巨大な装備―――【ゴッドマキシマムゲーマー】が、浮遊していたのだ。

 ゲンムはドライバーに差し込んだガシャットの、『アーマライドスイッチ』を一気に押し込んだ。

 

 

 

マキシマムガシャットォ!

 

ガッチャーン! フゥゥゥメェェェツゥゥゥ!

 

ゴッドマキシマームエーックスッ!

 

 

 スイッチを押し込むと同時に、ゴッドマキシマムゲーマーがゲンムを包み込み、そこから右手、左手、右足、左足と出現し、最後にはゲンムの顔がゴッドマキシマムゲーマーのてっぺんから出てくる。

 【ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオン】誕生の瞬間であった。

 

 

『さぁ、待たせたな。―――どうした?』

 

 

 ウラノスは今も呆気としたままだ。

 零夜が変身したのにそんなに驚いたのか、表情はまだ固まったままだ。

 先ほどまで声を荒げていたウラノスが、ここまで静かになるなど、一体あの男は何を考えて――――。

 

 

「か、仮面ライダー…!?」

 

『――――ッ!?』

 

 

 ウラノスのつぶやきに、ゲンムが驚愕する。

 今、確かに聞こえた。『仮面ライダー』と。仮面ライダーのことについて話したことなど、ましてや言葉になど一度もしていない。

 仮面ライダーを知っているのは、『現代人』だけだ。

 つまり、それが表す意味は―――。

 

 

『―――お前、転生者か?』

 

「―――――」

 

 

 それが意味することは、二つ。

 ウラノスが『転生者』か。

 それともウラノスが『転生者』から『仮面ライダー』について聞かされたか。

 どちらだとしても、初めから予想していた『転生者』の存在について、ある程度明らかになった。

 

 ウラノスは、『転生者』についてなにか知っている。

 そして、彼の反応は―――。

 

 

「『転生者』―――?なんだそれは?」

 

 

 当然、知らないような素振りを見せた。

 これが演技なのか、もしくは本心からの疑問なのか。ゲンム(零夜)に知るすべはないため、どちらとも言えない。

 だが、この返答はあらかじめ予想していた。

 バカでなかったら自分から自分の正体をばらすなど、絶対にしないからだ。

 

 

『お前が(とぼ)けているのか、それとも本心で言っているのか。俺にはわからねぇが、とにかくお前は一時的に生かしておく価値は出来た』

 

「下らんハッタリを!」

 

『いいだろう。俺の全身全霊を掛けて、ぶっ潰す!』

 

「やれるものならやってみろ!お前などには無理だろうがなぁ!!我が名は【ウラノス・カエルム】!ヘプタ・プラネーテスである私が家名を名乗った以上、本気で貴様を潰してやる!」

 

 

 律儀にも『家名』を名乗る意味を説明したウラノスは、地面を足で踏み抜くと、辺り一帯に地響きが起こる。

 地面から舞い上がった大量の土砂が、空中に漂う。

 

 

「そのまま潰れろ!」

 

 

 ウラノスが()()で腕をクロスさせると、土砂が一斉にゲンムに向かっていく。

 土砂はゲンムを中心に球状形成されていく。

 

 

「はぁああああ!!」

 

 

 ウラノスが片手で掌を握ると、ゲンムを包み込んだ土砂が急速に小さくなっていき―――。

 途中で、ピタリと止まる。

 

 

「なに!?」

 

『フンッ!』

 

 

 止まった瞬間、固まった土砂が一斉に弾かれ、辺りに飛び散る。

 ゲンムは無傷だった。

 

 

『この姿じゃなきゃ、危なかったな』

 

「貴様―――何故無事でいられる!?」

 

 

 土砂に包まれ、圧死するはずだったゲンムが、重力の力を逆らったのを見て、ウラノスは驚愕の文字しか頭に浮かばなかった。

 ウラノスも、途中から異変に気付いてはいたのだ。能力の行使中なのに、途中から全く動かなくなった土砂の塊を不審に思っていた。そして、結果がこれだった。

 よくよく考えれば、あんなゴテゴテの装備なのだ。バカげた防御力を持っていたとしても不思議ではないだろう。

 

 

「防御だけは達者なようだな!だが、これならどうだ!?」

 

 

 ゲンムを中心に、微風が起きた瞬間、それが円形になっていき竜巻が発生する。

 閉じ込められたのだ。

 

 

『――――』

 

「驚愕で言葉も出ないか!?そのまま高火力で死ねぇ!」

 

 

 ゲンムを包んでいた竜巻に、『炎』と『雷』が纏われ、竜巻が圧縮される。

 炎雷の竜巻がゲンムを包み込んだ。

 

 

「どんなに防御が硬かろうが、この竜巻の温度は優に三千度は超えている!貴様もただでは『無駄だ』なッ―――!?」

 

 

 刹那、炎雷の竜巻が轟音とともに霧散する。

 そこには、再び無傷のゲンムが。

 

 

『熱で敵を溶かす―――。防御力に関係ない技だ。いい選択をしたな。だが、それでも無意味だ』

 

「何故だ!?何故無事でいられる!?」

 

『理由は、そうだな―――。『ゲーム』を創ったからだ』

 

「ゲーム…!?ふざけているのか!?」

 

 

 ウラノスが激高する。

 当然だ。今ウラノスは苛立っており、ただでさえ精神的に不安定なのだ。

 そこに、『ゲームを創った』と回答されれば、ふざけているとしか思えない。

 

 

『事実だ。俺の完全オリジナル。ゲーム名はそうだな―――【プロミネンス・クロニクル】』

 

 

――――プロミネンス・クロニクル

 ゲンム(零夜)の完全オリジナルゲームだ。

 ゴッドマキシマムゲーマーの世界のあらゆる概念を変え、どんなゲームをも自在に作り出す能力を用いて創ったゲームだ。

 プロミネンス・クロニクルは太陽の暴走から地球を救うゲーム。

 あらゆる熱の概念を操ることのできるゲームだ。

 故に炎や雷などの熱に対して完全耐性を取得することができるのだ。

 

 

『次は俺の番だ』

 

 

 ゲンムの体が、獄炎に包まれる。

 そのまま、ゲンムはゆっくりと歩む。

 

 

「そんなコケ脅しの炎で、何ができるというのだ!!」

 

 

 ウラノスが手を掲げると、頭上から大量の水球が現れ、燃え盛るゲンムの周りに氷杭が生成される。

 水球と氷杭が発射されると、燃え盛るゲンムを包み込み―――。

 

 蒸散した。

 

 

「―――は?」

 

 

 ウラノスの素っ頓狂な声が、虚しく響く。

 ウラノスの計算では、あの炎を水で消化してから、水でゲンムを包み込み、その後氷杭を発射してその冷気を用いて水を急速冷凍させてゲンムを捕縛するつもりだった。

 だが、その前提すら崩れた。

 水がゲンムに触れた瞬間蒸発したからだ。

 

 

『コケ脅しなんかじゃねぇ。太陽の熱に、ただの水が勝てるわけねぇだろ』

 

「なん、だと…!?」

 

『それに、感謝してもらいてぇ。あんな大量の水と高火力の炎がぶつかり合ったんだ。水蒸気爆発が起きたっておかしくねぇ。そこら辺、調整してやったんだからよぉ』

 

 

―――水蒸気爆発とは。

 水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化されて発生する爆発現象のことを指しており、今の場面にはこの現象を引き起こすのに、十分な理由が存在していた。

 だが、その爆発が起きなかった理由がある。ゲンムだ。

 

 プロミネンス・クロニクルの能力で、熱を操る能力を保有しているゲンムには、このくらい朝飯前だった。

 爆発すら自身の熱に変換し、爆発のエネルギーをすべて吸収したのだ。

 

 

「クソがクソがクソがぁ!」

 

『じゃあ、こっちの番だ』

 

 

 ゲンムの炎を纏った巨大な拳を振るうと、アームが伸びた。

 伸びた拳はそのままウラノスへと直撃し、砂ぼこりを上げながら強烈な衝撃とともに後退される。

 灼熱の炎を纏った攻撃と、強烈な一撃。これを喰らえばウラノスもただでは済まない―――。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ああぁああああ!!」

 

『嘘だろ…』

 

 

 だが、ウラノスの雄叫びが遠くから聞こえてきた。

 それと同時に、ウラノスのいる地点から一筋の光がゲンムを襲った。レーザーだ。

 ゲンムはそのレーザーを巨大な手で軽々と弾く。

 

 そして、それとほぼ同時に()()のウラノスが元のいた場所に到着した。

 いや、正確にはゴースト達の与えた傷が残っているが、それでもウラノスは依然と動けていた。

 彼の体力と耐久性も、恐るべきものだ。片腕が潰され、体は斬られているというのに、人の身で一体どこからそんなパワーが出てくると言うのだろうか?

 

 

「無駄だぁ!いくら貴様の攻撃が強力だろうと、私に傷をつけることなど、不可能なのだぁ!!」

 

『いや、今現時点で怪我してるだろ』

 

「黙れぇえええええええ!!」

 

 

 ゲンムの言葉はさらにウラノスの逆鱗に触れた。

 彼の顔はすでに般若と例えてもいい具合だった。

 

 

「おいゴミども!こいつを足止めしろ!!」

 

 

 すると、ウラノスは後ろに控えていた兵士たちに命令をした。

 その途端、兵士たちの目から生気が消え失せ、マシーンのように、機械的な動きをしながら武器を持ってゲンムに突進していく。

 

 

『【指揮をする能力】―――か。あの様子見るに、完全に精神支配されてやがるな』

 

 

 理性を失った兵士たちは、怒号を上げながらゲンムを攻撃する。

 だが、ゲンムは無傷だ。

 大量の兵士たちの攻撃を受けながらも、ゲンムは考えていた。

 

 あの指揮をする能力。効果の持続時間はどの程度か?いつ解けるのか?

 それを考えていた。無傷であるため問題はないが、いつまでも攻撃されていると鬱陶しい。

 だとしても、余分な死体が戦闘中に増えるのはゲンム(零夜)にとっても邪魔でしかないため、無力化することにした。

 

 

『―――グラビティ・クロニクル』

 

 

―――グラビティ・クロニクル。ゲンム(零夜)のオリジナルゲーム。

 隕石によって滅亡する地球を、重力を操る主人公が救うゲーム。このゲームの能力により、ゲンムは重力を操る能力を獲得した。

 つまるところ―――。

 

 

『グラビティ』

 

 

 ゲンム(零夜)がそう唱えると、兵士たちが一斉に地面に這いつくばった。

 重力に押しつぶされ自由を奪われてもなお、兵士たちはウラノスの命令に従うべく動こうとしていた。

 

 

『邪魔だな』

 

 

 重力を操り兵士たちを隅に退かして道を作る。

 作った道で、ゆっくりと歩みを進める。

 歩みを進めると、今まで兵士と言う壁に見えなかった、()()()()が見えてきた。

 

―――それは、宙に浮かぶウラノスだった。

 

 

「残念だったなぁ!ゴミどもが時間稼ぎしてくれたおかげでぇ…!貴様を殺す準備ができた!」

 

 

 ウラノスの手には、『火』『水』『風』『雷』『氷』『光』『闇』の、七つの『属性』がひとまとまりになっていた。

 あの技は、ゲンム(零夜)にも見覚えがあった。

 ルーミアを助ける直前に、彼女に放っていた『究極の必殺技』だ。当たったモノすべてを蹂躙するあの技の威力を一瞬ながらも見ていたゲンム(零夜)も、あの威力には賞賛に値したほどだ。

 流石の零夜も、あの技を生身で直撃を喰らえば瀕死は免れなかっただろう。だが、それは()()での話だ。

 

 

『―――ウェザー・クロニクル』

 

 

―――ウェザー・クロニクル。ゲンム(零夜)オリジナルゲーム。

 異常現象が多発する地球を、天気を操る主人公が救うゲーム。

 ゲンム(零夜)はまさにそのゲームの主人公となり、天気を操る力を得た。

 

 このゲームを創った理由としては、ウラノスの能力は『天を操る能力』。今までの能力を見るに、ウラノスの能力は『天気』に関係しているはずだ。

 最初の風は『台風』。水と氷は『雨』と『雪』。光は『太陽光』。(いかづち)は『(かみなり)』で、『炎』は『雷』の副産物。

 そして、最後の闇は『夜』。

 

 そう考えれば、あの七つの『属性』にも説明がつく。

 そう考え、ゲンム(零夜)は『ウェザー・クロニクル』を創ったのだ。

 

 ゲンムは両手を丸め、内側に空間ができるようにする。

―――そして、それと同時にその中心に七色の光が現れる。

 

 

「な!?そ、それは…!?」

 

『お前の必殺技、パクらせてもらったぜ』

 

「き、貴様あァあああああ!!恥と言うものを知らんのか!?」

 

『殺し合いに恥じもクソもあるか。バカが』

 

「ッ!!もう許さん!!死ねゴミがぁあああああ!!」

 

 

 ウラノスとゲンムの技が、同時に発動し、中心でぶつかり合う。

 強力なエネルギー弾がお互いに牽制しあい、力を高め合い、強烈な起爆音が鳴り響く。

 

 

「どうやら、力は互角なようだな!このまま押し切ってやる!」

 

『まぁ、確かにそうだ―――。だから、プラスする』

 

「はぁ?なんだと?」

 

『―――コズミック・クロニクル』

 

 

――――コズミック・クロニクル。

 宇宙崩壊の危機から地球を救うゲーム。

 このゲームの特性は―――『宇宙』に関することすべての、『操作』と『掌握』を可能にする特性。

 

 

『落ちろ』

 

 

 ゲンムの一言と同時に―――月が、光り輝く。

 その現象に、ウラノスは戦慄する。彼にはこの現象には身に覚えがあった。

 それは、彼がいつも必殺技の一つとして使用している―――。

 

 

「―――隕、石…」

 

 

―――隕石だった。

 大気圏に突入したかの如く赤く燃え盛る隕石が、ウラノスの頭上を最も強く照らした。

 

 

「クソっクソックソがぁあ!!!」

 

 

 この状況に、ウラノスは今まで見せたことのないような焦りを見せた。

 ウラノスがここまで焦っているのに、なにもしないのは理由がある。

 その理由とは、単純だ。『究極の必殺技』を放っている最中だからだ。『究極の必殺技』は七つの属性を束ねて放つ必殺技だ。その制御には途轍もない精神の浪費が絶対条件だ。

 つまりは、『究極の必殺技』を放っている最中は、なにもできない。それがウラノスの隙ができる瞬間だった。

 

 

『ジ・エンドだ』

 

 

「――――――――ッ!!!」

 

 

 

 ゲンムの言葉を皮切りに、ウラノスの叫びと、隕石の着弾音が響くのは、同時のことだった。

 そのままウラノスの『究極の必殺技』は暴発しエネルギーが不安定になり、ゲンムの技と誘爆し合い、さらに強烈な爆弾と化した。

 その爆風は強烈な熱を帯び、辺り一面を焼け野原と化すには十分な温度だった。

 それを、空気の膜をつくり、後ろの兵士たちに被害が及ばないように張った。

 この兵士たちは、情報を吐かせるために()()()に残しておく。兵士たちの無事を確認したゲンムは、隕石によって発生した黒煙を、ジッと見つめる。

 

 

『―――嘘だろおい…』

 

 

 ゲンムから呆れの言葉が出ると同時に、黒煙が一気に晴れる。

 そこには、()()()()()()()()()()()()()()()()がいたからだ。

 

 隕石に直撃し、操作を失った強力な攻撃の爆発によって、ただでは済まないはずの威力だったはずだ。

 それなのに、ウラノスは全く先ほどと変わりない姿で、その場に立っていたのだ。

 

 

『お前の防御力、どうなってんだよ―――』

 

「黙れ黙れ黙れェ!!よくも私の手を煩わせおって!」

 

『―――ちなみに聞くが、どうやってあれを回避した?』

 

「良いだろう!低脳な貴様に教えてやる!私は技の操作を手放し、防御に専念したのだ!私の手にかかれば、貴様の小細工など取るに足らん!」

 

 

 ――――やられた。そう思わざる負えない。

 ウラノスはわざと技の操作を手放して、防御に集中したのだ。自身の能力をフルに生かして、隕石と誘爆の連鎖に耐えうるほどの防御を、あの一瞬にして展開したのだ。

 一体、なにをどうすればあそこまでの防御力を発揮できると言うのだろうか?

 

 ゲンムのウェザー・クロニクルを用いればウラノスの『天を操る能力』とほぼ同じことができる。

 だが、『(そら)』系で防御とは、連想がし辛い。もしや他にも能力があるのだろか?疑問が尽きない。

 ともかく、ウラノスの防御の秘訣を探るのが先だ。いくら攻撃しようとも攻撃が通らないのでは、意味がない。

 

 

『正直、この姿でここまで苦戦を強いられる目になるとはな―――』

 

 

 このゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオンは、最強と言っても過言ではない程の強力な力を持っている。理不尽には理不尽を。その言葉の通り理不尽でぶつかってみたのだが、この結果だ。正直、この結果はゲンム(零夜)でも予測外だった。

 レベルビリオンの力を持ってしても、貫通することのできない防御力。とてもあの大きな鎧が関係しているとは思えないため、ウラノスの能力にはなに秘密があるのかもしれない。

 

 

「分かった、分かったぞぉ―――!貴様の弱点が!!」

 

『俺の、弱点だと?』

 

「貴様も、かなりの防御力を有している!だが、お前のそれは私とは違いその鎧が主となっている!つまりは―――」

 

 

 ウラノスの鎧が、ガラガラと音を立てながら外されていく。

 今の彼の体は軽装となり、潰されている片手は痛々しくその傷を露出させ、腹には複数の切り傷が。

 

―――自分の防御を落としてどうするんだ…。と思ってしまうが、よくよく考えたらウラノスの防御力にあの鎧は関係ない。

 つまりは外してもなんら変わらない―――?いや、変わる。鎧を外すことで、一つだけ変わる要素がある。

 

―――それは、素早さ。

 重たい鎧を外したことによる、速度の急上昇。それを完全に失念していた。

 

 

「その鎧を外せば、いいだけだぁ!」

 

 

 瞬間、ウラノスの姿が掻き消える。

――――早い。今の今までより、ずっと。

 

 

―――だが、ゲンムからしてみれば、遅い。

 

 

 

「ぐはぁ!!」

 

 

 

 ゲンムが手を地面に叩きつけると、同時にウラノスの苦しそうな声が聞こえた。

 手ごたえあり。ウラノスは地面に叩きつけられていたのだ。

 

 

『残念だったな』

 

「貴様―――!何故私の行動を―――!?」

 

『少し考えればわかることだ』

 

 

 まず、何故ゲンムがウラノスの行動を読めたか、それはウラノスの言動にある。

 すべての鍵は、『仮面ライダー』だ。

 ウラノスが『仮面ライダー』の単語と、「鎧を外す」と言う言葉で、なにをするのかは予測可能だった。

 

 ウラノスは、ゲンムのベルトを外そうとしていたのだ。

 いくら強かろうが、力の出所であるベルトを外されれば変身解除されてしまう。この有利な状況を覆されてしまうところだった。

 だが、それでもゲンムの前では通用しなかった。

 

 

『てめぇが仮面ライダーを知ってる時点で、俺のベルトを狙ってるのはある程度予想できた』

 

「だ、だが―――!どうして制限を解除した私のスピードについてこれるんだ!?」

 

『あ?やっぱお前自分の速度、鎧で制限してたのか。まぁいいか。答えてやる』

 

 

 制限を解除したウラノスの速度についてこれた理由。

 それはゲンムのもう一つの能力にある。

 その能力とは、基本能力値は変身者が自由に上限なく設定できると言う能力である。

 

 ゲンムはこの能力をフルで活用し、ウラノスの速度を上回ったのだ。

 だが、設定する前ではウラノスの速度の上限が分からなかったため、理不尽なほどに『速度』と『情報処理』のパラメーターを上げたが、上げすぎだったとゲンムは杞憂する。

 

 それを伝えた途端、ウラノスの顔は顔面蒼白になる。

 

 

「―――な!?そ、そんな規格外なもの、存在、していいわけ――」

 

『戯けんな。俺なんかまだまだだよ(―――仮面ライダーって言う『仮初(かりそめ)』の力を使ってる時点でな…)。』

 

 

 零夜の力は、所詮仮初の力に過ぎない。

 アイテムばかりに頼っている強さなど、たかが知れている。

 本当の最強と言うのは、シロのような人物のことを言うのだろう。

 零夜は、それを分かっていた。だからこそ、自分を卑下していた。

 

 

『さて、と。フンッ!!』 

 

 

 ゲンムはパワーのパラメーターを爆上げし、ウラノスの頭を押しつぶそうと力を入れる。

 ウラノスの苦しそうな悲鳴が聞こえると同時に、地面にクレーターのごとくヒビが入っていく。

 

―――だが、ウラノスの頭は潰れない。

 

 

『どうなってんだよお前の体――!』

 

「は、はは、ははははは!!どうやら、貴様でも俺の体に傷をつけることはできなかったようだな!」

 

 

 ウラノスの嘲弄がゲンムの耳に響く。と、同時にウラノスの頭を押し付ける力を強くする。

 

 

『(ゴーストとルーミアは、どうやってこいつの体に傷をつけたんだ―――?)』

 

 

 ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオンの力でさえも傷をつけることのできなかったウラノスに、どうやって格下のゴーストとルーミアが傷をつけることができたのだろうと、疑問が尽きなかった。

 考えても仕方がないため、ルーミアに聞くことにした。

 

 

『ルーミア!こいつにどうやって傷をつけ―――』

 

「おいルーミア!!こいつを攻撃しろ!私を助けるのだ!!」

 

『―――は?』

 

 

 ウラノスの急な迷言に、ゲンム(零夜)は素っ頓狂な声を上げた。

 ウラノスの言葉の意味が理解できない。いや、思考速度が落ちてしまっているだけだ。しばらく考え、その意味をようやく理解する。

 急に何を言っているんだこの男は。第一、敵であるウラノスの命令を、ルーミアが聞くわけがない。

 対して、自分の部下でもないのに命令なんてできるわけがないし、『指揮をする能力』の管轄外のはずだ。

 

 

『ルーミア、どうし―――』

 

 

 ゲンムが振り返った、その瞬間。

 

――――ザシュッ

 闇の斬撃が、ゲンムの体を斜めに通過した。

 

 ワケの分からないまま、ゲンム(零夜)は目の前を見据えた途端、動揺が走った。

何故なら……。

 

 

 

―――そこには、闇の剣を携えた、ルーミアがいたからだ。

 

 

 




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